いびきで呼吸器内科を受診する目安と睡眠時無呼吸症候群との関係

・いびきがひどいと家族に指摘された
・自分のいびきで目が覚めてしまう
いびきはよくあることかもしれませんが、あまりにひどいようなら、睡眠時無呼吸症候群など呼吸器の病気が隠れているケースもあります。
しかし、いびきが心配でも「何科を受診すればいいのかわからない」という方は少なくありません。
この記事では、いびきに悩んでいる人やご家族に向け、どのような場合に受診を検討すべきか、呼吸器内科ではどのような検査や治療を行うのかを解説します。
1. いびきの悩みは呼吸器内科で相談できる
「最近、いびきがひどくなった」「いびきがうるさくて眠れないと家族から言われた」など、いびきの問題がある人は呼吸器内科で相談できます。
◆「呼吸器内科とはどんなところ?何をするのかを解説します」>>
いびき自体は誰にでも起こりうるものですが、いびきに加えて「寝ている間に呼吸が止まる」「日中に強い眠気がある」といった症状がある場合は、睡眠時無呼吸症候群が隠れている可能性があります。
呼吸器内科では、問診のほか、睡眠中の呼吸に異常がないかを検査で確認し、治療につなげることができます。
治療の結果、睡眠中の呼吸がスムーズになれば、いびきも改善します。
一方、いびきの原因が鼻づまりや鼻炎、扁桃肥大などの場合は、耳鼻咽喉科での診察が適していることもあります。
睡眠中の呼吸停止や日中の強い眠気などが気になる場合は呼吸器内科、鼻や喉の症状が目立つ場合は耳鼻咽喉科というように、症状に応じて受診先を考えるとよいでしょう。
2. 心配のないいびき
いびきは必ずしも病気が原因で起こるわけではありません。健康な人でも一時的にいびきをかくことがあります。
2-1. いびきが起こる仕組み
いびきは、睡眠中に空気の通り道である上気道が狭くなることで起こります。
眠っているあいだは、起きているときに比べて喉まわりの筋肉の働きが弱くなるため、上気道が狭くなりやすくなります。
特に、舌や軟口蓋などの組織が気道を狭めることで、空気の通り道が細くなることがあります。
その狭くなった部分を空気が通るときに、周囲の軟らかい組織が振動し、いびきの音が生じます。
【参考情報】『Snoring』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/snoring/symptoms-causes/syc-20377694
2-2. 一時的にいびきが大きくなることもある
普段はいびきをかかない人でも、次のような状況では一時的にいびきが大きくなることがあります。
・風邪などで鼻づまりがある
・いつもよりたくさんお酒を飲んだ
・疲労がたまっている
例えば、鼻が詰まっていると口呼吸になりやすく、いびきにつながることがあります。
【参考情報】『Nasal symptoms increase the risk of snoring and snoring increases the risk of nasal symptoms. A longitudinal population study』National Library of Medicine
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8590672/
また、飲酒によって喉の周囲の筋肉が緩むことも、いびきをかきやすくする要因の一つです。
このような一時的的ないびきであれば、基本的には心配ありませんが、頻繁にいびきをかく場合や、いびき以外の症状を伴う場合には、その背景に睡眠時無呼吸症候群などがないか確認することが大切です。
3. こんないびきには注意が必要
いびきそのものが悪化したり、睡眠中に別の症状を伴う場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
3-1. いびきが大きくなったと言われる
「いびきがうるさい」と家族から指摘されても、本人にはどの程度の音なのか分かりません。
しかし、家族から「以前よりいびきが大きくなった」「毎晩のように大きないびきをかいている」と言われる場合は注意が必要です。
大きないびきだけで睡眠時無呼吸症候群と判断することはできませんが、いびきが続く・悪化する場合は、睡眠中の呼吸に問題がないか病院で相談してみるとよいでしょう。
