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外来

呼吸器内科で行われる専門的な検査について

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2025年12月12日
喘息の検査

咳が2週間以上続くと、肺炎などの感染症によるものなのか、アレルギーなのか、それとも別の病気が隠れているのかを見極める必要が出てきます。

正確に判断するには1つの検査だけでは不十分なことが多く、医療機関では複数の検査を組み合わせて総合的に評価します。

当院は、喉から気管・気管支、肺までを診る呼吸器専門クリニックとして、症状や状況に応じて以下の検査を実施しています。

・血液検査
・画像検査(レントゲン・胸部CT)
・呼吸機能検査(モストグラフ・スパイロメトリー・FeNO)
・血液ガス分析

この記事では、それぞれの検査について、検査の方法や目的を紹介します。

1.画像検査(レントゲン・胸部CT)


胸部画像検査は、呼吸器内科で最も基本となる検査です。

1-1.レントゲン検査

レントゲン
レントゲン検査(胸部X線検査)は、咳が続く場合や息苦しさがある場合に欠かせない検査です。

胸の内部を一度の撮影で広く確認でき、肺や気管、気管支、心臓の状態を短時間で把握できます。

レントゲンでは、肺炎、気管支炎、結核、腫瘍、間質性肺炎など、さまざまな異常の手がかりを確認できます。

また、異常の有無や大まかな範囲を把握するのにも適しています。

◆「レントゲン検査」についてもっとくわしく>>

1-2.胸部CT検査

CT
体の周囲からX線をあて、通過した情報をコンピューターで解析し、断層写真を撮影することで、胸の内部を立体的かつ細かい部分まで確認できる画像検査です。レントゲンよりも解像度が高く、肺の隅々までくわしく評価できます。

CTでは、肺炎の広がり、気管支の狭さや詰まり、肺がんや腫瘍、間質性肺炎、気胸、肺血栓塞栓症など、レントゲンでは分かりにくい異常を正確に把握できます。わずかな影や早期の変化も見つけやすいため、咳が長引く場合や原因が特定できない場合の診断に役立ちます。

※CT検査は横浜市内の提携病院で実施します。

【参考情報】『CT検査とは』がん情報サービス
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/inspection/ct.html

2.血液検査


呼吸器内科の診療では、血液検査は咳や息苦しさの原因を探るための基本的で重要な手がかりになります。

血液中の成分を調べることで、炎症や感染、アレルギー反応の有無、さらには重症度まで幅広く評価できます。

2-1.感染症の検査

肺炎や気管支炎といった感染症の可能性を判断します。

<白血球数>
白血球は、体に侵入した細菌やウイルスなどの異物と戦う細胞なので、感染症にかかると白血球の数が増える傾向があります。

さらに、増え方のパターンによって、細菌感染が疑われるのか、ウイルス感染が疑われるのかを推測することもできます。

また、アレルギー反応やストレスでも変化することがあり、診断の手がかりになります。

<CRP>
CRP(C反応性タンパク)は、体のどこかで炎症が起きたときに肝臓で作られ、血液中に増えるタンパク質です。

数値が高いほど炎症が強い可能性があり、肺炎などの細菌感染症では特に上昇しやすい特徴があります。

治療の経過をみる際にも役立ち、CRPが下がっていくかどうかで、炎症がおさまってきているかを判断する材料になります。

【参考情報】『C-Reactive Protein (CRP) Test』MedLinePlus
https://medlineplus.gov/lab-tests/c-reactive-protein-crp-test/

2-2.アレルギーの検査

喘息や花粉症など、アレルギーが関与する病気の診断に役立ちます。

<好酸球数>
好酸球は、アレルギー反応に関わる細胞です。数値が高い場合は、喘息などのアレルギー疾患が関係している可能性があります。

<総IgE値>
IgE抗体は、花粉やダニなどのアレルゲンに反応するタイプの抗体です。この数値が高いほど、アレルギー体質の傾向が強いと考えられます。一般的に200IU/mL以上で高いと判定します。

<抗原特異的IgE抗体>
どのアレルゲンに反応しているかを調べる検査です。ダニ、花粉、カビ、動物の毛やフケ、ゴキブリなど、特定の物質に対して体がIgE抗体を作っているかどうかを確認できます。

◆「ゴキブリ喘息」の情報をチェック>>

花粉症の場合、スギ、ヒノキ、シラカバ、ブタクサなど、どの花粉に対して反応するのかも調べることができます。

【参考情報】『Allergy Blood Test』MedlinePlus
https://medlineplus.gov/lab-tests/allergy-blood-test/

◆「アレルギー」についてもっとくわしく>>

3.呼吸器内科の専門的な検査


呼吸器内科では、専門の医療機器を用いた検査で気道の狭さや肺活量などを測り、喘息などの診断に役立てます。

3-1.スパイロメトリー

スパイロメトリー
スパイロメトリーは、呼吸で出入りする空気の量や勢いを調べる基本的な肺機能検査です。専用のスパイロメーターに向かって息を大きく吸ったり、力強く吐いたりすることで、肺活量や1秒量などの指標を測定します。

