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睡眠時無呼吸症候群を放っておくと、脳梗塞のリスクが3.3倍に!

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年05月29日

睡眠時無呼吸症候群の人は、脳梗塞を発症するリスクが高いことがわかっています。

一方で、脳梗塞が睡眠中の呼吸に悪影響を与えるという研究もあります。

この記事では、睡眠時無呼吸症候群と脳梗塞の関連を説明し、睡眠時無呼吸症候群の治療によって脳梗塞のリスクが低下する可能性について述べます。

1.睡眠時無呼吸症候群とはどんな病気か


睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に呼吸が繰り返し止まってしまう病気です。一般的には、10秒以上の呼吸停止が一晩に何度も起こる状態を指します。

主な原因は、睡眠中に喉の筋肉がゆるんで気道が塞がれることです。肥満や顎の形、扁桃腺の大きさなどが発症に関係しているとされています。

自覚症状として多いのが、大きないびきや日中の強い眠気、起床時の頭痛などです。本人は気づきにくく、家族や同居人に指摘されて初めて気づくケースも少なくありません。

一見「眠りが浅い」だけの問題に思われがちですが、睡眠中に何度も酸素不足に陥ることで、高血圧や糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞などのリスクを高めることがわかっています。そのため、早めの診断と治療が重要です。

◆「睡眠時無呼吸症候群」についてもっとくわしく>>

2.脳梗塞とはどんな病気か


脳梗塞により血管が詰まると、脳のさまざまな機能に障害が引き起こされます。

2-1.脳梗塞の症状

脳細胞は、血液から酸素や栄養を受け取ることで正常に働いています。しかし、血流が途絶えると脳細胞は障害を受け、時間が経つにつれて壊死してしまいます。

脳は、体を動かす、話す、考える、記憶するといった重要な役割を担っているため、脳梗塞が起こると以下のような症状が現れます。


 ・片側の手足や顔の麻痺

 ・ろれつが回らない

 ・言葉が出にくい

 ・他人の話が理解しにくい

 ・視野が欠ける

 ・めまい

 ・ふらつき

脳梗塞は、発症から4時間半以内に病院で専門的な治療を受けることができれば症状が改善し、予後も良好な可能性が高くなります。

しかし、寝ている間に脳梗塞になった場合、すぐに症状に気づいて適切な判断をすることは難しく、治療が遅れがちです。

【参考情報】『Cerebral Infarct Growth: Pathophysiology, Pragmatic Assessment, and Clinical Implications』Stroke AHA/ASA
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/STROKEAHA.124.049013

2-2.動脈硬化や不整脈との関係

脳梗塞は、動脈硬化や高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病と深く関係しています。

◆「脂質異常症」とはどんな病気?>>

また、不整脈の一種である心房細動によって心臓内にできた血栓が脳へ流れ込み、血管を塞ぐタイプの脳梗塞もあります。

【参考情報】『心房細動』日本循環器協会
https://j-circ-assoc.or.jp/learn/55/

特に、睡眠時無呼吸症候群は、高血圧や動脈硬化、心房細動などを引き起こしやすく、結果として脳梗塞リスクを高めることが知られています。

脳梗塞は命に関わるだけでなく、麻痺や言語障害などの後遺症が残ることもあるため、危険因子を早めに見つけて対策することが重要です。

3.睡眠時無呼吸症候群は脳梗塞リスクを高める


閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者さんについて調べた研究によれば、重症の人は脳血管が詰まる脳梗塞や、脳血管が破れる脳出血のリスクが、健康な人の3.3倍になることがわかっています。

【参考情報】『Obstructive Sleep Apnea as a Risk Factor for Stroke and Death』The New England Journal of Medicine
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmoa043104

睡眠時無呼吸症候群により、寝ている間に呼吸が止まると、体内の酸素が不足します。すると、脳や心臓に十分な酸素を送ろうとして交感神経が活性化し、血圧や心拍数が急激に上昇します。

本来、睡眠中は血圧が下がって体を休ませる時間ですが、睡眠時無呼吸症候群では無呼吸のたびに血圧が乱高下する状態が繰り返されます。この負担が血管を傷つけ、動脈硬化を進行させる原因になると考えられています。

さらに、睡眠の質が低下することで慢性的な疲労や日中の眠気が起こり、生活習慣の乱れや肥満につながることもあります。肥満は睡眠時無呼吸症候群を悪化させるだけでなく、脳梗塞の危険因子でもあるため、悪循環に陥りやすくなります。

◆「睡眠時無呼吸症候群は減量で改善する?」>>

このように、睡眠時無呼吸症候群は単なる睡眠の問題ではなく、血管や循環器系にも大きな負担をかける病気です。放置すると脳梗塞のリスクを高める可能性があるため、強いいびきや日中の強い眠気、睡眠中の無呼吸を指摘されたことがある方は、早めに医療機関へ相談することが大切です。

4.脳梗塞が睡眠中の呼吸異常を引き起こす

一方、脳梗塞によって睡眠呼吸障害が引き起こされたり、顕在化する可能性も示唆されています。

4-1.脳卒中後は睡眠呼吸障害を併発しやすい

脳梗塞や脳出血を発症した方では、高い割合で睡眠中の呼吸異常がみられることがわかっています。

脳卒中患者を対象とした研究では、発症後24時間以内の患者さんのおよそ9割に睡眠呼吸障害が認められたという報告もあります。睡眠呼吸障害はその後の回復や全身状態にも影響を与える可能性があるため、注意が必要です。

【参考情報】『Sleep-disordered breathing following acute stroke』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12391386/

