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貧血の症状と原因を知り、予防するためのポイント

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年03月13日
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健康診断などで「貧血」と言われたことはありませんか?

貧血の指標の一つに血色素量があり、女性の10人に1~2人は正常値を下回っています。

近年では、ヘモグロビンの値だけでなく、血清フェリチンなど「貯蔵鉄」の指標にも注目が集まっています。

ヘモグロビン値が正常でも、体内の鉄分が不足している「隠れ貧血(潜在性鉄欠乏)」の状態であることもあります。

とくに月経のある女性や妊娠中の方、過度なダイエットをしている方は注意が必要です。

【参考情報】『国民健康・栄養調査』令和5年
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_45540.html

1.貧血の症状

頭痛
貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビンが減少している状態のことです。

赤血球に含まれるヘモグロビンは、肺に取り込まれた酸素を全身に運ぶ働きがあります。

貧血になると、全身に酸素が行き渡らなくなるため、頭痛やめまい、動悸、息切れ、耳鳴り、頻脈などの症状が起こります。

このほかに、氷を食べたくなる異食症や、爪の中央がくぼむスプーン爪が見られる場合もあります。

また、貧血により酸素が不足すると、皮膚や粘膜の再生にも影響がでてしまいます。

このような状態では皮膚のバリア機能が低下しやすく、アトピー性皮膚炎や喘息などのアレルギー疾患が悪化する可能性も報告されています。

とくに小児や女性においては、鉄不足とアレルギーの関係が指摘されており、医療機関での評価が重要です。

◆「鉄の特徴とアレルギー疾患」はこちら>>

2.貧血の原因

赤血球
貧血はいくつかのタイプにわけることができ、原因や治療法が異なります。

2−1.鉄不足による貧血

鉄が不足するとヘモグロビンを十分につくれなくなり、「鉄欠乏性貧血」になってしまいます。

鉄欠乏貧血は、鉄の摂取不足や吸収障害、鉄の消費量増大、鉄の排泄増加などにより起こります。

特に、女性は月経により鉄が排泄されやすく、不足しやすいです。

その上、ダイエットなどで食事制限をすると鉄不足になりやすいので注意が必要です。

また、少量でも出血が続くと、貧血になってしまいます。

消化器や子宮などの病気が原因で出血していることがあるので、検査により原因を探し、病気が見つかった場合には治療することが大切です。

◆「女性特有の不調と鉄不足」について>>

最近では、ヘモグロビン値が正常でも、体内の貯蔵鉄(フェリチン)が不足している「潜在性鉄欠乏」にも注意が必要とされています。

この状態では、症状が出ていても健康診断では「異常なし」とされることがあり、見逃されやすい点が問題です。

◆「隠れ貧血」について詳しく>>

また、胃の手術歴やピロリ菌感染、胃薬(PPIなど)を長期服用している方は、鉄の吸収が悪くなっている可能性もあります。

2−2.ビタミンBや葉酸不足による貧血

ビタミンB12や葉酸が不足すると、異常な赤血球がつくられてしまう「巨赤芽球性(きょせきがきゅうせい)貧血」になってしまいます。

【参考情報】『巨赤芽球性貧血』小児慢性特定疾病情報センター
https://www.shouman.jp/disease/details/09_01_001/

ビタミンB12は、肉や魚に多く含まれています。

通常の食生活では不足することはありませんが、菜食主義など偏った食事や、アルコールを毎日たくさん飲む習慣があると不足になることがあります。

また、ビタミンB12を吸収するためには、胃から分泌される内因子というものが必要です。

胃を摘出したり、高齢で胃の機能が低下していたりすると、ビタミンB12を吸収できなくなってしまいます。

また、葉酸は、妊娠すると通常の10倍近く必要になるので、不足しないように注意が必要です。

ビタミンB12や葉酸が不足して起こる貧血は、「鉄不足とは異なるタイプの貧血」で、治療も異なります。

特に高齢者や胃の手術後の方では、ビタミンB12の欠乏によって「しびれ」や「ふらつき」「記憶力低下」など神経症状が現れることもあります。

一方、妊娠中に葉酸が不足すると、胎児の神経管閉鎖障害のリスクが高まることが知られており、厚生労働省でもサプリメントなどでの補給が推奨されています。

◆「ビタミンB群とエネルギー」について詳しく>>

◆「貧血対策は鉄分だけじゃダメなんです」はこちら>>

3.貧血の検査

採血
貧血と診断されたら、最初の一歩は血液検査です。

この検査で貧血の有無やタイプを知ることができます。

しかし、大切なのはそれだけではありません。

貧血の本当の原因がどこにあるのかを特定しなければ、根本的な治療には繋がりません。

そのため、血液検査に加え、消化器や婦人科など、原因を特定するための専門的な検査も重要視されます。

3−1. 貧血の有無とタイプを知る血液検査

貧血かどうかは、血液検査によって調べることができます。

赤血球やヘモグロビン、ヘマトクリット、フェリチンなどの項目によって判断されます。

ヘモグロビン(Hb)や赤血球数(RBC)、ヘマトクリット(Hct)は、貧血の有無を判断する基本的な項目です。

一方で、フェリチンは「体内の鉄の貯蔵量」を示す指標であり、「鉄欠乏性貧血」の早期発見に役立ちます。

フェリチン値が低い場合は、ヘモグロビンが正常でも「潜在性鉄欠乏」と診断されることがあります。

さらに、平均赤血球容積(MCV)や平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)などの指標を加味することで、貧血のタイプ(小球性・正球性・大球性)を推定することができます。

【参考情報】『NEW THRESHOLDS FOR THE USE OF FERRITIN CONCENTRATIONS TO ASSESS IRON STATUS IN INDIVIDUALS AND POPULATIONS』World Health Organization
https://www.who.int/docs/default-source/micronutrients/ferritin-guideline/ferritin-guidelines-brochure.pdf?sfvrsn=76a71b5a_4

