喘息治療薬「エナジア」の特徴と効果、副作用

エナジアは、吸入ステロイド薬(ICS)・長時間作用性β2刺激薬(LABA)・長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の3つの成分を1つの吸入器にまとめた喘息治療薬です。
これまで複数の吸入薬を組み合わせて使っていた治療を1つにまとめられるため、吸入の手間を減らしながら、気道の炎症を抑える作用と気管支を広げる作用を同時に得られるのが特徴です
この記事では、エナジアの効果や特徴、正しい使い方、注意すべき副作用について詳しく解説していきます。
1. エナジアとはどのような薬か
エナジアは、喘息の長期的なコントロールを目的として使用される吸入薬です。
1-1. 3種類の成分を配合した吸入薬
エナジアは、吸入ステロイド薬(ICS)・長時間作用性β2刺激薬(LABA)・長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の3種類の成分を配合した吸入薬です。
【参考情報】『Enerzair Breezhaler』EU Medicines Agency
https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/EPAR/enerzair-breezhaler
エナジアに含まれる3つの有効成分と、それぞれの主な作用は以下のとおりです。
| 成分 | 種類 | 主な作用 |
|---|---|---|
| モメタゾン | 吸入ステロイド薬(ICS) | 気道の炎症を抑え、喘息発作を予防する |
| インダカテロール | 長時間作用性β2刺激薬(LABA) | 気管支を広げ、呼吸を楽にする |
| グリコピロニウム | 長時間作用性抗コリン薬(LAMA) | 気管支が収縮する働きを抑え、気道を広げる |
吸入ステロイド薬が喘息の原因となる気道の炎症を抑え、2種類の気管支拡張薬が異なる仕組みで気道を広げることで、咳や息苦しさ、喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒュー)などの症状を改善し、喘息発作が起こりにくい状態を維持します。
1-2. エナジアが使われるケース
エナジアは、主に吸入ステロイド薬と長時間作用性β2刺激薬による治療だけでは、喘息症状を十分にコントロールできない場合に使用されます。
例えば、咳や息苦しさが続く場合や、喘息発作を繰り返す場合などに、気管支を広げる作用をさらに強化する目的で処方されることがあります。
また、それまで複数の吸入薬を使用していた患者さんでは、3種類の成分を1つの吸入薬で使用できるため、吸入回数や薬剤の管理がしやすくなる場合もあります。
2.エナジアの使い方
エナジアは「ブリーズヘラー」と呼ばれるデバイス(吸入用機器)を使い、「1日1回・1カプセル」を服用します。
エナジアには、中用量と高用量の2種類があります。吸入前に、エナジアのカプセルが「中用量」と「高用量」のどちらかを確認し、ご自身の吸入するカプセルが正しいものかどうかを確認しましょう。
①吸入準備
キャップを上に外します。本体に矢印が記載されているため、その矢印が記載されている面を手前に向け、吸入口を斜めに倒します。
②カプセルを取り出す
薬剤が入ったシートから、カプセルをひとつ取り出します。
③カプセルを入れる
カプセルを装填部に入れ、吸入口を閉じます。
※吸入口から直接カプセルを入れないようにご注意下さい。
④薬剤をセットする(カプセルに穴をあける)
吸入器を上に向けて持ち、本体両側のボタンをカチッと音がするまで1 回押します。
※カプセル破損の原因になるため、何度も押してはいけません。
⑤息を吐き出す
姿勢を正し、無理のない程度で、しっかり息を吐き切ります。
⑥薬剤を吸い込む
マウスピース(吸入口)を深くくわえて口をすぼめ、「強く」「早く」「一気に」スーッと息を吸い込んでください。
カプセルが震えるような「カラカラ」という音が聞こえる程度の速さで吸入してください。
⑦息を止める
薬剤を吸い込んだら、マウスピースから口を離して3~5秒ほど息を止め、その後ゆっくりと息を吐いて呼吸を再開します。
⑧カプセルを捨てる
⑨うがいをする
口の中に残った薬剤を洗い流します。
ブリーズヘラー(吸入器)は、30日を目安に交換していただくのがおすすめです。水などで洗わないようにご注意ください。
【参考情報】『はじめてのエナジア』ノバルティスファーマ
https://www.novartis.com/jp-ja/sites/novartis_jp/files/hajimete-enerzair_201020.pdf
3. エナジアの副作用
エナジアは、適切に使用すれば副作用は比較的少ない薬ですが、吸入ステロイド薬や気管支拡張薬による副作用が現れることがあります。
3-1. 起こりやすい副作用
エナジアに含まれる吸入ステロイド薬(モメタゾン)では、嗄声(させい:声のかすれ)や口腔カンジダ症が起こることがあります。
嗄声は、吸入した薬剤が声帯付近に付着することで起こると考えられています。
口腔カンジダ症は、口の中にいるカンジダという真菌(カビ)が増殖することで起こります。口の中に白い苔のようなものが付着したり、痛みや違和感が現れたりすることがあります。
【参考情報】『口腔カンジダ症』日本口腔外科学会
https://www.jsoms.or.jp/public/disease/setumei_koku/#c05
一方、エナジアに含まれる気管支拡張薬(インダカテロール、グリコピロニウム)の影響で、以下のような副作用がみられることがあります。
・口の渇き
・動悸
・頻脈
・不整脈
これらは多くの場合一時的ですが、症状が強い場合や長く続く場合は、自己判断で使用を中止せず、主治医へ相談しましょう。
3-2. 副作用を予防する方法
吸入ステロイド薬による口やのどの副作用は、吸入後にうがいを行うことで予防できると考えられています。
