喘息発作を起こさないための5つの習慣

喘息の症状をコントロールするためには、定期的な通院と、患者さん自身の自己管理が何より大事です。
自分の病気や治療法をしっかりと理解し、「自分の健康は自分で守る!」という積極的な気持ちを持ち続けましょう。
発作を起こさないためのコントロールを欠かさないことで、健康な人と変わらない生活を送ることができるようになりますので、これから紹介する5つの習慣をぜひ身につけてください。
1.発作がなくても定期的に通院しましょう
しばらく発作が起きず、症状が落ち着いた状態が続くと、「もう喘息は治った」と思い込み、自己判断で通院や服薬をやめてしまう方がいます。
しかし、発作が起こらないからといって定期的な治療をおろそかにしてしまうと、さらに気道が過敏になり、わずかな刺激でも発作が起こりやすくなってしまいます。
このような状態で発作を繰り返すと、ますます炎症がひどくなり、気道が狭くなったまま固まってしまい、正常な状態には戻らなくなります。この一連の流れを「気道のリモデリング」といいます。
【画像引用】アストラゼネカ株式会社 チェンジ喘息! 治療しないとどうなる?
https://naruhodo-zensoku.com/treat/iydnt.html
気道のリモデリングが進んでしまうと、吸入薬を使用しても気道を十分に拡張させることができなくなり、さらに発作を起こしやすくなるという悪循環に陥ります。
発作が起こらないからといって、気道の炎症が治ったわけではありません。症状が落ち着いたからといって通院を止めたり、処方された薬を使わずにいたりすると、気道の炎症はどんどん悪化していくので、油断すると命にかかわることがあります。
面倒かもしれませんが、発作を繰り返さないで済む状態を長い間維持して、健康な人と同じような生活を送るためには、定期的な通院を続けていただく必要があります。
長期間に及ぶ治療を続けていくためにも、不安や疑問点は医師によく相談し、納得して治療に取り組んでいきましょう。
2.喘息日記をつけましょう
喘息の治療は長期間に渡るため、「喘息日記」を使って管理していくと便利です。
あらかじめ印刷された表に、数値を書き込んだり〇をつけたりするだけの簡単なものなので、ぜひ毎日続けましょう。
喘息日記には、
・喘息の症状
・その他の症状
・ピークフロー値 ※
・薬の使用状況
などを記入していきます。
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※ピークフロー値とは?
ピークフロー値とは、息を十分に吸い込んでから勢いよく吐き出したときに、息が流れる速度のことです。ピークフローメーターという器具を口にくわえ、「フーーッ!」とできるだけ速く息を吐き出すと測定できます。
ピークフロー値は、朝と夜の1日2回、毎日同じ時間帯に測定して、年齢・性別・身長から割り出した基準値と比べてみましょう。
【参考情報】『ピークフロー測定とぜん息日記』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/condition/peakflow.html
測定値が基準値より低いときは、たとえ自覚症状がなくても、喘息が悪化している可能性があります。
喘息日記を毎日つけておくと、いつどんな時に、何がきっかけで発作を起こしたのかなど、喘息の状態を客観的に見ることができます。また、薬の飲み忘れや飲み過ぎを防ぐことができます。
喘息日記は、医師にとっても大事な情報源となります。診察の時に見ることで、薬が合っているのか、症状や発作をコントロールできているのかをチェックして、今後の治療方針の参考にします。
旅先などで急に症状が悪化したときも、喘息日記があれば適切な治療を受けることができます。外出時も常に持ち歩いていると安心です。
横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニックでは、喘息と診断された患者さんに、治療を始める段階で当院オリジナルの喘息日記をお渡ししていますが、無料でダウンロードできる喘息日記もあります。
【参考情報】『ぜん息「日記」』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/pamphlet/form/00/archives_17750.html
また、アプリもあるので、自分が使いやすいものを選んで毎日記録しましょう。
3.食物アレルギーに注意しましょう
卵、牛乳、大豆、小麦、そば、魚介類など、ある特定の食物がアレルゲンになって喘息発作を招くことがあります。特に小児の喘息では、食物アレルゲンが関与していることが多いです。
食事中や食後すぐに発作が起こったり、喘息の症状が悪化したら、その時に食べていたものをメモして、病院でアレルゲンを特定する検査を受けましょう。
特に子どもの場合は、重い症状が出て命にかかわることもあるので、疑わしい食品がある場合は早めに検査を受けておいてください。
<こんな食べ物にも注意!!>
タケノコ、ほうれんそう、さといも、やまいも、ナスなどのアクの強い野菜は、気道の収縮を引き起こす物質であるヒスタミンやコリンを含んでいるため、食べすぎると発作が誘発されることがあります。
