いびきと歯ぎしりの関係~同時に起こる原因と対策

いびきと歯ぎしりは別々の症状のように思われがちですが、実は睡眠中の呼吸状態と深く関係していることがあります。
特に睡眠時無呼吸症候群では、いびきと歯ぎしりが同時にみられることも少なくありません。
また、いびきや歯ぎしりを放置すると、睡眠の質の低下だけでなく、歯や顎への負担、日中の眠気などにつながる可能性があります。
この記事では、いびきと歯ぎしりの関係、同時に起こる原因、睡眠時無呼吸症候群との関連、放置するリスク、改善方法についてわかりやすく解説します。
1.いびきと歯ぎしりは関係がある?
いびきと歯ぎしりは睡眠中によくみられる症状ですが、その背景には共通する原因が隠れていることがあります。
1-1.いびきと歯ぎしりが同時にみられる人は少なくない
いびきをかく人の中には、同時に歯ぎしりをしている人も少なくありません。
睡眠中の呼吸状態の異常は、いびきと歯ぎしりの両方に関係している可能性が指摘されています。そのため、いびきと歯ぎしりが同時にみられるケースもあります。
いびきも歯ぎしりも睡眠中に無意識に起こるため、自分自身では症状を自覚しにくいことが特徴です。
そのため、家族やパートナーからいびきや歯ぎしりを指摘されて、初めて気付くケースも少なくありません。
周囲から指摘された場合は放置せず、睡眠の状態を見直すきっかけにするとよいでしょう。
1-2.睡眠中の気道の狭窄が共通の要因になることがある
いびきは、睡眠中に気道が狭くなり、呼吸によって周囲の組織が振動することで生じます。一方、歯ぎしりも睡眠中の呼吸状態と関係している可能性があります。
睡眠中に気道が狭くなると呼吸がしづらくなり、脳が一時的な覚醒反応を起こすことがあります。歯ぎしりはこうした覚醒反応の前後に起きやすく、顎の筋肉の活動が高まることで生じると考えられています。
【参考情報】『Sleep bruxism: an oromotor activity secondary to micro-arousal』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11706956/
1-3.歯ぎしりが必ずしも悪いとは限らない
近年では、歯ぎしりは睡眠中の呼吸を助けるための生体反応の一つではないかという考え方もあります。
気道が狭くなった際に顎の筋肉を動かすことで、気道を広げようとしている可能性が指摘されているのです。
【参考情報】『Is sleep bruxism in obstructive sleep apnea only an oral health related problem?』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38745301/
ただし、歯ぎしりが頻繁に起こる場合は、歯の摩耗や破損、顎関節への負担などにつながる恐れがあります。
2.いびきと歯ぎしりが同時に起こる原因
いびきと歯ぎしりは、それぞれ別の原因で起こることもありますが、共通する要因によって同時に現れることもあります。
2-1.睡眠時無呼吸症候群
いびきと歯ぎしりが同時にみられる原因として、まず考えられるのが睡眠時無呼吸症候群です。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に喉の空気の通り道(上気道)が狭くなったり塞がれたりすることで、呼吸が何度も止まる病気です。
この病気では、狭くなった気道を空気が通過するときに周囲の組織が振動するため、大きないびきが生じます。また、気道が完全に塞がれると無呼吸状態となり、血液中の酸素濃度が低下します。
酸素不足になると、脳は呼吸を再開させるために瞬間的な覚醒反応を起こします。この覚醒反応によって気道周囲の筋肉が活性化し、呼吸が再開されますが、その際に顎の筋肉の活動も高まることがあります。
その結果、歯を強く噛みしめたり、歯を擦り合わせたりする歯ぎしりが起こると考えられています。
近年の研究では、睡眠時無呼吸症候群の患者では歯ぎしりを合併する割合が高いことが報告されています。
【参考情報】『Sleep bruxism is highly prevalent in adults with obstructive sleep apnea: a large-scale polysomnographic study』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36448332/