吸入後は、口の中やのどに付着した薬剤を洗い流すため、毎回うがいをする習慣をつけましょう。
うがいをする際は、まず口の中をすすぐ「ブクブクうがい」を行い、その後にのどを洗う「ガラガラうがい」を行うと、口腔内やのどに残った薬剤を効率よく洗い流すことができます。
また、薬剤をしっかり肺まで届けるためには、医師や薬剤師から指導された正しい吸入方法を守ることも重要です。吸入方法が誤っていると、薬剤が口やのどに多く付着し、副作用が起こりやすくなる可能性があります。
3-3. 長期間使用するときの注意点
吸入ステロイド薬は、飲み薬のステロイドと比べると全身への影響が少なく、通常の用量で使用していれば全身性の副作用が起こることはまれです。これは、薬剤が気道に直接作用するため、体内へ吸収される量が少ないことによります。そのため、喘息の長期管理において安全性の高い治療薬として広く使用されています。
一方で、高用量の吸入ステロイド薬を長期間使用した場合には、わずかに全身へ吸収されたステロイドの影響により、副腎機能への影響や骨密度の低下、白内障などの眼の病気のリスクが高まる可能性があります。
【参考情報】『Systemic adverse effects from inhaled corticosteroid use in asthma: a systematic review』BMJ Journals
https://bmjopenrespres.bmj.com/content/7/1/e000756
ただし、これらの副作用は頻繁に起こるものではなく、医師は症状や吸入量を定期的に確認しながら、必要に応じて用量の調整を行います。
そのため、自己判断で吸入回数を増やしたり減らしたりせず、医師の指示どおり継続して使用することが大切です。
4. エナジアを使用するときの注意点
エナジアの効果を十分に得るためには、正しい方法で継続して使用することが大切です。
4-1. 発作時の薬ではない
エナジアは、喘息を長期的にコントロールするためのコントローラー(長期管理薬)です。毎日継続して使用することで、気道の炎症を抑え、喘息発作が起こりにくい状態を維持します。
一方で、喘息発作が起こったときの咳や息苦しさ、ゼーゼー・ヒューヒューといった症状をすぐに改善する薬ではありません。
発作が起こった場合は、医師から処方されているリリーバー(発作治療薬)を使用してください。
リリーバーを使用しても症状が改善しない場合や、息苦しさが強い場合は、重い喘息発作の可能性があります。自己判断で様子を見続けず、速やかに医療機関を受診しましょう。
4-2. 自己判断で中止しない
エナジアを使用して症状が改善しても、気道の炎症が完全になくなったとは限りません。
喘息は慢性的な炎症が続く病気であり、症状がない時期にも炎症が残っていることがあります。そのため、自己判断で吸入を中止すると炎症が再び悪化し、喘息発作が起こりやすくなるおそれがあります。
症状が落ち着いているときも、医師の指示どおり継続して使用しましょう。減量や中止を希望する場合は、必ず主治医と相談したうえで治療方針を決めることが大切です。
4-3. 妊娠・授乳中は医師に相談する
妊娠中や授乳中であっても、喘息を良好にコントロールすることは、母体と赤ちゃんの健康を守るために重要です。
一方で、妊娠中や授乳中の薬の使用は、妊娠週数や症状などによって判断が異なります。
エナジアを使用中に妊娠した場合や妊娠を希望している場合、授乳中の方は、自己判断で使用を中止せず、主治医へ相談してください。
医師は、喘息を十分にコントロールするメリットと、薬を使用する際のリスクを総合的に考慮したうえで、治療方針を判断します。
【参考情報】『Pregnancy and Asthma』American College of Allergy Asthma and Immunology
https://acaai.org/asthma/asthma-101/who-gets-asthma/pregnancy-and-asthma/
4-4. エナジアが使いにくい場合
エナジアは、カプセルをブリーズヘラーにセットして吸入するタイプの吸入薬です。
そのため、毎回カプセルを取り出して吸入器へセットする操作が必要になります。
手先の細かい動きが苦手な方や、指先に力が入りにくい方、視力の低下によってカプセルの取り扱いが難しい方では負担になることがあります。
吸入器の操作が難しいと感じる場合は、無理に使い続けるのではなく、主治医や薬剤師へ相談しましょう。
吸入薬には、ボタンを押すだけで使用できるものや、薬剤をあらかじめセットした状態で使用できるものなど、さまざまな種類があります。
症状や使いやすさに応じて、他の吸入薬への変更を検討できる場合もあります。
5. エナジアの薬価
エナジアの薬価(2026年7月時点)は、以下のとおりです。
・エナジア吸入用カプセル中用量 290.30円/カプセル
・エナジア吸入用カプセル高用量 331.50円/カプセル
エナジアの代わりとなるジェネリック医薬品はありません。
6.おわりに
エナジアは、1日1回の吸入で、3つの成分を一度に服用できるため、毎日の吸入の手間を大きく減らすことができます。
それまで、2,3種類の薬を別々に服用していた方も、エナジアのような配合剤の登場により薬の服用がラクになりました。その結果、毎日の服薬が続けやすくなり、治療効果も高まることが期待されています。
しかし、小さなカプセルを取り扱う必要があるため、指先が不自由な方や、視力が低下している方などには、吸入が難しいという面もあります。
吸入薬にはさまざまなタイプがあり、使用方法も異なります。エナジアの取り扱いが難しく感じる方は、喘息治療の経験豊富な医師にご相談ください。
以下の症状がある方は、早めの受診をおすすめします
- 咳が2週間以上続いている
- 息切れや息苦しさを感じることがある
- 痰がからんで気になる
- 健康診断で肺や呼吸の異常を指摘された
- 市販薬を飲んでも症状が改善しない
当てはまる項目がある方は、呼吸器専門医に相談してみませんか?












