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過換気症候群とは?原因・症状・検査・治療を解説

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年01月22日

極度の不安や緊張で突然息苦しくなり、なかなか治まらないという経験はありますか?

人間は呼吸によって体内の二酸化炭素を体外に排出していますが、何らかの原因で呼吸が必要以上に速くなると、体内の二酸化炭素が過剰に排出されてしまいます。

すると、血液がアルカリ性に傾いてさまざまな症状が現れます。このような状態を過換気症候群といいます。

一般的には「過呼吸」と呼ばれることもあり、こちらの方がなじみのある表現かもしれません。

この記事では、過換気症候群の原因や症状、発作時の対応や治療の方法などをくわしく説明します。

1.過換気症候群とは


過換気症候群とは、不安や緊張、ストレスなどをきっかけに呼吸が無意識に速く・深くなり、二酸化炭素を必要以上に吐き出してしまう状態を指します。

過換気になると、血液中の二酸化炭素濃度が低下し、血液はアルカリ性に傾きます。

その影響で血管が収縮しやすくなり、また、神経や筋肉の働きにも変化が生じることで、息苦しさや胸の圧迫感、めまい、手足や口のしびれ、動悸などの症状が現れます。

過換気症候群そのものは、命に直結することはまずありません。しかし、急に強い症状が出て、非常に苦しく感じるため、「息ができない」「このまま倒れるのではないか」といった強い不安に襲われます。

この不安がさらに呼吸を乱し、症状を強める悪循環に陥ることで、さらに強い症状が出ることが多くなります。

【参考情報】『Hyperventilation Syndrome』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/24860-hyperventilation-syndrome

2.過換気症候群の原因


過換気症候群は、心理的な原因で発症することが多いのですが、体の不調が背景にある場合もあります。

2-1.発症のきっかけ

過換気症候群は、多くの場合、不安や緊張、恐怖といった心理的要因をきっかけに発症します。強い不安が高まることで呼吸が乱れ、無意識のうちに過換気状態に陥ります。

一方で、発熱や痛み、妊娠、強い疲労、睡眠不足、激しい運動などの身体的ストレスが引き金となることもあります。これらは必ずしも直接の原因というわけではなく、体調変化への不安や自律神経の乱れを通じて、結果的に過換気を引き起こすと考えられています。

2-2.症状が似ている他の疾患に注意

心理的な原因で起こる過換気症候群では、発作の間に強い息苦しさや不安を感じますが、正しく対応すれば命に関わることはほとんどありません。

ただし、喘息の発作や心臓の病気、肺塞栓症(肺に血の塊が詰まる病気)など他の病気と症状が似ていることがあるため、初めて発作が起きた場合や症状が強い場合は、心理的な問題だと決めつけず、必ず病院を受診してください。

◆「喘息とはどんな病気?」>>

2-3.発症しやすい人と背景

過換気症候群は、思春期~若い女性に多い傾向があり、不安を感じやすい性格傾向や、緊張しやすい状況が重なることで起こることがあります。

繰り返し発作を起こす人の中には、不安障害やパニック障害などの精神疾患を背景に持つ場合もありますが、過換気を起こす人に、必ずしも精神疾患があるわけではありません。

また、過換気症候群は、喘息の患者にも多いという報告があります。

【参考情報】『Hyperventilation syndrome in adolescents with and without asthma』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25470247/

3. 過換気症候群で現れる症状と全身への影響


過換気症候群では、体内の二酸化炭素が過剰に排出されることで、さまざまな症状が現れます。

3-1.過換気症候群で現れるさまざまな症状

影響は呼吸器だけではなく、神経系や循環器、筋肉、精神面など全身に及ぶことがあります。

<呼吸器の症状>
強い息苦しさや頻呼吸(ひんこきゅう:呼吸回数が1分間に25回以上の呼吸)で、呼吸をうまくコントロールできない感覚を伴うことがあります。呼吸が続くことで、呼吸筋の疲労を感じることもあります。

<循環器系の症状>
動悸、脈が速くなる感覚、胸の違和感、胸の痛みが出ることがあります。脈の乱れを感じることもありますが、その多くは実際の不整脈ではなく、過換気に伴う自律神経の影響によるものです。

