ブログカテゴリ
外来

いびきの原因は「舌」にある?理由と対処法を解説します

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年05月01日

「毎晩のようにいびきをかいているね」と、家族や周囲の人から指摘されたことはないでしょうか。

いびきが出る原因はいくつかありますが、舌に問題がある場合、改善できる可能性があります。

この記事では、いびきの原因が舌にあった場合、どのような理由が考えられるのかを解説します。

自分でできる対策もお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。

1.いびきとは


いびきは、寝ている間に鼻から喉にある上気道が何らかの原因で狭くなり、空気が通るときに粘膜が振動して音が鳴る現象です。

飲酒や疲れで一時的に起こる場合もあれば、病気のサインとして毎晩続くこともあります。

「いびき=よく眠れている証拠」と思われがちですが、実際は空気の通り道が狭い状態で起きているため、体からの注意信号かもしれません。

特に次のような症状があるときは、「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」が隠れている可能性もあります。

・呼吸が止まっていると指摘される
・夜中に息苦しくて目が覚める
・日中に強い眠気がある

◆「”危険ないびき”をチェック」>>

睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に呼吸の停止や浅い呼吸が繰り返され、深い睡眠がとれにくくなります。

重症度の目安には、睡眠1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI)が用いられ、数値が高いほど重症と判断されます。

毎晩いびきをかいている方や、上記の症状に心当たりがある方は、早めに専門医療機関での検査をおすすめします。

【参考情報】『いびき』MSDマニュアルプロフェッショナル版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%83%AB/07-%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%9D%A1%E7%9C%A0%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E8%A6%9A%E9%86%92%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E3%81%84%E3%81%B3%E3%81%8D

2.舌が原因でいびきが出る理由


いびきの原因が舌にある場合、どのような理由が考えられるのかを説明します。

2-1.舌の筋肉の衰え

舌の筋肉が衰えると、舌が重力に逆らえず喉元に落ち込んで気道を塞いでしまうことがあります。

これを「舌根沈下(ぜっこんちんか)」といいます。

舌根沈下は、仰向けで寝ているときに起こりやすい代表的なパターンです。

眠って全身の筋肉がゆるむと、舌が重力でのどの奥に落ち込み、空気の通り道が狭くなります。

狭くなった部分を空気が通ろうとして粘膜が振動するため、いびき音が出やすくなるのです。

通常、健康な成人であれば寝ているだけで舌根沈下になることはほとんどありません。

しかし、加齢によって舌の筋肉が衰えてくると、睡眠中に起こりやすくなります。

特に高齢者、なかでも女性の高齢者は筋力が弱いため、舌の筋肉も衰えていることが多く注意が必要です。

2-2.舌の筋肉のゆるみ

舌の筋肉が衰えていない人でも、舌が緩んで喉に落ち込み、いびきが出ることがあります。

主な原因は、アルコール睡眠薬更年期以降の女性ホルモン減少の3つです。

<アルコール>
寝る前の飲酒にはリラックス効果があり、寝つきが良くなると思われがちです。

しかし、摂取量が増えると舌を含む全身の筋肉が緩み、気道を塞いでいびきが出やすくなります。

<睡眠薬>
睡眠薬の中には筋肉が緩む作用(筋弛緩作用)を持つものがあり、服用すると舌の筋肉も緩んでいびきが出ることがあります。

睡眠薬・安定剤などを服用中の方は、自己判断で中止せず、まず処方医に「いびきが気になる」ことを共有してください。

薬の種類や飲むタイミングを調整できる場合があります。

<更年期以降の女性ホルモン減少>
女性は更年期を過ぎるといびきをかきやすくなります。

女性ホルモンの一種であるプロゲステロンには気道を広げる働きがありますが、閉経により減少すると気道が狭くなり、さらに舌の筋肉も緩んで喉に落ち込むため、いびきの原因となります。

◆「更年期以降のいびき」について詳しく>>

2-3.舌の肥大

舌が肥大してしまうと喉に落ち込みやすくなり、いびきが生じることがあります。

肥大の原因は、主に肥満です。

「首まわりやあご下に脂肪がつくと気道が狭くなる」ことはよく知られていますが、肥満では舌そのものに脂肪がつき、舌のボリュームが増えて気道を圧迫しやすくなる点にも注意が必要です。

肥満以外の原因としては、甲状腺機能低下症によるホルモンの影響で、舌がむくんで肥大する場合があります。

【参考情報】『甲状腺機能低下症』日本内分泌学会
http://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=38

また、舌がんがあった場合も、がん細胞が徐々に大きくなり舌が肥大して、喉を圧迫してしまうことがあります。

いびきが長く続く方は、体重だけでなく「舌や喉のスペースが狭くなっていないか」を医療機関で評価すると原因がはっきりしやすくなります。

【参考情報】『Oral Cancer | Mouth Cancer | MedlinePlus』 U.S. National Library of Medicine
https://medlineplus.gov/oralcancer.html

