糖尿病薬トラゼンタの効果・副作用・注意点まとめ

トラゼンタは、DPP-4阻害薬(血糖値を下げる糖尿病の飲み薬)に分類される糖尿病の治療薬です。
糖尿病治療薬の副作用としてよく見られる低血糖を起こしにくいという利点があり、さらに、1日1回の服用で効果があるため、他の糖尿病薬と比べても服用しやすいのが特徴です。
また、腎臓の機能が低下している方でも用量を変えずに使えるという特徴があり、高齢の患者さんにも多く処方されています。
この記事では、トラゼンタの働きや副作用、服用時の注意点について、わかりやすく紹介します。
1.トラゼンタとはどのような薬か
トラゼンタは2型糖尿病に使われるDPP-4阻害薬のひとつです。
どのような薬なのか、その仕組みや特徴について、詳しく説明します。
1-1. DPP-4阻害薬の仕組み
トラゼンタは、「リナグリプチン」という成分を含む錠剤タイプの糖尿病治療薬です。
DPP-4阻害薬という種類に分類されており、血糖値が高いときにインスリンの分泌を促すことで血糖値を下げる効果があります。
【参考情報】『Linagliptin』MedlinePlus
https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a611036.html
DPP-4阻害薬は、「インクレチン」と呼ばれる血糖調節ホルモンを分解する酵素「DPP(ジペプチジルペプチダーゼ)-4」のはたらきを阻害する薬です。
インクレチンには、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌を促し、逆に血糖値を上げるホルモンである「グルカゴン」の分泌を抑えるはたらきがあります。
DPP-4阻害薬を使うと、インクレチンが分解されなくなるため、血糖値が高いときにだけ下げるはたらきをします。
このため、他の薬と比べて、血糖値が下がり過ぎる低血糖のリスクが少ないというメリットがあります。
さらに、効果が長時間続き、他の薬との併用制限も少ないため、血糖コントロールが難しい2型糖尿病の患者さんにも使いやすい薬として広く処方されています。
1-2. インクレチン(GLP-1・GIP)とは?
食事をすると、小腸や十二指腸からインクレチンと呼ばれるホルモンが分泌されます。
インクレチンの代表的なものに「GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)」と「GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)」の2種類があります。
GLP-1は、血糖値が上がったときにすい臓に働きかけてインスリンをたくさん出させると同時に、グルカゴンの分泌を抑えて血糖値が高くなりすぎないようにします。
また、GIPも同様にインスリンの分泌を助ける役割を持っています。
しかしこれらのホルモンは、体の中でDPP-4という酵素によってわずか数分で分解されてしまいます。
そこで登場したのがDPP-4阻害薬です。
DPP-4を阻害することで、GLP-1やGIPが長く体の中で働けるようになり、血糖のコントロールを助けます。
1-3. トラゼンタの大きな特徴「胆汁排泄型」とは?
DPP-4阻害薬の中には、ジャヌビア(シタグリプチン)やネシーナ(アログリプチン)など多くの薬がありますが、これらのほとんどは腎臓から体の外に排出されます。
しかしトラゼンタは、体の中にとりこまれた薬の成分がほとんどそのまま便(胆汁)として排泄されるという特徴を持っています。
これを「胆汁排泄型」といいます。
【参考情報】『Linagliptin』MedlinePlus
https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a611036.html
1-4. 食事療法・運動療法と薬物療法の関係
トラゼンタは「2型糖尿病」の治療に使われる薬です。
2型糖尿病とは、食事・運動不足などの生活習慣が主な原因でインスリンがうまく働かなくなる病気で、糖尿病全体の約95%を占めていると言われています。
DPP-4阻害薬は、日本人に多い「インスリン分泌が少ない」タイプの2型糖尿病に対して使いやすい薬のひとつとして位置づけられており、特にアジア人では血糖降下作用がより強く出るという報告もあります。
また、1日1回の服用で済むDPP-4阻害薬は、服薬のしやすさから推奨されています。