<神経・筋肉の症状>
手足や口の周りのしびれ、ふるえ、筋肉のこわばりやけいれんがみられます。重い場合には、こむら返りのような痛みを伴う「テタニー」と呼ばれる筋肉のけいれんが起こることもあります。

【参考情報】『Tetany』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/symptoms/23129-tetany

<中枢神経症状>
頭痛、めまい、ふらつき、意識が遠のくような感覚が現れることがあります。失神前の状態になることはありますが、重い意識障害はまれです。

<精神的な症状>
強い不安や恐怖感、パニックに近い状態が出ることが多く、これがさらに呼吸を乱し、症状を悪化させる悪循環を生みます。

そのほか、消化器症状として吐き気や腹部の張り、口の渇きを感じたり、全身症状として強い倦怠感、だるさ、発汗、不眠などを伴うこともあります。

3-2.発作の経過と持病への影響

発作は多くの場合、数分から30分程度、長くても1時間前後で自然におさまりますが、不安が強いと症状が長引くことがあります。

発作後には、過度な呼吸や筋肉の緊張の影響で、翌日まで疲労感やだるさが残ることも少なくありません。

喘息の持病がある方では、過換気や強い不安が引き金となり、喘息発作を同時に起こすことがあります。過換気症候群と喘息発作は症状が似ているため、両者が重なると見分けが難しくなる点に注意が必要です。

また、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の方が過換気になると、呼吸が速くなることで肺に空気がたまりやすくなり、息苦しさがさらに悪化する場合があります。

◆「COPD」についてくわしく>>

4.過換気症候群の検査


過換気症候群と診断するには、まずは検査で他の病気ではないことを確認する必要があります。

特に、命に関わる呼吸器や心臓の病気と区別することが重要です。

4-1.問診と聴診

発作が起きた状況や、不安や緊張との関係、症状の出方や持続時間、過去に同じような発作があったかどうかなどを確認します。

聴診では、喘息の喘鳴や肺炎を疑う所見、心音の異常がないかを調べます。

4-2.血液に関する検査

必要に応じて、血液検査や動脈血ガス分析が行われます。動脈血ガス分析は、過呼吸によって体の中で何が起きているかを数値で確かめる検査です。

この検査により、血液中の二酸化炭素が低下しているか、血液の状態がアルカリ性に傾いているかを確認することで、過換気症候群の可能性を判断します。ただし、発作が落ち着くと値は正常に戻ることが多いため、必ずしも異常が出るわけではありません。

