アデノウイルス感染症とは?咳が続く原因と症状・対策を解説

アデノウイルス感染症は、子どもに多い印象がありますが、実は大人もかかることがあります。
家庭内や学校、職場などで感染が広がるリスクがあるため、年齢に関係なく注意が必要です。
アデノウイルスは非常に感染力の強いウイルスです。
特に咳などの飛沫を介して感染が広がるため、流行期には予防策の徹底が重要です。
この記事では、アデノウイルスに感染した時に現れる症状や、感染予防対策について解説します。
咳が長引く場合の対応や受診の目安についてもご紹介します。
目次
1.アデノウイルス感染症とは
アデノウイルスは、目、のど、呼吸器、消化器、泌尿器など幅広い部位に感染し、多彩な症状を引き起こすウイルスです。
代表的な症状として、発熱・咳・のどの痛み・下痢・結膜炎などがあり、特に咳が長引くことが特徴とされています。
【参考情報】”Adenoviruses” by CDC
https://www.cdc.gov/adenovirus/index.html
俗に「プール熱」と呼ばれる咽頭結膜熱や、「はやり目」と呼ばれる流行性角結膜炎も、アデノウイルスに感染して発症する病気です。
【参考情報】『咽頭結膜熱』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/pcf.html
1-1.感染の特徴と感染経路
ウイルスにはさまざまな型があり、感染する型によって症状や重症度が異なります。
型が多いため、一度感染しても別の型のアデノウイルスに感染することがあるのが特徴です。
アデノウイルスは、咳やくしゃみなどによる飛沫感染と、ウイルスが付着したものに触れる接触感染によって広がります。
また、タオルやドアノブ、おもちゃなど日常生活の中のあらゆる物品が感染源となるため、家庭や学校、職場など集団生活の場では特に注意が必要です。
1-2.出席停止のルールと流行の時期
感染後の潜伏期間は通常5~7日ほどですが、感染力が非常に強く、症状が現れる前の潜伏期間中からすでに他人に感染させてしまう可能性がある点が、他の風邪ウイルスと異なる特徴です。
感染拡大を防ぐため、学校保健安全法では出席停止の期間が定められています。
咽頭結膜熱は、主な症状がなくなってから2日間は出席停止が必要です。
流行性角結膜炎は、医師が感染のリスクがないと判断するまで学校に行けません。
【参考情報】『学校感染症による出席停止について』北海道薬剤師会
http://www.doyaku.or.jp/guidance/data/R2-10.pdf
アデノウイルスは季節を問わず1年を通して感染報告がありますが、特に夏季は「プール熱」などの形で子どもを中心に流行しやすくなります。
感染防止には、日頃からの衛生管理が重要です。
2.アデノウイルス感染症の症状
アデノウイルスは、感染した体の部位によって異なる症状を引き起こします。
以下、感染時の症状と特徴を説明します。
特に呼吸器症状では「咳が長引く」「熱が下がらない」といった声が多く、不安に感じる方も多くいるでしょう。
2-1.発熱
38℃以上の熱が3~5日ほど続き、その後自然に下がっていくことが多いです。
乳幼児は、高熱により脱水症状を起こす危険もあるので、水分をこまめに与えてください。
熱は突然上がることもあり、他の風邪との見分け方が難しい場合もあります。
解熱後も体のだるさや咳が続くケースがあります。
2-2.のどの症状
ウイルスが扁桃腺やリンパ節で増殖すると、扁桃腺の腫れやのどの痛みが現れます。
扁桃腺の表面に、白苔(はくたい)と呼ばれる白い膿がつくことがあります。
飲み込むときに強い痛みが出たり、声がかすれたり、食欲低下を伴うこともあります。
のどの違和感から始まる風邪と誤解されやすいため注意が必要です。
2-3.咳
扁桃周辺で炎症が起こると、炎症の刺激で咳が出ます。
咳は激しく、なかなか止まらないことも多く、ほかの症状が治まってもしばらく続くことがあります。
また、感染する型によっては肺炎や気管支炎が引き起こされ、それに伴って咳が長引いたり、呼吸器の症状が悪化することがあります。
特にアデノウイルスによる咳は、「乾いた咳」から始まり、時間が経つにつれて「痰が絡む咳」に変わる傾向があります。
