夏の疲れが取れないのはなぜ?睡眠と栄養・食事のポイント

「最近ずっと疲れている気がする」
「夏が終わったのに体がしんどい」
このような感覚が続いていませんか?
夏は暑さによる体力の消耗に加え、冷房の効いた室内と屋外との温度差、睡眠不足、食欲の低下などが重なりやすい季節です。食事量が減ると必要なエネルギーや栄養素が不足し、疲れやすさにつながる場合もあります。
ただし、疲労や睡眠の問題には、生活リズム、ストレス、貧血、甲状腺の病気、睡眠時無呼吸症候群など、さまざまな原因があります。
この記事では、夏の疲れと睡眠を支える食事について、管理栄養士の視点からわかりやすく解説します。
1.なぜ夏は疲れが残りやすいのか
夏の疲れには、暑さによる睡眠環境の変化や食事量の低下など、複数の要因が関係します。栄養だけでなく、睡眠時間や室温なども一緒に見直すことが大切です。
■暑さや湿度で眠りにくくなる
寝室の温度や湿度が高いと、寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めたりして、睡眠による休養感を得にくくなることがあります
【参考情報】『健康づくりのための睡眠ガイド2023』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf
■食欲の低下で食事が偏りやすい
夏は食欲が落ちて「そうめんだけ」「冷たいものだけ」という食事になりがちです。
こうした食生活が続くと、エネルギーやたんぱく質、ビタミン、ミネラルを十分に摂りにくくなり、だるさや疲れやすさにつながることがあります。
■疲労の原因が睡眠や食事以外にあることも
休養や食事を見直しても強い疲労感が続く場合は、貧血、感染症、糖尿病、甲状腺の病気などが隠れていることがあります。
さらに、大きないびき、睡眠中の呼吸停止、起床時の頭痛、日中の強い眠気がある場合は、睡眠時無呼吸症候群によって十分に休めていない可能性も考えられます。
2.食事で意識したい3つの栄養素
特定の栄養素だけで睡眠の問題が解消するわけではありません。ここでは、体内のエネルギー代謝や神経の働きなどに関わる栄養素を紹介します。
2-1.トリプトファン
トリプトファンは必須アミノ酸の一つで、神経伝達物質のセロトニンを経て、睡眠と覚醒のリズムに関わるメラトニンの材料になります。ただし、体内での生成には生活リズムやほかの栄養素なども関係します。
ただし、トリプトファンを多く摂れば、睡眠が改善するというものではありません。
特定の食品へ偏らず、毎日の食事から適量のたんぱく質を摂ることが基本です。
トリプトファンを含む食材には、次のようなものがあります。
含まれる食材の例 :鶏肉・卵・まぐろ・豆腐や納豆などの大豆製品
2-2.マグネシウム
マグネシウムは、 エネルギー産生、筋肉の収縮、神経の情報伝達などに関わるミネラルです。
マグネシウムが不足すると、筋肉や神経の働きに影響する場合があります。ただし、夏に汗をかくことだけで不足するとは限らず、睡眠への影響にも個人差があります。まずは、日々の食事から無理なく補うことを意識しましょう。
マグネシウムを含む食材には、次のようなものがあります。
含まれる食材の例 :アーモンドなどのナッツ類・ほうれん草・わかめなどの海藻類・豆腐や納豆などの大豆製品
※ナッツ類は、砂糖や人工甘味料、食塩で味付けされていないものを選び、食べ過ぎに注意してください。
このほか、商品によってはマグネシウムを含む塩もあります。栄養成分表示を確認し、日々の調味料として適量を取り入れましょう。マグネシウムを補う目的で塩の使用量を増やすことは、塩分の摂り過ぎにつながるため注意が必要です。
2-3.ビタミンB群
ビタミンB群は、糖質・脂質・たんぱく質をエネルギーとして利用する過程などに関わります。
ビタミンB1は主に糖質の代謝に、ビタミンB6はたんぱく質の代謝や神経伝達物質の合成に関係する栄養素です。不足すると疲れやすさなどが現れることがありますが、多く摂るほど疲労が早く回復するわけではありません。
どちらも健康を支える大切な栄養素なので、毎日の食事からバランスよく摂りましょう。
