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肺に多いサルコイドーシスとは?症状・検査・治療について

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年01月27日

サルコイドーシスとは、肺や眼、皮膚、心臓、神経などに、イボやしこりのような肉芽腫(にくげしゅ)と呼ばれるものができる病気です。

がんなどの悪性腫瘍ではなく、人から人へうつる感染症でもありません。

肉芽腫ができると、できた部位の機能や働きが阻害され、さまざまな症状が現れます。一方、肉芽腫ができても自覚症状がなく、健康診断で発見されはじめて気づく人もいます。

この記事ではサルコイドーシス、特に肺のサルコイドーシスについて解説します。咳や息切れ、胸の痛みが続いている人、健康診断でサルコイドーシスと指摘された人、なんだか最近疲れやすいと感じている人は、ぜひ読んでください。

1.サルコイドーシスとはどんな病気か


サルコイドーシスは、体の中に何らかの異物が入り、それに対して免疫のシステムが過剰に反応することで、炎症性の細胞が集まり肉芽腫とが形成されると考えられています。

この反応は、アレルギー反応の一種である細胞性免疫が関与するとされています。

原因となる異物については複数の仮説があります。その中で比較的多く研究されているのが、アクネ菌(Cutibacterium acnes)です。

サルコイドーシスの病変部からこの菌の成分や遺伝子が検出されたという報告があり、免疫反応を引き起こす引き金になっている可能性が指摘されています。

【参考情報】『サルコイドーシスの病因論』東京医科歯科大学
https://www.tmd.ac.jp/med/pth1/hupathhp/kenkyu-sar.html

ただし、アクネ菌が直接の原因と確定したわけではなく、結核菌など他の微生物や、環境因子が関与している可能性も否定できません。

日本における発症頻度は、報告によって幅がありますが、人口10万人あたりおよそ1~3人程度とされています。

性別では女性に多い傾向があり、年齢分布を見ると、20~30代と50~60代に発症のピークがみられるという特徴があります。

『サルコイドーシス』(指定難病84)難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/266

2.サルコイドーシスの症状


サルコイドーシスの症状には、肉芽腫ができた部位によって違う「臓器特異的症状」と、どの部位にできても共通の「非特異的症状(全身症状)」があります。

2-1.臓器特異的症状



<肺の症状>
肺や肺門リンパ節に病変が生じると、以下のような症状が現れることがあります。

 ・咳

 ・痰

 ・胸の痛み

 ・息切れ

ただし、肺に病変があっても自覚症状がほとんどない患者も少なくありません。


<眼の症状>
眼に肉芽腫ができると、ぶどう膜炎を発症し、以下のような症状が現れることがあります。

 ・眼のかすみ

 ・充血

 ・視力低下

 ・まぶしさ

 ・眼の痛み

眼の病変は自覚症状が軽いまま進行することもあり、放置すると視力障害につながる恐れがあるため注意が必要です。

【参考情報】『ぶどう膜炎』日本眼科医会
https://www.gankaikai.or.jp/health/21/



<皮膚の症状>
皮膚では、以下のような症状がみられます。

 ・発疹

 ・しこり(結節)

 ・色素の沈着や減少

皮膚の病変は外見から気づかれやすく、診断のきっかけになることも多いです。


<心臓の症状>
心臓に肉芽腫ができる例は、全体の約5%前後とされていますが、突然死の原因となる場合もあります。

 ・不整脈

 ・動悸

 ・めまい

 ・失神

 ・心不全症状

症状が軽くても、心臓の病変が疑われる場合には、精密検査が重要です。

2-2.非特異的症状

サルコイドーシスでは、肉芽腫ができた臓器の種類に関係なく、全身性の炎症反応や免疫異常によって共通した症状が現れることがあります。

<主な症状>

 ・発熱

 ・強い疲労感、だるさ

 ・痛み(頭痛、胸痛、関節痛、筋肉痛など)

 ・息切れ

 ・食欲不振

 ・体重減少

これらの症状は、体内で炎症性サイトカインが産生され、全身に影響を及ぼすことによって生じると考えられています。

【参考情報】『Sarcoidosis』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/11863-sarcoidosis

3.サルコイドーシスの検査


サルコイドーシスが疑われる場合、複数の検査を組み合わせて、症状や病変の広がりを確認します。

3-1.血液検査

血液検査では、「ACE(アンギオテンシン変換酵素)」の値を確認します。アンギオテンシン変換酵素(ACE)とは、体の中で血圧や血管の働きを調整するために作られている酵素で、主に肺の血管の内側などで作られています。

サルコイドーシスでは、体の中にできた肉芽腫の細胞からACEが多く作られることがあり、血液中のACEの値が高くなることがあります。このため、ACEはサルコイドーシスの活動性を推測する目安として血液検査で測定されます。

ただし、ACEは他の病気でも高くなることがあり、逆にサルコイドーシスでも正常な値のことがあるため、ACEの値だけで診断することはできません。

また、体の中の免疫の働きがどれくらい活発になっているかを示す目安となる物質「可溶性IL-2受容体(sIL-2R)」を測定したり、サルコイドーシスではカルシウムが高くなりやすい状態が起こることがあるため、血液や尿中のカルシウムの量を調べることもあります。

3-2.画像検査

サルコイドーシスでは肺や肺門リンパ節に変化が起こりやすく、しかも自覚症状がほとんどないまま進行することがあります。

しかし、画像検査を行うことで、症状が出る前の段階でも異常に気づくことができます。

<胸部レントゲン>
左右の肺の入り口にあるリンパ節の腫れや、肺全体の大まかな変化を確認します。特に、両側の肺門リンパ節が腫れている状態は、サルコイドーシスでよく見られる特徴です。

