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喘息とタバコの関係とは?症状が悪化する理由と禁煙のコツ

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年02月10日

タバコは、喘息をはじめとした呼吸器疾患の症状を悪化させます。

しかし、タバコが体に良くないと分かっていても、なかなかやめられないと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、タバコを吸い続けることによる喘息への影響を説明するとともに、禁煙の方法についても紹介します。

喘息の方はもちろん、禁煙の一歩が踏み出せない方も、タバコの影響について一緒に考えていきましょう。

1.喘息の人がタバコを吸ってはいけない理由


喘息の症状がなかなか改善しない背景には、タバコによる気道への強いダメージが隠れていることがあります。

ここでは、タバコが喘息の気道にどのような影響を与えてしまうのか、医学的な視点から分かりやすく解説します。

1-1.喘息の人の気道はなぜ刺激に弱いのか

喘息の人の気道の粘膜には、慢性的な炎症が存在しており、正常の人よりも刺激に非常に弱い状態です。

そのため、わずかな刺激でも気道がキュッと縮み、咳やゼーゼー(喘鳴:ぜんめい)が起こりやすくなってしまうのです。

タバコの煙は刺激物のかたまりであり、炎症を悪化させる最も避けたい刺激の一つです。

◆「喘息治療のカギとなる「気道の炎症」を抑えるには?」>>

1-2.タバコの化学物質が炎症を悪化させる仕組み

タバコには 7,000種類以上の化学物質が含まれ、その多くが気道に有害です。

ニコチンは依存性が高く、タールは発がん性物質を含み、一酸化炭素は酸素運搬を妨げてしまいます。

【参考情報】『ニコチン』健康日本21アクション支援システム|厚生労働省
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/tobacco/yt-034

また、タバコの煙が気道に触れると、粘膜の炎症が急激に悪化し、腫れや分泌物が増加します。

さらに線毛(ほこりを外へ押し出す細かい毛)が麻痺し、痰がからみやすくなります。

これにより、もともと気道にあった炎症はさらに悪化し、ますます気道が過敏になっていきます。

【参考情報】『喫煙と呼吸器疾患』健康日本21アクション支援システム|厚生労働省
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/tobacco/t-03-003

1-3.吸入ステロイド薬が効きにくくなる理由(ステロイド抵抗性)

喘息治療で最も重要な薬が 吸入ステロイド薬(ICS) ですが、喫煙者ではこの効果が弱くなることが分かっています。

これを 「ステロイド抵抗性」 といいます。

喫煙により、喘息で典型的にみられる「好酸球性炎症」とは異なる、ステロイドが効きにくい「好中球性炎症」が強まり、薬が十分に効かなくなります。

◆「喘息の薬が効かない理由」とは?>>

1-4.喫煙で起こる長期的な変化(気道リモデリング)

喘息を放置したり喫煙を続けたりすると、炎症によって気道の壁が厚くなる「気道リモデリング」が進行します。

これは元に戻りにくいため、症状が慢性化し、発作を起こしやすくなります。

気道リモデリングが進むと、ちょっとした家事や歩行でも息苦しくなる事が増え、日常生活に大きな影響が出てしまうこともあるでしょう。

さらに、喫煙者では COPD(慢性閉塞性肺疾患)への移行リスクが高くなることも分かっています。

【参考情報】『気道リモデリングの病態の理解とその治療への応用』日本呼吸器学会誌
https://is.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/041090611j.pdf

2.タバコが周囲に与えるリスク


タバコの影響を受けるのは、喫煙者本人だけではありません。

むしろ周囲にいる家族、とくに子どもや高齢者がより大きな悪影響を受けることがあります。

この章では、「受動喫煙」「三次喫煙(サードハンドスモーク)」の危険性と、家庭でできる対策を解説します。

2-1.主流煙・副流煙とは?

タバコの煙は、主に以下の2つに区別されます。
・主流煙:喫煙者本人が吸い込む煙
・副流煙:タバコの先端から立ち上る煙(周囲の人が吸い込むもの)

副流煙には、有害物質が主流煙よりも多く含まれていることが分かっています。

特に、子どもや気管支が細い高齢者・喘息患者は、副流煙を吸うだけで咳が増え、発作を起こしやすくなります。

◆「タバコで咳が出る理由」について>>

【参考情報】”Asthma and Secondhand Smoke” by CDC https://www.cdc.gov/tobacco/campaign/tips/diseases/secondhand-smoke-asthma.html

2-2.三次喫煙(サードハンド・スモーク)とは?

