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喘息は遺伝する?遺伝的要因と発症リスクから予防法までを徹底解説

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年01月10日
喘息になりやすい遺伝子はあるのか

「親が喘息だと、子どもも必ず喘息になるのでしょうか?」

喘息の患者さんは、「自分の子どもも喘息になるのでは?」と、心配になることがあるかもしれません。

また、親やきょうだい、祖父母など、家族や親戚に喘息の人が多ければ、「うちは喘息の家系なのだろうか」と、疑わしく思うこともあるでしょう。

結論から申し上げると、喘息そのものが100%遺伝するわけではありません

この記事では、喘息と遺伝の関連について解説します。

自分や家族の健康が気になる方は、ぜひ目を通してください。

1.喘息は遺伝するのか?データで見る発症リスク


「親が喘息だから、子どもも喘息になるのではないか」と心配される方は多くいらっしゃいます。

ここでは、最新の研究データをもとに、喘息の遺伝的な側面と、実際にどのくらいのリスクがあるのかを具体的な数字で解説します。

1−1.遺伝的要因の割合

喘息の発症には、遺伝的要因が50〜60%環境要因が40〜50%関与しています。

これは、遺伝だけでは喘息にならず、環境との相互作用が重要ということです。

【参考情報】”Genetics of asthma: an introduction for the clinician” by National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4629762/

1−2.家族歴と発症リスク

親の喘息の有無により、お子さんの発症リスクは大きく変化します。

両親とも喘息でない場合を基準(1倍)とすると、片親が喘息の場合は3〜5倍両親とも喘息の場合は6〜7倍に発症リスクが高まります。

つまり、両親のどちらかが喘息を罹患している場合、お子さんの喘息有病率は通常の3-5倍になるというデータがあります。

ただし喘息はさまざまな要因で発症する疾患であり、親が喘息でも必ずしもお子さんが発症するわけではありません。

遺伝的な要因を持っていても、環境を整えることで予防できる可能性があります

1−3.重要なポイント

・親が喘息でも子どもが必ず発症するわけではない
・遺伝的体質があっても環境次第で予防可能
・早期発見・早期治療で症状コントロール可能

喘息は「遺伝因子」と「環境因子」の複雑な相互作用で発症するといわれています。

遺伝の影響があっても、生まれた後の環境にも左右されるため、必ず発症するとは限りません。

万が一発症しても、現在は治療が進歩し、重症化しなければ普段通りの生活が可能です。

◆「小児喘息」について詳しく>>

【参考情報】『Q4.ぜん息は遺伝しますか。』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/50/feature/feature04.html

2.病気の遺伝とその仕組み

喘息は遺伝要因と環境要因がある
「親が喘息だから、子どもも喘息になるのではないか」と心配される方は

喘息がなぜ遺伝するのかを理解するために、まず病気の遺伝の基本的な仕組みを知っておきましょう。

遺伝する病気には、大きく分けて以下の2種類があります。

・単一遺伝子疾患:特定の遺伝子がひとつあるだけで発症する病気
・多因子疾患:複数の遺伝子、さらに生活習慣や環境が作用して発症する病気

2−1.単一遺伝子疾患

単一遺伝子疾患
この場合は、特定のひとつの遺伝子に問題があると、高い確率で疾患が発症します。

これらの疾患は、特定の遺伝子の変異が直接的に病気の原因となるため、親から子へ高い確率で遺伝します。

代表的な例として、フェニルケトン尿症筋緊張性ジストロフィーが挙げられます。

【参考情報】『フェニルケトン尿症(指定難病240)』難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4747

2−2.多因子疾患


単一遺伝子疾患とは異なり、遺伝的要因だけでなく、生活習慣や普段の行動、環境などの外的要因も大きく影響します。

そのため家族内での発症パターンも複雑で予測するのが難しいのが特徴です。

糖尿病リウマチなどのほか、喘息も多因子疾患のひとつと考えられています。

多因子疾患は、ひとつの遺伝子があれば発症する単一遺伝子疾患とは違い、病気を引き起こす要因となる遺伝子を持っていても、その他の条件がそろわないと症状が現れません。

例えば、同じ遺伝子を持つ一卵性双生児の場合、単一遺伝子疾患なら二人とも発症しますが、多因子疾患の場合は、一人が病気になっても、もう一人は病気にならないことがあります。

