抗菌薬「クラリス」の特徴と効果、副作用

クラリス(クラリスロマイシン)は、肺炎や副鼻腔炎、中耳炎などの呼吸器・耳鼻科領域の感染症を中心に処方される抗菌薬です。
また、ピロリ菌除菌治療の一部として使われることもあり、比較的幅広い場面で用いられています。
この記事では、クラリスがどのような病気に使われる薬なのかを整理したうえで、作用の特徴、副作用や注意点について解説します。
目次
1. クラリスとはどんな薬か
クラリスは、マクロライド系の抗菌薬です。成人には錠剤、子どもには、飲みやすいドライシロップ(水に溶かすとシロップ状になる粉薬)や細粒(粒の小さい粉末状の薬)が主に処方されます。
マクロライド系抗菌薬は、細菌がたんぱく質を作る過程を阻害することで、細菌が増えるのを防ぎます。細菌を直接殺すというより、増殖を抑えて体の免疫が感染を制御しやすくする働きが中心です。
マクロライド系抗菌薬には、比較的副作用が少ないこと、感染が起きている組織まで薬が届きやすいという特徴があります。そのため、気管支や副鼻腔などの感染症で効果を発揮しやすいとされています。
また、抗菌作用だけでなく、炎症を抑える作用も持つため、慢性副鼻腔炎などで少量を長期間使用する治療が行われることがあります。
【参考情報】『Macrolides』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/treatments/macrolides
2. クラリスが使われる主な病気
この章では、クラリスがどのような病気に使われるのかを紹介します。
2-1. 呼吸器の病気
呼吸器内科の領域で、クラリスが処方される代表的な疾患は以下となります。
<細菌性の肺炎>
特に、マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎で使用されることがあります。
◆「長引く咳はクラミジア肺炎かも?」>>
<非結核性抗酸菌症>
肺MAC症などでは、他の抗菌薬と組み合わせた多剤併用療法の一部として用いられます。
◆「肺MAC症」についてくわしく>>
<百日咳>
百日咳菌に対して有効で、治療および感染拡大防止の目的で用いられます。
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<COPDの急性増悪>
細菌感染が悪化要因と判断された場合に使用されることがあります。
◆「咳がとまらない・しつこい痰・息切れは、COPDの危険信号」>>
<びまん性汎細気管支炎>
抗菌作用よりも、気道の炎症を抑える作用を目的として、少量を長期間投与します。
2-2.耳・鼻・喉の病気
クラリスは、耳・鼻・のどに起こる細菌感染症でも処方されることの多い薬です。
<細菌性咽頭炎・扁桃炎>
溶連菌などが原因となるケースで使用され、ペニシリン系抗菌薬が使いにくい場合の選択肢となることもあります。
【参考情報】『Strep Throat』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/4602-strep-throat
<細菌性副鼻腔炎>
急性副鼻腔炎では、細菌感染に対する治療として用いられます。
慢性副鼻腔炎では、抗菌作用に加えて炎症を抑える作用を期待し、少量を長期間使用する治療が行われることがあります。
◆「副鼻腔炎」についてくわしく>>
<中耳炎>
急性中耳炎や慢性中耳炎が悪化したときに処方されることがあります。
【参考情報】『中耳炎』慶應義塾大学病院 聴覚センター
https://koac.hosp.keio.ac.jp/general/search_symptom/otitis-media
2-3. ピロリ菌除菌治療
クラリスは、胃炎や胃・十二指腸潰瘍の原因となるヘリコバクター・ピロリ菌の除菌にも使われます。
ピロリ菌の除菌では、胃酸分泌抑制剤1種類と抗菌薬2種類を組み合わせて治療します。その際に、抗菌薬としてクラリスが用いられることがあります。
ただし、クラリスが効きにくい耐性菌も増えており、除菌がうまくいかないことがあります。その場合は、クラリスの代わりにメトロニダゾールなど別の抗菌薬を用いた治療に切り替えます。
【参考情報】『ACG Clinical Guideline: Treatment of Helicobacter pylori Infection』American College of Gastroenterology
https://acgcdn.gi.org/wp-content/uploads/2018/04/ACG-H.-pylori-Guideline-Summary.pdf
2-4.その他の病気
クラリスは、原因となる細菌などに効果があると判断された場合、さまざまな感染症で使用されます。
<皮膚・軟部組織感染症>
蜂窩織炎(ほうかしきえん)やとびひなどの皮膚感染症で、原因菌がマクロライド系抗菌薬に感受性を示す場合に用いられることがあります。
<歯科・口腔外科領域の感染症>
