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咳が止まらないのは炎症が原因なのか?

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2022年11月15日
喉炎症

新型コロナ感染症やインフルエンザなどにかかった人の咳の中には多くのウイルスが含まれているため、「咳エチケット」の重要性が再注目されています。

しかし、咳症状があるからといって、感染症とは限りません。

一部のアレルギー疾患や呼吸器疾患では、空気の通り道である気道の炎症によって咳が止まらなくなるというケースがあります。

今の時代、公共の場で咳をするということがタブーとなっている風潮もありますが、呼吸器関連疾患を持つ患者さんの「炎症による咳」について、今一度理解を深めていただきたいと思います。

1.咳がとまらない時に考えられる疾患はなにか?

咳止まらない炎症咳が止まらないという症状から考えられる疾患はいくつかありますが、2週間以上続く咳は、ただの風邪ではない可能性があります。

【参考情報】『Chronic Cough: Causes, Diagnosis & Treatment』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/15048-chronic-cough-overview

風邪の原因の大半はウイルス感染症(新型コロナウイルスとは無関係です)だということがわかっており、健康な人なら免疫機能によって、1週間から2週間程度安静にしていれば自然に治ります。

そのため、2週間を過ぎても咳が治まらない場合は、風邪以外の病気が原因である可能性があります。

咳をしすぎて体や骨に痛みが出ているとか、咳が激しすぎて眠れないという場合は特に注意が必要です。

◆「激しい咳であばら骨にヒビ?肋骨の痛みに要注意」>>

体中痛い

このような場合、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺がんや結核、間質性肺炎、心不全などの重篤な病気である可能性もあります。

また、長引く咳の原因として近年増加しているのが「咳喘息」と呼ばれる病気です。

咳喘息とは、気管支喘息の1歩手前の状態を指し、患者さんの約30%は気管支喘息に移行するといわれています。

◆「咳喘息とはどのような病気か?原因・症状・治療について」>>

喘息は重症化すると命にかかわる病気ですが、咳喘息の段階で早期発見・早期治療を行うことで、症状をコントロールすることができます。

【参考情報】『放っておくと危ない!長引く咳には要注意!』サワイ健康推進課(沢井製薬)
https://kenko.sawai.co.jp/prevention/201712-02.html

◆「咳が止まらない時に心配な病気の症状・検査・治療の基本情報」>>

2.炎症がもとになる呼吸器疾患

肺炎
炎症とはその名の通り、ダメージを受けた部位が「熱を帯びたように」なっている状態です。炎症が起こることで、痛みや腫れ、赤くなる、などの症状が出ます。

喉に炎症が起こると、ウイルスや細菌などを絡めとるため分泌物の量が増え、痰が出ます。そして、痰を吐き出すための反射として咳が出ます。

2−1.肺炎

肺炎は「肺に炎症が起きた」状態です。主な症状は発熱や痰、激しい咳などで、風邪とよく似ています。

しかし、風邪は主に鼻や喉といった上気道と呼ばれる場所にウイルスが感染して炎症を起こすのに対して、肺炎は体のより深い部分である肺に炎症が起こるため、治療に時間がかかる場合も多く、状態によっては入院して点滴治療を受ける必要もあります。

【参考情報】『肺炎になるとどうなるの?』肺炎予防.jp(MSD製薬)
https://www.haien-yobou.jp/what_disease.xhtml

◆「65歳になったら知っておきたい肺炎の知識と予防」>>

2−2.COPD(慢性閉塞性肺疾患)

長引く咳の原因として増えているのがCOPDという病気です。
タバコの煙や大気に含まれる有害物質を吸引することで肺に「炎症」が起こる病気です。

初期段階では階段を上ったときに息切れがしたり、咳や痰が続いたりする程度なのですが、病状が悪化すると、酸素を吸入しなくては生活ができないほどに深刻な状態となります。
COPDの病態の主体も「炎症」であり、タバコなどの有害物質によって呼吸器系の臓器がダメージを受け、ひどい炎症が起きてしまっているようなイメージです。

【参考情報】『COPD(慢性閉塞性肺疾患)』東京都福祉保健局
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kensui/copd

◆「咳がとまらない・しつこい痰・息切れは、COPDの危険信号」>>

2−3.気管支喘息

気管支喘息は空気の通り道である気道に「炎症」が起こっている状態です。

炎症を起こした気道は、外部からのあらゆる刺激に敏感になっています。

ホコリはもちろん、湯気、冷たい空気、香り、花粉などちょっとした刺激に敏感に反応して激しい咳が出て、なかなか止まらなくなります。

激しい咳や痰、発作時の息苦しさが喘息の特徴であり、風邪とは違って発熱するということは少ないです。

【参考情報】『ぜん息』国立成育医療研究センター
https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/allergy/asthma.html

◆「喘息の症状・検査・治療の基本情報」>>

3.おわりに

咳は生体の防衛反応であり、不要な異物や痰、ウイルスや細菌などを外に排泄するための大切な働きです。
しかし、激しい咳はのどを痛めたり、体力の消耗につながったりすることがあります。

先にも紹介したように、咳などの病態の主体は「炎症」です。
炎症を緩和して、各部位のダメージを軽減してあげることで症状を抑えることは可能です。

とはいえ、自分の判断で市販の抗炎症薬や消炎鎮痛剤を使用すれば良いということではありません
呼吸器系の「炎症」を改善するためには、専門的な検査や治療が必要となる場合がほとんどです。
まずは、長引く咳や止まらない咳を自覚したら、早めに呼吸器専門医へご相談ください。

【参考情報】咳の対策(第一三共ヘルスケア)
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/health/symptom/20_seki/index2.html

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