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寝ている間に喉が渇くのはなぜ?睡眠時無呼吸症候群との関係

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2023年05月23日

朝起きたら、「何だかやけに喉が渇いている」ということはありませんか?

部屋の環境や寝具の影響で、寝ている間に喉が渇くこともありますが、中には睡眠時無呼吸症候群という病気が原因で、喉が乾燥してしまう人もいます。

この記事では、睡眠時無呼吸症候群で喉が渇く理由を解説します。

1.睡眠時無呼吸症候群とは


睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に一瞬、呼吸が止まったり浅くなったりすることを繰り返す病気です。

この病気の主な自覚症状は、大きないびき、起床時の頭痛、日中の眠気です。

◆「昼間の眠気」との関係>>

患者さんのいびきは、音が激しく、しかも長時間続くことが多いです。これが毎日のように繰り返されるため、一緒に寝ている人の安眠を妨げてしまいます。

また、突然呼吸が止まったり、一晩中苦しそうにしている様子を見て、家族は不安に思っているかもしれません。

この病気は、肥満体型の人に多く、治療をせずに放っておくと、生活習慣病や心血管疾患を合併しやすくなります。

しかし、治療を開始すると、いびきや昼間の眠気などの症状が改善し、合併症を予防することもできます。

◆「睡眠時無呼吸症候群」について詳しく>>

2.なぜ、いびきをかくと睡眠中に喉が渇くのか


いびきをかく人のほとんどは、口を開けて眠っています。特に睡眠時無呼吸症候群の人は、寝ている間に呼吸が苦しくなるため、無意識のうちに口を開けて呼吸をしています。

口で呼吸をすると、口の中が乾燥するので、喉が渇きやすくなります。そのため、喉がヒリヒリと痛くなったり、イガイガとした違和感に悩まされることがあります。

夜間に喉が渇いたり、喉が乾燥して不快になることが続けば、もとから病気のため呼吸状態が悪く、熟睡できない状態なのに、ますます睡眠が妨げられ悪循環となります。

睡眠時無呼吸症候群が原因で、喉が渇きやすくなっているのなら、その悩みを改善するためには治療が必要となります。

【参考情報】『Mouth Breathing』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/22734-mouth-breathing

3.睡眠時無呼吸症候群のいびきの特徴


いびきは、空気の通り道である気道が狭くなったときに発生します。息を吸った後に、空気が気道を通る際に、喉が振動して音が出るのです。

肥満体型の人は、喉の周辺にも脂肪がついているため、気道が脂肪で圧迫され狭くなりがちです。

痩せている人でも、もともとあごの骨格が小さい人は、少し体重が増えただけでも喉に脂肪がついて、気道が狭くなることがあります。

気道が狭くなると、空気を十分に取り込もうとして、思い切り息を吸うようになります。すると、空気が通るたびに喉が激しく振動して、いびきの音も大きくなります。

健康な人でも、疲れた時や、お酒を飲み過ぎた時には、大きないびきが出ることはあります。しかし、それは一時的なことです。

睡眠時無呼吸症候群の人は、普段から気道が狭くなっているため、毎日のようにいびきが出ることが多く、しかも音が大きくなるのです。

【参考情報】『Q15 夜、いびきをかく、と言われました』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q15.html

