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喘息と副鼻腔炎の関係とは?治療で症状は改善するのか専門医が解説

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年05月12日

喘息の患者さんで、鼻水や鼻づまりが多い人は、もしかすると副鼻腔炎を合併しているかもしれません。

その場合、副鼻腔炎を治療することで、喘息の症状が改善される可能性があります。

喘息は呼吸器の病気、副鼻腔炎は鼻の病気ですが、これら2つの病気は併発しやすく、互いに影響を及ぼしあう関係です。

この記事では、喘息と副鼻腔炎の関係や治療について説明します。

1.喘息とはどのような病気なのか


喘息と副鼻腔炎の関係を理解するためには、まず喘息そのものについて知っておくことが大切です。

ここでは、喘息の基本的なしくみや症状の特徴について整理します。

1-1.気道に起こる炎症の仕組み

喘息とは、空気の通り道である気道に慢性的な炎症が生じる病気です。

炎症が続くことで気道の内側の粘膜が腫れ、さらに周囲の筋肉が収縮しやすくなります。その結果、空気の通り道が狭くなり、呼吸がしづらくなってしまうのです。

喘息の人の気道は、炎症により過敏になっているため、健康な人なら反応しない弱い刺激にも反応してしまい、咳などの症状が現れることも少なくありません。

1-2.主な症状と発作の特徴

喘息では、気道が狭くなることでさまざまな呼吸器症状があらわれます。


<主な症状>

 ・咳

 ・喘鳴(ぜんめい:ヒューヒュー・ゼイゼイという特有の呼吸音)

 ・呼吸の苦しさ

 ・胸の圧迫感

これらの症状は一日中続くとは限らず、時間帯や環境によって強くなったり弱くなったりします。

症状が急に強くなる状態は「発作」と呼ばれます。発作時には、咳が止まらない、息が吸いにくい等の症状が現れ、横になれないといった状態になることもあるでしょう。

◆「喘息発作の応急処置と予防のポイント」はこちら>>

重い発作では会話がしづらくなることもあり、その場合は早めの対応が必要です。

1-3.症状を引き起こすきっかけ

喘息の症状は、人によって強く出やすいきっかけが異なります。

ダニや花粉、ハウスダストなどの環境因子が関係することもあれば、過労やストレス、感染症、寒暖差などが引き金となることもあります。

これらは症状を悪化させる“きっかけ”であり、喘息そのものの本質は気道に慢性的な炎症があることです。

花粉の飛散時期や、梅雨などカビが発生しやすい季節には、刺激が増えることで症状が強まることも少なくありません。

◆「喘息を悪化させる要因とは?」>>

2.副鼻腔炎の種類と症状


副鼻腔炎は、鼻の奥にある空洞に炎症が起こる病気です。

副鼻腔とは、鼻の内側(鼻腔)を囲むように位置する空洞で、両目の間、額、目の奥、目頭の内側、そして頬の下に左右4つずつ、合計8つあります。それらの中には空気が入っており、鼻腔とつながっている構造です。

この副鼻腔が、細菌やウイルスに感染し炎症を起こした状態が副鼻腔炎です。

副鼻腔炎は、大きく分けて急性と慢性の2種類があります。

2-1.急性副鼻腔炎

急性副鼻腔炎は、発症してから4週間以内のもので、原因の多くは風邪などを引き起こすウイルスや細菌の感染によるものです。

<主な症状>

 ・鼻水

 ・鼻づまり

 ・顔面の痛み

 ・後鼻漏(こうびろう)

 ・嗅覚障害

鼻水には膿(うみ)が混じっているため、黄色や緑色となり粘り気があります。この鼻水がのどに流れることを後鼻漏といい、咳やのどの不快感にもつながります。

炎症によって副鼻腔の粘膜が腫れると、眼や頬などに痛みが現れることがあります。また、空気の通り道が狭くなるので鼻づまりなどもも強くなります。

症状は風邪と似ていますが、10日以上続く場合や、いったん軽快した後に再び悪化する場合は副鼻腔炎を疑いましょう。

多くは適切な治療や経過観察により改善しますが、炎症が強い場合には症状が長引くこともあります。特に喘息をもつ人では、鼻の炎症が続くことで咳や息苦しさが悪化する場合もあるため注意が必要です。

【参考情報】『Sinus Infection (Sinusitis)』Mayo Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/17701-sinusitis

