いびきは口呼吸が原因?その仕組みと今日からできる予防・改善法

いびきや口呼吸が続くと、「ただの癖」と思って放置しがちですが、実は健康にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。
本記事では、「いびきと口呼吸」の関係や原因、放置することによるリスク、そして予防・改善策について、医師の視点をもとにわかりやすく解説します。
目次
1.いびきの主な原因
いびきは、寝ている間に気道が何らかの理由で狭くなり、その狭い部分を空気が通ることで粘膜が振動し、音が生じる現象です。
いびきの原因はさまざまですが、主に以下のような要因が挙げられます。
1-1.疲労やストレス
心身の疲労や強いストレスを感じると、回復のために全身の筋肉が緩みます。
特に、睡眠中はのど周辺の筋肉も緩みやすくなり、気道が狭くなっていびきが出やすくなります。
【参考情報】『Snoring』Johns Hopkins Medicine
https://www.hopkinsmedicine.org/health/conditions-and-diseases/snoring
1-2.飲酒
アルコールには筋肉を緩める作用があり、特に寝酒の習慣がある方は注意が必要です。
寝る前に飲酒すると、アルコールの作用で舌や咽頭の筋肉が緩み、気道をふさいでしまいやすくなります。
これがいびきの大きな原因となります。
【参考情報】『お酒と睡眠 ~「眠るための飲酒」は避けましょう~』横浜市
https://www.city.yokohama.lg.jp/kenko-iryo-fukushi/kenko-iryo/kokoro/kokorosoudan/column/20211013162348942.html
1-3.喫煙
たばこに含まれる化学物質は、気道の粘膜を慢性的に刺激します。
その結果、粘膜にむくみや炎症が生じ、気道が狭くなりやすくなるため、いびきを引き起こしやすくなります。
【参考情報】『Sleep Apnea – Causes and Risk Factors』National Heart, Lung, and Blood Institute
https://www.nhlbi.nih.gov/health/sleep-apnea/causes
1-4.鼻づまり
風邪やアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などで鼻が詰まると、鼻呼吸がしにくくなります。
すると自然と口呼吸になり、口を開けて寝ることによって、舌が喉の奥に落ち込みやすくなり、気道をふさいでいびきが発生します。
1-5.肥満
肥満により首まわりや舌に脂肪がつくと、気道が外側から圧迫されたり、舌が重くなって気道に落ち込みやすくなったりします。
これにより、睡眠中の呼吸が妨げられ、いびきのリスクが高まります。
1-6.顔の骨格
痩せ型でも顎が小さい、下顎が後退しているなどの顔の骨格的な特徴によって、気道が狭くなりやすく、いびきをかくことがあります。
近年では、食生活の変化や小顔志向などにより、女性でも骨格的に気道が狭いケースが増えています。
2.口呼吸の主な原因
睡眠中や日常生活で口が開いてしまい、口呼吸になる背景には、いくつかの身体的・生活習慣的な要因があります。
2-1.鼻づまり
鼻づまりは、口呼吸の最大の原因のひとつです。
鼻呼吸ができなくなると、自然と口から呼吸するようになります。
とくにアレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎(ちくのう症)、風邪、花粉症などにより鼻の粘膜が腫れると、空気の通り道がふさがれてしまいます。
その結果、無意識のうちに口呼吸が習慣化し、睡眠中にいびきが出たり、睡眠の質が低下したりします。
鼻が詰まりやすい人は、「鼻うがい」や「蒸気吸入」などで日常的なケアを行うとともに、耳鼻咽喉科での根本的な治療も検討しましょう。
また、慢性的な鼻づまりがある場合は、いびきだけでなく睡眠時無呼吸症候群の原因となることもあります。
また、鼻呼吸をサポートするマウステープや補助器具もありますが、鼻の通りが悪い状態ではかえって危険になることがあるため、自己判断では使わないよう注意が必要です。
【参考情報】『Nose breathing vs. mouth breathing: What to know』Cleveland Clinic
https://health.clevelandclinic.org/breathe-mouth-nose
2-2.歯並び
歯並びや顎の位置は、口の開閉に大きく関わっています。
特に上顎前突(出っ歯)や開咬(奥歯はかみ合っていても前歯が開いている状態)などがあると、口が自然に閉じにくくなります。