最大まで吸い込んだ状態から、一気に最後まで吐き切るまでの動きを記録することで、肺がどれだけしっかり空気を出し入れできているかがわかります。

肺活量は、最大限吸い込んだ後に吐き出せる空気の総量のことです。1秒量は、胸いっぱい吸った空気を勢いよく吐いたとき、最初の1秒間に出せる空気の量を指します。

これらの値が、性別・年齢・身長から算出される標準値より低い場合、気道が狭くなっている可能性があります。喘息では、これらの値が低下する傾向がみられます。

◆「喘息とはどんな病気?呼吸器内科の専門医が解説」>>

3-2.呼気一酸化窒素濃度測定(FeNO)

FENO
吐く息に含まれる一酸化窒素(NO)の量を調べる検査です。気道に炎症があるとNOが増えるため、喘息やアレルギー性の気道炎症を評価するのに役立ちます。

専用の機器にゆっくり息を吹き込むだけで測定でき、痛みもなく短時間で終わります。一般的には、NO濃度が36ppbを超えると喘息の可能性が示唆されます。

【参考情報】『What Is A FeNO Test?』American Academy of Allergy, Asthma & Immunology
https://www.aaaai.org/tools-for-the-public/conditions-library/asthma/what-is-a-feno-test

3-3.モストグラフ(MostGraph)

モストグラフ
呼吸のしやすさや気道の状態を調べる検査です。専用のマウスピースをくわえて、普段どおりに呼吸するだけで、気道の抵抗(空気の通りにくさ)を測定できます。

喘息やアレルギー疾患などによって、気管が狭くなっているかどうかを判断することができます。

息を強く吸ったり吐いたりする必要がないため、スパイロメトリーが難しい方でも受けやすいのがメリットです。

4.その他の検査

呼吸器内科では、必要に応じて以下のような検査が行われることもあります。

4-1.血液ガス分析

血液ガス
血液中の酸素や二酸化炭素の濃度を測定する検査で、動脈から採血して行います。

喘息発作で過呼吸になると、血液中に酸素が取り込まれる一方で、二酸化炭素が多く吐き出されます。動脈血中にあるこれらの量を調べることで、肺が正常に機能しているかどうかがわかります。

4-2.気道過敏性テスト


気道を刺激する薬を吸入し、その濃度に応じてどの程度気道が狭くなるか、どの段階で発作が起きるかを調べる検査です。これによって、気道がどれほど過敏になっているかを評価します。

※当院では実施しておりません

4-3.喀痰検査

気道から出る痰を採取し、感染の有無や炎症の原因を調べる検査です。痰の中に含まれる細菌・ウイルス・がん細胞などを調べることで、肺炎や結核、肺がんの診断に役立ちます。

◆「肺がんの咳と注意すべき特徴」>>

5.呼吸器内科の検査に関するよくある質問と答え


Q1. レントゲンは異常なしと言われましたが、咳がずっと続いています。なぜですか?
レントゲンでは、肺炎などの大きな変化は確認できますが、気管支の炎症や咳喘息のように、画像ではわかりにくい病気もあります。咳が続く場合は、スパイロメトリーやFeNO、必要に応じてCTなど他の検査を組み合わせて原因を調べます。

Q2. スパイロメトリーは正常なのに、喘息の可能性があると言われました。どういうことですか?
喘息でも、症状が落ち着いている時期は検査で異常が出ないことがあります。検査当日の状態や病気の重さによって結果が変わるため、FeNOの値や症状の経過、アレルギーの有無などを一緒に見て判断します。

Q3. FeNOの値が高かったのに、スパイロメトリーは正常でした。どちらを重視すればいいですか?
FeNOは「気道の炎症」を、スパイロメトリーは「空気の通りやすさ」を見ています。炎症はあるけれど、まだ気道が狭くなっていない時期には、このような結果になります。どちらか一つでは判断できないため、症状やほかの検査と合わせて総合的に評価します。

Q4. CTで軽い異常があると言われました。すぐに治療が必要なのでしょうか?
CTはごく小さな変化まで写るため、治療が必要ないレベルの変化が見つかることもあります。症状の有無、変化の進み具合、血液検査や肺機能検査の結果などを合わせて、治療するか経過を見るかを決めます。

Q5. モストグラフとスパイロメトリーで結果が違いました。どちらが正しいのですか?
2つの検査は見ているポイントが違います。

 ・モストグラフ:普段どおりの呼吸で、気道の通りやすさを測る

 ・スパイロメトリー:思いきり呼吸して、空気の流れを測る

強い呼吸が難しい方などは、モストグラフのほうが実際の状態を反映しやすいこともあります。医師は、検査結果と症状の両方から総合的に判断します。

5.おわりに

咳が2週間以上続いている時は、ただの風邪ではない可能性が高いので、呼吸器内科で検査を受け原因を調べましょう。

「こんなにたくさんの検査をしないといけないの?」と思われるかもしれませんが、咳の原因は一つではなく、いくつかの病気が重なっている場合もあるので、検査を組み合わせることで、見落としを防ぎ、最も適した治療につなげることができます。

不安に感じる方も多いと思いますが、多くの検査は痛みがなく、短時間で終わります。早めに原因を特定することで、症状の長期化を防ぎ、より早い改善が期待できます。

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