夜間に咳き込んで眠れないという訴えも多く見られるのが特徴です。
【参考情報】”Adenovirus Clinical Overview” by CDC
https://www.cdc.gov/adenovirus/hcp/clinical-overview/index.html
2-4.目の症状
目に感染すると、目が充血して目やにが出ます。
炎症が強い場合は、痛みを感じることもあるでしょう。
充血は、白目が濃い赤色に見えるほど激しいことがあります。
目やにの量は多く、朝、目が覚めると、大量の目やににより目が開かないこともあります。
流行性角結膜炎(いわゆる「はやり目」)の原因にもなり、強いかゆみや視界のぼやけが出ることもあるため、注意が必要です。
2-5.鼻の症状
ウイルスが鼻の粘膜に付着すると、防御反応として鼻水や鼻づまりなどが現れます。
鼻水は透明から黄色へと変化し、ウイルス性の鼻炎から副鼻腔炎へ進行することもあります。
小さな子どもでは口呼吸になりやすく注意が必要です。
2-6.胃腸の症状
アデノウイルスに感染して胃腸炎になると、下痢や腹痛、吐き気、嘔吐などの症状が現れます。
特に、乳幼児に多い症状です。
下痢や嘔吐が続くと、脱水の恐れがあるため、こまめに水分を補給しましょう。
ウイルス性胃腸炎として急激に悪化することがあり、水分補給や経口補水液の活用が重要です。
【参考情報】”Adenovirus” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/23022-adenovirus
2-7.その他
アデノウイルスにより出血性膀胱炎が引き起こされると、真っ赤な血尿や排尿時の痛み、頻尿などの症状が現れます。
肝炎が起こることもありますが、ほとんどは一時的なもので、重症化することはめったにありません。
その他まれに、関節痛や皮膚の発疹、全身の倦怠感など、風邪などでも見られるような全身症状が出ることもあります。
3.アデノウイルス感染症の検査と治療
この章ではアデノウイルス感染症の検査と治療について解説します。
3-1.検査
アデノウイルス感染症の診断には、主に抗原定性検査やPCR検査が用いられます。
抗原検査では、発症から数日以内にウイルス量が多い部位(のど・目・鼻・便など)から綿棒で検体を採取し、約10~15分で結果が判明します。
PCR検査はより精度が高く、特に重症例や入院が必要な場合に用いられることがある検査方法です。
また、小児科では迅速検査キットが使用されることが多く、症状に応じて医師が検査方法を選択します。
3-2.治療
現在、アデノウイルスに特化した承認済みの抗ウイルス薬はありません。
そのため、重症化を防ぐために症状ごとの対症療法が行われます。
基本的には解熱剤や咳止め薬、点眼薬などを用いて症状を和らげるのが一般的です。
具体的には、発熱にはアセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬、咳には鎮咳(ちんがい)薬、目の炎症には抗菌・抗炎症点眼薬などが使用されます。
また、咳が長引く場合や痰が絡む場合は、去痰薬や吸入薬が処方されることもあります。
水分補給や安静、部屋の加湿など家庭内での環境調整も重要です。
症状が悪化する、または長引く場合には、早めに内科や小児科、必要に応じて呼吸器内科や耳鼻咽喉科など専門科の受診が勧められます。
【参考】『アデノウイルス感染症』 MSD
https://www.msdmanuals.com/professional/infectious-diseases/respiratory-viruses/adenovirus-infections
4.感染予防の対策
アデノウイルスに感染したとわかった、あるいは疑いのある時は、家族や周囲の人に移さないよう対策を講じましょう。
アデノウイルスは非常に感染力が強く、症状が軽くても周囲に広がる可能性があるため、早い段階から予防行動を取ることが大切です。
4-1.手洗い
感染対策の基本は、流水と石けんでの手洗いです。
アデノウイルスはアルコール消毒の効果が弱いウイルスのため、アルコール消毒だけに頼らず、必ず流水と石けんを使って丁寧に手を洗いましょう。