ビタミンB群を含む食材には、次のようなものがあります。
含まれる食材の例 :豚肉・卵・玄米・まぐろ・さんま・レバー
【参考情報】『日本人の食事摂取基準(2025年版)』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
3.夏の疲れを残さないための食事のポイント
夏の疲れを軽減するには、特定の食品を増やすだけでなく、食事の量や時間、組み合わせを整えることが大切です。
3-1.朝食にもたんぱく質を取り入れる
朝食を主食だけで済ませず、豆腐・卵・鶏肉などのたんぱく質と、生野菜や海藻類を組み合わせると、ビタミンやミネラルも補いやすくなります。 朝食にたんぱく質を取り入れることは、1日に必要な栄養素を確保するうえで役立ちます。
また、朝の光を浴びることや、起床・就寝時刻を一定にすることも、睡眠と覚醒のリズムを整えるために重要です。
3-2.遅い夕食は量と脂質を控えめにする
就寝直前に量の多い食事や脂肪の多い料理を食べると、胃もたれなどが起こり、睡眠による休養感を得にくくなる場合があります。
夕食が遅くなるときは、食べる量や脂質を控えめにするか、夕方と帰宅後に分けて食べる方法もあります。
3-3.汁物も上手に活用する
具材を加えた味噌汁や野菜スープは、水分とともに、使用する食材に応じた栄養素を補える一品です。
具材に魚、肉、卵、大豆製品、生野菜とは別の加熱野菜などを使うと、食事の品数を増やせます。
ただし、汁物だけで食事を済ませると、エネルギーやたんぱく質が不足する場合があります。ほかのおかずと組み合わせてください。
また、高血圧、心臓病、腎臓病などがある方は、塩分量にも注意が必要です。
4.睡眠を妨げやすい食習慣
食事の時間や飲み物の選び方によっては、寝つきや睡眠の持続に影響することがあります。夕方以降の習慣を確認してみましょう。
4-1.主食だけで食事を済ませる
麺類やおにぎりなど、主食だけの食事が続くと、たんぱく質、ビタミン、ミネラルが不足しやすくなります。
食事を簡単に済ませたいときも、卵、納豆、豆腐、魚、肉、生野菜などを組み合わせましょう。
4-2.アルコールやカフェインを摂る
アルコールを飲むと眠くなることがありますが、夜中に目が覚めやすくなるなど、睡眠の質を低下させる可能性があります。
夕方以降は、カフェインを含む飲み物を控えめにしましょう。カフェインの影響には個人差があるため、寝つきが悪い方は摂取する時間と量を見直すことが大切です。
コーヒーだけでなく、緑茶、紅茶、エナジードリンクなどにも含まれているため注意してください。
【参考情報】『快眠と生活習慣』厚生労働省|健康日本21アクション支援システム
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-004.html
5.疲労感が続くときは医療機関へ
夏の疲れだと思っていても、体調不良が長く続く場合は、食事や睡眠以外の原因が隠れていることがあります。
次のような症状がある場合は、医療機関への相談を検討してください。
・十分に休んでも強い疲労感が続く
・発熱、動悸、息切れ、体重減少などを伴う
・食欲が戻らない
・日中の眠気が強く、仕事や日常生活に支障が出ている
・大きないびきや睡眠中の呼吸停止を指摘された
※強い眠気があるときは運転を控えましょう
・気分の落ち込みや意欲の低下が続いている
疲労の原因は、栄養不足だけでは判断できません。症状の経過や生活への影響も含めて確認することが大切です。
6.おわりに
夏の疲れを残さないためには、睡眠環境を整えることに加え、食事を主食だけで済ませず、たんぱく質、ビタミン、ミネラルを不足なく摂ることが大切です。
一方、トリプトファン、マグネシウム、ビタミンB群を摂るだけで、睡眠や疲労が必ず改善するわけではありません。朝の光、規則的な生活、寝室の環境、夕食の時間なども一緒に見直しましょう。
自分の体に合った食事・栄養のことをもっと詳しく知りたい方は、当院の管理栄養士に相談することもできます。興味のある方は、診察時または受付で「栄養カウンセリングを受けたい」と、お気軽にお申し出ください。