4-2.呼吸中枢の障害によって呼吸異常が起こることがある

脳梗塞や脳出血を起こすと、脳が一時的な低酸素状態になったり、呼吸をコントロールする呼吸中枢が障害されたりすることがあります。

その結果、中枢性睡眠時無呼吸症候群でみられる「チェーンストークス呼吸」と呼ばれる特徴的な呼吸異常が現れることがあります。

【参考情報】『チェーン・ストークス呼吸』日本救急医学会
https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0117.html

チェーンストークス呼吸では、呼吸が徐々に深く速くなり、その後次第に浅く弱くなって最終的に一時的な無呼吸になる、という周期を繰り返します。

また、脳卒中後は舌や喉まわりの筋力が低下することで空気の通り道が狭くなり、閉塞性睡眠時無呼吸が悪化するケースもあります。

4-3.生活習慣病が重なると重症化しやすい

高血圧、糖尿病、脂質異常症といった血管系の危険因子を3つ以上持つ方では、睡眠呼吸障害がより重症化しやすいことも報告されています。

◆「睡眠時無呼吸症候群と血圧」の関係>>

これらの病気は動脈硬化を進行させるだけでなく、睡眠時無呼吸症候群とも深く関係しています。さらに、睡眠呼吸障害による低酸素状態や血圧の変動は脳や心臓への負担を増やし、脳卒中の再発リスクにもつながる可能性があります。

脳卒中後に強いいびき、睡眠中の無呼吸、日中の強い眠気、起床時の頭痛などがみられる場合は、早めに睡眠呼吸障害の検査を受けることが重要です。

【参考情報】『脳血管障害における睡眠呼吸障害に関する検討』脳卒中33巻5号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/33/5/33_5_488/_pdf/-char/ja

5.睡眠時無呼吸症候群の治療で脳梗塞のリスクが低下


睡眠時無呼吸症候群を放置すると、脳梗塞や心筋梗塞といった深刻な病気を引き起こすリスクがあります。

しかし、CPAP療法や生活習慣の見直しで適切に対処すれば、血管や脳へのダメージを抑えることにつながります。

5-1.CPAP療法は血圧を下げる効果が期待できる

睡眠時無呼吸症候群の代表的な治療法のひとつが、CPAP(シーパップ)療法です。

睡眠中に鼻へ空気を送り込んで気道が塞がらないようにする治療法で、中等症から重症の睡眠時無呼吸症候群に広く用いられています。

睡眠時無呼吸症候群では、無呼吸のたびに低酸素状態と血圧上昇が繰り返されるため、血管や心臓に大きな負担がかかりますが、CPAP療法によって睡眠中の無呼吸が改善すると、交感神経の過剰な活性化が抑えられ、血圧を下げる効果が期待できます。

特に、夜間高血圧や早朝高血圧がみられる方では、CPAP療法によって血圧のコントロールが改善することがあります。

◆「CPAP」についてくわしく>>

5-2.脳梗塞や心筋梗塞のリスク低下につながる可能性がある

高血圧は脳梗塞の大きな危険因子であるため、睡眠時無呼吸症候群を適切に治療することは、脳や心臓の血管を守ることにもつながります。

重症の睡眠呼吸障害に対してCPAP療法を継続することで、脳梗塞や心筋梗塞などの発症リスクが低下し、生存率が改善する可能性があることも報告されています。

また、CPAP療法によって睡眠の質が改善すると、日中の強い眠気や倦怠感が軽減されることがあります。活動量が増えたり生活リズムが整ったりすることで、全身状態の改善にもつながると期待されています。

ただし、自己判断で使用を中断したり装着時間が短かったりすると、十分な効果が得られないことがあります。症状が改善したように感じても、継続して治療を受けることが大切です。

5-3.生活習慣の改善も重要

睡眠時無呼吸症候群と脳梗塞には、肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙・過度の飲酒など、共通する危険因子が多くあります。そのため、CPAP療法と並行して生活習慣を見直すことも重要です。

特に、減量によって首まわりや気道周辺の脂肪が減少すると、無呼吸そのものが改善することがあります。禁煙は動脈硬化や血管障害の進行を抑えるだけでなく、気道の炎症軽減にもつながります。また、適度な運動や食生活の見直しによって血圧・血糖値・脂質が改善すれば、脳梗塞の予防効果も期待できます。

睡眠時無呼吸症候群は、単なる「いびき」の問題ではありません。適切な治療と生活改善を続けることが、脳梗塞をはじめとする重大な合併症のリスクを下げることにつながります。

【参考情報】『Continuous positive airway pressure treatment reduces mortality in patients with ischemic stroke and obstructive sleep apnea: a 5-year follow-up study』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19406983/

6.おわりに

「昼間の眠気がひどい」「毎日のようにいびきをかく」など、睡眠時無呼吸症候群のサインに気づいたら、早めに病院を受診して治療を開始しましょう。

治療により睡眠中の呼吸が改善されると、心血管疾患のリスクが健康な人と同じくらいになります。

また、脳梗塞や脳出血の後に、睡眠時無呼吸症候群のような症状が出ている人も、医師に相談してください。CPAPやASVを用いることで、症状が改善する可能性があります。

◆当院の睡眠時無呼吸症候群の治療について>>

以下の症状がある方は、早めの受診をおすすめします

  • 咳が2週間以上続いている
  • 息切れや息苦しさを感じることがある
  • 痰がからんで気になる
  • 健康診断で肺や呼吸の異常を指摘された
  • 市販薬を飲んでも症状が改善しない

当てはまる項目がある方は、呼吸器専門医に相談してみませんか?

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