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咳が止まらなくて喉が痛い!考えられる理由と対処法

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2025年12月21日

咳が続いたあとに、喉のヒリヒリ感や痛みを感じた経験がある人は少なくありません。これは咳そのものが喉に負担をかけ、粘膜を刺激してしまうために起こります。

このような症状は風邪のときに目立ちますが、必ずしも感染症が原因とは限りません。空気の乾燥やアレルギー、喉の使いすぎなど、日常的な要因でも起こる身近なトラブルです。

この記事では、咳のしすぎで喉が痛くなる仕組みを整理し、考えられる原因、日常でできる対処法、医療機関を受診すべき目安についてわかりやすく解説します。

1. 咳のしすぎで喉が痛くなる仕組み

喉が痛い
まずは、咳のしすぎによって喉が痛くなる仕組みと、そこから生じる悪循環について解説します。

1-1. 咳による喉への物理的刺激

咳は、気道に入った異物や分泌物を外に排出するために、強い圧力で空気を一気に吐き出す体の防御反応です。このとき、勢いのある空気が喉を何度も通過し、粘膜の表面に直接的な負荷がかかります。

特に乾燥している状態では、粘膜の潤いが不足し、クッションの役割が弱まっています。そのため、わずかな刺激でも粘膜がこすれやすくなり、ごく小さな傷が生じやすくなります。

咳が何度も起こると、こうしたダメージが積み重なり、粘膜のバリア機能が低下します。その結果、赤みや腫れなどの炎症が起こり、ヒリヒリした痛みや違和感を覚えるようになります。

【参考情報】『Mouth breathing, dry air, and low water permeation promote inflammation, and activate neural pathways, by osmotic stresses acting on airway lining mucus』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37529032/

1-2. 咳が連続することで起こる悪循環

喉の粘膜には本来、傷を修復する力がありますが、その回復にはある程度の時間が必要です。しかし、咳が続いている状態では、修復が前に次の刺激が加わり、粘膜は常に傷ついたままの状態になります。

また、炎症が続くと、喉の感覚神経は刺激に敏感になり、少しの乾燥や空気の流れでも違和感を強く感じるようになります。その違和感が新たな刺激となり、さらに咳が出やすくなります。

このように、咳によって喉が傷つき、傷ついた喉がまた咳を誘発するという悪循環が生じると、喉の痛みも咳も長引きやすくなります。そのため、早い段階で刺激を減らし、喉を休ませることが重要です。

2. 喉への刺激で咳が出やすい主な原因


咳が長引く背景には、風邪のような呼吸器感染症だけでなく、乾燥や生活環境、日常の習慣など、複数の要因が関係していることがあります。

この章では、咳が長引きやすい代表的な原因を整理し、それぞれの特徴を分かりやすく解説します。

2-1. 風邪・感染症の回復期

風邪をはじめとした呼吸器感染症では、熱や鼻水などの症状が改善したあとも、咳だけが残ることがあります。これは、気道や喉の粘膜に炎症やダメージが残っているためです。この状態を感染後咳嗽といいます。

【参考情報】『Postinfectious Cough』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/post-viral-cough

回復期の粘膜は刺激に敏感な状態にあり、冷たい空気や会話といった些細な要因でも咳が出やすくなります。

このタイプの咳は、体調が回復しているように見えても、完全に治るまでに数週間かかることがあります。

2-2. 喉の乾燥・空気の乾燥

空気が乾燥する冬場や、冷暖房を長時間使用する室内では、喉の粘膜が乾きやすくなります.

このような環境で喉の粘膜の潤いが失われると、喉の防御機能が低下し、刺激に対して過敏になります。

特に就寝中は口呼吸になりやすく、喉がさらに乾燥します。その結果、夜間や朝方に咳が強く出たり、喉の痛みを感じたりすることがあります。

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2-3. アレルギーや軽い炎症

花粉やハウスダストなどのアレルゲンが喉に付着すると、強い症状がなくても軽い炎症が起こることがあります。このような場合、喉の違和感や空咳が中心となり、痰や発熱は目立たないことが多いです。

特定の季節や場所、外出の有無によって症状が出る場合は、環境中のアレルゲンが関与している可能性があります。

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2-4. 声の出しすぎ・喉の酷使

長時間の会話や電話対応、接客業などで声を使い続けると、喉の粘膜や声帯周辺に負担がかかります。喉を酷使した状態では、わずかな刺激でも咳が出やすくなり、痛みを伴うことがあります。

また、無意識に咳払いを繰り返す癖も、喉への刺激を増やし、症状を長引かせる原因になります。

2-5. 逆流や刺激物による影響

食後や就寝中に咳が悪化する場合、胃の内容物や刺激の強い飲食物が関係していることがあります。酸性の内容物や香辛料、アルコールなどは、喉の粘膜を刺激しやすく、炎症を引き起こすことがあります。

特に横になる姿勢では、喉への刺激が起こりやすく、夜間に咳や喉の痛みが強くなる傾向があります。日中は軽くても、特定の時間帯に悪化する場合は、この影響を考える必要があります。

