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急にいびきをかくようになった原因と対処法

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年02月09日

これまでほとんどなかったのに、急にいびきをかくようになった場合、単なる生活習慣の影響だけでなく、体調不良や病気のサインの可能性もあります。

この記事では、急ないびきの原因や病院を受診する目安、救急対応が必要なサイン、自宅でできる対策まで、わかりやすく解説します。

また、自分や家族の状態に当てはめて理解できるように、年代や性別によるリスクや注意点も整理しています。

1.急にいびきをかくようになったときに考えられる原因


突然いびきをかくようになった場合、飲酒などによる一時的な影響もあれば、加齢などによる体の変化が背景にある可能性もあります。

1-1.体重の増加

急にいびきをかくようになったと感じる原因のひとつに、体重の増加があります。特に、首や顎のまわりに脂肪がつくと気道が狭くなり、空気の通りが悪くなることでいびきが発生しやすくなります。

中でも、短期間で体重が増えた場合や内臓脂肪が増えた場合は、寝ているときに喉の筋肉が圧迫されやすく、急にいびきが始まることがあります。

◆「いびきの原因は肥満?」>>

1-2.睡眠不足

睡眠不足が続くと、喉や舌の筋肉が疲れて緩みやすくなり、気道が狭くなることでいびきが発生しやすくなります。

特に、連日寝不足が続いた場合や不規則な生活リズムを送っている場合は、普段いびきをかかない人でも急にいびきをかくことがあります。

1-3.過労やストレス

疲労やストレスが蓄積すると自律神経のバランスが乱れ、睡眠中に喉や舌の筋肉が必要以上に緩みやすくなります。その結果、気道が狭くなり、これまでなかったいびきが急に現れることがあります。

また、過労やストレスは睡眠の質を低下させ、浅い眠りや中途覚醒を増やします。すると、呼吸が不安定になりやすいため、いびきが強くなったり、長時間続いたりすることもあります。

1-4.飲酒

アルコールを摂取すると喉の筋肉や舌の筋肉が緩みやすくなり、気道が狭くなることでいびきが発生しやすくなります。特に寝る前の飲酒は影響が大きく、普段はほとんどいびきをかかない人でも急にいびきをかくことがあります。

また、アルコールは睡眠の質を低下させ、浅い眠りや中途覚醒を増やすため、自分では十分に眠っているつもりでも実際は熟睡できず、結果として睡眠不足に陥ることがあります。

【参考情報】『The Impact of Alcohol on Breathing Parameters during Sleep: A Systematic Review and Meta-analysis』National Library of Medicine
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8520474/

1-5.薬の影響

一部の睡眠薬や鎮静薬は、脳の働きを抑えて眠りやすくする作用があります。その影響で、眠っている間に喉や舌を支える筋肉の緊張が弱まりやすくなります。

すると、空気の通り道が狭くなり、いびきが出やすくなったり、呼吸が浅く不安定になったりすることがあります。

睡眠薬を服用していていびきが気になる場合は、いびきが出にくいタイプの薬に変更できないか、医師に相談してみましょう。

1-6.鼻づまりや扁桃腺の腫れ

鼻炎や花粉症などで鼻が詰まると、鼻の通りが悪くなることで口呼吸になりやすく、喉の気道が狭くなっていびきが発生しやすくなります。

◆「いびきの原因は鼻?」>>

また、扁桃腺が腫れて大きくなると喉の奥がふさがり、空気の通りが悪くなることで、急にいびきをかき始めることがあります。

1-7.骨格の問題

鼻中隔弯曲症や顎が小さいといった骨格の特徴がある場合、普段は目立った症状がなくても、あるきっかけで急にいびきが出ることがあります。

鼻中隔弯曲症は、鼻の左右を分ける壁が曲がっている状態で、鼻の通りが悪くなることがあります。日常生活では気にならなくても、疲労や睡眠不足、風邪やアレルギーによる鼻づまりが重なると、急に口呼吸になり、いびきが出やすくなります。

【参考情報】『Deviated Septum』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/16924-deviated-septum

また、顎が小さい、あるいは下顎が後ろに引っ込んでいる場合、舌の置き場が狭くなり、睡眠中に舌が喉の奥へ落ち込みやすくなります。特に仰向けで寝ると気道が狭くなり、急にいびきが目立つようになることがあります。

【参考情報】『Anatomical balance of the upper airway and obstructive sleep apnea』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18497601/

