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風邪は喘息に影響する?2つの病気の関係性

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年02月09日

風邪と喘息は別の病気ですが、どちらも「咳」が出る病気なので、違いがわかりにくいこともあるでしょう。

また、風邪をひいたことがきっかけで、喘息を発症したり、喘息の症状が悪化することもあります。

この記事では、風邪が喘息に与える影響や、2つの病気の関係性について説明します。

1.喘息とはどんな病気か


「喘息ってどんな病気?」と聞かれたとき、咳や息苦しさが出る病気、というイメージを持つ方が多いかもしれません。

実は喘息は、症状がないときでも気道に炎症が続いている慢性の病気です。

ここでは、喘息の仕組みと特徴をわかりやすく解説します。

1-1.喘息は「気道の炎症」が続く病気

喘息は、気道の内側に炎症が起こり、腫れやすく、刺激に敏感な状態が続く病気です。

そのため、ホコリや冷たい空気、風邪などのわずかな刺激でも、気道が狭くなり、咳や息苦しさが起こります。

症状がないときでも炎症は完全には治まっていないため、継続的な治療が必要になります。

◆「喘息」についてもっとくわしく>>

1-2.喘息で見られる主な症状の特徴

喘息の症状には、激しい咳、ゼイゼイ・ヒューヒューという呼吸音、息苦しさなどがあります。

特に、夜間から明け方にかけて症状が悪化しやすいことが特徴です。

また、季節の変わり目や寒暖差、台風などの気圧変化によって症状が強く出ることもあります。

1-3.アレルギー性と非アレルギー性の違い

喘息の原因は、アレルギー性(アトピー型)と非アレルギー性(非アトピー型)の2つに大きく分けられます。

子どもの喘息ではアレルギー性が多く、大人になってから初めて発症する喘息では非アレルギー性の割合が比較的高い傾向があります。

ただし、大人の喘息でもアレルギー性のケースは少なくありません。

アレルギー性の喘息は、ダニやペットの毛、花粉などのアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)に反応して症状が現れます。

非アレルギー性の喘息は、明確なアレルゲンが特定できないタイプで、過労やストレス、タバコの煙、風邪やコロナ等の呼吸器感染症、大気汚染、気候の変化などによって症状が誘発されることがあります。

ただし、原因が明らかにならないケースも少なくありません。

アレルギー性・非アレルギー性に関わらず、喘息の症状は時間帯や環境に影響されることもあります。

たとえば、寝ている間は自律神経の影響で気道が狭くなるため、夜間から早朝にかけて症状が悪化しやすくなります。

また、台風接近に伴い症状が悪化するなど、気候の変化や寒暖差、気圧の乱高下に影響を受けることも多いと言われています。

◆「喘息と天気や気候の関係」>>

【参考情報】”Asthma” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/asthma/index.html

2.風邪と喘息の違い


風邪と喘息は、どちらも咳が出るため混同されやすい病気ですが、原因や経過は異なります。

違いを知ることで、適切な対処や受診の判断がしやすくなります。

この章では、風邪と喘息の原因や症状の違いをわかりやすく整理します。

2-1.風邪と喘息の症状の見分け方

風邪は、主にウイルス感染によって発症する病気です。

一方、喘息はアレルギーや遺伝的要因、環境要因などが関係していると考えられており、感染症ではないため人にうつることはありません。

風邪の症状は咳のほかに、発熱や鼻水、鼻づまりなどがありますが、喘息では鼻水や鼻づまりは通常ありません。

ただし、喘息は花粉症やアレルギー性鼻炎を合併しやすいので、その場合は鼻水や鼻づまりが生じることがあります。

また、「咳だけが続く」「熱がないのに治らない」といった場合は、風邪なのか喘息なのか判断がつきにくくなりますが、風邪は気道の一時的な炎症、喘息は慢性的な炎症という点が大きな違いです。