その結果、無意識のうちに口が開きやすくなり、日中だけでなく就寝時も口呼吸になりやすくなります。
口呼吸が続くと、いびきや口内の乾燥、虫歯や歯周病のリスクも高まります。
このような歯並びの問題は、矯正歯科での相談が必要です。
大人だけでなく、成長期の子どもにとっても、早期の対応が後の呼吸・睡眠の質に良い影響を与える可能性があります。
【参考情報】『The Relationship between Mouth Breathing and Craniofacial Development: A Systematic Review』International Journal of Environmental Research and Public Health
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9498581/
2-3.口周りの筋肉が弱い
口のまわりを支える筋肉(口輪筋や顎周辺の筋肉)が弱いと、口が自然に開いてしまい、口呼吸になりやすくなります。
特に就寝時は筋肉が緩むため、筋力の低下が目立ちやすくなります。
加齢や運動不足のほか、やわらかい食事が多い、会話の機会が少ない、姿勢が悪いといった生活習慣も筋力低下の一因になります。
また、乳幼児や小さな子どもも、まだ口の周囲の筋肉が十分に発達していないため、口を閉じる力が弱く、口呼吸になりやすい傾向があります。
口周りの筋肉は、「あいうべ体操」や「舌の位置トレーニング」などで鍛えることができ、継続することで自然と鼻呼吸をしやすくなるとされています。
3.なぜ、口呼吸だといびきが出やすいのか
口呼吸が習慣化すると、いびきを引き起こしやすくなります。
ここでは、その理由を体の仕組みに沿って、わかりやすく解説します。
3-1.口呼吸が気道をふさぎやすくなる理由
口呼吸になると、自然に口が開いてしまい、舌の位置が下がりやすくなります。
睡眠中は全身の筋肉がゆるむため、特に舌の根元(舌根)や、のどちんこ部分の軟口蓋(なんこうがい)が重力で喉の奥に沈み込み、気道をふさぎやすくなります。
特に仰向けで寝ている場合、重力の影響で舌が喉に落ち込みやすく、空気の通り道が物理的に狭くなってしまいます。
3-2.気道が狭くなるといびきが発生する仕組み
気道が狭くなると、体は必要な酸素を取り込もうとして、無意識に強く呼吸をしようとします。
このとき、狭くなった気道を勢いよく空気が通ることで、粘膜が振動し、「ゴーッ」「グーグー」といったいびきの音が発生します。
3-3.こんな人はいびきをかきやすい
以下のような特徴がある人は、特に口呼吸によるいびきをかきやすい傾向があります。
✅ 顎が小さい、後退している、下顎が引っ込んでいる人(舌が喉に落ち込みやすい)
✅ 鼻炎・アレルギー体質で、日常的に鼻が詰まりやすい人(鼻呼吸が難しい)
✅ 加齢により筋肉が緩みやすくなっている中高年層
✅ 仰向けで寝る習慣がある人
✅ 疲労やストレスが強く、睡眠中に筋肉がより弛緩しやすい人
これらの条件に当てはまる方は、いびきを「癖」ととらえず、生活習慣や呼吸の状態を見直すことが重要です。
また、いびきが重度な場合は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性もあるため、早めの医療機関の受診をおすすめします。
4.睡眠中の口呼吸を防ぐ方法
口呼吸が習慣化すると、いびきが悪化するだけでなく、睡眠の質の低下や健康リスクにもつながります。
そこで本章では、生活習慣・鼻の通り・筋力の3つから対策を整理します。
4-1.簡単にできる生活習慣の見直し
< 寝酒を控える>
「お酒を飲むと眠れる」と感じる人もいますが、寝る直前の飲酒は注意が必要です。
アルコールには筋肉を緩める作用があるため、睡眠中にのどや舌の筋肉がゆるんで気道をふさぎやすくなります。
その結果、いびきが出やすくなり、無呼吸につながる可能性もあります。
いびきが気になる人は、寝る4時間前までに飲酒を終えるのが理想です。
【参考情報】『お酒を飲むとぐっすり眠れる?』国立精神・神経医療研究センター
https://hsp.ncnp.go.jp/column/sleep_detail.php?@uid=yzXi7G3nHFm843XB
< 禁煙する>
タバコの煙に含まれる有害物質は、気道の粘膜を慢性的に刺激し、炎症や腫れを引き起こします。
これにより気道が狭くなり、いびきや無呼吸のリスクが高まります。 禁煙は気道の炎症を改善し、呼吸をしやすくするための最も効果的な方法のひとつです。
長年喫煙している人でも、禁煙を始めることで呼吸機能は徐々に改善します。
どうしても禁煙が難しい方は、禁煙外来の利用を検討しましょう。