このように、2型糖尿病の薬物療法は、まず食事療法と運動療法を十分に行ったうえで、それでも血糖が改善しない場合に検討されます。
トラゼンタなどの薬はあくまでも食事療法・運動療法を続けながら使うものであり、薬を飲んでいるからといって食事管理をやめてしまうと、血糖コントロールが乱れる原因になります。
食事療法については、医師や管理栄養士に相談しながら、自分に合った方法を見つけていきましょう。
【参考情報】『Type 2 Diabetes』National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases
https://www.niddk.nih.gov/health-information/diabetes/overview/what-is-diabetes/type-2-diabetes
2.トラゼンタの使い方
トラゼンタは1日1回の服用が基本ですが、飲むタイミングや飲み忘れたときの対処など、正しく使うためのポイントがあります。
この章では、用法・用量や日常の服用で気をつけることについて説明します。
2-1. 用法・用量
トラゼンタは、通常「1日1回」「1回1錠」を、水またはぬるま湯で服用します。
必ず医師の指示に従い、決められたタイミングで飲むようにしましょう。
なお、トラゼンタは成人を対象とした糖尿病治療薬です。
基本的に子どもへの使用は推奨されていないので、誤って服用しないよう注意が必要です。
2-2. 高齢の患者さん・腎機能が低下している方への使用
トラゼンタは、高齢の患者さんや腎臓の機能が低下している方にも使われることがあります。
なぜなら、1章でお伝えしたように、トラゼンタは主に胆汁(便)から排泄されるため、腎臓への負担が少なく、腎機能の程度によって薬の量を変える必要がないためです。
糖尿病のある高齢の患者さんは、腎機能が低下しているケースも多く、腎臓から排泄される薬では量の調整が必要になることがあります。
そのような場合でもトラゼンタは同じ量で使いやすいとされています。
ただし、実際の使用にあたっては必ず主治医の判断に従うようにしましょう。
3.トラゼンタの副作用
どんな薬にも副作用の可能性があり、トラゼンタにも注意が必要な症状があります。
ここでは、よく見られる副作用から重大なものまで、知っておきたいポイントをまとめます。
3-1. よく見られる副作用
トラゼンタを服用すると、次のような副作用が起きる場合があります。
・便秘やお腹のはり
・めまい
・口内炎
・空咳
車の運転や危険な作業をする際には、めまいや低血糖が起きる場合があるため、体調には十分注意が必要です。
3-2. まれに起こる重大な副作用
まれではありますが、次のような症状が現れることがあります。
・手足のふるえ、冷や汗、ふわふわした感覚
・強い腹痛、激しいお腹のはり、嘔吐
・みぞおちや背中への激しい痛み、発熱
・乾いた咳が続く、息切れ
これらは放置すると重篤になる場合があるため、症状に気づいたら、すぐに医療機関を受診してください。
特に、乾いた咳や息切れはトラゼンタによる間質性肺炎のサインである場合があります。
風邪と区別がつきにくいため、症状が続く場合は早めに受診しましょう。
3-3. DPP-4阻害薬に特有の副作用「水疱性類天疱瘡」
DPP-4阻害薬全般に関連して、水疱性類天疱瘡(すいほうせいるいてんぽうそう)と呼ばれる皮膚の病気が報告されています。
これは、皮膚に水ぶくれや赤みが広がる自己免疫性の病気で、高齢の男性に多く見られると言われています。
DPP-4阻害薬を使用中に皮膚に水ぶくれや強いかゆみが出た場合は、自己判断せず、早めに医師に相談してください。
場合によっては薬を変更することもあります。
【参考情報】『類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)(指定難病162)』難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4525
3-4. 副作用が出たときの対処法
副作用が気になったときは、まず医師または薬剤師に相談することが大切です。
自己判断で服用をやめると、血糖値が急激に上がることがあるため危険です。
服用中に気になる症状(強い腹痛・高熱・皮膚の水ぶくれ・呼吸が苦しいなど)が現れた場合は、すぐに医療機関を受診してください。
