ブログカテゴリ
外来

睡眠時無呼吸症候群を放っておくと、脳梗塞のリスクが3.3倍に!

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2022年08月23日

睡眠時無呼吸症候群の人は、脳梗塞を発症するリスクが高いことがわかっています。

一方で、脳梗塞が睡眠中の呼吸に悪影響を与えるという研究もあります。

この記事では、睡眠時無呼吸症候群と脳梗塞の関連を説明し、睡眠時無呼吸症候群の治療によって脳梗塞のリスクが低下する可能性について述べます。

1.睡眠時無呼吸症候群とはどんな病気か

睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に無呼吸や低呼吸を繰り返すことで、起床後の頭痛や倦怠感、日中の眠気など、さまざまな不調を引き起こす病気です。

この病気は、肥満などが原因で気道が狭くなったことで起こる「閉塞型」と、脳や神経、心臓の病気が原因で起こる「中枢型」の2つに分けられますが、ほとんどの患者さんは閉塞型です。

閉塞型の治療には、CPAP(シーパップ)という器具やマウスピースなどを用いて睡眠中の呼吸をサポートします。

◆「睡眠時無呼吸症候群の治療で使う「CPAP」とは?」>>

中枢型は、呼吸障害の原因となっている病気の治療を行うとともに、CPAPやASVという装置を用いることがあります。

◆「睡眠時無呼吸症候群の治療に使う「ASV」とは?」>>

2.睡眠時無呼吸症候群が引き起こす恐ろしい病気とは

昼間の眠気や倦怠感も悩ましい症状ではありますが、睡眠時無呼吸症候群の本当の恐ろしさは、命にかかわる合併症を引き起こす点にあります。

睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、無呼吸になるたびに、体内に十分な酸素が取り込めなくなってしまうため、血液中の酸素量が減ってしまいます。

すると、心臓が足りない酸素を補おうとして強く働くため血圧が高くなり、血管に負荷がかかります。そのため、脳梗塞や心筋梗塞など心血管疾患のリスクが高くなります。

睡眠時無呼吸症候群の人が、寝ている間の無呼吸が原因で命を落とすことはありません。しかし、治療せずにいるといつの間にか動脈硬化が進み、就寝中に動脈が詰まって脳や心臓に血液が届かなくなり、最悪の場合、死亡することはあります。

◆「睡眠時無呼吸症候群による酸素不足が招く症状とは?」>>

3.睡眠時無呼吸症候群と脳梗塞の関係とは

閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者さんについて調べた研究によれば、重症の人は脳血管が詰まる脳梗塞や、脳血管が破れる脳出血のリスクが、健康な人の3.3倍になることがわかっています。

【参考情報】『Obstructive Sleep Apnea as a Risk Factor for Stroke and Death』The New England Journal of Medicine
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmoa043104

脳梗塞が起こると、「手足がしびれて力が入らない」「言葉がうまく話せない」「ものの見え方がいつもと違う」などの症状が突然現れます。

これらの症状に気づき、発症から4時間半以内に病院で専門的な治療を受けることができれば症状が改善し、予後も良好な可能性が高くなります。

しかし、寝ている間に脳梗塞になった場合、すぐに症状に気づいて適切な判断をすることは難しく、治療が遅れがちです。

【参考情報】『血栓溶解療法』e-ヘルスネット |厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-096.html

4.脳梗塞が睡眠中の呼吸異常を引き起こす

一方、脳梗塞によって睡眠呼吸障害が引き起こされたり、顕在化する可能性も示唆されています。

4−1.睡眠呼吸障害とは

睡眠呼吸障害とは、就寝中に起こる呼吸異常の総称です。睡眠時無呼吸症候群のほか、睡眠関連低換気障害群、睡眠関連低酸素血障害などがあります。

4−2.脳梗塞は睡眠呼吸障害を併発しやすい

脳梗塞や脳出血を起こした人は、高い割合で睡眠呼吸障害を併発することがわかっています。

脳梗塞や脳出血を起こすと、脳が一時的に低酸素状態になったり、呼吸中枢が障害され、中枢性睡眠時無呼吸症候群でみられる「チェーンストークス呼吸」という呼吸の乱れが現れることがあります。

また、脳梗塞や脳出血の患者さんを対象にした調査研究によれば、発症後24時間以内の患者さんのうち、およそ9割の人に睡眠呼吸障害がみられたという結果が出ています。

同研究では、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった血管系危険因子が3つ以上ある人は、睡眠呼吸障害が重症化しやすいということもわかっています。

【参考情報】『脳血管障害における睡眠呼吸障害に関する検討』脳卒中33巻5号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/33/5/33_5_488/_pdf/-char/ja

5.睡眠時無呼吸症候群の治療で脳梗塞のリスクが低下


睡眠時無呼吸症候群に対する治療の一つであるCPAP療法には、降圧効果があります。重症の睡眠呼吸障害に対しては、CPAP療法が脳梗塞や心筋梗塞といった血管系の病気にかかるリスクを減らして、生存率を高めることもわかっています。

【参考情報】『Continuous positive airway pressure treatment reduces mortality in patients with ischemic stroke and obstructive sleep apnea: a 5-year follow-up study』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19406983/

また、睡眠時無呼吸症候群と脳梗塞には共通する危険因子が多いため、減量や禁煙といった生活習慣の改善によって、これら2つの病気になるリスクを減らす効果も期待できるでしょう。

6.おわりに

「昼間の眠気がひどい」「毎日のようにいびきをかく」など、睡眠時無呼吸症候群のサインに気づいたら、早めに病院を受診して治療を開始しましょう。

治療により睡眠中の呼吸が改善されると、心血管疾患のリスクが健康な人と同じくらいになります。

また、脳梗塞や脳出血の後に、睡眠時無呼吸症候群のような症状が出ている人も、医師に相談してください。CPAPやASVを用いることで、症状が改善する可能性があります。

◆当院の睡眠時無呼吸症候群の治療について>>

電話番号のご案内
電話番号のご案内
横浜市南区六ツ川1-81 FHCビル2階