また、レントゲン画像をもとに、病気の広がりや進み具合を0期からIV期までに分けて評価し、経過観察や治療方針を考える参考にします。

◆「呼吸器内科のレントゲン検査」について>>

<CT検査>
レントゲンでは重なって見えにくい、以下のような細かな変化まで詳しく調べることができます。

 ・肺の中にできた小さな肉芽腫

 ・気管支や血管の周囲に沿って現れる細かい影

 ・肺の構造が乱れていないかどうか

 ・繊維化(肺が硬くなる変化)が起きていないか

これにより、病気がどの程度活動しているかや、進行しているかどうかをより正確に判断でき、他の肺の病気との区別にも役立ちます。

3-3.組織検査(生検)

血液検査や画像検査の結果からサルコイドーシスが疑われる場合は、体の一部から組織を少量採取し、顕微鏡で詳しく調べる検査が行われます。

ここで、サルコイドーシスに特徴的な「非乾酪性類上皮細胞肉芽腫(ひかんらくせいるいじょうひさいぼうにくげしゅ)」と呼ばれる変化があるかを確認します。

ただし、この変化はサルコイドーシスだけに見られるものではありません。そのため、結核や肺真菌症など、他の病気による肉芽腫でないことを確かめることが重要です。

肺に病変が疑われる場合には、気管支鏡検査が行われます。口や鼻から細い内視鏡を入れ、気管支の中を見ながら、肺の組織を少し採取する方法で、比較的体への負担が少ない検査です。

【参考情報】『気管支鏡検査とはどのような検査ですか?』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q33.html

ただし、症状や画像の特徴がはっきりしている場合には、組織検査を行わないこともあります。

3-4.その他の検査

病変の部位や症状に応じて、以下の検査が追加されることがあります。

<尿検査>
尿の中にカルシウムが多く出ていないかを調べ、体への影響が出ていないかを確認します。

<肺機能検査>
肺が十分に広がって空気を取り込めているか、酸素をうまく取り込めているかを調べます。

<心電図・心エコー検査>
心臓に病変が及んでいないか、不整脈や心臓の動きに異常がないかを確認します。

<FDG-PET>
炎症が起きている場所を調べる検査です。

4.サルコイドーシスの治療


サルコイドーシスの患者さんの約半数は、治療をしなくても自然に治ります。

ただし、軽症であっても、症状や病変の部位によっては治療が必要になることがあります。そのため、症状が落ち着いている場合でも、通院と検査を継続することが重要です。

眼や皮膚に症状がある場合は、プレドニゾロンなどのステロイド薬で治療を行います。肺サルコイドーシスで咳が続く場合には、喘息の治療で使われる吸入ステロイド薬が処方されることもあります。

◆「吸入薬」についてくわしく>>

軽症の患者さんが多い一方、中には慢性化する人、再発する人、急に症状が悪化する人もいるので、定期検査は必ず受けてください。眼に肉芽腫ができると失明、心臓にできると命にかかわる恐れがあります。

ごくまれではありますが、肺が硬くなって呼吸がしにくくなる肺線維症や、肺動脈の血圧が高くなって息切れや呼吸困難が生じる肺高血圧症へと進み、肺移植が必要となることもあります。

重篤な症状がある場合や、3~5年経ってもよくならない患者さんには、副腎皮質ステロイド薬の全身投与を行います。ステロイド薬が効かない場合は、メトトレキサートなどの免疫抑制剤で治療することもあります。

サルコイドーシスが難治化した患者さんは、「指定難病」と診断されると、医療費補助を受けることができます。

【参考情報】『指定難病患者への医療費助成制度のご案内』難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/5460

5.妊娠・出産について


サルコイドーシスの患者さんでも、妊娠・出産は可能ですが、計画段階から主治医に相談することが大切です。男性の患者さんで子どもを希望する場合も、治療内容によっては配慮が必要になるため、事前に相談してください。

妊娠中は、ホルモンや免疫の変化の影響で、一時的に症状が落ち着くことがあります。一方で、出産後は免疫状態が元に戻る過程で、症状が再燃したり悪化したりすることがあり、治療が必要になる場合があります。

治療でステロイド薬を使用することがありますが、ステロイド薬を服用しているからといって、必ずしも母乳育児ができないわけではありません。薬の種類や量によって判断が異なるため、授乳を続けられるかどうかは主治医と相談して決めます。

なお、サルコイドーシスは遺伝する病気ではありません。ただし、ごくまれに親子やきょうだいなど、家族内で発症した例が報告されています。そのため、遺伝の可能性は非常に低いものの、完全にゼロではないと考えられています。

【参考情報】『Familial aggregation and heritability of sarcoidosis: a Swedish nested case-control study』National Library of Medicine |PubMed
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29946010/

6.おわりに

肉芽腫ができる場所で一番多いのは肺です。咳や痰、息切れが続いている人は、まずは呼吸器内科を受診してください。

呼吸器内科では、画像検査などを行い、肺や肺門リンパ節に異常がないかを調べます。自覚症状が軽い場合や、症状がはっきりしない場合でも、検査によって病気が見つかることがあります。

サルコイドーシスだと診断されても、多くは自然によくなります。しかし、症状がなくても医師の指示に従って、通院と検査を続けてください。

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