ビタミンAのおもな特徴とアレルギー疾患を改善するはたらき

ビタミンAは、目や皮膚の粘膜を正常に保つ、視覚機能をサポートするといった基本的な働きに加え、免疫の調整にも深く関わる栄養素です。
特に、炎症反応のコントロールや粘膜バリアの維持に作用することから、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状を和らげる助けになることは、あまり知られていないのではないでしょうか。
この記事では、ビタミンAが持つ主な働きと、アレルギー症状にどのように作用するのかをわかりやすく整理します。
あわせて、日常の食事で効率よく摂るためのポイントや、不足しやすい人の傾向についても紹介します。健康維持やアレルギー対策の参考として活用してください。
目次
1.ビタミンAとはどのような栄養素か
ビタミンAは、1913年にアメリカの2つの研究グループによってほぼ同時期に発見された栄養素です。
1-1.ビタミンAの作用と含まれる食品
ビタミンAは、レチノール・レチナール・レチノイン酸といった複数の形で存在し、それぞれが体内で連携して働きます。これにより、次のような重要な作用が期待できます。
・粘膜を丈夫にする
・アレルゲンが体内へ入り込むのを防ぐ
・免疫細胞のバランスを整える
ビタミンAは、レバー、卵、乳製品、うなぎなどの動物性食品に多く含まれています。
一方、緑黄色野菜や果物に含まれる「プロビタミンA」は、体内で必要な量だけビタミンAに変換されるため、摂りすぎの心配が少ない点が特徴です。
プロビタミンAは、野菜や果物の赤や黄色の色素として「カロテノイド」とも呼ばれています。
【参考情報】『カロテノイド』農研機構
https://www.naro.go.jp/laboratory/nivfs/kiso/color_shikiso/contents/carotenoid.html
β(ベータ)-カロテンやリコピン、ルテインなどもその一種で、抗酸化作用を持つことから生活習慣病の予防にも注目されています。
1-2.ビタミンAの健康への影響
ビタミンAは、皮膚や角膜、口腔、気管支、肺、胃腸、膀胱、子宮などの上皮組織の健康維持に欠かせない栄養素です。
これらの組織は外界と接しているため、ビタミンAの不足は乾燥・炎症・感染リスクの上昇につながります。
ビタミンAは、視覚機能にも深く関わっており、光の明暗を感じる網膜の「ロドプシン」はビタミンAとたんぱく質からつくられています。
そのため、不足すると暗い場所で見えにくくなる「夜盲症」が起こることも知られています。
【参考情報】『Night Blindness (Nyctalopia)』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/symptoms/10118-night-blindness-nyctalopia
近年の研究では、ビタミンAの摂取ががんの発生を抑える可能性、生殖機能の維持、胎児の正常な発育に関わる点など、多方面で重要な役割が明らかになっています。
また、抗酸化作用によって細胞の老化を抑える効果も注目されています。
1-3.ビタミンAが不足しやすい人は?
以下のような人は、食材と調理法、量のバランスに注意しながら、ビタミンAを適切に摂取することが望まれます。
・緑黄色野菜をあまり食べず、肉や魚などに偏った食生活をしている人
・ダイエットや偏食などで脂質を制限している人
・妊娠中または授乳中の女性
日本を含む多くの国では、ビタミンAの量を「レチノール活性当量(RAE)」という単位であらわし、年齢や性別に応じた推奨量が定められています。
【参考情報】『関連資料(レチノール活性当量)』日本食品分析センター
https://www.jfrl.or.jp/storage/file/Retinol_activity_equivalents_guide.pdf
成人男性では1日あたり約 900 µgRAE、成人女性では約 700 µgRAEが目安です。妊娠・授乳中はもう少し多めの摂取が望ましいとされています。
2.ビタミンAは、なぜアレルギー疾患の改善に必要なのか
アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギーでは、皮膚や粘膜にトラブルが起きます。
ビタミンAは、その皮膚や粘膜を正常に保つためになくてはならない栄養素です。
2-1.ビタミンA不足と粘膜バリアの低下
私たちの気道や鼻腔にある粘膜には、ホウキのような毛がびっしりと生えています。これを線毛と言います。
【参考情報】『線毛』難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/glossary/%E7%B7%9A%E6%AF%9B
線毛は1秒間に40~60回というスピードでパタパタと動いており、外から侵入してきた花粉やチリ、ウイルスや細菌などの異物を追い払っています。
粘膜や線毛の表面は粘液で覆われているのですが、粘液の主な成分は「コンドロイチン硫酸」と呼ばれる物質です。コンドロイチン硫酸を体内で作り出すためには、ビタミンAが必要となります。
