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咳の原因は猫アレルギー?症状と対処法を解説します

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年04月04日

猫と一緒にいると、咳やくしゃみが止まらなかったり、鼻やのどがムズムズするなら、猫アレルギーの疑いがあります。

それまでアレルギーに関する病気にかかったことがない人も、猫と一緒に暮らすようになってから、症状が現れることもあります。

この記事では、猫アレルギーの原因や症状について説明しています。症状があっても既に飼っている猫との暮らしを続けたい人に向け、対処法も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

1.猫アレルギーとは


猫アレルギーとはどんな病気なのか、原因や症状を説明します。

1-1.どんな病気なのか

猫アレルギーは、動物アレルギー(ペットアレルギー)の一種です。

動物アレルギーとは、動物の毛やフケなどに触れることで、さまざまなアレルギー症状が引き起こされる病気です。猫のほか、犬や鳥、ハムスターなどが原因で起こることもあります。

猫アレルギーは、成人の約10%~20%がかかっていると推定されており、近年増加傾向にあります。

また、猫にアレルギーを持っていれば、トラやライオンなど他のネコ科の動物に対しても、アレルギー反応が起こります。

【参考情報】『Pet allergy』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/pet-allergy/symptoms-causes/syc-20352192

1-2.原因

猫アレルギーは、猫の毛や唾液、皮脂腺などに含まれるタンパク質の一種であるFeld 1(フェル ディ ワン)~Feld 8に反応することで起こります。このうち、ほとんどの猫アレルギーがFeld1に反応して起こります。

Feld1は、猫の体や顔など、さまざまな場所に付着しています。また、猫の唾液などが乾燥すると、それが空気中にも浮遊します。

そのため、猫に直接触れなくても、空気中に漂っているFeld1を吸い込んで症状が現れることがあります。

【参考情報】『Human allergy to cats: A review of the impact on cat ownership and relinquishment』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8721548/

1-3.症状

猫アレルギーの症状には、以下のようなものがあります。

 ・咳

 ・くしゃみ

 ・鼻水、鼻づまり

 ・のどの痛みやかゆみ

 ・息苦しさ

 ・目のかゆみや充血

 ・皮膚のかゆみやじんましん

重症化すると、吐き気や下痢、めまいなどの症状も現れます。

さらに、アナフィラキシーショックが起こると、呼吸困難や血圧低下などを来たすため、命にかかわることもあります。

2.猫アレルギーの検査


猫アレルギーの有無は、血液検査で抗原特異的IgE抗体を調べるとわかります。

IgE抗体とは、アレルギーを引き起こす物質(アレルゲン)に反応した際に、免疫反応によって生成される物質です。

このIgE抗体を、ダニやスギ花粉など、さまざまなアレルゲンごとに測定して、その物質にアレルギーを持っているかどうかを確認します。

この検査で猫に対するIgE抗体が高い場合、猫アレルギーである可能性があります。ただし、数値が高くても、すべての人が症状を示すわけではありません。

◆「アレルギーの原因・種類・検査・治療の基本情報」>>

3.猫アレルギーの治療


残念ながら、猫アレルギーそのものを根本的に治すのは難しいため、現れている症状を和らげる治療を行います。

以下、猫アレルギーの治療に使われる薬を紹介します。

3-1.抗ヒスタミン薬

抗ヒスタミン薬は、くしゃみやかゆみを和らげる効果がある薬です。

アレルギー反応が起こると、ヒスタミンという物質が放出されます。このヒスタミンがヒスタミン受容体に結合すると、アレルギー症状が引き起こされます。抗ヒスタミン薬は、これらの結合を抑制して症状を和らげます。

◆抗アレルギー薬「アレグラ」の特徴と効果、副作用>>

3-2.喘息治療薬

咳や息苦しさが強い場合は、気管支拡張薬や吸入ステロイド薬などの喘息治療薬を使用することがあります。

アレルギー反応が起きると、刺激によって気道や気管支が炎症を起こしたり、むくんだりします。

気管支拡張薬は、アレルギーによって狭くなった気管支を広げる効果があります。一方、吸入ステロイド薬は炎症を和らげます。

3-3.その他

目のかゆみや赤みがひどければ点眼薬、鼻の症状が強い場合は点鼻薬を使うことがあります。

アレルギーの症状や程度は人によって異なります。そのため、個々の症状に合わせて薬を調整する必要があります。

4.猫アレルギーの対処法


猫アレルギーがある人の健康を考えると、やはり猫を飼わないのが一番であることは事実です。

しかし、既に猫を飼っていて、これからも猫と暮らしたいという方は、これ以上症状がひどくならないよう、以下の対処法を実践してみてください。

4-1.こまめな掃除

なるべくこまめに掃除をして、猫の毛やフケなどのアレルゲンを取り除きましょう。

例えば、猫が使っている毛布などの布製品にもアレルゲンが付きやすいので、洗濯が必要です。

また、猫のトイレにもアレルゲンがたくさん付着しているので、清潔に保つことも大切です。

4-2.換気をする

空気中に浮遊した猫のアレルゲンを吸い込まないよう、換気をしましょう。換気をすることで空気が循環し、アレルゲンが取り除かれます。

HEPAフィルター付きの空気清浄機を使うのも良い方法です。HEPAフィルターは、猫のアレルゲンの微細な粒子をキャッチしてくれます。

室内の空気を清潔に保つことで、アレルギー症状を最小限に抑えられます。

◆「空気清浄機がアレルゲンを減らす可能性」>>

4-3.猫のケア

猫の抜け毛が散らばるのを防ぐために、ブラッシングをしましょう

猫の品種によっては毛が長くて抜けやすいものもありますので、飼っている猫に適したブラッシングを行いましょう。

ケアの際に毛が飛ぶことがあるので、吸い込まないようにマスクを着用し、終わったら手を洗いましょう。

4-4.布製品を避ける

カーペットやラグなど、猫の毛が付きやすい布製品は、できるだけ部屋に置かないようにしましょう。

ソファも、布製のものだとアレルゲンが付着しやすいため、皮か合皮の製品を選ぶと安心です。

◆「ソファの選び方とお手入れ方法」>>

4-5.寝室には入れない

寝室は、布団などの布製品が多いため猫の毛が付着しやすく、アレルゲンが溜まりやすい場所です。

咳などの症状を防ぐために、できるだけ猫を寝室に入れないようにしましょう。

5.おわりに

猫アレルギーを根本的に治すことはできませんが、生活環境を見直したり、対症療法を行うことで、症状を軽減できる可能性があります。

これまで猫と一緒にいても問題がなかった人でも、「最近咳がひどくなった」などと感じる場合は、呼吸器内科かアレルギー科を受診してください。

同時に、部屋の掃除や猫のケアも行い、抜け毛などのアレルゲンをこまめに取り除く対策も講じましょう。

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