2-4.舌の位置が低い

舌が正常な位置よりも低い位置にある状態を「低位舌(ていいぜつ)」と言います。

低位舌の人は、口を閉じてしまうと気道が塞がれやすくなってしまうため、気道を広げようとして、口呼吸になりやすいです。

寝ているときも同様に、気道が塞がれないように、無意識のうちに口呼吸となるため、いびきが出やすくなります。

簡単なセルフチェックとして、口を閉じてリラックスしたとき「舌が上あご(前歯の少し後ろ)に軽く触れているか」を確認してみてください。

舌が下がっている(低位舌)と、口呼吸になりやすく、のどが乾燥していびきが悪化することがあります。

3.舌を健康な状態にするためにできること


いびきの原因が舌にある場合、改善のため、自分でできる対策を紹介します。

3-1.舌の筋肉を鍛える

舌はほとんどが筋肉でできています。

舌の筋肉を鍛えることで、いびきが改善する可能性があります。

舌の筋力トレーニングとしては、以下のような方法があります。

 ・噛み応えのある食材を積極的に食べる
 ・舌を動かす体操をする
 ・トレーニンググッズを用いて鍛える

舌を鍛えると、低位舌や口呼吸の改善にもなります。

ポイントは「舌だけ」ではなく、口の周り(唇・頬)や飲み込み、鼻呼吸も含めて整えることです。

舌の位置(舌が上あごにある状態)が保てると、気道が確保されやすくなり、いびきの改善につながる可能性があります。

【参考情報】『オーラルフレイル対策のための口腔体操』日本歯科医師会
https://www.jda.or.jp/oral_frail/gymnastics/

3-2.寝酒は控える

寝る前のお酒は、舌や喉の筋肉の緩みにつながるため、できるだけ控えるようにしましょう。

いびきを予防したいなら、寝る4時間前には飲酒を終え、飲む量もほどほどにするのが良いでしょう。

◆「飲酒と睡眠」の関係>>

3-3.睡眠薬は筋弛緩作用のないものを選ぶ

なかなか寝付けない時や、うつ病などを治療中の方は、睡眠薬を使用することもあるでしょう。

そのような方は、いびきで悩んでいることを医師に告げ、筋弛緩作用のない睡眠薬を処方してもらいましょう。

◆「睡眠時無呼吸症候群でも使える睡眠薬とは?」>>

3-4.減量する

舌の脂肪を落とすと肥大が抑えられ、いびきが改善することがあります。

しかし、舌の脂肪だけを落とすのは難しいため、適正体重を目標に減量するといいでしょう。

極端な減量はリバウンドにつながり、かえっていびきを悪化させる恐れがあります。

食事と生活習慣を見直し、少しずつ体重を落としていきましょう。

【参考情報】『Steps for Losing Weight』CDC
https://www.cdc.gov/healthy-weight-growth/losing-weight/index.html

3-5.寝る姿勢(体位)を工夫する

舌根沈下が疑われる方は、仰向けよりも横向きのほうが舌がのど奥に落ちにくく、いびきが軽くなることがあります。

枕で「頭だけ」を高くするより、上半身ごと少し角度がつくように調整するほうが楽な場合もあります。

4.対策してもいびきが改善しなかったら


自分でできる対策を行ったものの、いびきが改善しなかった場合、睡眠時無呼吸症候群(SAS)という病気になっている可能性があります。

睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に無呼吸や浅い呼吸を何度も繰り返す病気です。

この病気によくある症状として、いびきがあります。

いびきの音はとても大きく、周りから指摘されることも少なくありません。

いびきのほか、日中の眠気や、夜間に何度も起きてしまうなどの症状があれば、睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いです。

◆「睡眠時無呼吸症候群」について詳しく>>

4-1.マウスピース(口腔内装置:OA)治療

いびきや睡眠時無呼吸症候群の治療には、歯科で作る「口腔内装置(マウスピース)」が使われることがあります。

装置で下あごを少し前に出し、舌がのど奥に落ち込みにくい形をつくることで、空気の通り道を確保しやすくします。

4-2.CPAP(シーパップ)治療

中等症以上などの場合は、CPAP(鼻などにマスクをつけ、空気圧で気道を広げる治療)が標準治療になることが多いです。

睡眠中の呼吸が安定し、日中の眠気などの改善が期待できます。

4-3.ASV療法(呼吸に合わせて自動調整する治療)

CPAPを使っても改善が不十分な方や、呼吸が不安定なタイプの睡眠時無呼吸がある方では、「ASV療法」という治療が選択肢になる場合があります。

ASVとは、呼吸を自動でサポートする装置です。

CPAPと同じようにマスクを装着しますが、大きな違いは「呼吸の状態に合わせて、圧力を自動的に調整してくれる」点です。

【CPAPとASVの違い】
CPAP:常に一定の風を送り続ける
ASV:呼吸が弱くなったときだけ強めにサポート、安定しているときは弱めに調整

ASVは、脳からの呼吸指令がうまく働かない「中枢性睡眠時無呼吸」や、CPAPを使っているうちに呼吸パターンが複雑になってしまう「複雑性睡眠時無呼吸」に有効です。

ただし、心臓の機能が低下している方には使えない場合もあるため、心機能の検査や睡眠検査の結果をもとに、医師が慎重に判断します。

まずは専門医による正確な診断を受けることが大切です。

◆「ASV療法」について詳しく>>

5.おわりに

いびきは男性の約57%、女性の約40%にみられ、年齢とともに多くなると言われています。

いびきの原因が睡眠時無呼吸症候群である場合、放っておくと生活習慣病や心血管疾患が引き起こされる可能性が高まります。

◆「合併症」について詳しく>>

しかし、治療によって症状が改善すると、合併症のリスクは健康な人と同じ程度まで下がっていきます。

いびきを改善する対策を行っても良くならない場合は、一度病院で検査をして原因を調べましょう。

いびきが軽減すると、本人も周囲の人たちもぐっすり眠れるようになり、翌朝の目覚めが爽快になります。

◆「当院の睡眠時無呼吸症候群治療について」>>

電話番号のご案内
電話番号のご案内
横浜市南区六ツ川1-81 FHCビル2階