2-2.慢性副鼻腔炎

慢性副鼻腔炎は、症状が3ヶ月以上続くものをいい、炎症の特徴によっていくつかのタイプに分けられます。

代表的なものとして、感染や構造の問題が関係するタイプと、好酸球(こうさんきゅう)が関与する「好酸球性副鼻腔炎」があります。多くは感染や鼻の構造の問題などが関係すると考えられています。

慢性副鼻腔炎では、タイプにかかわらず共通してみられる症状があり、主な症状は以下のとおりです。

<主な症状>

 ・鼻水

 ・鼻づまり

 ・後鼻漏

 ・鼻茸(はなたけ:慢性的な炎症によって鼻の粘膜がふくらみ、ポリープ状になったもの)

 ・嗅覚障害

この病気の患者さんは、副鼻腔が慢性的に炎症やむくみを起こしているため、膿や分泌物がうまく排出されないことが多いです。

また、炎症によって粘膜が腫れ、鼻腔とつながる出入り口が狭くなったり塞がったりしていることによっても膿がうまく排出されず、炎症が長引く原因にもなります。

その一方で、好酸球性副鼻腔炎は、大人になってから発症することが多い病気です。原因ははっきりと分かってはいませんが、アレルギーや炎症に関与する白血球の一種である好酸球が増え、副鼻腔の粘膜を攻撃することで発症すると考えられています。

症状は他の副鼻腔炎と同様ですが、嗅覚障害は早期に現れる傾向があります。また、鼻茸が多く、風邪などで炎症が起こるたびに大きくなり、ひどい場合は鼻腔を塞ぐことも少なくありません。

このタイプは、喘息を合併することが割と多いことも指摘されています。

鼻茸は手術で取り除いてもすぐに再発しやすいという特徴があり、治療には慎重な経過観察が欠かせません。そのため、好酸球性副鼻腔炎は難治性の病気として指定難病に認定されています。

【参考情報】『好酸球性副鼻腔炎(指定難病306)』難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4537

3.喘息と副鼻腔炎の関係について


喘息と副鼻腔炎は別々の病気のように見えますが、実は密接に関係しています。

ここでは、そのつながりについて整理します。

3-1.上気道と下気道はつながっている

呼吸の通り道は、鼻からのどまでを「上気道」、気管や気管支、肺へと続く部分を「下気道」と呼びます。

喘息は下気道、副鼻腔炎は上気道に炎症が起こる病気です。炎症の場所は異なりますが、上気道と下気道はつながっているため、互いに影響を及ぼす関係にあると考えられています。

例えば、副鼻腔炎による後鼻漏で咳が続くと、喘息の悪化につながることがあります。

また、鼻づまりで口呼吸が増えるとアレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)が口から体内に入りやすくなるため、結果として喘息症状が強まる場合もあるでしょう。

このように、鼻の炎症が続くことで、気道全体の炎症が強まりやすい状態になります。

この考え方は「上気道・下気道一体論(ユナイテッドエアウェイ)」とも呼ばれ、鼻と気道は一つの連続した臓器としてとらえられています。

3-2.好酸球が関与する炎症

喘息の人は好酸球性副鼻腔炎を併発することが多いとされています。

これは、喘息も好酸球性副鼻腔炎も好酸球が深く関与しており、症状が引き起こされる仕組みが非常に似ているためです。

好酸球は、寄生虫から体を守ったりアレルギー反応に関与したりする重要な白血球の一種です。しかし、過剰に増えると、気道や副鼻腔の粘膜に炎症が生じ、結果として症状の悪化につながることがあります。

【参考情報】『Eosinophils』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/body/23402-eosinophils

増えすぎた好酸球は気道の粘膜を攻撃するため、喘息発作が起こりやすくなります。同様に、好酸球性副鼻腔炎でも好酸球が増加し、症状を引き起こすのです。

そのため、鼻の炎症を十分に抑えず、喘息だけを治療しても症状が安定しにくいことがあります。

3-3.アスピリン喘息との関連

喘息の中でもアスピリン喘息を発症している人は、好酸球性副鼻腔炎を併発すると重症化しやすくなります。

アスピリン喘息とは、ロキソニンやアスピリン、ボルタレンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs:エヌセイズ Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugsの略)を内服すると喘息発作が起こる病気です。