また、間質性肺炎の初期症状として「息が切れる」「乾いた咳が続く」といった症状が出ることがあるため、注意が必要です。
4.使用上の注意点
トラゼンタには、使ってはいけない方や、他のお薬との飲み合わせで注意が必要なケースがあります。
この章では、安全に使うための重要なポイントを説明します。
4-1. トラゼンタを使用できない方
以下に該当する方は、トラゼンタを使用することができません。
・トラゼンタの成分(リナグリプチン)に対してアレルギーのある方
・糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡(または前昏睡)の方
・1型糖尿病の方(インスリン注射による治療が必要)
・重症感染症がある方、手術前後の方、重篤な外傷がある方
またトラゼンタは、妊娠中や授乳中の使用は基本的に推奨されていません。
過去に腹部の手術を受けた方や、腸閉塞を起こしたことがある方も、副作用のリスクが高まる可能性があります。
このような方は、服用の前に必ず医師や薬剤師に相談してください。
【参考情報】『腸閉塞』北里大学北里研究所病院
https://www.kitasato-u.ac.jp/hokken-hp/visitor/office_visit/intestinal_obstruction.html
4-2. 他の薬との相互作用
トラゼンタは他の多くの糖尿病薬と組み合わせて使うことができますが、以下のような薬との組み合わせには注意が必要です。
現在飲んでいる薬がある場合は、必ずかかりつけの医師・薬剤師に伝えるようにしましょう。
・低血糖が起こりやすくなる薬
SU薬(スルホニルウレア薬:グリメピリドなど)やインスリン製剤と一緒に使うと、低血糖のリスクが高まります。
特に高齢者や腎機能が低下している方は注意が必要です。
・トラゼンタの効果を強めすぎる薬
一部の解熱鎮痛薬などと組み合わせると、血糖が下がりすぎることがあります。
・トラゼンタの効果を弱める薬
副腎皮質ホルモン(ステロイド)や甲状腺ホルモンなどと組み合わせると、血糖のコントロールが難しくなることがあります。
5.トラゼンタの薬価とよくある質問
薬の費用や飲み始めてからの効果の出方など、患者さんから多く寄せられる疑問があります。
この章では、薬価や他のDPP-4阻害薬との違いも含め、よくある質問にお答えします。
5-1. 薬価について
トラゼンタの1錠あたりの価格(2026年3月調べ)は次のとおりです。
・トラゼンタ錠5mg 118.9円/錠
現在のところ、トラゼンタと同じ成分のジェネリック医薬品や市販薬はありません。
糖尿病治療薬には、トラゼンタの有効成分であるリナグリプチンを含んだ「トラディアンス配合錠」という薬もあります。
この薬は、リナグリプチンに加え、もうひとつの血糖降下成分であるエンパグリフロジンを組み合わせた配合薬です。
主に、トラゼンタだけでは血糖コントロールが不十分な場合に処方されます。
5-2.トラゼンタに関するよくある質問
Q1.トラゼンタは食後に飲むべきですか?
医師や薬剤師から服用のタイミングについて指定がなければ、食前に飲んでも構いません。ただし、毎日同じ時間帯に服用するようにしましょう。
Q2.飲み忘れたときはどうしたらいいですか?
飲み忘れに気づいたら、できるだけ早く1回分を服用してください。
ただし、次に飲む時間が近い場合は、無理に2回分を飲まずに、1回分だけ服用するようにしましょう。
飲み忘れたからと言って、一度に2回分を飲むのは絶対にやめましょう。
副作用のリスクが高まるおそれがあります。
飲み忘れることが多い場合は、スマートフォンのアラームで服用時間を知らせたり、薬を目につく場所に置いたりして、予防に努めましょう。
Q3. トラゼンタを飲み始めてからどのくらいで効果が出る?
早ければ数日以内、通常は1〜2週間程度で、血糖値の改善が見られることが多いとされています。
効果は、血液検査(HbA1cなど)の結果を見ながら、医師が評価します。
6.おわりに
トラゼンタは、1日1回の服用で血糖コントロールをサポートするDPP-4阻害薬です。
胆汁排泄型という特性から腎機能が低下している方にも使いやすく、低血糖リスクも比較的少ないとされています。
しかし、副作用も報告されているため、自己判断での服用変更は避けましょう。
治療効果を高めるには、薬の服用とあわせて、食事・運動などの生活習慣の改善も大切です。
気になる症状や疑問は、主治医や薬剤師に遠慮なくご相談ください。













