クループ症候群で現れる咳の特徴と対処法
風邪のような症状が出た後に、犬の遠吠えやオットセイの鳴き声のような咳が現れたら、クループ症候群の疑いがあります。
ただの風邪だと思っていたのに、突然このような咳が出たら驚いてしまうでしょうし、何か深刻な病気なのでは?と不安になるかもしれません。
この記事では、クループ症候群と呼ばれる症状と特徴について解説します。病院を受診する目安や咳を和らげる対処法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.クループ症候群とは何か
クループ症候群とは、風邪などの呼吸器感染症により、のどが炎症を起こして気道が狭くなることで引き起こされる症状です。
【クループ症候群の原因となる主なウイルス】
・パラインフルエンザウイルス
・RSウイルス
・アデノウイルス
・コロナウイルス
ウイルスのほか、細菌やアレルギーが原因となって症状が引き起こされることもあります。
【参考情報】『Croup』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/croup/symptoms-causes/syc-20350348
2.クループ症候群の症状
クループ症候群では、以下のような症状が現れます。
・声がかすれる
・声が出なくなる
・犬の遠吠えのような「ケンケン」という咳が出る
・オットセイの鳴き声のような「オウッオウッ」という咳が出る
・呼吸が苦しくなる
最初は軽い咳や鼻水、くしゃみなど風邪のような症状が現れ、その後、声がかすれていくようになります。
炎症により、のどの奥にある声を出す部分が狭くなると、犬の遠吠えのような咳やオットセイの鳴き声のような、特徴的な咳が出るようになります。
クループ症候群は、特に乳幼児によく見られます。日中は元気でも、夜間に急に症状が悪化することがあるので、小さい子どもが風邪をひいたときは、呼吸の状態など症状の変化を注意深く観察してください。
3.診察と治療
クループ症候群の診察と治療について説明します。
3-1.診察
クループ症候群が疑われる時、病院では以下のようなことを確認していきます。
・息を吸うときに「ヒューヒュー」とした音(吸気性喘鳴)がないか
・声が枯れていないか
・息がしっかり吸えているか
・どのような音の咳がするか
・体内の酸素が足りているか(酸素飽和濃度)
特徴的な咳が出たらスマホなどで録音しておき、診察時に医師に聞かせて確認してもらうのもいいでしょう。
3-2.検査
診察後、さらに体の状態を確認する必要があれば、検査を行います。
X線(レントゲン)検査では、首のあたりの画像を撮影し、気道の炎症や閉塞を確認します。
さらに、血液検査でウイルスの有無などを確認することもあります。
3-3.治療
気道の腫れを抑えるため、ボスミンという薬剤を吸入したり、デカドロンというステロイド薬を内服することがあります。
その他、咳や痰を抑える薬や、気管支を拡げる薬を使用することもあります。
呼吸困難などで症状が重くなった場合は、入院や酸素投与が必要となることもあります。
症状が軽いときは、十分な水分補給と安静により回復を目指していきます。
4.受診の目安
クループ症候群が疑われる時の受診の目安と適した診療科は以下の通りです。
4-1.受診の目安
症状が軽い場合は自宅での療養も可能ですが、咳がひどくてつらそうな場合は病院の受診を検討しましょう。
特に、以下のような症状が現れて呼吸が困難な様子なら、すぐに病院を受診してください。
【呼吸困難時に起こる症状】
・息を吸うたびに「キューキュー」と大きな呼吸音が聞こえる
・呼吸時に鎖骨や肋骨のくぼみがへこむ(陥没呼吸)
・ぐったりしている
・くちびるの色が悪い
・苦しくて横になれない
小さい子どもは、軽症だと思っていても急に症状が悪化することがあるため、咳や呼吸の状態をしっかり確認するようにしましょう。
4-2.何科を受診すればいいのか
基本的には小児科、あるいは耳鼻科を受診してください。
呼吸が苦しくてつらそうなときは、すぐに治療が必要なので、直ちに救急外来を受診してください。
5.家庭でのケア
自宅で咳などの症状を和らげたいときは、以下の方法を試してみてください
5-1.部屋の加湿
部屋が乾燥していると、気道の粘膜も乾燥して刺激に敏感となります。すると、咳が出やすくなります。
加湿器を利用したり、濡れたタオルなどを部屋に干して、室内の湿度を40~60%に保つようにしましょう。
5-2.水分補給
のどの乾燥を予防するためには、水分補給も大切です。ただし、冷たい飲み物はのどを刺激するため、温かい飲み物がおすすめです。
温かい飲み物を摂ると、鼻やのどが加湿され、痰も出やすくなります。
5-3.背中をさする
背中をさすったり、軽くトントンとたたいて痰の排出を助けることも、咳や息苦しさを和らげるのに効果的です。
5-4.上半身を高くして寝る
上半身を少し高くして寝ることで、気道の圧迫がおさえられ、咳や息苦しさを軽減することが期待できます。
クッションや毛布などを背中に当て30~45°ほどに上半身を高くし、楽な姿勢を維持できるように調整してください。
上半身を少し高くして寝ると、気道の圧迫が軽減され、咳や息苦しさが和らぐ可能性があります。
背中にクッションや毛布などを置き、上半身を少し起こした状態で、安静に過ごしてください。
6.おわりに
クループ症候群は、軽症で済むことが多いのですが、急に悪化して呼吸困難を起こしてしまうと命にかかわることもあります。
小さい子どもが咳をしていたら、症状をこまめに観察し、少しでもおかしいと感じることがあれば、医療機関を受診してください。
喘息や咳喘息などの患者さんは、もともと気道に炎症があるので、風邪などによりクループ症候群が生じると、症状が悪化する恐れがあります。
声枯れなどの症状が治まっても咳がしつこく長引いている場合は、呼吸器内科を受診してください。