◆「アスピリン喘息」についてくわしく>>

非ステロイド性抗炎症薬は炎症を抑える一方で、分解の過程でロイコトリエンという物質を生成します。

ロイコトリエンは気道を収縮させる働きがあり、増えると気管支が狭くなって発作が起こりやすくなります。

副鼻腔炎があると喘息のコントロールも難しくなるため、日頃から鼻水や鼻づまりなどの鼻の症状には注意しなければいけません。

鼻症状が長引く場合には、喘息の悪化因子になっていないかを確認することも重要です。

もし副鼻腔炎の併発が疑われる場合は、主治医に相談しましょう。症状や重症度に応じて、適切な治療を受ける必要があります。

4.喘息の症状は副鼻腔炎の治療で改善するのか


喘息の患者さんで副鼻腔炎を併発している人は、副鼻腔炎の治療を行うと喘息の症状が軽減されることがあります。

鼻や副鼻腔の炎症が落ち着くことで、気道への刺激が減り咳や息苦しさが改善しやすくなるためです。

ここでは、副鼻腔炎の治療と喘息症状との関係について説明します。

4-1.急性副鼻腔炎の治療

急性副鼻腔炎は、抗菌剤の服用やネブライザーという医療機器を使って鼻から薬剤を吸入する薬物療法で、多くは改善が期待できる病気です。

急性副鼻腔炎の多くは風邪をきっかけに発症し、軽症であれば自然に軽快する場合も少なくありません。

発症早期の多くはウイルス感染が原因であり、必ずしもすべてに抗菌薬が必要になるわけではありません。症状の経過や重症度をみながら治療方針を決められます。

一方で、風邪のあとに10日以上鼻症状が続く場合や、いったん良くなった後に再び悪化する場合には副鼻腔炎を疑い医療機関を受診しましょう。

ネブライザーを使うと、薬の粒子が細かくなり、副鼻腔に届きやすくなります。

炎症が早期に落ち着けば、後鼻漏や鼻づまりが軽減し、咳の悪化を防ぐことにもつながるでしょう。

◆「ネブライザー」についてくわしく>>

副鼻腔炎による後鼻漏が続くと、気道への刺激が長引き、喘息症状が不安定になりやすい状態です。そのため、鼻症状を軽視することは避けたいところです。

また、薬を飲みこむ力が弱い高齢者なども、吸入であれば確実に薬を取り入れやすいという利点があります。

発熱や強い顔面痛、目の周囲の腫れなどがみられる場合は、まれではありますが合併症の可能性も否定できません。早めの受診が望ましいでしょう。

急性の段階で炎症をしっかり抑えることが、喘息の悪化予防にもつながります。

4-2.慢性副鼻腔炎の治療

慢性副鼻腔炎は、急性副鼻腔炎と同様の治療に加え、マクロライド系抗菌剤を少量ずつ2~3ヶ月かけて投与して、改善をはかります。

マクロライド系抗菌薬には抗菌作用だけでなく、炎症を抑える作用もあるとされています。

好酸球性副鼻腔炎の場合は、経口ステロイド薬やステロイド点鼻薬を使用します。また、鼻水に膿があるときやアレルギーが原因の場合は、抗菌薬や抗アレルギー薬が用いられることも少なくありません。

◆「経口ステロイド薬”プレドニゾロン”の特徴」について>>

重症の場合や難治性のケースでは、手術によって鼻茸を完全に取り除く治療が検討されます。

しかし、手術を行っても約半数は再発することがあり、アスピリン喘息を発症している場合は再発のリスクがさらに高いとされています。

手術後も長期にわたって副鼻腔の状態を定期的に観察しつつ、継続して治療を行うことが重要です。

【参考情報】『鼻の病気』日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
https://www.jibika.or.jp/modules/disease/index.php?content_id=21

副鼻腔炎の治療により後鼻漏や鼻づまりが軽減されると、咳や口呼吸も改善され、気道への刺激が減ってきます。

また、好酸球による炎症が抑えられることで、喘息症状の安定が期待できるでしょう。

5.おわりに

副鼻腔と気道はつながっているため、副鼻腔炎を発症すると気道の炎症に影響が及び、喘息の症状が悪化しやすくなります。

「風邪をきっかけに鼻水や鼻づまりがひどくなった」「鼻の症状が出ると喘息が悪化する」など、気になる鼻症状がある場合は、早めに主治医へ相談することが大切です。

副鼻腔炎の治療により鼻の症状が改善すれば、喘息のコントロールが整いやすくなります。

適切な治療につなげていきましょう。

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