また、歯ぎしりには下顎を前方へ動かして気道を広げる働きがある可能性も指摘されており、身体が無意識のうちに呼吸を確保しようとする反応の一つと考えられています。
2-2.ストレスや緊張
ストレスや精神的な緊張も、いびきや歯ぎしりに関与することがあります。
ストレスが蓄積すると睡眠の質が低下して眠りが浅くなりやすく、睡眠中の覚醒反応が増えることで歯ぎしりが起きやすくなります。
また、疲労やストレスによって睡眠が不安定になると、いびきが目立つようになる場合もあります。
仕事や人間関係などで強いストレスを感じている時期に症状が悪化するようであれば、生活習慣や睡眠環境を見直すことも大切です。
2-3.飲酒
飲酒は、いびきと歯ぎしりの両方に影響を与える可能性があります。
アルコールには筋肉を弛緩させる作用があるため、睡眠中に舌や喉まわりの筋肉がゆるんで気道が狭くなり、いびきが出やすくなります。
また、飲酒によって睡眠の質が低下すると、覚醒反応が増えて歯ぎしりが起きやすくなることもあります。
特に寝る直前の飲酒は症状を悪化させやすいため、いびきや歯ぎしりが気になる方は飲酒習慣を見直してみることをおすすめします。
◆「お酒でいびきがひどくなるのはなぜ?原因・リスク・対策を解説」>>
2-4.肥満
肥満はいびきの代表的な危険因子として知られています。
体重が増えると首まわりや喉の周囲にも脂肪がつきやすくなり、気道が狭くなることでいびきが生じやすくなります。
また、睡眠中に気道が狭くなると呼吸が不安定になり、脳が一時的な覚醒反応を起こしやすくなります。
歯ぎしりはこうした覚醒反応の前後にみられることが多いため、肥満による睡眠中の呼吸の乱れが歯ぎしりに関与している可能性が考えられています。
2-5.顎や噛み合わせの問題
顎の骨格は、いびきや歯ぎしりに関連する睡眠中の呼吸状態に影響を与えることがあります。
例えば、下顎が小さい場合や後方に引っ込んでいる場合は、睡眠中に舌が喉の奥へ落ち込みやすくなります。その結果、気道が狭くなり、いびきや睡眠時無呼吸症候群が生じやすくなることがあります。
また、こうした骨格的な特徴は睡眠中の呼吸を不安定にする要因の一つと考えられています。睡眠中の呼吸障害と歯ぎしりには関連があることが報告されており、顎の形態が間接的に歯ぎしりに関与している可能性も指摘されています。
3.いびきや歯ぎしりを放置すると?
いびきや歯ぎしりを「よくあることだから」と放置していると、睡眠の質が低下するだけでなく、歯や顎へのダメージ、日中の眠気や集中力の低下などを招く恐れがあります。
3-1.いびきを放置するデメリット
いびきを放置すると、睡眠の質が低下する可能性があります。十分な睡眠時間を確保していても眠りが浅くなり、日中の眠気や集中力の低下、疲労感につながることがあります。
また、いびきの背景には睡眠時無呼吸症候群が隠れている場合、放置すると高血圧や糖尿病、心筋梗塞、脳卒中などのリスクが高まることが知られています。
さらに、大きないびきは家族やパートナーの睡眠を妨げる原因にもなります。本人だけでなく周囲の生活の質にも影響を与えるため、慢性的ないびきは放置しないことが大切です。
3-2.歯ぎしりを放置するデメリット
睡眠中の歯ぎしりでは非常に強い力が歯に加わるため、歯がすり減ったり、欠けたり、ひびが入ったりすることがあります。また、詰め物や被せ物が壊れる原因にもなります。
歯へのダメージだけでなく、顎関節や咀嚼筋にも負担がかかるため、顎の痛みや口の開けにくさ、顎関節症を引き起こすことがあります。
【参考情報】『顎関節症』日本歯科医師会
https://www.jda.or.jp/park/trouble/index04.html
さらに、朝起きたときの顎のだるさや頭痛、肩こりの原因となることも少なくありません。
さらに、歯ぎしりはストレスだけでなく、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害と関連している場合もあります。
4.いびきと歯ぎしりの改善方法
いびきや歯ぎしりの改善には、原因に応じた対策を行うことが重要です。
生活習慣の見直しによって改善が期待できる場合もありますが、睡眠時無呼吸症候群などの病気が背景にある場合は医療機関での治療が必要になることもあります。
4-1.いびきを改善する方法
いびきを改善するためには、まず気道が狭くなる原因を取り除くことが重要です。
肥満がある場合は減量によって首周りの脂肪が減り、気道が広がることでいびきが軽減することがあります。
