血糖値を下げる方法とは?食事・運動・治療の基本を医師が解説

健康診断で血糖値やHbA1cが高いと指摘されると、「何を食べればよいのか」「すぐに血糖値を下げる方法はあるのか」と不安になるかもしれません。
血糖値を整える基本は、必要なエネルギーと栄養バランスを保った食事、無理のない運動、状態に応じた治療です。
ただし、適切な方法は血糖値、体格、使用している薬、合併症などによって異なります。
この記事では、日常生活で意識したい対策と医療機関へ相談する目安を解説します。
1.血糖値が高いときに確認したいこと
血糖値が高いと指摘されたときは、測定したタイミングやHbA1cなどを確認し、自分の数値に合った対策を考えることが大切です。
1−1.血糖値とHbA1cの違い
血糖値は、採血した時点で血液中に含まれているブドウ糖の濃度です。食事の前後、運動、体調、薬などの影響を受けて変動します。
一方、HbA1cは、過去1〜2か月程度の血糖状態を反映する指標です。1回の血糖値だけで糖尿病かどうかを判断するのではなく、血糖値とHbA1c、必要に応じた追加検査を組み合わせて診断します。
健康診断で高値を指摘された場合は、結果をそのままにせず、医療機関へ相談しましょう。
◆「糖尿病の検査でわかる血糖値・HbA1cの見方と受診の目安」>>
1−2.高血糖の原因
血糖値は、すい臓から分泌されるインスリンの量が不足したり、インスリンが効きにくくなったりすると上昇します。
2型糖尿病では、遺伝的な体質に、食生活、運動不足、体重増加などが関係することがあります。
ただし、高血糖の原因は生活習慣だけではありません。自己免疫が関係する1型糖尿病、ほかの病気、妊娠、薬剤などが背景にある場合もあります。
「自分の生活習慣が悪かった」と決めつけず、検査や診察によって原因を確認することが重要です。
1−3.自己判断で急激に下げようとしない
血糖値が高いからといって、食事を極端に減らしたり、急に激しい運動を始めたりすることは避けましょう。糖尿病の薬を使用している方が食事量を大きく減らすと、低血糖を起こす可能性があります。
また、自己判断で薬を増減・中止することも危険です。まずは現在の数値や生活状況を整理し、医師や管理栄養士と相談しながら調整しましょう。
◆「血糖値が高いと言われたら?糖尿病の症状・対策」について>>
2.血糖管理のための食事
糖尿病の食事療法では、特定の食品を禁止するのではなく、適正なエネルギー量と栄養バランスを保つことが基本です。
2−1.主食を極端に減らさない
ごはん、パン、麺類などに含まれる炭水化物は、食後の血糖値に大きく影響します。ただし、糖尿病や糖尿病予備群の方すべてが、まず主食を減らせばよいわけではありません。
日本糖尿病学会のガイドラインでは、2型糖尿病に対する短期間の緩やかな炭水化物制限は、血糖管理に役立つ可能性があるとされています。
一方、総エネルギー量を考えず、炭水化物だけを極端に制限する方法については、長期的な安全性や継続性の根拠が十分ではありません。
主食の適量は、体格、活動量、血糖値、治療内容などによって異なります。主食を完全に抜くのではなく、主食・主菜・副菜を組み合わせ、食事全体を整えましょう。
【参考書籍】『糖尿病診療ガイドライン2024 3章 食事療法』日本糖尿病学会
https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/03_1.pdf
2−2.食物繊維を取り入れる
野菜、海藻、きのこ、大豆製品などに含まれる食物繊維は、消化管での糖の吸収を緩やかにし、食後血糖の上昇を抑えるのに役立つ可能性があります。
食事の最初に野菜や主菜を食べ、主食を後にする方法も、食後血糖の上昇を緩やかにする可能性があります。
ただし、食べる順番を変えるだけで、糖質の摂取量そのものが減るわけではありません。食事全体の量や組み合わせも確認しましょう。
白米に玄米や雑穀を組み合わせる、パンは全粒粉を使ったものを選ぶなど、食物繊維を取り入れやすい主食を選ぶ方法もあります。
2−3.たんぱく質・果物・飲み物
肉、魚、卵、大豆製品などのたんぱく質源は、主菜として適量を取り入れましょう。ただし、「血糖値を上げにくいから」と大量に食べると、エネルギーや脂質の摂り過ぎにつながる場合があります。
腎機能が低下している方は、たんぱく質やカリウムの量について個別の調整が必要になることもあるため、医師や管理栄養士に確認してください。
また、果物には糖質が含まれますが、食物繊維、ビタミン、ミネラルも含まれています。1日80kcal程度を一つの目安として、食事全体に合わせて取り入れましょう。
ジュース、缶詰、ドライフルーツは、生の果物より糖質を摂り過ぎやすいことがあるため、量や栄養成分表示を確認することが大切です。
砂糖を多く含む清涼飲料水は血糖値が上がりやすいため、日常の水分補給には水や無糖のお茶などを選びましょう。
飲酒の可否や適量は、血糖コントロール、使用している薬、肝機能、合併症によって異なります。酒類の種類だけで判断せず、主治医に相談してください。
【参考書籍】『糖尿病の食事のはなし 基本編』糖尿病情報センター|国立健康危機管理研究機構
https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/040/020/02-1.html
3.血糖管理に役立つ運動
運動は、筋肉でブドウ糖が使われることや、インスリンが効きやすくなることを通じて、血糖管理に役立ちます。
3−1. 有酸素運動と筋力運動
ウォーキングなどの有酸素運動は、特別な道具がなくても始めやすい運動です。