3−2. 出血や吸収障害など「原因」を特定する検査

さらに、貧血の原因を探るために、消化器や子宮の病気がないかを調べます。

消化器からの出血を疑う場合には、胃カメラや便潜血検査を行います。

子宮などの病気を疑う場合には、内診や超音波検査を行います。

高齢の方やピロリ菌感染の既往がある場合、胃粘膜の萎縮が進み、鉄やビタミンB12の吸収障害が起こりやすくなります。

そのため、症状がなくても内視鏡検査を行うことが推奨される場合があります。

また、婦人科的疾患による過多月経や不正出血がある方では、婦人科専門医の診察が重要になります。

4.貧血の治療法


貧血の治療法は、貧血の原因によって異なってきます。

そのため、原因を特定した上で、鉄剤の服用だけでなく、食事指導や原因となっている病気の治療まで含めた根本的なアプローチが推奨されます。

4−1.鉄欠乏性貧血の治療

鉄欠乏性貧血の治療には、主に鉄剤の服用が行われます。

2週間程度鉄剤を服用すると、体内のヘモグロビン濃度が上昇し、2か月程度で正常になります。

その後、体内の鉄を貯蔵するために、貧血が改善しても鉄剤の服用は数か月程度続ける必要があります。

フェリチン(貯蔵鉄)の値が正常に戻るまでには、通常3〜6か月以上かかることがあります。

そのため、「症状が改善したから」と自己判断で服用をやめず、医師の指示に従って継続することが重要です。

また、鉄剤は胃の不快感や便秘・黒色便などの副作用が出ることがありますが、服用のタイミングや剤形を調整することで軽減できる場合があります。

また、貧血の原因となる病気がある場合は、その病気を治療することが重要です。

たとえば、過多月経を引き起こしている子宮筋腫や、消化管からの慢性的な出血がある潰瘍性病変などが見つかった場合は、専門的な治療が必要です。

4−2.巨赤芽球性貧血の治療

ビタミンB12あるいは葉酸の不足が原因の場合は、薬の服用により補充します。

胃に異常があるなど、ビタミンB12が吸収できないことが原因の場合は、ビタミンB12の筋肉注射により補充します。

また、ビタミンB12欠乏によって神経症状(しびれ、ふらつきなど)が出ている場合には、早期の補充治療が重要で、放置すると回復が難しくなることもあります。

原因として、胃の萎縮性変化や自己免疫性胃炎(悪性貧血)、長期の胃薬使用などが関与していることがあるため、内視鏡や血液検査での評価も行われます。

葉酸欠乏の場合は、妊娠や過度のアルコール摂取、腸疾患による吸収不良などが原因であることがあり、これらの改善と合わせて治療する必要があります。

5.貧血を予防する食事

レバー
貧血の治療には、薬だけでなく毎日の食事が欠かせません。

ここでは、貧血を予防・改善するために知っておきたい食事のルールを解説します。

5−1.貧血に効果的な「鉄分」を多く含む食品

鉄はレバーや牛肉、かつおなど赤身の肉や魚に多く含まれています。

また、卵やあさりなど貝類にも含まれています。

たんぱく質は鉄の吸収を良くするはたらきがあるので、動物性食品をしっかり食べることが大切です。

植物性食品では、大豆やほうれん草などに鉄が多く含まれています。

ただし、植物性食品に含まれる鉄(非ヘム鉄)は吸収率が低いため、動物性食品と組み合わせるなどの工夫が必要です。