1-8.寝姿勢・寝室環境の変化

仰向けで寝ると舌や軟口蓋(なんこうがい:口の中の天井の奥にある柔らかい部分)が喉に下がりやすく、空気の通りが妨げられます。

また、枕の高さや寝室の湿度の変化によっても喉の通りが悪くなり、急にいびきをかくことがあります。

2.年齢・性別による急ないびきの特徴


急にいびきをかくようになったと感じた場合、年齢や性別によっても原因や注意点が異なります。

2-1.女性のいびき

更年期で女性ホルモンの分泌が減少すると、気道を支える筋肉の緊張が保ちにくくなり、睡眠中に気道が狭くなりやすくなります。これまでいびきをほとんどかかなかった人でも、更年期をきっかけに突然いびきが出始めるケースは少なくありません。

◆「更年期からの女性のいびき」についてくわしく>>

また、妊娠中はホルモン変化に加えて体重増加やむくみが起こりやすく、鼻や喉の粘膜が腫れやすくなります。その影響で鼻づまりや口呼吸が増え、急にいびきをかくことがあります。

さらに、ホルモンバランスの変化は睡眠の質にも影響し、眠りが浅くなることで呼吸が不安定になり、いびきが目立ちやすくなります。

2-2.男性のいびき

男性が急にいびきをかくようになった背景には、生活習慣だけでなく喉の構造が関係していることがあります。

男性は喉の空間が縦に長く、柔らかい組織や舌が大きい傾向があるため、睡眠中にそれらが喉の奥へ落ち込みやすい特徴があります。

さらに喉頭の位置が低く、息を吸う際に気道が狭まりやすい構造のため、体調や睡眠状態の変化をきっかけに、これまでなかったいびきが出ることがあります。

【参考情報】『Physical findings in the upper airways related to obstructive sleep apnea in men and women』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17503232/

2-3.子どものいびき

子どもが急にいびきをかくようになった場合、原因として多いのが扁桃腺やアデノイド(咽頭扁桃)の肥大です。

これらは免疫の働きに関わる組織で、成長期の子どもでは一時的に大きくなりやすく、喉や鼻の奥の空気の通り道を狭くすることがあります。

【参考情報】『Adenoids』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/body/23181-adenoids

扁桃腺やアデノイドが大きい状態が続くと、睡眠中に呼吸が一時的に止まる、何度も寝返りを打つ、寝汗を大量にかくなどの症状が見られることもあります。

こうした状態が続くと、睡眠の質が低下し、日中に強い眠気が出たり、集中力の低下、落ち着きのなさ、朝の目覚めの悪さといった形で生活に影響が出ることがあります。

2-4.若年層のいびき

若年層でも急にいびきをかくようになったと感じることは珍しくありません。背景には、仕事や学業による生活リズムの乱れ、慢性的な疲労、精神的なストレスなどが影響していることがあります。

また、短期間での体重増加や不規則な食生活、夜更かしや連日の睡眠不足が続くと、喉の筋肉が疲れて緩みやすくなり、いびきが出やすくなります。

こうしたいびきは多くの場合、生活習慣を整えることで自然に改善しますが、いびきが毎晩続いたり、日中に強い眠気や集中力の低下を感じたりする場合は、睡眠時無呼吸症候群などの可能性も考える必要があります。

2-5.高齢者のいびき

60代以降のいびきは、加齢による喉や舌の筋力低下で気道が狭まることが主な原因です。

また、高齢になると深い睡眠が減り、浅い睡眠や中途覚醒、早朝覚醒が増えることで、呼吸のリズムが不安定になりやすく、いびきが出やすい状態になります。夜間に何度も目が覚めるようになった時期と同時に、いびきが始まるケースも少なくありません。

さらに、高血圧や心疾患、糖尿病などの生活習慣病も、睡眠時の呼吸を不安定にしていびきを強める要因となります。

◆「高齢者のいびき」についてくわしく>>

3.救急対応が必要な急ないびき


突然の大きないびきは、脳卒中や心疾患など救急対応が必要な病気のサインであることもあります。

これらの場合は、通常のいびきではなく、脳や心臓の異常によって、いびきに似た苦しそうな呼吸音が生じている可能性があります。

いびきのような音とともに、以下の症状がある場合は、すぐに救急車を呼んでください。

 ・顔や口の片側のしびれ

 ・ろれつが回らない

 ・強い頭痛、めまい、吐き気

 ・胸の圧迫感や強い動悸

 ・睡眠中に呼吸が止まる、息苦しさを伴う

 ・日中の極端な眠気や意識の低下

4.いびきで病院を受診すべき場合


急にいびきをかくようになった場合、すぐにすべてが病院を受診する対象になるわけではありません。

ただし、いびきが一過性ではなく続く場合は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)のような病気が関係している可能性があります。