近年注目されているのが、三次喫煙(サードハンドスモーク)です。

これは、喫煙後の衣類、髪の毛、カーテンや壁紙、車のシートなどに付着した有害物質が、時間をかけて再放出され、その空気を周囲の人が吸い込んでしまう現象です。

【参考情報】『三次喫煙(サードハンド・スモーク)』健康日本21アクション支援システム|厚生労働省
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/tobacco/yt-057

また、換気をしても完全に除去できないため、家族がタバコを吸っていなくても「家の中に有害物質が残り続ける」ことがあります。

特に乳幼児は床付近で過ごす時間が長く、付着物質を吸い込みやすいため注意が必要です。

2-3.周囲への影響

受動喫煙・三次喫煙の影響を特に受けやすいのは以下のような方です。
・子ども(気道が細く、炎症が起きやすい)
・高齢者(免疫力低下)
・喘息・アレルギー体質の人
・心疾患・呼吸器疾患のある人

特に子どもは、受動喫煙で「喘息発作の頻度増加」「入院リスク上昇」「風邪が治りにくい」など、生活の質に大きな影響が出ることが分かっています。

【参考情報】『受動喫煙が与える胎児や子どもへの影響』厚生労働省
https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/people/kosodate/

また高齢者も、加齢による呼吸機能の低下や免疫力の衰えにより、受動喫煙によって肺炎や慢性呼吸器疾患のリスクが高まります。

2-4.家庭内受動喫煙を減らすためにできること

タバコの害を減らすためには、家庭内の環境づくりがとても重要です。
・家の中や車内では絶対に吸わない
・吸った後はすぐに室内へ入らない
・衣類・髪へ付着した煙を持ち込まない
・玄関など「半分屋外」の空間でも吸わない(有害物質が室内に入るため)

日本では「望まない受動喫煙をなくす」ことを目的として健康増進法が改正され、公共の場での喫煙規制が強化されています。

家庭での対策は法律の対象外のため、家族が協力し合うことが何より大切です。

【参考情報】“Health Effects of Secondhand Smoke” by World Health Organization
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/tobacco

3.喘息とCOPD(慢性閉塞性肺疾患)のオーバーラップ


タバコを吸い続けることで起こる大きなリスクが、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の発症です。

さらに、喘息とCOPDが同時に存在すると、症状が悪化しやすく治療も難しくなります。

この章では、タバコとCOPD・喘息の密接な関係について解説します。

3-1.COPDとはどんな病気か

COPDは、長年の喫煙によって肺や気道が障害される病気で、咳・痰・息切れなどが慢性的に続くのが特徴です。

特に息切れは、階段や坂道だけでなく、症状が進むと平地を歩くだけでもつらくなってしまうことがあります。

COPDは進行性の病気であり、放置すると肺機能が少しずつ低下します。

◆「咳がとまらない・しつこい痰・息切れは、COPDの危険信号」>>

3-2.喫煙がCOPDを進行させる理由

喫煙をすることによって、気道では慢性的な炎症が起こり以下の変化が進みます。
・気道の壁が厚くなる
・空気の通り道が狭くなる
・肺胞(肺の中にある小さな袋)が壊れやすくなる

これらの変化により、吸った空気が十分に肺へ届かなくなり、息苦しさが増すだけでなく、感染症にもかかりやすくなります。

COPDの患者さんが喫煙を続けると、肺機能の低下が加速し、日常生活が大きく制限されます。

3-3.喘息とCOPDのオーバーラップ(ACO)の特徴

喘息とCOPDが同時にある状態をACO(Asthma and COPD Overlap)と呼びます。

ACOの患者さんは、どちらか一方のみの場合よりも症状が重くなりやすく、息切れが強い、発作を繰り返しやすい、症状の悪化により入院が必要になることが多いという特徴があります。

