ビレーズトリ COPD治療薬の効果・副作用・使い方

ビレーズトリ(Breztri Aerosphere)は、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療に使用される吸入薬の一種で、3種類の有効成分を1つの吸入器に組み合わせた配合剤です。
この記事では、ビレーズトリの特徴や効果、副作用、使用時の注意点などについて、医療的な視点からわかりやすく解説していきます。
1.ビレーズトリとはどんな薬か
ビレーズトリは、COPDの治療に欠かせない3種類の成分を一つにまとめた吸入薬です。
ここでは、ビレーズトリの基本的な概要や成分のはたらき、吸入器の特徴、そしてどんな患者さんに使われるのかについて説明します。
1-1. ビレーズトリの概要と特徴
ビレーズトリ(Breztri Aerosphere)は、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療に使われる吸入薬で、「エアロスフィア」と呼ばれる専用の吸入器を使って薬を吸い込みます。
ビレーズトリは、アストラゼネカ株式会社が製造・販売している薬で、製品名は「ビレーズトリエアロスフィア」といいます。
3種類の薬が一つにまとまっていることが最大の特徴で、複数の薬を別々に使う手間がなくなり、治療の続けやすさが高まります。
1-2. 3つの有効成分とそれぞれの働き
ビレーズトリは、次の3つの有効成分を組み合わせたCOPDの吸入薬です。
・吸入ステロイド(ICS):ブデソニド
気道の炎症を抑え、慢性的な気道過敏性を軽減します。
【参考情報】『Budesonide』MedlinePlus
https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a608007.html
・長時間作用型β2刺激薬(LABA):ホルモテロール
気道の平滑筋をゆるめて気管支を広げ、呼吸を楽にします。
【参考情報】『Formoterol Oral Inhalation』MedlinePlus
https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a602023.html
・長時間作用型抗コリン薬(LAMA):グリコピロニウム
副交感神経の作用を抑えて気道の収縮を防ぎ、空気の流れを改善します。
【参考情報】『Efficacy and Safety of Twice-Daily Glycopyrrolate Versus Placebo in Patients With COPD: The GEM2 Study』COPD Foundation
https://journal.copdfoundation.org/jcopdf/id/1099/Efficacy-and-Safety-of-Twice-Daily-Glycopyrrolate-Versus-Placebo-in-Patients-With-COPD-The-GEM2-Study
1-3. エアロスフィア(pMDI)という吸入器の特徴
ビレーズトリが使用する「エアロスフィア」と呼ばれる専用の吸入器は、加圧式定量噴霧式吸入器(pMDI:ガスタイプ)という種類の吸入器です。
押すとガスで薬が噴霧されるため、自分の力で強く吸い込む必要があるドライパウダー製剤(DPI)と違い、肺機能が低下した方や高齢の方でも吸入しやすいとされています。
また、薬の粒子が細かく、気管支の奥まで届きやすい点も特徴です。
COPDは特に気管支の奥の部分に病変が集中しやすいため、この特性は治療において有利に働く場合があります。
1-4. ビレーズトリはどんな場合に処方されるの?
ビレーズトリはすべてのCOPD患者さんに使われるわけではありません。
日本呼吸器学会のCOPDガイドライン(第6版)や、世界的な治療指針であるGOLDガイドラインでは、次のような場合にビレーズトリのような3種類の成分を組み合わせた吸入薬(ICS/LABA/LAMA)が検討されるとされています。
・外来治療を必要とする症状が急に悪化したことが年2回以上ある方(通院で対処できる程度)
・症状が急に悪化して入院が必要になったことが年1回以上ある方
・末梢血好酸球数が300/μL(マイクロリットル)以上の方
・喘息とCOPDが両方ある「喘息・COPDオーバーラップ(ACO)」の方
このように、症状の悪化を繰り返している場合や、炎症が起こりやすい体質がある場合に、ビレーズトリのような3剤配合の吸入薬が検討されることがあります。
2. COPDの悪化を防ぐための治療とビレーズトリの役割
COPDは症状が急に悪化する「増悪(ぞうあく)」を繰り返すことで、肺の機能が少しずつ低下していく病気です。
この章では、増悪とはどのような状態なのか、なぜ早めに対処することが大切なのか、そしてどのような方にビレーズトリが必要になるのかについてわかりやすく説明します。
2-1. COPDの「増悪」とは?繰り返すとどうなるの?
