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インフルエンザと風邪の違いや見分け方とは?

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2025年12月06日

熱が出たり、咳が続いた時、真っ先に疑う病気は風邪でしょう。しかし、インフルエンザをはじめ、風邪とよく似た症状が現れる病気は他にもあります。

この記事では、インフルエンザのと風邪の違いを説明しながら、似たような症状が現れる病気との違いについて説明します。

1.インフルエンザと風邪・5つの違い

風邪とインフルエンザの症状はよく似ています。

しかし、症状の強さや、症状が現れるスピードやタイミングに違いがあるので、そこが見極めのポイントとなります。

1-1.症状が出るタイミング


インフルエンザは、38℃以上の高熱や寒気、関節痛、筋肉痛、頭痛、全身のだるさなどが「急激に」「強く」現れるのが特徴です。

風邪でも発熱や体の痛みが現れることはありますが、インフルエンザよりは症状の出方がゆるやかで、症状も軽いことがほとんどです。

インフルエンザでも風邪と同じように、のどの痛みや鼻水・鼻づまり、咳、お腹の不調といった症状が現れることがありますが、高熱や体の痛みの「後から」「遅れて」出てくるのが特徴です。

【参考資料】『Signs and Symptoms of Flu』CDC(Centers for Disease Control & Prevention)
https://www.cdc.gov/flu/signs-symptoms/index.html

1-2.流行時期


普通の風邪は季節を問わず、1年中かかる恐れがありますが、インフルエンザは流行する季節がだいたい決まっています。

日本では例年11~12月頃に流行が始まり、1~3月にピークを迎えます。ただ、近年は、春や夏など冬以外の時期に流行することもあります。

その背景には、コロナ禍でマスクや手洗いが徹底された期間に、インフルエンザの流行がほとんど見られなかったため、多くの人がウイルスに対する免疫を持たない状態になり、その反動で季節外でも広がりやすくなったことがあります。

【参考情報】『Seasonal Shifts in Influenza, Respiratory Syncytial Virus, and Other Respiratory Viruses After the COVID-19 Pandemic: An Eight-Year Retrospective Study in Jalisco, Mexico』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39772198/

1-3.治療薬


風邪という病気そのものに効く薬はないため、治療は発熱・鼻水・咳などの症状を抑える対症療法が中心になります。

一方、インフルエンザは症状が現れてから12時間~48時間の間に抗インフルエンザウイルス薬を服用すると、症状が重くなるのを防ぎ、回復までの期間を短縮できる可能性が高くなります。

◆「インフルエンザの治療薬」について>>

1-4.診断のしやすさ


風邪を引き起こすウイルスには、ライノウイルス、コロナウイルス、RSウイルス、アデノウイルスなどがありますが、原因のウイルスを特定することは困難です。

しかしインフルエンザは、症状が現れてから12~24時間後に迅速診断キットで検査すれば、その場で簡単に結果が出ます。

◆「インフルエンザの検査」について>>

1-5.重症化・合併症のリスク

風邪は一般的に軽症で済み、重い合併症を起こすことはまれです。

一方、インフルエンザはウイルスの性質が強く、急激に全身へ影響が及ぶため、重症化のリスクがあります。

高熱や強い倦怠感に加えて、肺炎、脳症、心筋炎などの合併症を引き起こす可能性があり、特に高齢者や基礎疾患のある人、子どもでは注意が必要です。

◆「インフルエンザの合併症」についてくわしく>>

2.インフルエンザと似た症状が出る風邪以外の病気

インフルエンザと似た症状が出るその他の病気

熱が出たり、全身のだるさがあっても、風邪やインフルエンザとは別の病気にかかっていることもあります。

そこで、よく似た症状が現れる病気を紹介します。

2-1.肺炎

細菌やウイルスなどの病原体が肺に入り込み、肺胞に炎症が起きる病気です。

主な症状は、発熱、咳、痰、息苦しさ、全身のだるさなどで、風邪よりも症状が強く長引く傾向があります。

インフルエンザと似ている点として、発熱、倦怠感、頭痛、悪寒、全身の痛みなどの全身症状が共通して現れます。

ただし、肺炎では息苦しさや痰の増加が目立つことが多く、インフルエンザよりも肺の症状が強く出ることが特徴です。

◆「肺炎」についてもっとくわしく>>

2-2.マイコプラズマ肺炎


マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマ・ニューモニエという病原体によって起こる呼吸器の感染症です。

【参考資料】『About Mycoplasma pneumoniae Infection』CDC(Centers for Disease Control & Prevention)
https://www.cdc.gov/mycoplasma/about/index.html

発熱や全身のだるさのほか、乾いた激しい咳がしつこく長く続くのが特徴です。

小学生以上の子どもや若者に多くみられますが、成人や高齢者がかかることもあります。

多くの人はマイコプラズマに感染しても、気管支炎などの軽い症状で済みますが、時に重症化して肺炎になることもあります。その場合は、抗菌薬(抗生物質)を使用して治療します。