◆「いびきの原因と対処法」>>

4.睡眠中に喉が渇く、その他の原因


睡眠時無呼吸症候群以外の原因でも、寝ている間に喉が渇くことがあります。

4-1.部屋の乾燥

人間は、寝ている間にコップ一杯程度の汗をかくと言われています。

そのため、睡眠中には水分が体から抜けていくのですが、部屋の空気が乾燥していると、さらに多くの水分が抜けてしまいます。

特に冬場は、空気が乾燥していることに加え、エアコンをつけることも多くなるため、いつもより寝室が乾燥しがちです。

加湿器などを利用して、寝室の湿度を40~60%程度に保ち、睡眠中に喉が渇くことを防ぎましょう。

4-2.水分摂取量の不足

水分摂取量が足りないと、体の中の水分が不足して、喉が渇きます。

夏の暑い日や、運動で汗をかいた日は積極的に水を飲んでいる人も、冬場は喉が渇きにくくなるため、意識して水分を摂らないと、意外と不足することがあります。

また、コーヒーなどカフェイン入りの飲料やお酒は利尿作用があるため、水分補給には適していません。

睡眠中に喉が渇いてしまう人は、水、または白湯で水分を補給するよう心掛けましょう。

4-3.鼻詰まり

風邪や花粉症などにより鼻が詰まると、鼻に空気が通りにくくなるため、つい、口で呼吸をしてしまいます。すると、口から直接乾燥した空気が喉を通り、喉が渇きます。

このような場合は、原因となる病気が治れば鼻呼吸に戻るので、あまり心配はありません。

鼻詰まりがなかなかよくならない時は、耳鼻咽喉科を受診して原因を調べましょう。

【参考情報】『近くの耳鼻咽喉科専門医を探しましょう』日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
https://www.jibika.or.jp/modules/search_citizens/

4-4.夜間口腔乾燥症(ドライマウス)

人は加齢とともに、唾液の分泌が減ってきます。そのため、高齢になると、特に夜間に口や喉が渇きやすくなり、口臭や口の中の痛み、舌のひび割れなどの症状も出てきます。

専用の保湿液で乾燥を防ぐこともできますが、思い当たる方は、日中もこまめに水を飲むようにしてください。

【参考情報】『口の中が乾燥する』日本口腔外科学会
https://www.jsoms.or.jp/public/soudan/kouku/kanso/

4-5.その他の原因

その他、糖尿病などの病気やストレス、薬の副作用が原因で、睡眠中に喉が渇くことがあります。

寝ている間に口呼吸にはなっておらず、水分も積極的に摂っているのに、喉の渇きが治まらない場合は、かかりつけ医、または内科を受診して相談してみましょう。

◆「糖尿病との関係」について>>

5.睡眠中の喉の渇きが続くなら


就寝中の喉の渇き・喉の痛みのほかに、以下のような症状があれば、睡眠時無呼吸症候群の疑いがあるので病院を受診しましょう。

 ・激しいいびき
 ・起床時の頭痛
 ・昼間の眠気
 ・睡眠中の息苦しさ

睡眠時無呼吸症候群の疑いがあれば、まずは自宅でできる簡易検査を行います。

◆「簡易検査」について>>

簡易検査の結果、さらに詳しい検査が必要だと判断された場合は、医療機関や検査施設に一泊して精密検査を行います。

◆「精密検査」について>>

治療が必要と判断されたら、CPAP(シーパップ)をはじめとした医療機器を用いて、睡眠中の呼吸をサポートします。

◆「CPAP」とは>>

CPAPの効果は、重症の方ほどはっきり実感できるようで、治療開始の翌朝から「目覚めがよくなった」とおっしゃる患者さんも多いです。

いびきが減り、口呼吸から鼻呼吸に戻っていくと、夜間に喉が渇くことも少なくなり、ぐっすり眠れるようになります。

◆「呼吸器内科で検査と治療ができます」>>

6.おわりに

睡眠時無呼吸症候群になっても、初めは眠気や疲れなどの症状しか感じられないため、ストレスや加齢のせいだと考えがちです。

しかし、そのまま放っておくと、高血圧や心不全、糖尿病などの合併症に見舞われ、突然、脳卒中や心筋梗塞で命を落とすこともあります。

睡眠中の喉の渇きやいびきなど、ささいなサインを見逃さず、早くに治療を始めれば、合併症のリスクは、健康な人と変わらない程度に下がっていきます。

朝起きたときに、喉の渇きや頭痛など、不快な症状が続いている場合は、病院で原因を調べ、適切な治療を受けましょう。

◆当院の睡眠時無呼吸症候群治療について>>

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