COPDがゆっくり進行するため、初期は気づかれず、喘息治療だけをしている間に実はCOPDが進んでいるケースも珍しくありません。

◆「喘息と合併しやすい病気と予防法」>>

3-4.禁煙が肺を守る科学的根拠

たとえ長年喫煙してきた人でも、禁煙すると肺機能の低下が緩やかになることが分かっています。

禁煙によって、咳や痰が減り、呼吸が楽になるだけでなく、将来的な COPD の進行を抑える効果も期待できます。

喘息とCOPDの両方を持つACOの患者さんにとっても、禁煙は治療の最重要ポイントです。

4.おすすめの禁煙方法


タバコをやめたいと思っていても、「どう始めればいいのか分からない」「何度も失敗してしまった」という方は多くいます。

この章では、禁煙を成功させるための具体的なコツと、医療機関で受けられるサポートについて分かりやすくまとめました。

ご自身に合った方法を見つける参考にしてください。

4-1.吸ってしまう原因を考え、対策を行う

みなさんは、どのような時にタバコを吸いたくなるのでしょうか。

例えば、飲み会で吸いたくなるという人は、飲みに行かないというのも一つの案です。

もし、飲みに行くのであれば、タバコを吸いたくなったタイミングで、冷水を飲むという方法もあります。

禁煙の第一歩として、「いつ」「どんな場合に」自分がタバコを吸いたくなるのかを考えてみましょう。

そして、そのような場所や機会を避ける対策を行います。

そのうえで、家庭や職場で禁煙宣言をすれば、周りが喫煙を制御してくれるかもしれません。

時々「禁煙をした」という方の中に、「新型タバコに切り替えた」という方がいらっしゃいます。

しかし、「新型タバコ」は、形は違えど「タバコ」の一種であることに変わりはありませんので注意が必要です。

◆新型タバコ(加熱式・電子)がもたらす健康被害>>

4-2.タバコの代わりになるものを口にする

タバコを吸いたくなったら、ガムや飴、タブレットを食べて、気持ちを落ち着かせます。

もし、食べ物の糖分が気になる場合は、運動を行うのもおすすめです。

運動には、喫煙したいという気持ちやイライラを和らげる精神的な効果と、喫煙の機会を減らすという物理的な効果があります。

4-3.禁煙補助薬を使用する

ニコチンパッチニコチンガムなど、禁煙補助薬を使ってみる方法もあります。

タバコがやめられない原因のひとつに、ニコチンへの強い依存があります。

ニコチンパッチやニコチンガムを使用すれば、体の中にあるニコチンの量をコントロールして、徐々にタバコを減らしていくことができます。

4-4.禁煙外来に通う

自力で禁煙する自信がない方や、確実に禁煙したい方、早く禁煙に成功したいという方は、禁煙外来を受診してみましょう。

禁煙外来では、医師の専門的なアドバイスを受けながら、自分に合った方法で治療を進めていくことができます。

また、市販の禁煙補助薬より効果が高い、医療用の禁煙補助薬を使うことで、離脱症状を和らげることもできます。

【参考情報】『禁煙治療ってどんなもの?』健康日本21アクション支援システム|厚生労働省
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/tobacco/t-06-007

また「ニコチン依存症スクリーニングテスト(TDS)」で一定の基準を満たせば、禁煙治療に健康保険が適用されるため、経済的な負担を抑えて治療を受けられます。

5. 喘息患者が禁煙を続けるための実践ポイント

禁煙は喘息の症状改善に最も効果的な方法の一つですが、実際に始めると様々な困難に直面することがあります。

しかし、適切な知識と準備があれば、禁煙の成功率は大きく高まります。

この章では、禁煙を成功させるための具体的な方法と、途中で挫折しないためのコツを解説します。

5-1.禁煙初期に起こりやすい症状と対策

禁煙を始めると、体からニコチンが抜ける過程で、イライラ・集中力の低下・眠気・手持ち無沙汰感といった離脱症状が現れます。

これらは体が正常に戻ろうとしているサインであり、数日〜数週間で軽くなることがほとんどです。

離脱症状が出る時期こそ、「禁煙補助薬」や「気分転換行動」を活用することで乗り越えやすくなります。

【参考情報】『ニコチン依存症』健康日本21アクション支援システム|厚生労働省
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/tobacco/yt-052

5-2.環境を整えることが禁煙成功のカギ

禁煙は、周囲の環境が整っているほど成功しやすくなります。

例として以下を実践してみることをおすすめします。
・家の中にあるライターや灰皿を捨てる
・喫煙所の近くを通らない
・タバコを吸う友人との時間を少し調整する
・家族にも禁煙宣言を伝える

自宅や車内の「匂い」も喫煙欲求を引き起こすため、掃除や換気、ファブリック類の洗濯も効果的です。

5-3.ストレス対策と気分転換の習慣づくり

タバコが吸いたくなる原因の一つに「ストレス」があります。

多くの喫煙者は、ストレスを感じた時にタバコで気分を落ち着かせる習慣が身についていますが、タバコ以外のストレス解消方法を身につけることで、禁煙の成功率は大きく高まります。

特に効果的なのは、体を動かすことです。軽い散歩やストレッチ、深呼吸などは、心身のリラックス効果があるだけでなく、呼吸機能の改善にもつながります。

喘息の症状軽減と禁煙の両方に役立つため、まさに一石二鳥の方法と言えるでしょう。

また、以下のような気分転換も有効です。
・好きな音楽を聴く
・日記や思いを書き出す
・温かい飲み物(ハーブティーやお茶)でリラックスする
・趣味に没頭する時間を作る

大切なのは、自分に合った方法を見つけることです。
無理なく続けられるものから始めてみましょう。

【参考情報】『たばことストレス』健康日本21アクション支援システム|厚生労働省
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/tobacco/t-06-005

5-4.再喫煙(スリップ)しても禁煙失敗ではない

禁煙中に 1 本吸ってしまうこと(スリップ)は珍しくありません。

しかし、それを「失敗」と捉える必要はありません。

1 本吸ってしまっても、すぐに切り替えて禁煙を続ければ成功率は落ちません。

医療機関では、スリップしやすい場面の分析や、再発予防のアドバイスも行っていますので、もし吸ってしまったとしても医師に相談し、禁煙治療を続けていくことが大切です。

◆「呼吸器内科の禁煙外来とは?」>>

6.おわりに

喘息の人がタバコを吸うと、気道の炎症が強まり症状が悪化しやすくなります。

受動喫煙や三次喫煙は家族にも影響するため、禁煙は自分と周囲の健康を守る大切な取り組みです。

禁煙は一人で抱える必要はありません。

専門医のサポートを受けながら、無理なく続けていきましょう。

◆当院の禁煙外来について>>

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