「風邪が治ったのに咳だけが続いている」というときは、マイコプラズマ肺炎の疑いがあるので、呼吸器内科を受診するとよいでしょう。

◆「マイコプラズマ肺炎」のくわしい情報をチェック>>

2-3.溶連菌感染症


A群レンサ球菌という細菌がのどに感染して起こる病気です。

【参考資料】『Clinical Considerations for Group A Streptococcus』CDC(Centers for Disease Control & Prevention)
https://www.cdc.gov/group-a-strep/hcp/clinical-guidance/index.html

主な症状は、突然の発熱、強いのどの痛み、頭痛、全身のだるさなどで、特にのどの痛みが強いのが特徴です。子どもに多い病気ですが、大人でも感染します。

インフルエンザと似た全身症状が急に出るため、初期は区別が難しいこともありますが、溶連菌感染症では咳があまり出ないという特徴があります。

また、舌にイチゴのようなブツブツが現れる「いちご舌」や、皮膚に細かい発疹が出ることもあります。

抗菌薬を飲めば症状は2~3日で治まりますが、急性腎炎やリウマチ熱などの合併症を防ぐため、しばらく抗菌薬を飲み続ける必要があります。

【参考資料】『こどもに多いのどの病気 溶連菌感染症のおはなし』シオノギ製薬
https://wellness.shionogi.co.jp/infections/child/streptococcal.html

2-4.RSウイルス感染症

RSウイルスが原因となる呼吸器の感染症です。乳幼児に多い病気ですが、大人も感染します。

主な症状は、発熱、鼻水、咳、全身のだるさなどで、軽い風邪のように始まることが多い一方、乳幼児や高齢者では重い肺炎や気管支炎に進行することがあります。

インフルエンザと似ている点として、発熱、倦怠感、咳、食欲低下などの全身症状が現れることがあり、特に流行期には両者の区別が難しい場合があります。

一方、RSウイルス感染症では、鼻水や咳が長引くことが多く、乳幼児ではゼーゼー・ヒューヒューした呼吸(喘鳴:ぜんめい)や呼吸困難が出やすいという特徴があります。

◆「喘鳴」とは?>>

風邪と同じく特効薬はないため、鼻水や咳、痰、高熱などの症状を抑える治療が中心になります。

症状が強い場合や呼吸が苦しい場合には、吸入、酸素投与、点滴などのサポートが必要になることがあります。

◆「RSウイルス感染症」についてくわしく>>

2-5.アデノウイルス感染症

アデノウイルスによって起こる感染症の総称です。主な症状は、高熱、のどの痛み、咳、鼻水、全身のだるさ、結膜炎などで、特に高熱が続きやすいのが特徴です。

高熱・全身の倦怠感や頭痛・咳やのどの痛みなどの全身症状がインフルエンザと似ているため、初期は区別しにくいことがあります。

一方で、アデノウイルスには次のような特徴があります。

 ・結膜炎(目の充血、痛み、目やに)が出やすい

 ・高熱が3〜7日ほど続くことがある

 ・腹痛や下痢など消化器症状が出ることがある

診断は咽頭ぬぐい液などを用いた迅速検査で行います。治療薬はなく、解熱剤などの対症療法が中心です。

◆「アデノウイルス感染症」のくわしい情報>>

2-6.新型コロナウイルス感染症

SARS-CoV-2というウイルスが原因の呼吸器感染症です。

主な症状は、発熱、咳、のどの痛み、倦怠感、鼻水、息苦しさ、頭痛などで、軽症から重症まで幅があり、無症状の例もあります。

初期はインフルエンザと非常に似て見えることがありますが、抗原検査やPCR検査で診断できます。

治療は軽症では対症療法が中心ですが、重症化リスクの高い人には抗ウイルス薬が使用されることがあります。

◆「新型コロナウイルスに感染しない・させない予防法」>>

3.まとめ~インフルエンザの特徴と風邪との違い

・インフルエンザは、高熱や体の痛み、全身のだるさなどが急激に強く現れるのが特徴。

・インフルエンザは、強い症状の後に、咳や鼻水など風邪のような症状が遅れて現れる。

・インフルエンザは、11~12月頃に流行が始まり、1~3月にピークを迎える。

・インフルエンザには有効な治療薬があるが、風邪には症状を抑える薬しかない。

・インフルエンザは簡単な検査で判定できるが、風邪のウイルスは特定が難しい。

・マイコプラズマ肺炎など別の病気でも、風邪やインフルエンザのような症状が見られる。

風邪やインフルエンザ、そして感染症も、呼吸器などに持病がある人や免疫力が低い方、抵抗力が弱い方が感染してしまうと、重症化や合併症を引き起こす恐れがあります。

そのため、特に流行時期には、人の多い場所を避ける・外出中のマスク着用や外出後のうがい、手洗いの徹底・十分な栄養、睡眠をとるなど、感染対策を行い、感染予防に取り組んでいきましょう。

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