一般的には、中等度の有酸素運動を週150分以上、週3回以上に分けて行うことが勧められています。加えて、連続しない日程で週2〜3回の筋力運動を組み合わせる方法があります。
ただし、体力や持病によって適切な運動量は異なります。最初から目標量をこなそうとせず、短時間の散歩や日常生活の中で歩く時間を増やすことから始めましょう。
【参考書籍】『糖尿病を改善するための運動』厚生労働省|健康日本21アクション支援システム
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-05-005
3−2. 運動する時間帯
運動は、基本的には続けやすい時間帯に行います。食後の血糖値が高くなる方では、食後1〜2時間頃の運動が選択肢になることもあります。
一方、1型糖尿病の方、インスリン製剤や低血糖を起こしやすい薬を使用している方は、運動中や運動後に血糖値が下がる場合があります。
空腹時の運動を避ける、必要に応じて運動前後の血糖値を確認するなど、主治医から指示された方法で行いましょう。
3−3. 運動を控えた方がよい場合
著しい高血糖、発熱、脱水、強いだるさなどがある場合は、運動を控えて医療機関へ相談してください。
糖尿病網膜症、腎症、神経障害、心臓病、関節の病気などがある方は、運動を始める前に医学的な確認が必要になる場合があります。
運動中に胸痛、強い息苦しさ、冷や汗、ふらつき、吐き気などが出た場合は、すぐに運動を中止しましょう。症状が強い場合や改善しない場合は、速やかに医療機関へ相談してください。
4.糖尿病の薬物療法
食事や運動だけで十分な血糖管理が難しい場合や、糖尿病の種類・病状によっては、薬物療法が必要です。
4−1.飲み薬と注射薬
糖尿病の薬には、飲み薬と注射薬などがあります。
飲み薬には、インスリンの分泌を促す薬、インスリンを効きやすくする薬、糖の吸収や排泄を調整する薬などがあります。
注射薬には、インスリン製剤やGLP-1受容体作動薬などがあります。1型糖尿病ではインスリン治療が必要です。2型糖尿病でも病状によってインスリン製剤を使用することがあり、GLP-1受容体作動薬は主に2型糖尿病に使われます。
薬は、糖尿病の種類、年齢、血糖値、腎機能、合併症などを踏まえて医師が選択します。
4−2.薬を自己判断で調整しない
糖尿病の薬は、種類によって飲む時間や低血糖の起こりやすさが異なります。食事が取れないときや体調を崩したときも、薬を一律に中止してよいわけではありません。
飲み忘れた場合に2回分をまとめて服用したり、血糖値が高いからと追加で使用したりすることは避けてください。
食事が取れないときの対応や飲み忘れた場合の対処は、薬ごとに医師・薬剤師へ確認しましょう。
【参考情報】『薬で血糖値が下がるしくみ』糖尿病情報センター|国立健康危機管理研究機構
<https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/100/010/01.html
4−3.低血糖が疑われるとき
インスリン製剤、SU薬、グリニド薬などを使用している方は、低血糖に注意が必要です。冷や汗、手の震え、強い空腹感、動悸、集中力の低下などが現れた場合は、可能であれば血糖値を確認します。
意識がはっきりしていて飲み込める場合は、あらかじめ医師から指示された量のブドウ糖を摂取し、15分後を目安に症状や血糖値を再確認しましょう。改善しない場合は、再度対応したうえで医療機関へ連絡します。
識がもうろうとしている、けいれんしている、飲み込めない場合は、誤嚥や窒息の危険があるため、口から飲食物を与えず救急車を要請してください。
【参考情報】『低血糖』糖尿病情報センター|国立健康危機管理研究機構
<https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/040/050/05.html
5.医療機関へ相談する目安
血糖値が高い状態は、自覚症状がほとんどないまま続くことがあります。健康診断で血糖値やHbA1cの高値を指摘された場合は、症状がなくても医療機関へ相談してください。
また、次のような症状がある場合は、早めの受診が必要です。
・強いのどの渇きや頻尿が続く
・食べているのに体重が減る
・強いだるさや脱力感がある
・吐き気、嘔吐、腹痛がある
・息苦しさや意識の変化がある
・低血糖を繰り返している
特に、意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が鈍い、けいれんしている場合は、救急車を要請してください。
妊娠中、小児、高齢者、腎臓病や肝臓病がある方、インスリン製剤などを使用している方は、食事や運動を自己判断で大きく変更せず、主治医と相談しましょう。
6.おわりに
血糖値を整えるには、主食を極端に減らしたり、特定の食品だけを増やしたりするのではなく、適正な食事量と栄養バランスを意識することが大切です。
無理のない運動も血糖管理に役立ちますが、使用している薬や合併症によって注意点が異なります。
すでに糖尿病の薬を使用している方は、自己判断で量を変更したり中止したりしないでください。
健診で血糖値やHbA1cが高いと指摘された場合や、のどの渇き、頻尿、体重減少などが続く場合は、医療機関へご相談ください。
以下のような方は、一度ご相談ください
- 健康診断で数値の異常を指摘された
- 体のだるさや疲れやすさが続いている
- 生活習慣の改善方法を知りたい
- 気になる症状があるが、何科を受診すべきかわからない
気になることがある方は、お気軽にご相談ください。
