・判断のポイント
咳をしている人の背中に耳を当てて、「ゼイゼイ」「ヒューヒュー」という音が聞こえたら、喘息の可能性があります。

ただし、乳幼児は気管や気管支が未熟なため、喘息ではなく気管支炎でもそのような呼吸音が生じることがあります。

◆乳幼児に多い「喘息性気管支炎」とは?>>

2-2.咳が続く期間の違い

風邪と喘息を見分けるうえで、咳が続く期間は重要な目安になります。

風邪は通常、安静にしていれば1週間程度で回復することが多く、咳も同じように1週間ほどで自然と治まっていきます。

熱や鼻水などの症状とともに咳も徐々に軽くなり、多くの場合、特別な治療をしなくても改善していきます。

一方、喘息の場合は、2週間以上、場合によっては1か月以上咳が続くことがあります。

風邪のような症状はすでに治まっているのに、咳だけがいつまでも続くという状態が特徴的です。

また、喘息の咳は市販の咳止め薬を使ってもなかなか改善しないことが多く、特に夜間や早朝に悪化しやすい傾向があります。

このように「長引く咳」は、喘息を疑う重要なサインのひとつと言えるでしょう。

咳が続く期間に注目することで、風邪なのか喘息なのかを判断する手がかりになります。

【参考情報】『長引くせきの原因はなに?』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/42/feature/feature02.html

【参考情報】”Common Colds: Protect Yourself and Others” by Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/common-cold/index.html

3.風邪から喘息になる可能性があるのか


風邪と喘息は別の病気ですが、風邪をきっかけに喘息や咳喘息の症状が現れるケースがあります。

特に、風邪が治った後も咳だけが続く場合は注意が必要です。

ここでは、風邪が喘息の発症や悪化につながる理由について説明します。

3-1.ウイルス感染が引き金になる理由

風邪の原因となるウイルスは、気道の粘膜を傷つけ、炎症を強めます。

通常であれば、風邪が治れば炎症も治まりますが、もともと喘息になりやすい体質の方では、この炎症が気道を過敏な状態にしてしまうことがあります。

その結果、風邪が治った後も気道の過敏性が残り、ホコリや冷たい空気などのわずかな刺激でも咳や息苦しさが出るようになり、喘息症状が表に出ることがあります。

特に、これまで喘息の診断を受けたことがない方でも、風邪をきっかけに初めて喘息を発症するケースは珍しくありません。

風邪の後、咳だけが2週間以上続く場合は、このような仕組みで喘息を発症している可能性があります。

また、喘息とよく似た病気である咳喘息も、風邪をきっかけに発症することがあります。

咳喘息は、ゼイゼイという呼吸音や息苦しさはなく、咳だけが長く続く病気です。

しかし、適切な治療が行われない場合、喘息に移行することがあると報告されています。

◆「咳喘息」についてくわしく>>

3-2.喘息を放置すると起こる「気道リモデリング」とは

喘息を適切に治療せずに放置すると、気道の炎症が長期間続き、気道の壁そのものに変化が起こることがあります。

炎症が繰り返されることで、気道の壁が厚くなり、弾力性を失って硬くなり、空気の通り道が徐々に狭くなっていきます。

このように、気道の構造自体が変化してしまう現象を「気道のリモデリング」と呼びます。

気道リモデリングが進行すると、治療を行っても気道が元の状態に戻りにくくなり、咳や息苦しさが改善しにくい難治性喘息(治療が難しい喘息)の一因となることがあります。

また、気道が狭く硬くなることで、少しの刺激でも症状が出やすくなり、風邪などの呼吸器感染症をきっかけに強い症状が長引くこともあります。

そのため、症状が軽いうちから炎症を抑える治療を続けることが、将来的な悪化を防ぐうえで重要とされています。

【参考情報】『気道リモデリングの病態の理解とその治療への応用』日本呼吸器学会
https://is.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/041090611j.pdf

3-3.大人になってから発症する喘息

喘息は子どもの病気というイメージを持たれがちですが、大人になってから初めて発症する「成人発症喘息」も決して珍しくありません。

実際、これまで喘息の診断を受けたことがない方でも、ある時期を境に咳や息苦しさが続くようになり、検査の結果、喘息と診断されるケースがあります。

成人発症喘息のきっかけのひとつとして挙げられるのが、風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症などの呼吸器感染症です。