COPDの増悪とは、風邪などの感染症をきっかけに、いつもより息切れが強くなったり、咳や痰が急に増えたりする状態のことです。
こうした増悪が起きると肺への負担が大きくなり、回復しても肺の機能が元に戻りづらくなる可能性があります。
さらに増悪を何度も繰り返すと、そのたびに肺の機能が少しずつ低下し、日常生活(息苦しさや動ける範囲)にも影響が出てくる場合があります。
増悪が重い場合は入院が必要になることもあるため、増悪を「起こさない」ことがCOPD治療の重要な目標です。
【参考情報】『慢性閉塞性肺疾患(COPD)』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/b/b-01.html
2-2. 血液検査の結果によって薬が変わることがあります
血液の中には「好酸球(こうさんきゅう)」という種類の細胞があります。
これは免疫に関わる細胞のひとつで、この数が多いほど気道に炎症が起きやすい体質だということが分かっています。
世界的なCOPD治療の指針では、好酸球の数が多い方には、ステロイドの吸入薬を含むビレーズトリのような薬が特に効きやすいとされています。
逆に好酸球が少ない場合は、ステロイドなしの薬の方が向いていることもあります。
血液検査の結果を見ながら、医師が一人ひとりに合った薬を選んでいます。
3.ビレーズトリの正しい使い方
吸入薬は正しい方法で使わないと、薬が肺まで届かず十分な効果が得られないことがあります。
ここでは、ビレーズトリの用量・吸入手順など、日常の使い方について説明します。
3-1. 用法・用量
ビレーズトリは、1日2回(たとえば朝と夜)、1回につき2吸入を行います。
できるだけ毎日同じ時間帯に吸入することが大切です。
吸い忘れた場合は気づいた時点で吸入してください。
ただし次の吸入時間が近い場合は1回とばして、1日2回を超えて吸入しないでください。
また、吸入後には必ずうがいをしましょう。
3-2. 正しい吸入の手順
ビレーズトリをはじめとする吸入薬は、正しい方法で吸入することが治療効果を最大限に引き出すために非常に重要です。
誤った吸入方法では薬剤が肺に届かず、十分な効果が得られないことがあります。
医療機関で吸入指導を受けたり、定期的に手技を見直すことが推奨されます。
ビレーズトリエアロスフィアの基本的な吸入手順は以下のとおりです。
1.キャップを外し、吸入器を上下に4〜5回よく振ります。
2.息をしっかりと吐き出してから、吸入口を口に軽くくわえます。
3.ゆっくり息を吸い始めながら噴霧ボタンを1回押し、ゆっくり深く吸い込みます。
4.吸入口から唇を離し、口を閉じて約5秒間息を止めます。
5.ゆっくりと息を吐き出します。
6.1回に2吸入するため、①〜⑤をもう一度繰り返します。
なお、初回使用時や1週間以上使わなかった場合、落としてしまった場合は、吸入前に空噴霧を2回行ってください。
また、ビレーズトリに含まれるステロイド成分は、口腔カンジダ症(口の中にカビが生える感染症)や声のかすれを引き起こすことがあります。
使用後は必ずうがいをしてこのリスクを減らしましょう。
うがいができない場合は、口の中をよくすすぐだけでも効果があります。
【参考情報】『ビレーズトリの使い方動画』アストラゼネカ
https://www2.astrazeneca.co.jp/ars/breztri/new/index.html
4.ビレーズトリの副作用と注意点
どんな薬にも副作用はありますが、ビレーズトリも例外ではなく、成分ごとに異なる副作用が現れることがあります。
この章では、主な副作用の種類と対処法、使用できない方の条件についてまとめました。
4-1. 主な副作用
ビレーズトリに含まれるステロイド成分は、口腔カンジダ症などの局所副作用や声のかすれを引き起こすことがあります。
また、β2刺激薬による動悸や震え、抗コリン薬による口渇感なども一部の患者さんで見られることがあります。
そのほか、注意すべき副作用として、以下のものが報告されています。
・肺炎(ステロイド成分の影響で、感染に対する抵抗力が下がることがある)
・心房細動(心臓のリズムが乱れる不整脈の一種)
・不眠症(眠れない・眠りが浅い)
・うつ病(気分が落ち込む・やる気が出ない)