ビタミンAが不足すると粘液が十分に作られず、粘膜が角質化して乾いてしまいます。そして粘膜が乾くと、チリやホコリ、細菌から体を守るバリア機能が低下し、異物が侵入しやすくなります。
その結果、皮膚や粘膜にさまざまな症状が起きることで、アトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー疾患につながっていきます。
2-2.IgA抗体の分泌と防御機能
また、線毛からは、ネバネバした粘液状のIgA抗体という物質が分泌されます。このIgA抗体が、体内に侵入してきた異物を包み込み、線毛運動によって体外に押し出します。
IgA抗体の材料になっているのはグルタミンとビタミンAであるため、線毛運動が正常に行われるためにもビタミンAが必要です。
3.ビタミンAを効率よく摂取する方法
ビタミンAを効率よく摂取するには、動物性の食材と植物性の食材を上手に組み合わせる方法、また、必要に応じてサプリメントを利用する方法があります。
3-1.食事で摂取する
ビタミンAは牛や豚、鶏のレバー、ウナギ、銀ダラなどに豊富に含まれています。そして、体内でビタミンAに変わるプロビタミンAは、にんじん、かぼちゃ、ニラなどの緑黄色野菜に多く含まれています。
緑黄色野菜に含まれるプロビタミンAの一種であるβ(ベータ)-カロテンは、油を使って調理すると吸収しやすくなります。にんじんを使ったきんぴらや、レバーとニラを使うレバニラ炒めは、ビタミンAを効率よく摂取できる料理としておすすめです。
3-2.サプリメントで摂取する
かつては、ビタミンAが脂溶性(油に溶けやすく、水に溶けにくい性質)であることから、摂りすぎると体に蓄積して、過剰症を起こすと言われていました。
しかし現在では、肝臓にあるステレイトセル(肝星細胞)という細胞がビタミンAを貯蔵し、必要に応じてビタミンAを供給するシステムがあることがわかっています。
【参考情報】『Hepatic stellate cell (vitamin A-storing cell) and its relative–past, present and future』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21067523/#:~:text=HSCs%20(hepatic%20stellate%20cells)%20(,as%20retinyl%20palmitate%20in%20lipid
また、植物由来のβカロチンは、必要な量だけ体内でビタミンAに変換されて利用されることもわかっています。そのため、ビタミンAの過剰症リスクを心配する必要はほとんどなく、天然由来のビタミンAの摂取は安全であると考えられています。
信頼できるサプリを選ぶには「GMP認定工場」で作られているものかどうかを確かめると良いでしょう。
GMPとは「Good Manufactuiring Practice=適正製品規範」の略で、原材料の受け入れから製造、出荷に至るまで、製品が安全に作られ、一定の品質が保たれるために設けられた、医薬品レベルの厳しい製造工程管理基準です。
【参考情報】『GMPとは』日本医薬品原薬工業会
http://www.jbpma.gr.jp/bulk-pharmaceuticals/gmp
3-3.ビタミンAと一緒に摂りたい栄養素
ビタミンAは単独でも重要な役割を持ちますが、ほかの栄養素と組み合わせることで働きが強まり、粘膜の保護・抗酸化・免疫サポートなどの面でより大きな効果が期待できます。
<ビタミンE>
ビタミンAが細胞膜や粘膜の再生を助け、ビタミンEが酸化ストレスからそれらを守ることで、細胞のダメージをより効率よく抑えられます。緑黄色野菜+ナッツ類、レバー+植物油などの組み合わせが理想的。
<ビタミンC>
「A+E+C」の組み合わせは抗酸化ビタミンとしてよく知られ、粘膜保護・免疫サポート・肌の健康維持の面で相互補完的に働きます。野菜、果物と一緒に摂ることで自然とバランスがとれます。
<亜鉛>
亜鉛が不足すると、ビタミンAを十分に使えなくなり、皮膚や粘膜の回復力が落ちます。牡蠣、牛肉、卵などと緑黄色野菜の組み合わせが効果的。
<良質な脂質>
ビタミンAは脂溶性のため、油と一緒に摂ると吸収率が高まります。オリーブオイルやえごま油、アボカドなどを野菜と組み合わせると効率的に吸収できます。
<タンパク質>
タンパク質が不足すると、ビタミンAが十分に運ばれず働けません。肉、魚、卵、大豆製品などと野菜を組み合わせるとバランスが良くなります。
4.おわりに
ビタミンAが不足すると皮膚や粘膜が乾燥して、ウイルスや細菌の侵入を防ぐバリア機能が低下します。また、暗がりでものが見えにくくなったり、目が乾きやすくなります。
「アトピー性皮膚炎が悪化した」「風邪をひきやすい」「目が疲れやすい・乾きやすい」など、ビタミンAが不足しているサインに気づいたら、ビタミンAが豊富な食材を増やしたり、サプリメントを摂取して、体調を整えてください。
自分に合った食事やサプリメントを知りたい方は、当院の管理栄養士に相談することもできます。興味のある方は、診察時または受付で「栄養カウンセリングを受けたい」と、お気軽にお申し出ください。










