喘息治療に用いる薬「ヌーカラ」の特徴と効果、副作用
ヌーカラは、喘息治療の基本となる吸入ステロイド薬やその他の喘息管理薬では効果が不十分な、重症の患者さんに処方される薬です。
この記事では、ヌーカラの使い方や効果、副作用などについて解説します。初めて使う方も、使っているうちに疑問点が出てきた方も、ぜひ最後までお読み下さい。
１.ヌーカラとはどのような薬か
ヌーカラは、「メポリズマブ」を主成分とする抗インターロイキン5抗体製剤です。喘息のほか、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の治療にも用いられます。
私たちの体内では、サイトカインと呼ばれるタンパク質が分泌され、細胞間の情報伝達を行いながら、病原体などの異物を排除しています。インターロイキン5はサイトカインの一種で、白血球の一種である好酸球の活性を上げる働きがあります。
好酸球は、アレルギーと関連が深い物質です。喘息患者さんの気道では、好酸球が増えて活性化し、気道の炎症を引き起こしているため症状が発生すると考えられます。
ヌーカラは、インターロイキン5に結合することで好酸球を減らし、その働きを抑える薬です。
【参考情報】『mepolizumab injection, powder, for solution NUCALA』DAILYMED｜FDA
https://dailymed.nlm.nih.gov/dailymed/drugInfo.cfm?setid=fefb887c-e4ac-431e-8893-e9d1a5a63fea
２. ヌーカラの使い方
ヌーカラには、シリンジとペンの2つのタイプがあります。
以下、それぞれの使用方法を説明します。
２－１．シリンジ
シリンジには、成人および12歳以上の小児に処方される成人用と、6歳以上12歳未満に処方される小児用があります。
喘息用の場合、いずれも4週間ごとに1回・1本を患者さんご自身で注射、または保護者や介助者が注射します。
①冷蔵庫に保管しておいた薬剤を取り出す
30分以上置いて室温に戻します。
②中に薬剤が入っていることを確認する
③注射部位を選ぶ
「上腕」「腹部」「太もも」のいずれかにしてください。保護者や介助者が打つ場合は「上腕」でも構いません。
④注射する部位をアルコール綿で拭いて消毒する
⑤灰色の針キャップを外す
⑥注射をする
片手でシリンジを持ち、もう一方の手で注射部位の皮膚をつまみ、斜め45度に針を刺します。
人差し指と中指でグリップ（羽のように横に広がった白い部分）を握り、親指でゆっくりとプランジャー（押しこむところ）を押して、薬液がすべて注入されるまで押し切ります。
シリンジを持ったまま、親指をゆっくりと上げます。すると、プランジャーが上がって針が皮膚から引き上げられ、針ガードの中に収納されます。
⑦つまんだ皮膚を放す
⑧注射部位をアルコール綿で軽く押さえる
注射部位をもまないでください。もむと腫れることがあります。
【参考情報】『ヌーカラ皮下注100mgシリンジ自己注射ガイド』グラクソ・スミスクライン
https://www.nucala.jp/useful/syringe.html
２－３．ペン
成人および12歳以上の小児に処方されます。喘息治療の場合、4週間ごとに1回・1本を患者さんご自身で注射、または保護者や介助者が注射します。
①冷蔵庫に保管しておいた薬剤を取り出す
30分以上置いて室温に戻します。
②中の薬剤を確認するための窓を見る
中に薬剤が入っていると白、入っていないと黄色に見えます。
③注射部位を選ぶ
「上腕」「腹部」「太もも」のいずれかにしてください。保護者や介助者が打つ場合は「上腕」でも構いません。
④注射する部位をアルコール綿で拭いて消毒する
⑤透明の針キャップを外す
⑥注射をする
薬液確認窓が見えるようにペンを持ち、注射部位に対して直角になるよう黄色い安全カバーをあてたら、安全カバーが見えなくなるまで深く押しあてます。
薬液の注入が始まると、「 カチッ」と音がして、薬液確認窓の黄色の確認バーが動き始めます。約15秒で薬液の注入が終わり、また「 カチッ」と音がして、確認バーが黄色になります。
⑦注射を外す
薬液注入が終わったら、そのまま5秒待ってから、ペンを外します。
⑧注射部位をアルコール綿で軽く押さえる
注射部位をもまないでください。もむと腫れることがあります。
【参考情報】『ヌーカラ皮下注100mgペン自己注射ガイド』グラクソ・スミスクライン
https://www.nucala.jp/useful/pen.html
３. ヌーカラの副作用
ヌーカラの副作用には、以下のようなものがあります。
・注射部位の痛み、かゆみ、腫れ
・頭痛
めったにないことですが、重大な副作用としてアナフィラキシーなども報告されているので、特にヌーカラ治療開始直後には十分に注意してください。
４．使用上の注意点
ヌーカラは、喘息の発作を抑える薬ではありません。発作が起こり、咳や息苦しさが強くなってきたときは、医師から処方された発作治療薬（リリーバー）を服用してください。
薬剤の入ったシリンジやペンは、箱のまま冷蔵庫で保管してください。また、ヌーカラを扱う際は、せっけんでよく手を洗い、清潔な場所で注射してください。
妊婦または妊娠している可能性のある女性、授乳中の方は、ヌーカラ使用について主治医と相談して下さい。
【参考情報】『Asthma During Pregnancy』Asthma and Allergy Foundation of America
https://www.aafa.org/asthma-during-pregnancy/
５.ヌーカラの薬価
ヌーカラの薬価は、以下となります。
・ヌーカラ皮下注100mgシリンジ 159891円
・小児用ヌーカラ皮下注用40mgシリンジ 68964円
・ヌーカラ皮下注100mgペン 159891円
ヌーカラの代わりとなるジェネリック医薬品や市販薬はありません。
６.おわりに
ヌーカラは、病院で注射してもらうこともできますが、十分な練習をすれば、自宅での自己注射も可能です。
非常に高価な薬ではありますが、基本の治療だけでは喘息の症状が改善しない方は、ヌーカラを追加すると効果が現れる可能性もあるので、医師に相談してみましょう。