3-2. 「いびきが止まる」と言われる
家族や一緒に寝ている人から「いびきが途中で止まっている」と指摘された場合は注意が必要です。
睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に呼吸が一時的に止まり、その後、再び呼吸が始まる際に大きないびきをかくことがあります。
本人は寝ているため、呼吸が止まっていることに気づかないケースも少なくありません。そのため、いびきの状態は自分では正確に把握しづらく、周囲からの指摘が病気に気づくきっかけになることもあります。
◆「いびきと息が止まる症状から考える睡眠時無呼吸症候群」>>
3-3. 寝ている間に息苦しくなる・むせる
いびきだけでなく、睡眠中に息苦しさを感じたり、むせたりすることがある場合も注意が必要です。
睡眠中に呼吸が妨げられると、苦しくなって一時的に目が覚めたり、あえぐように息を吸い込んだりすることがあります。
ただし、睡眠中のむせや咳には、胃食道逆流症や後鼻漏、喘息など、睡眠時無呼吸症候群以外の原因もあります。
【参考情報】『Postnasal Drip』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/23082-postnasal-drip
こうした症状が繰り返される場合は、いびきの有無だけで判断せず、病院に相談して睡眠中の呼吸状態を調べることを検討しましょう。
3-4. 夜中に何度も目が覚める
夜中に何度も目が覚めてしまう場合も、睡眠中の呼吸が関係していることがあります。
睡眠時無呼吸症候群では、呼吸が止まるたびに一時的に目が覚め、その後また呼吸が再開するというサイクルが繰り返されることがあります。
【参考情報】『Arousal from sleep: implications for obstructive sleep apnea pathogenesis and treatment』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23990246/
しかし本人は、単に「眠りが浅い」「加齢でトイレが近くなった」と感じているだけの場合も少なくありません。
4. いびき以外にもこんな症状があれば要注意
睡眠時無呼吸症候群により睡眠の質が低下すると、起床後や日中にもさまざまな症状が現れることがあります。
4-1. 朝起きたときに頭が痛い
朝起きたときに頭痛がある場合、睡眠中の呼吸状態が影響している可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群では、呼吸が繰り返し止まることで血液中の酸素が減り、二酸化炭素が増えやすくなります。
血液中に二酸化炭素が増えると脳の血管が広がりやすくなり、この変化が起床時の頭痛につながると考えられています。
【参考情報】『Sleep fragmentation and morning cerebrovasomotor reactivity to hypercapnia』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10508814/
4-2. 寝ても疲れが取れない
十分な睡眠時間を確保しているはずなのに、朝起きても疲れが取れないという場合も注意が必要です。
睡眠時無呼吸症候群では、呼吸が止まるたびに睡眠が浅くなり、睡眠の質が低下することがあります。そのため、長時間寝ていても十分に休めたと感じられないことがあります。
こうした「寝ても疲れが取れない」感覚は、加齢やストレス、生活習慣の乱れのせいだと思い込まれがちで、見過ごされやすい傾向があります。
しかし、原因が睡眠時無呼吸症候群にある場合、休息の取り方を工夫するだけでは根本的な改善が難しいこともあります。
4-3. 昼間に強い眠気がある
日中に強い眠気を感じることも、睡眠時無呼吸症候群でみられる症状の一つです。
睡眠中に呼吸が何度も止まると、本人が気づかないうちに睡眠が妨げられます。その結果、十分に寝ているつもりでも睡眠の質が低下し、日中に強い眠気を感じることがあります。
特に、大事な会議中や運転中など、本来なら眠るはずのない場面でも眠気を感じる場合は注意が必要です。
