アレルギー体質の人が知っておきたい、食事と腸の関係

アレルギーと腸には、実は密接な関係があります。喘息や花粉症、アトピー性皮膚炎に悩む人は、腸内環境を整える食事や生活習慣を知っておくことが大切です。
腸内環境が乱れ、悪玉菌が優位になると、腸のバリア機能が弱まり、アレルゲンが体内に入り込みやすくなります。
その結果、アレルギー症状が悪化しやすくなったり、炎症が長引きやすくなったりすることがあります。
この記事では、アレルギー体質を改善したい人に向け、腸内環境を整えるための具体的な食事の工夫や、日常生活で意識したいポイントを説明します。
腸から体質を見直すためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。
目次
1.アレルギー体質を左右する「腸」の働きと免疫の関係
アレルギー症状を改善するうえで、腸の働きが重要な役割を担っていることが、近年の研究で明らかになってきました。
1-1.免疫のしくみとアレルギーの起こり方
私たちの体には、細菌やウイルスのような異物から身を守る「免疫」という仕組みが備わっています。
しかし食べ物や花粉など、もともとは体には害のないものが、免疫のシステムによって異物=敵とみなされると、敵を追い出そうとする仕組みがはたらいて、くしゃみやかゆみなどの症状が起こるのです。
このように、体を守るための免疫が、逆に体を傷つけてしまう反応を「アレルギー」といいます。
1-2.免疫のしくみとアレルギーの起こり方
喘息、花粉症、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患は、腸内環境と密接に関わっていることが指摘されています。
腸内細菌がつくり出す短鎖脂肪酸には、アレルギー反応を抑える働きがあると報告されており、腸内の状態が免疫のバランスに影響することがわかっています。
【参考情報】『短鎖脂肪酸がアレルギーを抑制する作用機構を解明~アレルギーに対する食物繊維の有効性を分子レベルで実証~』東京理科大学
https://www.tus.ac.jp/today/archive/20240201_2581.html
1-3.腸が免疫の中心として働く理由
免疫細胞の約半分は小腸に、さらに約2割は大腸に存在しています。小腸には外敵を察知してリンパ節に指令を送るセンサーが多くあり、大腸には100兆もの腸内細菌が棲みついています。
これらの細菌バランスが免疫の働きを左右するため、腸の状態は体全体の防御力に直結します。
つまり、病気やアレルギーから体を守るためには、腸内環境を整え、腸を元気に保つことが重要なのです。
【参考情報】『If you want to boost immunity, look to the gut』UCLA Health
https://www.uclahealth.org/news/article/want-to-boost-immunity-look-to-the-gut
2.アレルギー体質を改善する食事・3つのポイント
アレルギー体質を改善したい人の食事は、善玉菌を増やす食材を積極的に摂り、主食などの糖質を減らすことがポイントとなります。
2-1.善玉菌を増やす食材
腸内環境のバランスを整えるには、乳酸菌のような善玉菌を含む食材を摂ること、そして善玉菌のエサになる食物繊維やオリゴ糖を含む食材を摂ることが大切です。
昔ながらの和食には、善玉菌を増やす食物繊維や発酵食品が豊富に含まれています。
【善玉菌を増やしやすい和の食材】
・ぬか漬け、たくあん
・味噌、しょうゆ
・納豆
・里いも、ごぼう、れんこん
・こんにゃく
・乾物(わかめ、昆布、ひじき、切り干し大根)
・大豆製品(豆腐、おから、高野豆腐)
しかし現代は、食生活の欧米化やファストフードの普及により、毎日の食事で善玉菌を増やす機会が減っています。
ファストフードや加工食品には、腸内で悪玉菌が好む脂質や糖質が多く、腸内フローラのバランスを崩す一因となります。
その結果、昔に比べて免疫力が弱くなり、アレルギーに悩む人が増えてきたのだと考えられています。
2-2.糖質中心の食生活を見直す
アレルギー症状に悩む人は、悪玉菌のエサになる「糖質」を多く摂りがちです。
糖質はお菓子だけでなく、ご飯・パン・麺類などの主食にも多く含まれるため、日常的に炭水化物が多くなっていないか確認することが大切です。
糖質過多になると血糖値の変動が大きくなり、体はそれを安定させるために副腎皮質ホルモン「コルチゾール」を分泌します。
コルチゾールはステロイドと同様の作用を持つ重要なホルモンですが、血糖調整に使われてしまうとアレルギーを抑える力が不足し、症状が悪化しやすくなります。
【参考情報】『Cortisol』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/articles/22187-cortisol
丼物やラーメンなど、手軽に食べられるメニューは糖質に偏りやすく、食物繊維やタンパク質が不足しがちです。そのため、多く摂りすぎると善玉菌が減少て腸内環境が乱れ、、アレルギー体質の悪化につながることがあります。
腸の健康を守るには、「低糖質・高タンパク」の食事を意識しましょう。食物繊維は善玉菌のエサとなり、タンパク質は免疫システムを支える重要な栄養素です。
間食もナッツやチーズなど糖質の少ない食品を選ぶとよいでしょう。