また、飲酒は喉の筋肉を緩ませて気道を狭くするため、就寝前の飲酒を控えることも有効です。
寝る姿勢を見直すことも効果が期待できます。仰向けで寝ると舌が喉の奥へ落ち込みやすくなるため、横向きで寝ることでいびきが改善する場合があります。
鼻づまりが原因の場合は、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などの治療によって鼻呼吸がしやすくなり、いびきが軽減することがあります。
4-2.歯ぎしりを改善する方法
歯ぎしりの改善には、歯や顎への負担を軽減するとともに、原因となっている要因に対処することが重要です。
歯科では、就寝中に装着するマウスピース(ナイトガード)がよく用いられます。マウスピースによって歯同士が直接接触するのを防ぎ、歯の摩耗や破損、顎関節への負担を軽減できます。
【参考情報】『Teeth grinding (bruxism)』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/bruxism/diagnosis-treatment/drc-20356100
また、日中に無意識に歯を食いしばる癖がある場合は、上下の歯を離してリラックスした状態を意識することも大切です。
ストレスや緊張が歯ぎしりに関与していると考えられる場合は、十分な休養や適度な運動などでストレスを管理することも改善につながる可能性があります。
さらに、歯ぎしりの背景に睡眠中の呼吸の乱れが関係している場合もあります。そのため、いびきを伴う歯ぎしりでは歯科だけでなく、必要に応じて呼吸器内科や睡眠外来の受診も検討するとよいでしょう。
◆「呼吸器内科で睡眠時無呼吸症候群の検査と治療ができます」>>
5.病院を受診した方がよいケース
いびきや歯ぎしりはよくみられる症状ですが、中には治療が必要な病気が隠れていることがあります。
特に症状が長期間続いている場合や、日常生活に支障が出ている場合は、一度医療機関に相談することをおすすめします。
5-1.大きないびきが続いている
毎晩のように大きないびきをかいている場合は注意が必要です。
特に以前よりいびきが大きくなった場合や、体重増加をきっかけにいびきをかくようになった場合は、睡眠時無呼吸症候群が関係している可能性があります。
家族に「いびきがうるさくて眠れない」「睡眠中に呼吸が止まっていた」と指摘された場合は、早めに受診を検討しましょう。
本人は気付いていなくても、周囲から無呼吸を指摘された場合は重要なサインと考えるべきです。
◆「いびきを放置するのは危険?病気のサインと受診の目安」>>
5-2.日中の強い眠気がある
十分な睡眠時間を確保しているにもかかわらず、日中に強い眠気がある場合も注意が必要です。
特に、運転中に眠気を感じる場合は事故につながる危険性もあります。
最悪の場合、数秒間の「マイクロスリープ(瞬間的な居眠り)」によって完全に意識が飛んでしまい、事故を起こすケースも少なくありません。
日常的に運転中の眠気を感じるようであれば、睡眠時無呼吸症候群を疑って病院で相談することが、自分自身だけでなく周囲の人々の安全を守ることにもつながります。
◆「昼間の眠気が耐えられないなら、睡眠時無呼吸症候群を疑いましょう」>>
5-3.歯の摩耗や顎の痛みがある
歯の表面がすり減っている、歯が欠けたことがある、詰め物や被せ物が繰り返し壊れるといった症状は、強い歯ぎしりが続いているサインかもしれません。
また、朝起きたときに顎が痛い、口を開けると違和感がある、顎がカクカク鳴るといった症状がある場合は、顎関節に負担がかかっている可能性があります。
このような場合は、歯科で歯ぎしりや噛み合わせの状態を確認してもらうことで、歯や顎へのダメージを軽減できる場合があります。
さらに、歯ぎしりの背景に睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、必要に応じて睡眠検査を勧められることもあります。
6.おわりに
いびきと歯ぎしりは、睡眠中の気道の狭窄や睡眠の質の低下といった共通の要因によって同時に起こることがあります。
特に睡眠時無呼吸症候群では、大きないびきと歯ぎしりの両方がみられることが少なくありません。
家族から大きないびきや無呼吸を指摘されたことがある場合や、日中の強い眠気、起床時の疲労感、顎の痛みなどがある場合は注意が必要です。
いびきや歯ぎしりが続く場合は早めに病院で相談し、必要に応じて睡眠時無呼吸症候群などの検査を受けることをおすすめします。