また、パルスオキシメーターで血中酸素飽和度を測ることがあります。過換気症候群では通常は正常ですが、低下している場合は他の病気の可能性を考える手がかりになります。

4-3.画像検査と呼吸器の検査

症状や背景によっては、胸部X線(レントゲン)や心電図で肺炎、気胸、心不全、不整脈などの有無を確認します。

◆「レントゲン写真から、呼吸器内科でわかること」>>

喘息やCOPDなどの持病がある場合には、呼吸機能検査が追加されることもあります。

5.過換気症候群の発作時の対応


過換気症候群の発作が起きたら、まずは刺激の少ない落ち着ける場所へ移動し、焦らず対処することが重要です。

5-1.過換気になりそうなとき

違和感を覚えた段階で、まず動作を止め、「今起きているのは、過換気による呼吸の乱れです。落ち着いて呼吸を整えましょう」と認識します。

呼吸は回数を増やそうとせず、鼻からゆっくり吸い、口をすぼめて長く吐く呼吸に切り替えます。深呼吸を繰り返す必要はなく、呼吸の回数を抑えることを意識します。

呼吸の苦しさばかりに意識を向けると、不安が強まり症状が長引きやすくなります。会話をする、音楽を聴くなど、自分が落ち着ける行動で注意をそらすことも有効です。

5-2.過換気が起きたとき

姿勢を安定させ、「吸う」よりも「吐く」ことを意識します。息を吐くときは、4秒程度を目安にゆっくり吐き、吸う時間より吐く時間を長くします。

数を数えながら呼吸のリズムを整えると、過換気の勢いを抑えやすくなります。

以前は、紙袋を口と鼻にかぶせ、吐いた息を再度吸い込む「ペーパーバック法」も行われていましたが、誤嚥や低酸素のリスクがあるため、現在は推奨されていません。

また、「気合いで止めよう」「無理に息を止める」といった対応も逆効果です。

5-3.周囲にいる人ができるサポート

家族や知人に過換気の症状があらわれた場合は、慌てず冷静に対応します。

優しく声をかけて安心させ、落ち着ける場所へ移動させましょう。背中をさすってあげるなど、安心感を与える関わりも役立ちます。

6.過換気症候群の治療と再発予防


不安や緊張が強い場合には、抗不安薬を一時的に使用することがあります。これは症状を根本的に治すものではありませんが、発作時の強い不安を和らげ、悪循環を断ち切る目的で用いられます。

発作を繰り返す場合には、再発予防が治療の中心になります。過換気症候群の仕組みを理解し、「症状は命に関わらない」という認識を持つことが重要です。あわせて、腹式呼吸や呼吸法の練習、生活リズムの見直しが有効とされます。

【参考情報】『腹式呼吸のやり方』日本医師会
https://www.med.or.jp/komichi/holiday/sports_02_pop.html

ストレスや緊張が原因であれば、日頃から好きな音楽を聴いたり、好きなものを食べるといった自分なりのストレス解消方法を見つけるなど、セルフコントロールをしてリラックスする時間を持つことも効果的です。

不安障害やパニック障害が背景にある場合には、精神科・心療内科での治療が検討されます。認知行動療法や心理カウンセリング、必要に応じた薬物療法によって、不安そのものへの対処を行うことで、過換気の再発を防ぐ効果が期待されます。

このように、過換気症候群の治療は「呼吸を整える」「不安を軽減する」「繰り返さない工夫をする」という三つの視点で進められます。

7.過換気症候群とパニック障害の違いと関係


過換気症候群とパニック障害には共通の症状がありますが、同じ病気ではありません。

一方で、この2つの病気が重なり合うこともあります。

7-1.パニック障害とは

パニック障害は、精神疾患の一つで、突然強い恐怖や不安が出現する「パニック発作」を繰り返す病気です。

動悸、息苦しさ、胸痛、めまい、発汗などの症状が急激に現れ、「このまま死んでしまうのではないか」「気が狂うのではないか」といった強い恐怖を伴います。

発作を繰り返すうちに、「また起きるのではないか」という予期不安や、発作が起きた場所を避ける行動が目立つようになります。

パニック発作の時に、呼吸が速くなることもありますが、過換気は結果として起こる症状の一部にすぎません。

【参考情報】『Panic attacks and panic disorder』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/panic-attacks/symptoms-causes/syc-20376021

7-2.両者の大きな違い

過換気症候群では、呼吸の異常が主となります。ストレスや不安などの原因がはっきりしている場合も多く、発作が落ち着けば日常生活に大きな制限は残りにくい状態です。

一方、パニック障害は、はっきりした理由がないのに、突然、強い恐怖や不安におそわれる病気です。

発作が起きたあとも、「また起こるのではないか」という不安が続き、外出を控えたり、人混みを避けたりするなど、行動が制限されることがあります。

7-3.過換気症候群とパニック障害の重なり

過換気症候群とパニック障害は別の病気ではありますが、パニック発作の最中に過換気が起こることは珍しくありません。

また、過換気症候群の発作を繰り返すことで発作への不安が強まり、その経過の中でパニック障害と診断されることもあります。

過換気症候群の発作を繰り返したり、不安が続いて日常生活に支障が出ている場合は、呼吸器内科や内科の受診に加え、心療内科や精神科の受診も検討してみましょう。

8.おわりに

過換気症候群は、不安やストレスなどをきっかけに、誰にでも起こる可能性がある病気です。

症状が現れたら、まずは落ち着いてゆっくりと呼吸することを意識し、改善がなければ迷わず病院を受診しましょう。

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