歯周炎や歯性感染症、抜歯後に感染リスクが高いと判断された場合などに使用されることがあります。
<性感染症の一部>
性器クラミジア感染症など、マクロライド系抗菌薬が有効な病原体による感染症で使用されます。
3. クラリスの副作用と注意点
クラリスは副作用の少ない薬ですが、ほかの薬との飲み合わせには注意が必要です。
3-1. 起こりやすい副作用
クラリスで比較的よく見られる副作用は、消化器症状です。具体的には、下痢や腹痛、吐き気などが起こることがあります。
これらは腸内細菌のバランスが変化することで生じやすく、多くの場合は軽度で自然におさまります。
また、味覚異常もクラリスに特徴的な副作用の一つです。
口の中に苦味や金属味を感じることがあり、服用中に違和感として自覚されることがありますが、服用終了後には改善するケースがほとんどです。
3-2. 注意が必要な点
クラリスは比較的安全性の高い抗菌薬ですが、高齢者では体内での薬の代謝や排泄機能が低下していることがあり、副作用が出やすくなる場合があります。
また、肝機能障害がある人では薬の代謝が遅れ、副作用のリスクが高まる可能性があります。過去に肝臓の病気を指摘されたことがある場合は、事前に医師へ伝えることが重要です。
複数の薬を服用している人では、飲み合わせにも注意が必要です。特に、心臓や脂質異常症の治療薬、睡眠薬などを使用している場合は、影響が出ることがあります。
【参考情報】『Clarithromycin (oral route)』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/drugs-supplements/clarithromycin-oral-route/description/drg-20067672
市販薬にも注意が必要です。睡眠改善薬や一部の総合感冒薬を併用すると、作用が強く出たり、副作用が起こりやすくなることがあります。
また、セントジョーンズワートなど一部のサプリメントやハーブ製品は、クラリスの効き目を弱めたり、血中濃度に影響を与えることがあります。
3-3.クラリスを子どもに飲ませるときの注意点
お子さんが薬を飲むのを嫌がる場合、飲み物や食べ物に混ぜて飲ませることもあるでしょう。ただし、飲み合わせによる味の変化には注意が必要です。
クラリスは、ヨーグルトや乳酸菌飲料、柑橘系ジュースなどの酸味のある食品と混ざると、非常に強い苦味が出ることがあります。
薬に混ぜる場合は、アイスクリームや練乳など、酸味のない甘い食品が比較的適しています。
4. クラリスが「効かない」と感じるとき
クラリスを服用しても症状が改善しない場合、考えられる原因として、耐性菌の存在やウイルス感染が挙げられます。
耐性菌とは、クラリスに対して強さを持つ細菌で、正しく服用していても十分な効果が得られません。
近年、マクロライド系抗菌薬に対する耐性菌は増加しており、特に肺炎や副鼻腔炎の治療では注意が必要です。
【参考情報】『Increase in Pneumococcus Macrolide Resistance, United States』CDC
https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/15/8/08-1187_article
一方、症状の原因がウイルスである場合、クラリスはそもそも効果を示しません。風邪やインフルエンザなど、ウイルス性の疾患では抗菌薬は病原体に作用せず、症状の改善にはつながらないためです。
さらに、耐性菌やウイルス感染が原因で薬が効かない場合に、自己判断で服用を中断すると、症状の再燃や耐性菌の増加などのリスクが高まります。
そのため、クラリスの効果が見られない場合は、薬を中止するのではなく、必ず医師に相談し、必要に応じて検査や治療方針の見直しを行うことが重要です。
5.クラリスと同じマクロライド系抗菌薬との違いは?
マクロライド系抗菌薬には、クラリス以外の薬もあります。それぞれの特徴を紹介します。
<ジスロマック(アジスロマイシン)>
体の中に長くとどまる薬です。そのため、1日1回の服用で、短い期間の治療が可能です。
飲む回数が少なくて済むことから、急性の感染症や、きちんと飲み切ることが重要な治療で使われることがあります。
<エリスロマイシン>
マクロライド系の中で古くから使われてきた薬です。現在では、胃腸の不調などの副作用が出やすいことや、飲み合わせの問題から、使用される機会は減っています。
6. おわりに
クラリスは、細菌性の肺炎や耳鼻科領域の感染症、ピロリ菌除菌治療まで幅広い場面で使われているため、身近な薬として認識されています。
安全性は比較的高いものの、使い方を誤ると十分な効果が得られなかったり、耐性菌を生み出す原因になることがあります。
そのため、クラリスは医師の指示に従って正しい期間・用量で服用することが重要です。
服用中に不安や疑問が生じた場合は、自己判断で対応せず、医師や薬剤師に相談し、治療の効果と安全性を高めていきましょう。