3. 咳のしすぎで痛くなった喉の対処法


咳のしすぎで喉が痛くなった場合、喉への刺激を減らし、粘膜の回復を助けることが症状を長引かせないポイントです。

この章では、喉を休ませる方法から乾燥対策、すぐに取り入れやすいセルフケアまでを整理して紹介します。

3-1. 喉を休ませる工夫

咳で痛みが出ている喉は、粘膜が傷つきやすい状態にあります。回復を早めるためには、できるだけ喉を休ませることが重要です。

必要以上の会話や大きな声を出すことは避け、長時間の電話や連続した発声は控えるようにします。

3-2. 乾燥対策と保湿

喉の粘膜を守るためには、乾燥を防ぐことが欠かせません。室内では加湿器を使い、適度な湿度を保つようにします。特に就寝中は乾燥しやすいため、寝室の環境を整えることが効果的です。

◆「加湿器を選ぶポイントと注意点」>>

水分補給も重要で、一度に大量に飲むより、こまめに少量ずつ摂る方が喉の潤いを保ちやすくなります。

マスクの着用も有効です。呼気の水分がマスク内にとどまることで喉が乾きにくくなり、冷たい空気やほこりなどの刺激から粘膜を守る効果が期待できます。

◆「マスクの付け方と選び方」>>

3-3. 日常でできるセルフケア

うがいは、喉の粘膜を潤し、付着した刺激物を洗い流すのに役立ちます。痛みが強いときは、強くガラガラするのではなく、やさしく行うことがポイントです。

【参考情報】『効果的なうがいの仕方』日本赤十字社
https://www.jrc.or.jp/chapter/saitama/about/topics/2021/0501_017471.html

また、香辛料やアルコール、熱すぎる飲食物など、喉を刺激しやすいものは控えた方が回復を妨げにくくなります。

就寝時の姿勢にも注意が必要です。横になることで咳が出やすい場合は、上半身をやや高くすると刺激が和らぎ、喉への負担を軽減できます。

4. 市販薬の使い方と受診目安


咳のしすぎで喉が痛むと、市販薬で様子を見るべきか、医療機関を受診すべきか迷うことがあります。

この章では、市販薬が適するケースと、受診を検討すべき目安を整理して解説します。

4-1. 市販薬が適するケース

咳のしすぎによって生じた軽い喉の痛みや、一時的な炎症であれば、市販薬で対応できる場合があります。咳の回数を抑えたり、喉の炎症や刺激を和らげたりすることで、粘膜の回復を助けることが目的になります。

◆「咳が止まらない時に起きている炎症とは?」>>

発熱や強い全身症状がなく、原因が乾燥や喉の使いすぎと考えられる場合は、短期間の使用で様子を見る選択肢があります。ただし、症状に合わない薬を漫然と使い続けることは避ける必要があります。

4-2. 医療機関を受診すべき目安

咳や喉の痛みが1週間以上続く、あるいは徐々に悪化している場合は、市販薬だけで対応せず、医療機関への相談を検討します。

また、咳や痛みのために睡眠が妨げられる、会話や食事がつらいなど、日常生活に支障が出ている場合も受診の目安となります。原因が喉の炎症以外にある可能性もあるため、早めに専門家の判断を受けることが重要です。

5.咳のしすぎで喉が痛いときに考えられる病気


咳が続いたあとに喉が痛くなるのはよくある症状ですが、風邪以外の病気でも起こることがあります。

5-1. 咽頭炎(いんとうえん)

喉の奥にある咽頭の粘膜が炎症を起こす病気です。ウイルスや細菌による感染が原因となることが多く、咳の刺激や乾燥でも起こることがあります。喉の痛みや違和感、赤みが特徴で、軽症の場合は数日で改善します。

【参考情報】『Sore Throat (Pharyngitis)』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/8274-sore-throat-pharyngitis

5-2. 扁桃炎(へんとうえん)

喉の両側にある扁桃腺が炎症を起こす病気です。細菌やウイルス感染で起こることが多く、発熱や喉の強い痛み、飲み込みにくさを伴うことがあります。咳や喉の酷使によっても症状が悪化することがあります。

【参考情報】『Tonsillitis』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/tonsillitis/symptoms-causes/syc-20378479

5-3. 咳喘息

喘息の一種で、咳だけが主な症状として現れる病気です。夜間や運動後に咳が出やすく、咳のし過ぎで喉の痛みや違和感を伴うことがあります。

◆「咳喘息」についてくわしく>>

5-4. 胃食道逆流症

胃酸や胃の内容物が食道や喉に逆流することで炎症を起こす病気です。胸やけや酸っぱい味を伴うことが多く、咳や喉の痛み、違和感が悪化することがあります。横になると症状が強くなる傾向があります。

◆「胃食道逆流症」の情報をチェック>>

5-5. 声帯炎

長時間の会話や歌唱、叫ぶなどで声帯や喉の粘膜に炎症が起こる状態です。咳が加わるとさらに痛みが強まることがあります。休息や発声制限、保湿によって改善することが多いです。

【参考情報】『Vocal Cord Disorders』Johns Hopkins Medicine
https://www.hopkinsmedicine.org/health/conditions-and-diseases/vocal-cord-disorders

6.おわりに

咳が続くと、喉の粘膜は繰り返し強い刺激を受け、痛みや炎症が起こりやすくなります。咳そのものが原因となって、喉の不調を長引かせてしまうことも少なくありません。

喉を休ませる工夫や乾燥対策など、早い段階で適切なケアを行うことで、症状の悪化を防ぎ、回復を早めることが期待できます。

一方で、咳や喉の痛みがなかなか改善しない場合は、単なる刺激や一時的な炎症以外の原因が関係している可能性もあります。症状が続くときは自己判断に頼らず、状況に応じた対応を検討することが大切です。

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