喘息は多因子疾患なので、親から喘息に関係する遺伝子を受け継いだ子どもが発症する確率は、100%ではありません。

しかし、喘息になりやすい「体質」は遺伝する可能性があります。

また、一緒に暮らしている家族は同じ環境にいるので、生活の中で受ける影響も似通ってきます。

【参考情報】”Does Asthma Run in the Family?” by GAAPP(Global Allergy & Airways Patient Platform)
https://gaapp.org/is-asthma-genetic/

3.アレルギーと遺伝

喘息を理解する上で、アレルギーとの関係は非常に重要です。

ここでは、アレルギー体質がどのように遺伝し、喘息の発症にどう関わっているのかを詳しく見ていきましょう。

3−1.アレルギー反応について

喘息とアレルギーには密接な関係があります。

喘息患者の約70%はアレルギー体質を持っており、アレルギー体質の遺伝が喘息発症リスクと強く関連しています。

私たちの体には、細菌やウイルスなどの異物などから身を守るため、「免疫」という仕組みが備わっています。

この免疫の働きが、何らかの原因により過剰になり、体に害のないものまで攻撃してしまうことがあります。

すると、咳やくしゃみ、発疹などのアレルギー反応が起こります。

◆「喘息とアレルギーの密接な関係」について詳しく>>

3−2.アレルギー体質の遺伝パターン

アレルギー体質がどのくらいの確率で子どもに遺伝するかは、両親の状態によって異なります。

両親ともアレルギーがない場合、お子さんがアレルギー体質を持つ確率は約10-15%です。

片親がアレルギー体質の場合は約30-40%に上昇し、両親ともアレルギー体質の場合は約50-70%まで高まります。

3−3.アレルギーが原因となる病気

アレルギーによる病気には、食物アレルギーアトピー性皮膚炎花粉症などがありますが、喘息もアレルギーが原因で発症することがあります。

また、食物アレルギーの人が喘息になったり、アトピー性皮膚炎がよくなったと思ったら次は喘息になるなど、アレルギーを起こしやすい体質の人は、複数のアレルギー性疾患にかかることも多いです。

◆「アレルギー」について詳しく>>

4.遺伝と環境の相互作用

喘息には遺伝的は要因もあるが、環境によっては発症しないこともある例
これまで見てきたように、喘息には遺伝的な要因が関わっています。

しかし、遺伝だけで喘息が発症するわけではありません。

ここでは、遺伝と環境がどのように影響し合って喘息の発症に関わるのかを解説します。

4−1.環境要因が発症を左右する

喘息になりやすい体質を持っていても、発症する人としない人がいます。

それは、生まれてから現在まで生きてきた環境が、人それぞれであることも原因となります。

例えば、ダニが多い環境で暮らしている人と、少ない環境で暮らしている人では、同じ体質でも前者の方がリスクは高いといえます。

ですから、アレルギーの素因となる遺伝子がある人も、環境によっては、喘息とは無縁の一生を送ることがあり得ます。

最新の研究では、喘息の遺伝的寄与率はおよそ50〜60%と推定されており、親のどちらかが喘息の場合、子どもの発症リスクは約3〜5倍に高まると報告されています。

ただし残りの40%以上は環境要因によるもので、ウイルス感染症や生活環境の影響が発症の大きな引き金となります。

4−2.喘息に影響を与える環境要因

喘息の発症や悪化に関わる主な環境要因には、以下のようなものがあります。

・大気汚染
工場や自動車からの排気ガスなどは呼吸に負担をかけます。とくに都市部では、空気が悪い日は外出を控えましょう。

・受動喫煙
たばこの煙は気管を刺激し、喘息を悪化させます。お子さまへの影響も大きいため、家庭では禁煙・分煙が重要です。

・ハウスダスト(ダニ、カビなど)
ほこりやダニ、カビは喘息の原因になります。湿度管理とこまめな掃除でリスクを減らせます。

・ペットの毛
動物アレルギーがある場合、ペットの毛が症状を引き起こすことがあります。飼育時は清掃を徹底しましょう。

・ウイルス感染
乳幼児期の呼吸器感染は、将来の喘息リスクを高めることがあります。感染予防と早めの治療が大切です。

喘息に関係する遺伝子については研究が続けられ、これから新しい発見があるかもしれません。

ただ、遺伝だけで発症することはないので、アレルゲンなど生活の中にあるリスクを、できるだけ減らす対策も重要です。

5.遺伝リスクがある方への予防法

家族に喘息の方がいて、遺伝的なリスクが気になる場合でも、日常生活での工夫によって発症を予防したり、症状を軽減したりすることができます。

ここでは、今日から実践できる具体的な対策をご紹介します。

5−1.こまめな掃除でアレルゲンを減らす

ダニやハウスダストを減らすために、週に1〜2回は掃除機や拭き掃除を行うのが理想です。

とくに、布団やベッド、ソファなど長時間過ごす場所は重点的に掃除しましょう。

掃除機をかけるときは、できればHEPAフィルター付きのものを使用すると効果的です。

HEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air filter)は、微細な粒子を高い精度で捕える空気清浄用のフィルターです。

