COPD治療薬「ビレーズトリ」の特徴と効果、副作用
ビレーズトリ(Breztri Aerosphere)は、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療に使用される吸入薬の一種で、3種類の有効成分を1つの吸入器に組み合わせた配合剤です。
この記事では、ビレーズトリの特徴や効果、副作用、使用時の注意点などについて、医療的な視点からわかりやすく解説していきます。
1.ビレーズトリとはどんな薬か
ビレーズトリは、吸入ステロイド(ICS)のブデソニド、長時間作用型β2(ベータツー)刺激薬(LABA)のホルモテロール、長時間作用型抗コリン薬(LAMA)のグリコピロニウムという3つの有効成分を1つの吸入薬に配合したCOPDの治療薬です。
ブデソニドは、気道の炎症を抑えることで慢性的な気道過敏性を軽減します。
【参考情報】『Budesonide』MedlinePlus
https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a608007.html
ホルモテロールは、気道平滑筋を弛緩させることにより気管支を拡張し、呼吸を楽にします。
【参考情報】『Formoterol Oral Inhalation』MedlinePlus
https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a602023.html
グリコピロニウムは、副交感神経の作用を抑制して気道平滑筋の収縮を防ぎ、気流を改善します。
【参考情報】『Efficacy and Safety of Twice-Daily Glycopyrrolate Versus Placebo in Patients With COPD: The GEM2 Study』COPD Foundation
https://journal.copdfoundation.org/jcopdf/id/1099/Efficacy-and-Safety-of-Twice-Daily-Glycopyrrolate-Versus-Placebo-in-Patients-With-COPD-The-GEM2-Study
ビレーズトリの三剤配合は、単剤や二剤に比べて呼吸機能の改善や症状のコントロールに優れていると多くの臨床試験で示されています。特に急性増悪を繰り返す患者においては、再発防止に寄与することが知られています。三つの異なる作用機序を持つ薬剤が互いに補完し合うことで、より包括的な管理が可能になります。
【参考情報】『Triple Inhaled Therapy at Two Glucocorticoid Doses in Moderate-to-Very-Severe COPD』The New England Journal of Medicine
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1916046
従来の吸入薬では1〜2成分のみの配合が一般的でしたが、ビレーズトリは3成分を1つにまとめることで、治療効果を高めると同時に吸入回数の削減にもつながっています。これにより、複数の吸入薬を使い分ける負担が軽減される点も、医療現場での評価が高い理由のひとつです。
2.ビレーズトリの使い方
ビレーズトリは「加圧定量吸入器(pMDI)」であるエアロスフィアというデバイスで吸入します。このデバイスは薬剤をエアゾール状にして噴霧する仕組みで、微細粒子の噴霧により肺の深部まで薬剤が届きやすくなっています。
使用前には必ずよく振り、吸入時にはゆっくりと深く息を吸い込んで、吸入後は息を5〜10秒止めてから吐き出すようにします。
【参考情報】『ビレーズトリの使い方動画』アストラゼネカ
https://www2.astrazeneca.co.jp/ars/breztri/new/index.html
正しい吸入技術が効果的な治療には不可欠であり、必要に応じて吸入補助具(スペーサー)の使用が推奨されます。
【参考情報】『スペーサーの種類とメンテナンス』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/inhalers/feature02.html
ビレーズトリは1日1回の吸入で効果が持続するため、患者の服薬コンプライアンスが向上しやすい点も大きな特徴です。これにより、治療効果の持続性や生活への負担軽減が期待され、多忙な現代人にも適した治療選択肢といえます。
3.ビレーズトリの副作用
