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睡眠時無呼吸症候群で尿酸値が上がる?痛風との意外な関係とは

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2023年04月04日

睡眠時無呼吸症候群によって、寝ている間に体内の酸素が不足する状態が続くと、血中の尿酸値が上がって痛風になる恐れがあります。

これら二つの病気の患者さんには共通点が多く、「睡眠時無呼吸症候群の治療によって、痛風の症状が改善した」という研究結果も出ています。

この記事では、睡眠時無呼吸症候群と痛風の関連性について解説します。尿酸値が高いと指摘された方や、体重の増加が気になる方は、ぜひ読んでください。

1.睡眠時無呼吸症候群とは


睡眠時無呼吸症候群とは、就寝中に呼吸が止まってしまうことを繰り返す病気です。睡眠の質が低下するため、日中の眠気や疲労感、起床時の頭痛といった症状が現れます。

また、呼吸が止まることによって体が低酸素状態になるため、高血圧や脳血管疾患、心疾患などの合併症を起こす危険性が高くなります。

この病気は、空気の通り道である気道が何らかの原因で塞がることによって起こる閉塞型(OSAS)と、心不全や脳卒中などの患者さんに見られる中枢型(CSAS)に分かれます。

患者さんのほとんどは閉塞型で、肥満で首周りの脂肪が多い人、扁桃腺や舌が大きい人、顎が小さい人に起こりやすい傾向があります。

睡眠時無呼吸症候群は、居眠り運転による事故や、仕事中の居眠りによる社会的信用の低下にもつながるため、早期の診断と治療が必要な病気です。

◆「睡眠時無呼吸症候群」についてもっと詳しく>>

2.痛風とは

痛風とは、関節内に尿酸が溜まって炎症を起こし、激痛を伴う赤みや腫れが生じる病気です。

尿酸とは、細胞の核に含まれるプリン体が、体内で分解されるときに産生される成分です。

この尿酸が、何らかの原因で過剰に産生されたり、体外に排泄されにくくなると、血中に溜まって高尿酸血症を引き起こします。

高尿酸血症になると、尿酸が体のさまざまな場所で炎症を起こすため、尿管結石や腎結石といった病気の原因にもなります。

血液検査で尿酸値が高いと指摘されたら、自覚症状がなくても、早めに対策を取りましょう。

【参考情報】
・『痛風』日本整形外科学会 
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/gout.html

・『高尿酸血症』eーヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-027.html

3.睡眠時無呼吸症候群と痛風の関係


まったく違うように見える二つの病気ですが、近年研究によってその関連性がわかってきました。

激しい運動などで体に酸素が足りなくなると、エネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)の分解が進み、尿酸の産生量が増加します。

睡眠時無呼吸症候群の患者さんも同様に、就寝中に低酸素状態が続くことで尿酸の産生が進み、血中尿酸値の増加と、それに伴う痛風を引き起こす危険性が考えられるのです。

◆「酸素不足が招く症状」とは?>>

また、痛風の患者さんには内臓型肥満の人が多いため、体型的に閉塞性睡眠時無呼吸症候群を起こすリスクが高いとも言われています。

【参考情報】
・『睡眠時無呼吸症候群と痛風、高尿酸血症』痛風と核酸代謝 2012年36巻2号 p. 145-146
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gnam/36/2/36_145/_pdf

・『睡眠時無呼吸症候群患者における尿酸代謝』痛風と核酸代謝 2018年42巻2号 p. 143-146
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gnam/42/2/42_143/_pdf/-char/ja

4.睡眠時無呼吸症候群と痛風の患者さんの共通点

睡眠時無呼吸症候群と痛風の患者さんには、生活習慣や健康状態において、以下のような共通点が見られます。

 ・男性の患者さんが多く、女性では閉経後に増加する
 ・体重やBMIが基準値以上である
 ・首周りの脂肪の蓄積により、首周囲径が太い
 ・血圧や空腹時の血糖値が高い
 ・LDLコレステロールが高く、HDLコレステロールが低い

睡眠時無呼吸症候群は、肥満の男性に多い傾向があります。男性は太ると上半身に脂肪がつきやすく、首周りにも脂肪がつきやすいからです。

一方女性では、女性ホルモンが減少する閉経後から肥満の人が増加する傾向にあり、それに伴い睡眠時無呼吸症候群の患者さんも増えてきます。

痛風も同様に、肥満のある男性に多く、女性では閉経後に患者数がやや増加する傾向にあります。また、痛風の患者さんには、睡眠時無呼吸症候群とメタボリックシンドロームを合併している人が多いことがわかっています。

メタボリックシンドロームとは、腹部の内臓周囲に脂肪が過剰に蓄積している内臓型肥満に、高血圧や高血糖、脂質異常症をあわせもった状態のことです。

ウエスト周囲径が男性85cm以上、女性90cm以上であると同時に、血圧と血糖値、血中脂質のうち2つ以上が基準値外の場合に、メタボリックシンドロームと診断されます。

【参考情報】『メタボリックシンドロームの診断基準』e-ヘルスネット|厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-01-003.html

メタボリックシンドロームは、動脈硬化が進み、脳血管疾患や循環器疾患などを起こしやすい状態であるため、早急な生活習慣の見直しが必要です。

睡眠時無呼吸症候群や痛風に対しても、食習慣を整えたり減量したりすることで、症状の改善が期待できます。

◆「肥満を改善する食事」について>>

5.おわりに

睡眠時無呼吸症候群と痛風を併発している患者さんに対して、経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)による治療をした結果、血清尿酸値の低下と痛風発作の消失が見られ、尿酸降下薬を減量できたという症例もあります。

また、CPAP治療により、高血圧や代謝異常が軽減されたという報告もあります。

【参考情報】『CPAP for the Metabolic Syndrome in Patients with Obstructive Sleep Apnea』The New England Journal of Medicine
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmoa1103944

睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、痛風以外にもさまざまな病気を併発している可能性があります。

当院では、睡眠時無呼吸症候群に対する治療だけではなく、生活習慣病の診療も行っていますので、お気軽にご相談ください。

◆「当院の睡眠時無呼吸症候群の治療について」>>

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