◆「昼間の眠気が耐えられないなら、睡眠時無呼吸症候群を疑いましょう」>>
4-4. 朝起きると口が乾いている
朝起きたときに口の中が乾いている場合も、睡眠中の呼吸が関係していることがあります。
睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に上気道が狭くなったり閉塞したりすることで、口呼吸がみられることがあります。
また、口呼吸によって上気道がさらに狭くなり、症状が悪化することもあります。
口を開けて眠ると口の中の水分が蒸発しやすくなるため、朝起きたときに口の渇きやのどの不快感を感じることがあります。
◆「寝ている間に喉が渇くのはなぜ?睡眠時無呼吸症候群との関係」>>
5. 呼吸器内科で行ういびきの検査と治療
呼吸器内科では、いびきの原因を調べるために、主に次のような方法で検査を行います。
5-1.問診
まず、いびきの状態や睡眠中の症状について詳しく確認します。
いびきがいつ頃から始まったのか、どのくらいの頻度でかくのか、家族から「いびきが大きい」「寝ている間に呼吸が止まっている」などと指摘されたことがあるかなどを聞き取ります。
あわせて、日中の眠気や起床時の頭痛、夜中に目が覚めるなどの症状、体重の変化や既往歴なども確認し、睡眠時無呼吸症候群の可能性を判断します。
5-2.簡易検査
問診などから睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、睡眠中の呼吸状態を調べる簡易検査を行うことがあります。
検査では、鼻や指などにセンサーを装着して眠り、睡眠中の呼吸の状態や血液中の酸素飽和度(SpO2)などを測定します。自宅で普段に近い環境で検査できることが特徴です。
ただし、簡易検査では測定できる項目に限りがあるため、検査結果だけでは睡眠時無呼吸症候群の有無を十分に判断できない場合があります。
5-3.精密検査
簡易検査の結果をさらに詳しく調べる必要がある場合や、簡易検査では判断が難しい場合には、ポリソムノグラフィー(PSG)と呼ばれる精密検査を行うことがあります。
精密検査では、呼吸や血液中の酸素飽和度だけでなく、脳波、眼球運動、心電図、筋肉の動きなども同時に記録します。
これによって、睡眠の状態と呼吸の異常がどのように関係しているのかを詳しく調べることができます。
精密検査は医療機関に一泊して行うことが多いのですが、当院では自宅での精密検査を実施しています。
5-4.治療
いびきの原因が睡眠時無呼吸症候群だった場合、代表的な治療法として挙げられるのがCPAP(シーパップ)です。
専用の装置から気道内に空気を送り込むことで、睡眠中に気道が塞がるのを防ぎ、無呼吸や低呼吸を改善します。治療によって呼吸が安定すると、いびきの軽減が期待できます。
症状や重症度によっては、下あごを少し前に出す形のマウスピース(口腔内装置)を使って気道を広げやすくする方法が選択されます。
また、肥満体型なら減量する、飲酒習慣の見直し、横向きで寝るなど睡眠時の姿勢を工夫する方法などが挙げられます。
6. おわりに
いびきは、疲労や飲酒、鼻づまりなどによって一時的に起こることもあり、いびきがあるからといって必ずしも病気とは限りません。
一方で、「寝ている間に呼吸が止まる」「夜中に息苦しくなったり、むせたりする」「朝起きても疲れが取れない」「日中に強い眠気がある」といった症状を伴う場合は、睡眠時無呼吸症候群が隠れている可能性があります。
また、いびきは本人が気づきにくいため、家族からの指摘が受診のきっかけになることもあります。
いびきの原因は一つではなく、鼻や喉の状態が関係している場合もあれば、睡眠中の呼吸に問題がある場合もあります。いびきが気になる場合や、呼吸停止などの症状を指摘された場合は、放置せず、呼吸器内科などの医療機関に相談しましょう。
以下の症状がある方は、早めの受診をおすすめします
- 家族にいびきや呼吸の止まりを指摘されたことがある
- 日中に強い眠気を感じる
- 朝起きたときに頭痛や口の渇きがある
- 十分寝ているのに疲れがとれない
- 夜中に何度も目が覚める
当てはまる項目がある方は、睡眠時無呼吸症候群の検査を受けてみませんか?