ビレーズトリに含まれるステロイド成分は、口腔カンジダ症などの局所副作用や声のかすれを引き起こすことがあります。使用後はうがいを行うことでこのリスクを軽減できます。
【参考情報】『Oral thrush』Mayo Clinnic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/oral-thrush/symptoms-causes/syc-20353533
また、β2刺激薬による動悸や震え、抗コリン薬による口渇感なども一部の患者で見られることがあります。
副作用が強く出た場合や効果が感じられない場合は、自己判断で中止せず医師と相談することが大切です。特に他の薬剤との併用や基礎疾患のある方は、医師による慎重な管理が求められます。
4.ビレーズトリ使用時の注意点
ビレーズトリをはじめとする吸入薬は、正しい手技で吸入することが治療効果を最大限に引き出すために非常に重要です。
誤った吸入方法では薬剤が肺に届かず、十分な効果が得られないことがあります。医療機関で吸入指導を受けたり、定期的に手技を見直すことが推奨されます。
症状の変化や副作用を感じた場合、自己判断で使用を中止したり変更するのは避けましょう。ビレーズトリは効果的な薬剤である一方、個人差や併用薬との関係で注意が必要なケースもあります。
例えば、閉塞隅角緑内障や前立腺肥大等による排尿障害のある人は、症状が悪化する恐れがあります。
【参考情報】『Angle-Closure Glaucoma』Cleveland Clinnic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/angle-closure-glaucoma
【参考情報】『Benign prostatic hyperplasia (BPH)』Mayo Clinnic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/benign-prostatic-hyperplasia/symptoms-causes/syc-20370087
ビレーズトリは優れた吸入薬の一つですが、すべての患者にとって最適とは限りません。症状の程度や年齢、併存疾患の有無、過去の治療歴などを踏まえ、医師が個々の状況に応じて適切な薬剤を選択します。
自己判断で薬剤を変更することは避け、必ず医師の指導のもとで治療を継続することが大切です。
5.ビレーズトリに関するよくある質問
この章では、ビレーズトリに関するよくある質問と答えを紹介します。
Q:ビレーズトリはいつ吸入すればよいですか?
A:1日1回の吸入で効果が持続します。決まった時間帯に、毎日同じタイミングで吸入することが推奨されます。
Q:うがいは必ず必要ですか?
A:はい。ステロイドによる副作用(口腔カンジダ症など)を防ぐために、吸入後のうがいは非常に重要です。
Q:途中で症状が良くなったら中止してもいいですか?
A:症状が改善しても、医師の指示があるまでは中止せず継続してください。
6.日常生活で気をつけたいポイント
ビレーズトリの効果を最大限に引き出すためには、吸入だけでなく日常生活での心がけも重要です。例えば、喫煙は症状を悪化させるため禁煙が推奨されます。
【参考情報】『慢性閉塞性肺疾患と喫煙』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/nosmoking/data/copd.html
さらに、規則正しい生活リズムや十分な睡眠を確保することも、呼吸機能を保つうえで大切な要素となります。
呼吸器疾患の治療には、患者本人だけでなく家族や周囲のサポートも大きな役割を果たします。吸入の時間や手技をサポートしたり、環境整備に協力することで、より良い治療環境が整います。
症状が落ち着いていても、定期的に医療機関を受診して医師の診察を受けることが重要です。症状の変化や副作用の有無、吸入手技の確認など、継続的なフォローアップによって治療の質が保たれます。
自己判断に頼らず、安心して治療を続けるために、信頼できる医療機関との連携を大切にしましょう。
7.おわりに
ビレーズトリは、複数の作用を1つの製剤で実現し、利便性と効果を兼ね備えた吸入薬です。適切に使用することで、COPDのコントロールが向上し、QOL(生活の質)の改善にもつながります。
しかし、薬の効果や副作用は人によって違いがあるので、もしビレーズトリが合わない場合は、別の薬が使えないかどうか、医師や薬剤師に相談してみましょう。
治療を成功させるためには、医師との連携、正しい吸入方法、継続的な服薬管理が欠かせません。本記事を通じて、ビレーズトリについての理解が深まり、自身に合った治療の選択に役立てていただければ幸いです。