特に、トイレの後、食事の前後、外出から帰宅した直後は念入りな手洗いが重要です。
【参考情報】『正しい手洗いの方法』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000593494.pdf
4-2.咳エチケット
咳エチケットは、マスクの着用とともに、咳やくしゃみによる飛沫が飛ぶのを防いで、感染を広げないためのルールです。
咳やくしゃみが出そうになったら、手で口を押さえるのではなく、マスクやハンカチ、ティッシュで口を覆いましょう。
それらがないときは、服の袖の内側で口を覆っても構いません。
手で口を押さえてしまうと、手にウイルスが付着します。
そして、ウイルスが付着した手で触れた場所が汚染され、ウイルスが広がっていきます。
ドアノブやスイッチ、スマートフォンなど、日常的によく触れる場所から感染が拡大することもあります。
4-3.タオルの共有を避ける
感染者が使用したタオルには、ウイルスが付着している可能性が高いため、感染した方は家族や同居者とタオルを共有するのは避けましょう。
汚染されたタオルなどの消毒が必要な場合は、0.1%の次亜塩素酸ナトリウムを使用するといいでしょう。
【参考情報】『消毒法』日本眼科学会
https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/adenovirus05.pdf
タオルだけでなく、感染者の使用した食器なども、共有しないようにしましょう。
また、ドアノブ・洗面所・トイレ・おもちゃなど、共用部分はこまめに清掃・消毒することで、家庭内感染のリスクを下げることができます。
5.激しい咳が長引く他の病気
アデノウイルス感染症以外にも、激しい咳が長引く病気があります。
咳が続く原因はさまざまで、アデノウイルス以外にも似た症状を引き起こす感染症が存在します。
ここでは、症状が似ていて間違えやすい代表的な病気をご紹介します。
5-1.マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマ・ニューモニエという特殊な病原体によって肺炎が起こる病気です。
発熱や全身倦怠感など風邪とよく似た症状が現れた後、激しい咳が3~4週間ほど続きます。
特に学童期から若年成人に多く、乾いた咳が特徴で、夜間に悪化しやすい傾向があります。
アデノウイルス感染症との違いは、発熱や咳が比較的軽いまま長期化しやすく、レントゲン画像では肺炎像が見られる点です。
5-2.百日咳
百日咳菌に感染して起こる呼吸器感染症です。
風邪のような症状から始まり、その後、特徴のある激しい咳が現れます。
咳は長期間にわたって続き、治まるまで100日程度かかります。
咳の発作は激しく、特に夜間に“ヒューヒュー”という笛のような吸気音を伴うのが特徴です。
アデノウイルスではこのような吸気音はあまり見られず、咳の質で区別されることがあります。
5-3.クループ症候群
主にウイルス感染によってのどの奥が狭くなり、咳や呼吸困難、声のかすれなどが現れた状態です。
幼い子どもに多く見られますが、成人も発症することがあります。
咳に特徴があり、犬が吠えるような「ケンケン」という音や、オットセイの鳴き声のような音がします。
吸気時のゼーゼー・ヒューヒュー音(喘鳴)を伴うことも多く、声がかすれることから保護者が異常に気づきやすい病気です。
アデノウイルス感染症ではここまで特徴的な咳は少ないため、音の違いが見分ける際の手がかりとなります。
6.おわりに
アデノウイルスの感染力は非常に強く、症状も多彩です。
感染を予防するには、手洗いやうがいといった基本的な衛生習慣を実践することが重要です。
特に、免疫力の低下している方や高齢者、幼い子どもたちの健康を守るために、健康な大人が率先して予防策を徹底しましょう。
疑わしい症状があって心配なときは、内科や耳鼻咽喉科、お子さんは小児科を受診してください。
他の症状が治まっても、咳が2週間以上長引いている場合は、病気をきっかけに咳喘息など別の呼吸器疾患を発症した疑いもあるので、呼吸器内科の受診を検討してください。










