喘息・アレルギーを悪化させない、カビと掃除の注意点

カビは、喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状の引き金となります。また、すでにある症状を悪化させる原因にもなります。
アレルギーの症状を悪化させないためには、身の回りのカビをできるだけ排除することが大切です。
そこでこの記事では、身近なカビとその対策について紹介します。
目次
1.なぜ喘息やアレルギーにカビ対策が重要なのか
カビ対策が喘息やアレルギーにとって重要な理由は、カビそのものが強いアレルゲンであり、気道への刺激となるからです。
カビが発生すると、胞子や代謝物が空気中に漂い、これを吸い込むことで気道が敏感に反応します。
また、カビは室内の湿気が多い環境で増えやすく、繁殖が進むと胞子量が一気に増えてアレルギー症状(鼻水、くしゃみ、目のかゆみ)を悪化させる要因になります。
カビは気づかないうちに押し入れや浴室、エアコン内部に広がっているケースも多く、アレルギーの慢性的な症状に関係していることも珍しくありません。
喘息の悪化やアレルギー反応を防ぐには、カビ対策は欠かせない取り組みです。
【参考情報】『Mold allergy』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/mold-allergy/symptoms-causes/syc-20351519
2.家の中でよく見かける3つのカビ
カビの種類は少なく見積もっても3万種以上あると言われていますが、家の中でよく見かけるのは、黒カビ、赤カビ、青カビの3つです。
黒カビはとても繁殖力が強く、家の中の至る所に生えます。浴室の壁や洗濯機の洗濯槽、エアコンの内部などでよく見かけます。
赤カビは植物を好むので、パンやごはんなどの食品に発生することがあります。ちなみに、お風呂場でよく見かけるピンク色の汚れは、カビではなく「ロドトルラ」という酵母菌の一種です。
青カビは、みかんなどの果物やお菓子に生えることがあります。ブルーチーズのカビも青カビですが、食べても無害な仕組みが働いています。
【参考情報】『空気中のカビ』神奈川県衛生研究所
https://www.pref.kanagawa.jp/sys/eiken/005_databox/0504_jouhou/0601_eiken_news/files/eiken_news_175.pdf
3.カビが発生しやすい場所と条件
家のどこにカビが繁殖しやすい場所があるのかを把握しておけば、効果的な対策ができ、発生を大幅に抑えられます。
3-1.カビが好む湿気と汚れ
カビが発生しやすいのは、湿気と汚れのある場所です。この条件にあてはまるのが、浴室と洗面所、キッチンです。
これらの場所は水気が残りやすく、石けんカスや皮脂汚れ、食べ物の飛び散りなど、カビにとっての栄養源が豊富に存在します。
換気が不十分な家庭では、湿気がこもる時間が長くなり、カビの繁殖がさらに進みます。
3-2.結露がたまりやすい場所も要注意
また、窓ガラスやサッシ、押し入れの奥、家具の裏など、結露ができやすい場所にもカビはよく発生します。
【参考情報】『結露対策] 東京都保健医療局
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/hokeniryo/web_bunya2
特に冬場は外気温との温度差で結露が発生しやすく、気づかないうちに水分が溜まってカビが広がります。
「布団を押し入れに入れっぱなしにする」「家具と壁の間に隙間がない」といった状況も、カビの温床になりやすい条件です。
3-3.カビの繁殖条件と抑えるための工夫
カビは気温25℃前後、湿度80%以上で繁殖しやすくなりますが、これより温度や湿度が低くても発生する種類もあります。
たとえば、低温環境でも増殖できる種類のカビは冷蔵庫のパッキン部分に生えることがあります。
さらに、ホコリや食べカスなどの有機物があれば、環境条件が多少悪くてもゆっくりと繁殖を続けます。
日本の気候は高温多湿なのでカビが繁殖しやすく、残念ながら家の中のカビをゼロにするのは難しいでしょう。しかし、カビの大好きな湿気と栄養を与えないことで、数を減らすことはできます。
日頃から、「こまめに換気する」「結露に気付いたらすぐ拭き取る」「浴室は最後に冷水をかけて温度を下げる」「キッチンの油汚れを放置しない」などの対策で、発生リスクを大きく抑えることが可能です。除湿機や換気扇を活用するのもいいでしょう。
【参考文献】『住居内のカビ』住宅環境に関する相談|横浜市旭区役所
https://www.city.yokohama.lg.jp/asahi/kurashi/sumai_kurashi/seikatsu/jutaku-soudan.html
4.喘息の人がカビ取り掃除をする時の注意点
カビ取りには強い薬剤を使うことが多く、喘息のある人にとっては発作のリスクも伴います。
この章では、安全に作業するための注意点と、日常でできるカビ予防の方法を押さえておくことが大切です。
4-1.自分で作業する場合の安全対策
中性洗剤では落ちないカビは、漂白剤やカビ取り剤を使って掃除する方が多いでしょう。しかし喘息の患者さんは、こうした薬剤の刺激臭が気道に強い負担となり、咳き込みや発作の誘因になることがあります。
特に密閉空間で作業すると刺激を受けやすく、症状が安定していても反応する場合があります。
可能であれば、健康な家族に代わってもらう、あるいは掃除代行業者に依頼するほうが安全ですが、自分でカビ取りを行う場合は、マスク・ゴーグル・ゴム手袋といった保護具を必ず着用してください。