また、アイスクリームやかき氷などの冷たい食べ物、ラーメンなどの熱い食べ物、唐辛子やカレー粉などの香辛料も気道を刺激するので、あまり食べすぎないようにしましょう。
4.お酒はできるだけ控えましょう
お酒を飲むと、喘息の症状が悪化することがあります。これを「アルコール誘発喘息」と呼びます。
【参考情報】『Alcohol and asthma』Asthma + Lung UK
https://www.asthmaandlung.org.uk/conditions/asthma/asthma-triggers/alcohol
飲酒によって咳や息苦しさ、喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒュー音)が出やすくなる人は少なくありません。
特に日本人は、アルコールを分解する過程で発生するアセトアルデヒドという物質をうまく代謝できない体質の人が多く、この物質が気道を刺激し、炎症を悪化させる原因となります。
遺伝的にアルコール脱水素酵素(ALDH2)の活性が低い人では、少量の飲酒でも顔が赤くなったり動悸が起きたりすることがあり、そのようなタイプの人ほど喘息発作を起こしやすい傾向があります。
さらに、ワインやビール、日本酒などには、亜硫酸塩(酸化防止剤)やヒスタミンなど、気道を刺激する成分が含まれている場合があり、これらはアレルギー反応を誘発し、気道の炎症を強めることがあります。
冷たいビールが気道の粘膜を刺激したり、飲酒後に冷たい夜風にあたることで気管支が収縮し、発作を起こすこともあります。
また、酔った状態で吸入薬や内服薬の服用を忘れてしまうと、症状のコントロールが乱れる恐れがありますし、アルコールが睡眠の質を下げることも、夜間の喘息発作を悪化させる要因となります。
喘息の症状を安定させるためには、飲酒はできるだけ控えるのが望ましいでしょう。どうしても飲む場合は、少量にとどめ、発作を起こしやすい種類の酒や冷たい飲み物は避けること、薬の服用を忘れないことが大切です。
5.タバコは絶対にやめてください
タバコには、ニコチンをはじめ、タールや一酸化炭素、ホルムアルデヒド、アクロレインなど200種類以上の有害物質が含まれています。これらを吸い込むことで、気道の粘膜が慢性的に炎症を起こし、気道が狭くなりやすくなります。
【参考情報】『Tobacco, Nicotine, and E-Cigarettes Research Report Introduction』National Institute on Drug Abuse
https://nida.nih.gov/publications/drugfacts/cigarettes-other-tobacco-products#:~:text=Tobacco%20contains%20nicotine%2C%20the%20ingredient,of%20the%20chemical%20messenger%20dopamine.
その結果、咳や痰、息苦しさが悪化し、喘息発作を引き起こすリスクが高まります。特にタバコの煙にはPM2.5などの微細粒子が多く含まれ、気管支の奥深くまで入り込むため、わずかな量でも強い刺激となります。
さらに、タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、酸素の供給を妨げることで呼吸機能の回復を遅らせます。喫煙を続けると、気道の炎症が慢性化し、喘息だけでなく慢性閉塞性肺疾患(COPD)を併発する危険性もあります。また、喫煙によってステロイド吸入薬などの効果が低下し、治療を続けても症状が改善しにくくなることが知られています。
受動喫煙(他人の煙を吸い込むこと)も非常に有害で、喘息を悪化させる大きな要因です。家族や職場の人が喫煙者の場合、本人が吸わなくても、煙に含まれる有害物質が衣服や髪に付着して残る「三次喫煙((サードハンド・スモーク)」によっても発作を起こすことがあります。特に子どもや高齢者、女性はこの影響を受けやすいといわれています。
【参考情報】『三次喫煙(サードハンド・スモーク)』e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/tobacco/yt-057
タバコは喘息の人にとって、何ひとつ良いことがありません。今すぐ禁煙を始めることが、症状を安定させる最も確実な方法です。自分ひとりで禁煙するのが難しい場合は、医師のサポートを受けられる禁煙外来を利用しましょう。
家族に喫煙者がいる場合は、禁煙をお願いするのが理想的ですが、難しいときは必ず屋外や換気のよい場所で吸ってもらい、室内では絶対に吸わないよう協力を求めましょう。家庭内の空気を清潔に保つことが、喘息の発作を防ぐ大切な第一歩です。
6.おわりに
喘息の人にとって最も重要なことは、発作を起こさないようにすることです。
発作を防ぐためには、まず自分の症状をよく理解し、何が引き金になっているのかを把握することが大切です。
治療面では、医師の指示に従って吸入薬や内服薬を正しく使い続けることが欠かせません。症状が落ち着いても、自己判断で薬を中止すると発作が再発しやすくなります。
吸入器の使い方や投薬のタイミングを確認し、定期的に医師の診察を受けてコントロール状態をチェックしましょう。