・のどの刺激感・咳
・頭痛・吐き気
副作用が強く出た場合や効果が感じられない場合は、自己判断で中止せず医師と相談することが大切です。
特に他の薬剤との併用や基礎疾患のある方は、医師による慎重な管理が求められます。
症状の変化や副作用を感じた場合、自己判断で使用を中止したり変更するのは避けましょう。
【参考情報】『Oral thrush』Mayo Clinnic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/oral-thrush/symptoms-causes/syc-20353533
4-2. 使用できない方・注意が必要な方
閉塞隅角緑内障(へいそくぐうかくりょくないしょう)や前立腺肥大(ぜんりつせんひだい)等による排尿障害がある方は症状が悪化するおそれがあります。
前立腺肥大があるすべての方が使えないわけではありませんが、尿が出にくい症状が高度な場合は使用に細心の注意が必要です。
また、妊娠中や妊娠の可能性がある方は使用前に必ず医師に相談してください。
【参考情報】『Angle-Closure Glaucoma』Cleveland Clinnic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/angle-closure-glaucoma
【参考情報】『Benign prostatic hyperplasia (BPH)』Mayo Clinnic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/benign-prostatic-hyperplasia/symptoms-causes/syc-20370087
5.よくある質問(Q&A)
ビレーズトリの使用については、「他の吸入薬との違いは?」「症状が良くなったらやめてもいいの?」など、日常の中で疑問に感じることも多いかもしれません。
ここでは、よくある質問をもとに、知っておきたいポイントを整理します。
Q1. ビレーズトリと他のCOPD吸入薬の違いは何ですか?
COPDの治療では、症状や状態に応じて複数の吸入薬が使い分けられます。
ビレーズトリと同じくICS・LABA・LAMAの3剤を組み合わせた吸入薬として、テリルジーがあります。
同じ3剤配合でも、テリルジーはドライパウダー製剤(DPI)で1日1回の吸入、ビレーズトリはガスタイプ(pMDI)で1日2回の吸入とされています。
このように、同じ種類の薬でも吸入方法や使用回数に違いがあり、患者さんの状態や使いやすさに応じて選択されます。
Q2. 症状が良くなっても薬をやめてはいけないのはなぜですか?
ビレーズトリで治療を続けているうちに咳・痰・息切れなどの症状が改善すると「もう薬はいらないのでは?」と思う方もいるかもしれません。
しかし、ビレーズトリの主な目的は症状を和らげることに加え、COPDの急な悪化を予防し続けることにあります。
自己判断で薬をやめてしまうと、再び症状が急に悪化して肺機能がさらに低下したり、入院が必要になるリスクが高まります。
体調が良くなっても、必ず医師の指示に従って治療を続けることが大切です。
Q3. ビレーズトリの薬価はいくらですか?
ビレーズトリエアロスフィアの薬価は以下のとおりです(2026年3月時点)
・ビレーズトリエアロスフィア56吸入:1本4,127.6円(3割負担の場合 約1,238円)
・ビレーズトリエアロスフィア120吸入:1本8,771.9円(3割負担の場合 約2,631円)
1日2回・1回2吸入で使用する場合、1か月に120吸入を使用することになります。
なお、薬価は改定されることがあるため、詳しくは医療機関や薬局にお問い合わせください。
6.おわりに
ビレーズトリは、COPD治療において3種類の有効成分を1つにまとめた吸入薬で、気管支の拡張と炎症の抑制を同時に行います。
正しい用法・用量を守り、医師の指示のもとで継続することが大切です。
副作用や疑問が生じた際は自己判断せず、医師・薬剤師に相談しましょう。
症状が落ち着いても自己判断でやめずに、日々の吸入を続けることが、COPDとうまく付き合うための一番の近道です。