また、作業前から換気扇を回し、浴室の窓やドアも開けて空気がこもらない状態を作ることが大切です。吸い込みを減らすため、スプレータイプを使う際は噴霧量が広がりすぎないよう、対象面に近づけて吹きかけるなどの工夫も有効です。
さらに、使用前には製品表示をよく読み、記載されている注意事項に従ってください。特に塩素系と酸性タイプの製品を混ぜると有毒ガス(塩素ガス)が発生するため、絶対に併用してはいけません。
作業中に目や喉に強い刺激を感じた場合は、すぐに作業を中止して新鮮な空気の場所に移動してください。
【参考情報】『カビ取り剤を使用中の事故』日本中毒情報センター
https://www.j-poison-ic.jp/general-public/accidents/mold-remover/
4-2.カビ予防に有効な日常の対策
カビは熱に弱いため、入浴後に壁や床へ50℃以上のお湯をかけると、表面のカビの胞子を減らす助けになります。その後、換気扇をしばらく回し続けることで湿気を効率よく除去できます。
また、日常的な予防としてアルコール除菌スプレーを吹きかけると、カビや雑菌の繁殖を抑えやすくなります。湿気が残りやすい排水口まわりやゴムパッキンなどにも定期的に行うと効果的です。
5.カビ・ホコリ・ダニの密接な関係
ホコリの中にはカビやダニが潜んでおり、これらは互いに影響し合いながら繁殖を広げていきます。
5-1.ホコリがカビやダニを増やす仕組み
ホコリは、衣類や布団などの布製品から出る繊維クズをはじめ、髪の毛、ペットの毛、皮膚のアカなど、さまざまな有機物が混ざり合って構成されています。これらはすべてカビにとって格好の栄養源となり、湿気があれば短期間で増殖してしまいます。
さらに、ダニはホコリが溜まりやすい環境を好み、必ずといっていいほどそこに生息しています。ダニは、人やペットのフケやアカをエサにするだけでなく、カビを食べる種類もいるため、ホコリが増えるほどダニの繁殖も加速します。
つまり、ホコリ・カビ・ダニは互いを生かし合う関係にあり、どれか一つが増えると連鎖的に他も増えるという悪循環が起こりやすいのです。
5-2.悪循環を防ぐ対策
カビを防ぐには、湿気対策だけでなくホコリをためない環境づくりが欠かせません。布団やソファ、カーテンなど布製品のある場所、部屋の隅、家具の裏側など、ホコリが溜まりやすいポイントを意識して、定期的に掃除を行いましょう。
また、部屋の空気を循環させるエアコンには、家中のホコリが集まりやすく、フィルターにカビやダニが付着すると吹き出す空気に混ざって室内に広がることがあります。
定期的にフィルター掃除を行うことは、空気環境を整え、喘息やアレルギーの悪化を防ぐうえでも重要です。
6.カビによって引き起こされる病気
カビによって起こる健康被害は、喘息やアレルギーにとどまりません。種類によっては、より深刻な病気を引き起こすことがあります。
6-1.夏型過敏性肺炎
夏場にみられる夏型過敏性肺炎は、トリコスポロンというカビを繰り返し吸い込むことで発症します。
咳、発熱、息苦しさなど風邪とよく似た症状が続き、原因が家の中のカビであることに気づきにくい点が特徴です。
特に、築年数の古い住宅や風通しの悪い部屋では繁殖しやすく、家族全員が症状を訴えるケースも見られます。
6-2.肺アスペルギルス症
免疫力が低下している人や高齢者では、アスペルギルスというカビを吸い込むことで、肺アスペルギルス症を発症することがあります。咳や痰、発熱、呼吸困難を引き起こし、重症化すると治療に時間がかかります。
アレルギー反応が主体のアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)が起こることもあり、喘息や気管支拡張症がある人は注意が必要です。
【参考文献】『Aspergillosis』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/aspergillosis/symptoms-causes/syc-20369619
6-3.水虫(白癬)
白癬(はくせん)菌というカビが足の皮膚・爪・体の一部に感染して起こる病気で、かゆみや皮むけ、爪の変形などの症状がみられます。
一般的には命に関わる病気ではありませんが、糖尿病の患者では傷が悪化しやすく、蜂窩織炎(ほうかしきえん)などの合併症を引き起こすこともあるため注意が必要です。
【参考文献】『白癬(水虫・たむしなど)』日本皮膚科学会
https://qa.dermatol.or.jp/qa10/index.html
6-4.カビ毒
食べ物に生えたカビが作り出す「カビ毒(マイコトキシン)」も健康被害の原因となります。代表的なものにはアフラトキシンやパツリンがあり、強い発がん性を持つものも存在します。
加熱しても分解されない種類が多いため、カビが生えた食品は部分的に取り除いても安全とはいえません。少しでもカビが確認できた場合は、必ず廃棄してください。
【参考文献】『かびとかび毒についての基礎的な情報』農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/kabidoku/kiso.html
7.おわりに
喘息には、ダニやホコリ、カビなどのアレルゲンを吸い込むことで発作が起きるアトピー型喘息と、過労やストレスなどで発作が引きこされる非アトピー型喘息があります。
特にアトピー型喘息の人は、こまめに掃除をしてホコリやカビを取り除き、発作を予防しましょう。
非アトピー型喘息の人や健康な人にとっても、カビの防止や除去は快適な暮らしを守るためには欠かせません。
掃除のほか、除湿や換気も行い、できるだけカビが発生しにくい環境を整えましょう。