【参考情報】『Smoking as a risk factor for sleep-disordered breathing』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7944843/
<肥満体型の人は減量を目指す>
肥満は、首周りや舌、のどのまわりに脂肪がつくことで、気道を圧迫しやすくなります。
その結果、空気の通り道が狭くなり、いびきや無呼吸のリスクが高まります。
標準体重は、身長(m)×身長(m)×22で計算できます。
例えば、身長165cmの人なら、1.65×1.65×22=59.865となるので、標準体重は60kg程度となります。
体重が減ると、舌や首回りの脂肪も落ちやすくなり、気道が広がって呼吸が楽になります。
4-2.鼻と口の状態を整える
< 鼻づまりを治療する>
鼻がつまっていると、自然と口呼吸になり、いびきをかきやすくなります。
風邪などの一時的な原因であれば自然に治ることもありますが、アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎のような長引く病気は注意が必要です。
これらは、鼻の中の粘膜が慢性的に腫れて空気の通り道をふさぐため、常に口呼吸になりやすくなります。
長引く鼻づまりがある場合は、自己判断で放置せず、耳鼻咽喉科での検査・治療を受けることが大切です。
< テープやマスクで口を閉じる>
就寝時の口開きを防ぐために、市販の口閉じテープや専用マスクを活用するのも一つの方法です。
テープは、鼻呼吸の習慣づけをサポートする簡単な対策として人気があります。
ただし、鼻がつまっている状態で使用すると、息苦しくなる危険があるため絶対に使用しないでください。
肌が弱い方はマスクで代用する方法もあります。いずれも「鼻が通っていること」が前提です。
< マウスピースを使う(軽度のいびき向け)>
軽度~中等度のいびきや口呼吸には、「スリープスプリント」と呼ばれる専用のマウスピースが効果的な場合があります。
このマウスピースは、下あごを前方に固定することで舌の落ち込みを防ぎ、気道を広げて空気の通りを改善します。
市販の簡易タイプもありますが、より効果を得るには、歯科または耳鼻科などで専門的に作製してもらうことをおすすめします。
重度のいびきや無呼吸がある場合には、他の治療法との併用が必要なこともあるため、専門医への相談が安心です。
4-3.筋力をつけて口を閉じやすくする
口呼吸の改善には、口周りや舌の筋肉を鍛えることも有効です。
筋力が低下すると、日中も口が開きやすくなり、就寝中には舌が喉の奥に落ち込みやすくなります。
口のまわりの筋肉(口輪筋など)を鍛えることで、自然と口が閉じやすくなり、鼻呼吸がしやすくなります。
また、舌の筋力がつくと、舌が上顎にぴったり収まり、寝ている間も落ち込みにくくなります。
代表的なトレーニングには、「あいうべ体操」「舌を上顎につけて押し上げる運動」などがあります。
これらの体操はオーラルフレイル対策としても推奨されており、高齢者だけでなく若い世代にも効果的です。
毎日少しずつ継続することで、いびきの予防や改善につながります。
【参考情報】『オーラルフレイル対策のための口腔体操』日本歯科医師会
https://www.jda.or.jp/jda/release/detail_141.html
5.対策しても効果が感じられない場合
さまざまな対策をしても効果がなかった場合、睡眠時無呼吸症候群という病気が原因で、いびきが出ているのかもしれません。
睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に呼吸が止まったり浅くなったりすることを、何度も繰り返す病気です。
この病気の人は、毎晩のように激しいいびきをかくため、周りの人から指摘されることも少なくありません。
また、夜中に十分に眠れないため、日中の猛烈な眠気やだるさに悩まされることがあります。
睡眠時無呼吸症候群を放っておくと、生活習慣病や心血管疾患のリスクが高くなります。
また、居眠り運転で事故を起こしたケースが相次いでいるため、運転業務に携われる人は、会社から検査を受けるよう指導されることもあります。
6.おわりに
睡眠中の口呼吸は、いびきを引き起こす原因のひとつです。
そのため、対策を講じて口呼吸が改善すると、いびきが軽減できる可能性があります。
しかし、口呼吸が改善してもいびきが良くならない場合は、睡眠時無呼吸症候群がいびきの原因かもしれません。
いびきの原因が睡眠時無呼吸症候群だった場合、呼吸器内科で治療ができます。
早めに治療を開始することで、いびきの改善はもちろん、さまざまな合併症の予防にもつながります。また、睡眠の質量が上がるので、目覚めの気分も改善されるでしょう。