たとえば、大豆製品を食べる際には、ビタミンCの多い野菜と一緒に摂ることで吸収率を高められます。

鉄を多く含む食品

かつては「ひじきには鉄が多い」とされていましたが、これは鉄釜で加工されていた時代の話です。

現在ではステンレス釜での製造が主流となっているため、鉄分はそれほど多くありません。

最新の食品成分表では、ひじきに含まれる鉄の量が従来の数値から見直されています。

鉄の摂取源としては、より信頼性の高い食品(赤身肉や貝類など)を中心に取り入れるとよいでしょう。

【参考情報】『文部科学省 食品成分データベース』文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/index.htm

5−2.なぜ肉や魚が大切?「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の吸収率

ヘム鉄と非ヘム鉄
鉄は、主に動物性食品に含まれるヘム鉄と、植物性食品に含まれる非ヘム鉄があります。

鉄の吸収率は、ヘム鉄は約30%、非ヘム鉄は1~5%なので、野菜など植物性食品だけでなく、レバーや牛肉など動物性食品をしっかり食べることが大切です。

ヘム鉄は胃酸の影響を受けにくく、効率よく体内に取り込まれます。

一方、非ヘム鉄の吸収は、食事の内容に大きく左右されるため、ビタミンCや動物性たんぱく質と組み合わせて摂取することが推奨されます。

◆「たんぱく質」について詳しく>>

【参考情報】『Iron | The Nutrition Source』Harvard T.H. Chan School of Public Health
https://www.hsph.harvard.edu/nutritionsource/iron/

5−3.吸収率をUPさせる食べ合わせ・避けるべき飲み物

野菜や果物などに多く含まれるビタミンCや、肉や魚など動物性たんぱく質を一緒に食べることで、鉄の吸収を良くします。

◆「ビタミンCの特徴とはたらき」>>

また、酢や梅干し、香辛料などを用いることで胃酸分泌が高まり、鉄の吸収が良くなります。

一方で、コーヒーや緑茶などに含まれるタンニンは、鉄の吸収を妨げる可能性があるため、食事中の摂取は控える方がよいとされています。

同様に、カルシウムの多い乳製品も鉄の吸収を阻害することがあるため、摂取のタイミングに注意が必要です。

6.おわりに

貧血の原因として大きな病気が隠れていることもあるので、まずは検査を受けて原因を探ることが重要です。 鉄不足が原因の場合には、鉄を多く含む赤身の肉や魚などを積極的に食べ、吸収を助けるたんぱく質やビタミンCも積極的に摂りましょう。

貧血は全身の臓器に影響を及ぼすことがあり、疲労感・冷え性・集中力低下など、さまざまな不調の引き金になります。

そのため、「ただの貧血」と軽視せず、早めの対応が大切です。   「最近疲れやすい」「健康診断で貧血と言われた」など、少しでも気になる症状がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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