カーテンやカーペットもアレルゲンのたまり場なので、定期的に洗濯するとよいでしょう。

5−2.部屋の換気と湿度管理

カビの発生を防ぐために、日常的な換気を心がけましょう。

とくに、湿気がこもりやすい浴室やキッチンは、こまめに窓を開けたり換気扇を使ったりなどして空気の入れ替えを行ってください。

換気扇の使用も効果的ですが、定期的な清掃も忘れずに行いましょう。

雨の日や湿気が多い時期は除湿機を使うのもおすすめです。

5−3.寝具の管理

布団やシーツにはダニが潜みやすいため、定期的に日光に当てて乾燥させることが大切です。

天気が悪い日が続く場合は、布団乾燥機の使用も効果的です。

防ダニカバーを使用することで、アレルゲンの影響を減らすことができます。

シーツやカバーも週に1度は洗濯し、できれば高温で乾かすとダニの繁殖を抑えられます。

5−4.ペット飼育時の注意点

動物アレルギーがある場合は、できるだけ室内でペットを飼うことは避けましょう。

しかし、すでにペットを飼っている場合は、ペットとの接触後に手洗いをするなどの対策が必要です。

ブラッシングは屋外で行うようにし、室内に毛がたまらないようにしましょう。

ペットの寝床や使うタオルなどもこまめに洗濯してください。

◆「喘息でもペットを飼いたい人の対策」について>>

5−5.その他の生活上の工夫

・食事に工夫を取り入れる
食物アレルギーがある場合は、該当する食品を避けるだけでなく、安全な代替食品を取り入れましょう。
アレルギー食品を誤って摂取しないように、食品の成分表示を必ず確認しましょう。

・花粉の季節の対策
花粉症のある方は、花粉の多い季節に外出時はマスクや眼鏡を着用し、できるだけ花粉を吸い込まないように心がけましょう。帰宅後は、玄関で衣服を払い、顔や手を洗うことを習慣にするのがおすすめです。 室内に花粉を持ち込まないために、換気のタイミングを工夫し、花粉の少ない時間帯に行うとよいでしょう。

◆「アレルゲンを避ける・減らす対策」についてさらに詳しく≫

【参考情報】『室内のアレルゲン対策について』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/measures/indoor.html

6.喘息と遺伝に関するよくある疑問

Q1: 親が喘息だと、子どもも必ず喘息になりますか?
いいえ、必ずしもそうではありません。アレルギー体質は遺伝しやすいですが、親が喘息でも子どもは別のアレルギー疾患(アトピー性皮膚炎や花粉症など)を発症することもあります。これを「アレルギーマーチ」と呼びます。

◆「喘息とアトピー、アレルギーの関係」について>>

【参考情報】『アレルギーについて』国立成育医療研究センター
https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/allergy/about_allergy.html

Q2. 両親とも喘息がない場合、子どもは喘息にならないのですか?
いいえ、両親に喘息がなくても子どもが喘息を発症することはあります。祖父母などの家族歴や、環境要因(ハウスダスト、受動喫煙、大気汚染など)が影響する場合もあります。遺伝だけでなく、生活環境も重要な要因です。

Q3. 喘息の遺伝子検査で発症リスクはわかりますか?
現在、喘息に関連する遺伝子はいくつか特定されていますが、喘息は多因子疾患であり、単一の遺伝子検査だけで発症を正確に予測することは困難です。家族歴や症状の観察、環境要因の管理が、より実践的な予防法となります。

7.おわりに

咳や息苦しさが2週間以上続く場合は、早めに呼吸器内科を受診することをすすめる様子
喘息は「遺伝」と「環境」が関係する病気で、親が喘息でも必ず発症するわけではありません。

遺伝の影響は約50~60%で、生活環境を整えることで予防できる可能性があります。

もし、喘息になっても、早い時期から適切な治療を受ければ、健康な人と変わらない生活を送ることができます。

特に小児喘息は、大人になるにつれほとんど症状が出なくなることが多いので、咳や息苦しさが2週間以上続く場合は、早めに呼吸器内科を受診しましょう。

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