4-1.睡眠時無呼吸症候群とはどんな病気か

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に気道が狭くなったり塞がったりすることで、無呼吸や低呼吸を繰り返す病気です。

呼吸が止まるたびに体は酸素不足に陥り、そのたびに脳が覚醒するため、十分に寝ているつもりでも深い睡眠がとれません。

この病気では、いびきのほか、日中の強い眠気や集中力の低下、起床時の頭痛などの症状が現れることがあります。

また、睡眠時無呼吸症候群を放置すると、高血圧や不整脈、心疾患、脳血管障害などのリスクが高まることが知られています。

◆「実は怖い!睡眠時無呼吸症候群の合併症とは?」>>


<受診を検討する目安>

 ・いびきが2週間以上続く

 ・毎晩のように大きないびきが出る

 ・家族から呼吸が止まっていると指摘される

 ・日中の眠気やだるさが生活に支障をきたしている


◆「睡眠時無呼吸症候群」についてもっとくわしく>>

4-2.その他の病気

副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎で鼻が詰まり、鼻呼吸がしにくくなると、睡眠中に口呼吸になることで、いびきをかくようになることがあります。

◆「副鼻腔炎とはどんな病気?」>>

また、甲状腺の病気、特に甲状腺機能低下症では、全身にむくみが生じやすく、舌や喉の周囲の組織が厚くなることがあり、その結果、気道が狭くなり、睡眠中にいびきが出やすくなることがあります。

◆「いびきと甲状腺の関係」>>

これらは命に直結する緊急疾患ではありませんが、放置すると睡眠の質が低下し、体調不良が続く原因となります。

一方で、風邪や疲労、寝不足など明らかなきっかけがあり、数日〜1週間ほどで自然にいびきがおさまる場合は、経過をみても差し支えないことが多いでしょう。

5.自宅でできるいびき対策


急にいびきをかくようになった場合、まずは生活や睡眠環境を見直すことで改善するケースも少なくありません。

病気が疑われない、軽度で一時的ないびきであれば、自宅でできる対策を試して様子を見るのもひとつの方法です。


<寝る姿勢>
仰向けで寝ると舌や喉の奥が下がり、空気の通り道が狭くなりやすいため、いびきが出やすくなることがあります。横向きで寝るようにすると、気道が確保されやすくなり、いびきが軽減することがあります。

<寝室の環境を見直す>
空気が乾燥していると喉や鼻の粘膜が刺激され、いびきが出やすくなります。加湿器を使う、濡れタオルを干すなどして、適度な湿度を保つことで呼吸が楽になることがあります。

◆「加湿器を選ぶポイントと注意点」>>

<就寝前の習慣を見直す>
寝る前の飲酒は喉の筋肉を緩め、急ないびきを引き起こしやすくします。いびきが気になる間は、就寝前のアルコールを控えることが有効です。また、夜更かしや睡眠不足が続くと、喉や舌の筋肉が疲れて働きにくくなり、いびきが出やすくなります。十分な睡眠時間を確保することも対策の一つです。

<鼻づまりへの対処>
鼻を温める、入浴で体を温める、就寝前に鼻をかむなど、鼻呼吸をしやすくする工夫も役立ちます。市販の鼻腔拡張テープを使うことで、空気の通りが改善し、いびきが軽くなることもあります。


これらの対策で一時的に改善する場合は、生活習慣や環境が原因の可能性が高いと考えられます。

6.おわりに

「急にいびきをかくようになった」と感じた場合、その原因は生活習慣の急な変化や寝姿勢、鼻や喉のトラブル、ホルモン・加齢の影響など多岐にわたります。

軽度のいびきであれば、生活習慣の改善など自宅でできる対策も有効です。しかし、対策を行ってもいびきが出続けるようなら、睡眠時無呼吸症候群をはじめとした病気が疑われます。

対策を続けても、「いびきが数週間以上続く」「音が大きくなっている」「日中の眠気や体調不良を伴う」場合は、睡眠時無呼吸症候群の検査と治療ができる病院を受診して、医師に相談してみましょう。

◆当院の睡眠時無呼吸症候群治療について>>

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