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糖尿病治療薬「トラゼンタ」の特徴と効果、副作用

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2025年07月22日

トラゼンタは、DPP-4阻害薬に分類される糖尿病の治療薬です。糖尿病治療薬の副作用としてよく見られる低血糖を起こしにくいという利点があり、さらに、1日1回の服用で効果があるため、他の糖尿病薬と比べても服用しやすいのが特徴です。

この記事では、トラゼンタの働きや副作用、服用時の注意点について、わかりやすく紹介します。

1.トラゼンタとはどのような薬か


トラゼンタは、「リナグリプチン」という成分を含む錠剤タイプの糖尿病治療薬です。DPP-4阻害薬という種類に分類されており、血糖値が高いときにインスリンの分泌を促すことで血糖値を下げる効果があります。

【参考情報】『Linagliptin』MedlinePlus
https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a611036.html

DPP-4阻害薬は、「インクレチン」と呼ばれる血糖調節ホルモンを分解する酵素「DPP(ジペプチジルペプチダーゼ)-4」のはたらきを阻害する薬です。

【参考情報】『Information on Dipeptidyl Peptidase-4 (DPP-4) Inhibitors』U.S. FDA
https://www.fda.gov/drugs/information-drug-class/information-dipeptidyl-peptidase-4-dpp-4-inhibitors

インクレチンには、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌を促し、逆に血糖値を上げるホルモンである「グルカゴン」の分泌を抑えるはたらきがあります。

DPP-4阻害薬を使うと、インクレチンが分解されなくなるため、血糖値が高いときにだけ下げるはたらきをします。このため、他の薬と比べて、血糖値が下がり過ぎる低血糖のリスクが少ないというメリットがあります。

さらに、効果が長時間続き、他の薬との併用制限も少ないため、血糖コントロールが難しい2型糖尿病の患者さんにも使いやすい薬として広く処方されています。

◆「糖尿病」についてくわしく>>

2.トラゼンタの使い方


トラゼンタは、通常「1日1回」「1回1錠」を、水またはぬるま湯で服用します。必ず医師の指示に従い、決められたタイミングで飲むようにしましょう。

なお、トラゼンタは成人を対象とした糖尿病治療薬です。基本的に子どもへの使用は推奨されていないので、誤って服用しないよう注意が必要です。

3.トラゼンタの副作用


トラゼンタを服用すると、次のような副作用が起きる場合があります。

 ・便秘やお腹のはり

 ・めまい

 ・口内炎

 ・空咳

また、めったにありませんが以下のような副作用が起きる場合もあります。

 ・低血糖

 ・腸閉塞

 ・急性膵炎

 ・間質性肺炎

◆「間質性肺炎」とはどんな病気?>>

車の運転や危険な作業をする際には、めまいや低血糖が起きる場合があるため、体調に注意してください。ふわふわした感覚や冷や汗、手足のふるえなどが出てきた場合には、安全な場所に座るようにしましょう。

低血糖は、糖尿病治療薬と併用している場合に起きやすくなります。低血糖が起きたときにはブドウ糖の摂取をすると落ち着くため、普段からブドウ糖を持ち歩いておくと安心です。

◆「低血糖」についてくわしく>>

また、強い腹痛や高熱など体調の異変があった場合には、すみやかに医療機関を受診しましょう。

4.使用上の注意点


トラゼンタは、妊娠中や授乳中の使用は基本的に推奨されていません。また、1型糖尿病の方や、手術前後の場合にはトラゼンタは使用できません。

また、過去に腹部の手術を受けた方や、腸閉塞を起こしたことがある方は、副作用のリスクが高まる可能性があります。このような方は、服用の前に必ず医師や薬剤師に相談してください。

【参考情報】『腸閉塞』北里大学北里研究所病院
https://www.kitasato-u.ac.jp/hokken-hp/visitor/office_visit/intestinal_obstruction.html

5.トラゼンタの薬価


トラゼンタの1錠あたりの価格(2025年7月調べ)は次のとおりです。

 ・トラゼンタ錠5mg 118.9円/錠

トラゼンタと同じ成分のジェネリック医薬品や市販薬はありません。

糖尿病治療薬には、トラゼンタの有効成分であるリナグリプチンを含んだ「トラディアンス配合錠」という薬もあります。

この薬は、リナグリプチンに加え、もうひとつの血糖降下成分であるエンパグリフロジンを組み合わせた配合薬です。主に、トラゼンタだけでは血糖コントロールが不十分な場合に処方されます。

6.トラゼンタに関するよくある質問


この章では、トラゼンタに関するよくある質問と答えを紹介します。

Q1.トラゼンタは食後に飲むべきですか?
医師や薬剤師から服用のタイミングについて指定がなければ、食前に飲んでも構いません。ただし、毎日同じ時間帯に服用するようにしましょう。

Q2.飲み忘れたときはどうしたらいいですか?
飲み忘れに気づいたら、できるだけ早く1回分を服用してください。ただし、次に飲む時間が近い場合は、無理に2回分を飲まずに、1回分だけ服用するようにしましょう。

飲み忘れたからと言って、一度に2回分を飲むのは絶対にやめてください。副作用のリスクが高まるおそれがあります。

【参考情報】『お薬を飲み忘れてしまったら』全国健康保険協会
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/shibu/ishikawa/cat080/20180806-3/20181004003/

飲み忘れることが多い場合は、スマートフォンのアラームで服用時間を知らせたり、薬を目につく場所に置いたりして、予防に努めましょう。

Q3. トラゼンタを飲み始めてからどのくらいで効果が出る?
早ければ数日以内、通常は1〜2週間程度で、血糖値の改善が見られることが多いとされています。

効果は、血液検査(HbA1cなど)の結果を見ながら、医師が評価します。

7.おわりに

DPP-4阻害薬には、トラゼンタ以外にも、テネリア(テネリグリプチン)やスイニー(アナグリプチン)などがあります。トラゼンタが合わないと感じたら、このような薬に変更できないかどうか、医師や薬剤師に相談してください。

血糖値を安定させるためには、バランスの取れた食事や適度な運動を取り入れることも大切です。薬の力を借りながら、健康的な生活習慣を少しずつ身につけていきましょう。

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