アトピー性皮膚炎を改善するための生活習慣とは?

アトピー性皮膚炎は、強いかゆみを伴う湿疹が慢性的に続き、良くなったり悪くなったりを繰り返す皮膚の病気です。
アトピー素因(アレルギーの傾向)がある人や、喘息・花粉症などを持つ人にみられることが多く、遺伝的要因と環境要因が両方関係しています。
この病気では、皮膚が乾燥しやすく、外からの刺激を防ぐバリア機能が弱くなるため、アレルゲンなどが入り込みやすくなり、炎症が起こりやすくなります。
改善には薬による治療だけでなく、ダニやホコリ、汗、乾燥、こすれ、化学的刺激、ストレスなど、悪化要因への対策も欠かせません。
この記事では、まずアトピー性皮膚炎の改善で特に重要となるダニ対策について詳しく解説し、続いてその他のポイントも紹介します。
目次
1.アトピーを悪化させる「ダニ」を減らす対策
ダニは、アトピー性皮膚炎を悪化させる代表的な要因であるため、ダニを減らす・避ける対策が重要となります。
1-1.なぜ日本の住宅にはダニが多いのか
アトピー性皮膚炎の発症に強く関係しているのは、チリダニ(ヒョウヒダニ)というダニです。
【参考資料】『Dust mite avoidance for the primary prevention of atopic dermatitis: A systematic review and meta-analysis』NCBI(National Center for Biotechnology Information)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26235650/
このダニのフンや死骸が体の中に入ると、免疫のしくみがそれらを異物(アレルゲン)と判断して、皮膚のかゆみなどのアレルギー反応が起きます。
日本の家の中のチリダニの数は、欧米の10倍~100倍といわれています。それは、日本の湿度がチリダニの繁殖に最適だからです。
チリダニは室温25℃くらい、湿度75%くらいで最もよく繁殖します。一方、アラビアなどの砂漠が多く乾燥している地域では、まず繁殖しません。
【参考資料】『日本家屋のハウスダストに含まれる ダニアレルゲンの変遷』嶋田貴志,安枝浩
https://www.kanto.co.jp/dcms_media/other/backno8_pdf33.pdf
残念ながら、家の中からダニを完全になくすことは難しいのが現実です。しかし、掃除を行うことによって数を減らすことは可能です。
また、掃除をすると、カビや細菌、動物の毛など他のアレルゲンも除去することができます。
ダニやカビは高温多湿な場所を好みます。部屋の風通しを良くし、換気をしてから掃除を始めましょう。
1-2.寝具の掃除
布団にはダニが集まりやすいため、こまめなお手入れが欠かせません。布団カバーやシーツは週1回以上、可能であれば週2回洗濯しましょう。
布団本体も週1~2回天日干し、あるいは布団乾燥機で乾燥させたうえで、表面を家庭用掃除機でしっかり吸い取りましょう。
布団の中身(羽毛・羊毛・綿)による大きな差はありませんが、防ダニ効果のある高密度繊維の布団カバーを使うとより効果的です。
使わない布団は、清掃後に密封して保管するとダニが付着しにくくなります。また、枕の中身はダニが住みつきにくいプラスチック製のものがおすすめです。
1-3.床の掃除
最初に拭き掃除、次に掃除機がけの順番で行ってください。これは先に掃除機をかけると、ダニが舞い上がってしまい拭き取れなくなるからです。
掃除機はできるだけ毎日かけるのが望ましいです。使用する製品は家庭用掃除機で十分です。重要なのは掃除機の吸引力ではなく、掃除をする回数です。
床はフローリングが理想的です。絨毯やゴザは避けた方が良いですが、使用する場合は週に2回以上の掃除が必要です。
畳も週2回以上の掃除をおすすめします。1平方メートルあたり20秒以上の時間をかけて掃除機で吸い込むことが推奨されています。
ルンバのようなお掃除ロボットは、障害物の少ない部屋に有効です。日常的に動かし、さらに気になるところはハンディクリーナーなどで掃除しましょう。
1-4.布製品・インテリア・動植物の注意点
カーテンは定期的に洗濯をする必要があります。ソファは布製よりも革製・合成皮革の方が望ましいです。
ぬいぐるみは置かないにこしたことはありません。どうしても置きたい場合は、3カ月に1回は洗濯しましょう。またはビニール袋に入れておきましょう。
鉢植えなど観葉植物は室内に置かない方が良いです。ペットも室内では飼わないことをおすすめします。
1-4.空気清浄機・エアコンのポイント
空気清浄機は部屋全体の吸塵をするものなら有効です。
エアコンはフィルターの掃除だけでなく、高圧洗浄をして内部のカビ取りを定期的に行うことが望ましいです。
これらの対策を着実に行うことで、ダニの量は激減します。
2.食生活のポイント
最近、腸内環境とアレルギーには密接な関わりがあることがわかってきました。
腸内環境を改善しようとヨーグルトを積極的に食べている人もいますが、毎日同じ食材ばかり大量に摂っていると、その食材がアレルギーの原因となる恐れもあります。