低糖質の食事に切り替えると、人によっては便が出にくくなることがあります。その場合は、キノコや海藻類など食物繊維が多い食材を増やし、十分な水分を摂ることで解消しやすくなります。
糖質を控えつつ、腸と免疫がしっかり働く食事バランスを整えることが、アレルギー対策の基本です。
2-3.食べる順番を変える
血糖値の急激な変動を避けるには、1日に摂取する糖質量を抑えるだけでなく、食べる順番や組み合わせを工夫することが効果的です。
特に、食物繊維・たんぱく質・脂質の順に体へ入れていくと、消化吸収のスピードが調整され、血糖値の乱高下を防ぎやすくなります。
【参考情報】『The impact of food order on postprandial glycaemic excursions in prediabetes』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30101510/
具体的には、食事の最初にサラダ、海藻、きのこ類、野菜スープなど、食物繊維を多く含むメニューを取り入れます。食物繊維は胃の中で糖質の吸収を遅らせるフィルターの役割を果たします。
続いて、肉・魚・卵・大豆製品など、たんぱく質の多いおかずを食べます。これらは胃内容物の滞在時間を延ばし、さらに血糖の上昇を穏やかにします。
最後に、ごはん、パン、麺類といった主食を食べることで、糖質が急に吸収されるのを防ぎやすくなります。
こうした食べ方は「食後高血糖」を抑えるうえで実証的な効果があり、体重管理やインスリン抵抗性の改善にもつながるとされています。日常の食事で無理なく取り入れられる点もメリットです。
3.「腸もれ」を引き起こす食べ物に注意
原因不明の不調やアレルギー症状の背景には、「腸もれ(リーキーガット症候群)」が関係している場合があります。
3-1.腸もれ(リーキーガット症候群)とは何か
腸もれ(リーキーガット症候群)とは、腸の粘膜細胞同士をつなぎ止めている構造がゆるみ、通常は体内に入らないはずの細菌や毒素、未消化のタンパク質などが血液中へ漏れ出してしまう状態を指します。
健康な腸では、腸粘膜がバリアの役割を果たし、必要な栄養素だけを吸収しながら有害物質の侵入を防いでいますが、このバリア機能が低下すると腸の透過性が高まります。
腸から漏れ出した未消化のタンパク質は、本来体内に存在しないものとして免疫に認識されやすく、免疫細胞が「異物」と判断して攻撃を始めます。
この免疫反応が繰り返されることで、体は慢性的に炎症を起こしやすい状態になります。その結果、喘息や花粉症、アトピー性皮膚炎といったアレルギー性疾患の発症や悪化につながると考えられています。
さらに、腸は全身の免疫細胞の多くが集まる臓器であるため、腸内環境の乱れはアレルギーだけでなく、下痢や腹痛、便秘、肌トラブル、疲れやすさなど、さまざまな不調として現れることもあります。
3-2.腸もれを引き起こす主な原因
食物アレルギーには、原因となる食べ物を摂取してから短時間でじんましんや呼吸困難などの症状が現れる「即時型アレルギー」と、数時間から数日たってから体調不良として現れる「遅延型アレルギー」の2種類があります。
即時型は比較的わかりやすい一方、遅延型は症状と食事内容の関連に気づきにくいのが特徴です。
腸もれは、腸内細菌のバランスが崩れて腸内環境が悪化し、腸粘膜が慢性的に炎症を起こすことで起こりやすくなります。
これに加えて、小麦や乳製品などが関与する遅延型アレルギーによって腸が刺激され続けると、腸粘膜の修復が追いつかず、腸のバリア機能が低下すると考えられています。
その結果、本来は体内に侵入しない物質が腸から漏れ出しやすい状態になります。
3-3.遅延型アレルギーの特徴と対処法
遅延型アレルギーの代表的なものが、小麦に含まれるグルテンが原因となる「グルテン不耐症」と、乳製品に含まれるカゼインが原因となる「カゼイン不耐症」です。
【参考情報】『グルテン関連の疾患とグルテンフリー』農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/okome_summary/04/functio_nality_03.html
これらは摂取後すぐに症状が出ないため、日常的に食べている食品が不調の原因になっていることに気づかないケースが少なくありません。
主な症状としては、下痢や腹痛、腹部膨満感などの消化器症状に加え、肌荒れ、頭重感、慢性的なだるさなど、全身の不調として現れることもあります。
こうした状態が続くと、腸もれを助長し、体調不良が慢性化する可能性があります。
疑わしい場合は、小麦や乳製品を一度食事から除き、2週間ほど続けて体調の変化を観察します。
その期間中に症状が軽減した場合、遅延型アレルギーが関与していた可能性が高いと考えられます。
4.おわりに
腸内環境が整うと、腸のはたらきがよくなって免疫力が上がります。その結果、アレルギーの症状が和らいでいきます。喘息や花粉症、アトピー性皮膚炎に悩む人は、ぜひ食生活を見直し、腸が元気になる食材を取り入れてみてください。
腸の動きをコントロールしている自律神経のバランスを整える運動もおすすめです。
自律神経のバランスを整えるには、きついトレーニングよりも軽めの運動が適しているので、ウォーキングやラジオ体操、ストレッチ、ヨガなどで全身を動かしましょう。また、駅ではエスカレーターを使わず階段を使うなど、日常生活の中でもこまめに体を動かすことを意識してください。











