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「風邪をこじらせた」と思う時に疑われる5つの病気

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2023年02月09日

風邪の症状が長引いてなかなか良くならない時、「風邪をこじらせた」という言い方をします。

そのような時に疑われる病気のうち、よくあるものをまとめました。

1.風邪をきっかけに起こる身近な病気


風邪は健康な大人であれば、本来は自然に治る病気です。しかし、風邪を引き起こしたウイルスによる炎症が呼吸器などに達した場合は、病院での治療が必要です。

1-1.急性気管支炎

風邪による鼻やのどの炎症が、気管から気管支にまで達して発症します。

  • 症状
    のどの痛みや咳、痰に加え、発熱を伴う場合もあります。数週間で症状が落ち着くことが多いですが、発熱や咳などの症状が長引く場合は、肺炎や肺結核、胸膜炎を合併している恐れがあるため注意が必要です。
  • 原因
    風邪と同じように、ウイルスによるものが大半ですが、一部細菌によるものもあります。タバコや排気ガス、化学物質が原因で症状が引き起こされることもあります。
  • 検査と診断
    咳や痰などの症状を診て判断します。必要に応じてレントゲン撮影や血液検査、呼吸機能検査などを行う場合もあります。
  • 治療
    咳をしずめる薬や、痰が出やすくなるようにする薬が処方されることがあります。細菌感染が疑われる場合は、抗菌薬も処方されます。

◆「気管支炎」について>>

1-2.肺炎

ウイルスや細菌が肺にまで入り込み、炎症を起こしている状態です。特に高齢者は免疫力が落ちてきているため、ちょっとした風邪をきっかけに肺炎を発症し、急激に悪化することが多いので注意が必要です。

  • 症状
    38度以上の高熱や激しい咳、痰、呼吸困難、息を吸い込んだ時の胸の痛みなどがあります。高齢者の場合、肺炎になっても咳や痰などの症状があまり見られず、食欲不振や全身の倦怠感を訴えることがあります。
  • 原因
    肺炎球菌という病原菌によって起こることが最も多いのですが、ウイルスや微生物、アレルギーによっても引き起こされます。また、高齢者の場合は、食べ物や唾液が間違って気管に入ってしまう誤嚥(ごえん)によって起こることもよくあります。
  • 検査と診断
    聴診器で胸の中の音を聞くと、肺炎独特の音が聞こえます。その後、胸部レントゲン撮影をして、肺の中が白く映ると肺炎と診断されます。必要に応じて呼吸器検査や血液検査、痰の検査なども行われます。
  • 治療
    抗菌薬のほか、熱を下げる薬や咳などの症状を和らげる薬が処方されます。症状が重い場合は、入院して治療を行うこともあります。

◆「肺炎の知識と予防」について>>

1-3.喘息


風邪のウイルスに刺激されて気管支喘息が発症したり、喘息の症状が悪化することがあります。

  • 症状
    主な症状は、呼吸困難です。ゼーゼー、ヒューヒューと苦しそうな音の鳴る呼吸のほか、咳や痰があります。夜中や朝方に症状がひどく出ることが多いです
  • 原因
    空気の通り道である気道に慢性的な炎症が起こり、気道が狭くなることが原因で発症します。気道の炎症は、ダニなどのアレルギーや、ウイルス感染が原因だと考えられています。
  • 検査と診断
    問診で発作歴やアレルギーの有無などを聞くほか、胸部X線検査や呼吸器検査などを行います。検査で喘息とわかったら、その喘息がアレルギーによるものかどうかを調べるため、アレルギー検査を行います。
  • 治療
    症状をコントロールするため、吸入ステロイド薬を長期的に服用します。発作が起こった時は、気管支拡張薬を使って発作をしずめます。

◆「喘息」について>>

1-4.急性中耳炎

耳には、外耳、中耳、内耳という部分がありますが、耳の鼓膜から奥の部分である中耳に炎症が起きた状態を中耳炎といいます。

  • 症状
    耳の痛みや発熱、耳だれ、耳が詰まったような感じ、耳が聞こえにくいなどの症状が現れます。乳幼児の場合は「耳をしきりに触わる」「機嫌が悪い」「食欲がない」といったサインがある時に、中耳炎の疑いがあります。
  • 原因
    風邪のウイルスや細菌が耳に感染して起こることが多いです。特に子どもは耳・鼻・のどをつなぐ耳管という部分が太く短いことと、鼻水をかまずにすすってしまいがちなことが原因で、のどや鼻についたウイルスや細菌が耳の中に侵入しやすく、中耳炎になりやすいです。
  • 検査と診断
    顕微鏡や内視鏡で鼓膜を拡大して見て診断します。何度も繰り返しかかる場合や、症状が長引いている時は、細菌検査を行うことがあります。
  • 治療
    自然に治ってしまうことも多いのですが、耳の痛みが強い時は、鎮痛剤が処方されることがあります。膿がたまっている場合は鼓膜を切って膿を出し、抗菌薬を服用します。繰り返し起こる場合は、鼓膜にチューブを入れる手術を行うこともあります。

【参考情報】『中耳炎』日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
https://www.jibika.or.jp/modules/disease/index.php?content_id=20#cyuji

1-5.急性副鼻腔炎

鼻の内部には、副鼻腔(ふくびくう)という粘膜に覆われた空洞があります。この部分に炎症が起きた状態を副鼻腔炎といいます。

  • 症状
    粘り気のある黄色っぽい鼻水が出るほか、顔に痛みを覚える、鼻が詰まって頭がボーッとする、息苦しい感じがするなどの症状が現れます。鼻水がのどに流れる後鼻漏(こうびろう)と呼ばれる状態になることや、においが感じにくくなることもあります。
  • 原因
    風邪などのウイルスや細菌の感染によって鼻腔に炎症が起こることで、鼻腔とつながっている副鼻腔に炎症が及びます。
  • 検査と診断
    内視鏡などを用いて鼻の内部を見たり、CTスキャンなどで副鼻腔の状態を確認して診断します。鼻の通り具合を調べる検査をすることもあります。
  • 治療
    溜まった鼻水を吸引したり、鼻や口から細かい霧状にした薬剤を吸入するネブライザー療法を行います。抗生剤などの治療薬が処方されることもあります。

【参考情報】『Acute sinusitis』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/acute-sinusitis/symptoms-causes/syc-20351671

2.おわりに

風邪を引いてから咳が止まらなくなったり、治ったと思ったのにまた熱が出た時は、風邪をきっかけに呼吸器などに症状が及んでいる可能性があります。

そのような時は病院を受診して、適切な治療を受けてください。放っておくとさらに症状が進み、病気が慢性化することもあります。

◆「呼吸器内科を受診すべき症状」について>>

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