これらの感染症によって気道に炎症が起こると、炎症が治まりきらないまま気道が過敏な状態になり、咳が長く続くことがあります。

その結果、感染症は治ったはずなのに「咳だけが残る」「夜間や明け方に咳き込む」といった症状が現れることがあります。

「今まで喘息ではなかったから大丈夫」と自己判断せず、風邪をきっかけに咳が長引いている場合は、一度呼吸器内科で相談することが大切です。

次の章では、すでに喘息と診断されている方が、風邪を引いた時の症状の悪化や注意点について説明します。

4.喘息と風邪が重なるとどうなるのか


すでに喘息と診断されている方が風邪を引くと、気道の炎症が強まり、咳や息苦しさが悪化することがあります。

この章では、喘息のある方が風邪を引いた場合に起こりやすい変化や注意点を解説します。

4-1.風邪によって喘息症状が悪化しやすくなる

ウイルス感染により気道の炎症が一時的に強まると、
・咳が止まらなくなる
・夜間や明け方に息苦しさが出る
・吸入薬の効果を感じにくくなる

といった変化が起こることがあります。

特に、インフルエンザなどのウイルス感染症には注意が必要です。

【参考情報】『成人喘息とウィルス感染』国立病院機構福岡病院
https://fukuoka.hosp.go.jp/wp-content/uploads/2017/01/asthma-virus.pdf

4-2.風邪のときも喘息の治療は中断しないことが大切

風邪を引いた際、「薬を減らした方がよいのでは」と自己判断で喘息治療を中断してしまうと、かえって症状が悪化することがあります。

風邪のときでも、喘息の吸入薬などは医師の指示通りに続けることが大切です。

市販の風邪薬を使用する場合も、主治医に相談したうえで選ぶようにしましょう。

4-3. 風邪のときに注意したい生活上のポイント

まず大切なのは、無理をせず十分な休養を取ることです。

睡眠不足や疲労が重なると、気道の炎症が強まり、喘息症状が悪化しやすくなります。

次に、室内環境を整えましょう。

乾燥した空気や冷たい空気は気道を刺激し、咳を誘発します。

加湿器の使用や、外出時のマスク着用で気道への刺激を減らせます。

また、こまめな水分補給も大切です。

水分不足は痰を粘りやすくし、咳を悪化させる原因にもなります。

これらの基本的な対策を続けることで、風邪による喘息の悪化リスクを減らすことができます。

【参考情報】”Asthma: Limit asthma attacks caused by colds or flu” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/asthma-attack/in-depth/asthma/art-20043943

5.風邪と喘息で受診を考える目安

「風邪が長引いているだけ」と思っていた咳が、実は喘息や咳喘息だったというケースも少なくありません。

早めに受診することで、症状の長期化を防ぐことができます。

ここでは、医療機関を受診したほうがよい症状の目安を紹介します。

5-1.早めに受診したほうがよいサイン

次のような場合は、風邪と思い込まず、医療機関への相談をおすすめします。

・風邪を引いた後、咳だけが2週間以上続いている
・夜間や早朝に咳が強く出る
・運動後や冷たい空気で咳き込む
・市販薬を使っても改善しない

5-2.呼吸器内科で行う検査と治療の考え方

呼吸器内科では、問診や呼吸機能検査などを通して、喘息や咳喘息の疑いがないかを確認します。

この際、症状の経過や咳の出方、悪化しやすい時間帯なども、診断の重要な手がかりとなります。

検査の結果に応じて、気道の炎症を抑える治療や、症状を和らげる治療が行われます。

適切な治療を早めに開始することで、咳の長期化や症状の悪化を防げる可能性があります。

◆「呼吸器内科の検査」について>>

6.おわりに

風邪と喘息は別の病気ですが、咳という共通の症状があるため見分けが難しいことがあります。

特に、風邪をきっかけに咳が長引いている場合は、喘息や咳喘息が隠れている可能性があります。

「そのうち治るだろう」と様子を見続けるのではなく、早めに原因を調べることが、症状を長引かせないための大切なポイントです。

不安がある場合は、呼吸器内科で相談してみましょう。

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