栄養の偏りを避けるためにも、野菜を中心にいろいろな食材をバランスよく食べましょう。
炭水化物を含む糖質の過剰摂取は、腸内環境のバランスを崩してアレルギーを悪化させるのでおすすめできません。
また、肥満のある人は、皮下脂肪や内臓脂肪から炎症を悪化させる物質が放出されるため、症状がひどくなる傾向があります。
アレルギーの症状がある人は、糖質は控えめに、脂質はオメガ3のような良質な油を選んで、肥満と炎症の悪化を防ぎましょう。
3.汗対策
アトピー性皮膚炎のある人にとって、汗は症状を悪化させる代表的な要因のひとつです。
汗そのものが刺激となってかゆみを引き起こし、放置すると皮膚が赤くなったり、湿疹が広がることがあります。特に、汗が蒸発するときに塩分が肌に残ることで刺激が強まり、かゆみが増しやすくなります。
また、汗で皮膚が湿った状態が続くと、皮膚のバリア機能が低下し、外部刺激に敏感になります。その結果、掻き壊しや炎症の悪化につながることもあります。
その一方で、汗は皮膚の保湿のために重要な働きをしており、皮膚の角層バリアの機能維持にも役立っています。
アトピー性皮膚炎の患者さんにとって問題なのは、汗をかくことではなく、汗をかいた後、そのまま放置しておくことです。
汗をかいたときには、下記の対策を行いましょう。
- シャワーを浴びる
- 手や足の汗は水で洗い流す
- おしぼりで拭き取る
- 服を着替える
4.衣服などの外的刺激を避ける
アトピー性皮膚炎の患者さんは、硬い生地の服や、飾り模様などで凹凸が多い衣服を着ると、皮膚が刺激され症状が悪化することがあります。コットン素材などを用いた、肌触りの良い衣服を着るようにしましょう。
柔らかい生地でも、ひらひらして皮膚に触れるようなものは、痒みの原因となるので注意が必要です。また、汗を吸い取らない生地や温まりすぎる生地などもかゆみを誘発します。
入浴の際は、お湯の温度は37℃~38℃くらいにして、湯船には長時間つかりすぎないようにしましょう。シャワーのみでもかまいません。
体を洗うときは一般的な石けん、ボディソープでよいので、手のひらでこすらず優しく洗いましょう。
頭はシャンプーで毎日洗いましょう。髪を乾かすときはなるべくドライヤーを使わず、タオルでしっかり拭きます。薬を塗る場合は、水滴をしっかり拭き取った後に塗りましょう。
5.日焼けを避ける
アトピー性皮膚炎のある人は、日焼けによるダメージを受けやすいという特徴があります。これは、もともと皮膚のバリア機能が弱く、紫外線の刺激が直接肌に届きやすいためです。
紫外線によって肌が乾燥すると、かゆみが強くなったり、炎症が悪化したりすることがあります。また、日焼けした部分をかいてしまうことで、さらに症状を悪化させる悪循環につながることもあります。
日焼け対策でいちばん簡単なのは、皮膚を布で覆って直射日光を避けることです。日差しの強い季節に屋外で活動するときは、帽子、袖のある洋服、タオルや日傘を取り入れてみましょう。
日焼け止めは日光を浴びる直前に塗ります。軟膏を使っている場合は、軟膏の上から塗ってください。
6.睡眠をしっかり取る
睡眠不足や昼夜逆転のような不規則な生活が続くと、ホルモン分泌を調整する内分泌系や自律神経のバランスが乱れやすくなります。
これらは皮膚のバリア機能や免疫反応とも関わっているため、アトピー性皮膚炎の炎症やかゆみが強まりやすい状態になります。
また、アトピー性皮膚炎ではそもそも、夜間の強いかゆみで「寝つけない」「何度も目が覚める」といった睡眠障害が起こりやすく、これがさらに症状悪化につながる悪循環を生みます。
この悪循環を断つには、治療とともに、入浴や保湿、寝具の見直し、室内環境の調整などで、可能な範囲で夜間のかゆみを抑えつつ、規則正しい睡眠リズムを取り戻すための生活習慣づくりが欠かせません。
たとえば、就寝前に刺激の強い行動を避けて心身を落ち着かせることや、寝室の温度・湿度を一定に保つことなどは、かゆみによる中途覚醒を減らすために有効です。
7.精神的ストレスを避ける
強いストレスを受けると、興奮をもたらす交感神経が活発になって、コルチゾールというホルモンが大量に分泌されます。すると、血管が収縮して皮膚の水分量が少なくなり、皮膚が乾燥します。
皮膚が乾燥すると、外からの刺激やアレルゲンの侵入を防ぐバリア機能が低下します。すると、かゆみや湿疹が生じやすくなります。
アトピー性皮膚炎の患者さんにとって、ストレスコントロールはとても大切です。ストレスがたまりにくいような工夫をしたり、ストレスが溜まってしまったときは、自分に合った方法で早めに発散することが必要になります。
8.おわりに
アトピー性皮膚炎に悩んでいる人にとって、思うように症状が落ち着かない状況は負担に感じることもあると思います。毎日のケアを続けるだけでも十分に大変なことです。
この記事で紹介した方法を続けても症状が改善しない場合や、かゆみや炎症が強くつらいときは、早めに医師へ相談してください。
アトピー性皮膚炎の治療は進歩しており、外用薬に加えて内服薬・注射薬など新しい選択肢もあります。自己判断で我慢せず、専門家の診察を受けて、より適した治療を検討しましょう。














