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レジオネラ肺炎とは?感染経路・症状・後遺症まで医師が解説

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年04月13日

レジオネラ肺炎は、適切な治療が遅れると重症化しやすい感染症です。

空調設備の冷却塔や循環式浴槽、給湯システムといった、レジオネラ菌が繁殖しやすい水環境から発生するエアロゾルを吸い込むことで感染します。

家庭用の加湿器が原因となるケースも報告されており、身近なところにもリスクが潜んでいます。

この記事では、レジオネラ肺炎の感染経路や症状、治療法に加え、加湿器を安全に使うための注意点までわかりやすく解説します。

1. レジオネラ肺炎とはどんな病気か


レジオネラ肺炎は、レジオネラ属菌に感染することで起こる細菌性肺炎です。水回りの環境に生息する菌が、エアロゾル(細かい水しぶき)として空気中に広がり、それを吸い込むことで感染します。

レジオネラ肺炎は、英語で「Legionnaires’ disease(在郷軍人病)」と呼ばれます。これは1976年、アメリカで退役軍人の集会参加者の間に集団肺炎が発生し、後にレジオネラ菌が原因と判明したことに由来します。

レジオネラ肺炎は、誰でも発症する可能性がありますが、特に次のような人では重症化のリスクが高いとされています。

 ・高齢者

 ・喫煙者

 ・糖尿病や慢性腎疾患などの基礎疾患がある人

 ・慢性呼吸器疾患(COPDなど)がある人

 ◆「咳がとまらない・しつこい痰・息切れは、COPDの危険信号」>>

 ・免疫力が低下している人

【参考情報】『About Legionnaires’ Disease』CDC
https://www.cdc.gov/legionella/about/index.html

2. レジオネラ肺炎の感染経路


レジオネラ菌は水中で増殖し、汚染された水が霧状(エアロゾル)になったものを吸い込むことで肺に入り、感染が起こります。

2-1. どのように感染するのか

身近な感染源として多いのが、入浴施設の湯気やシャワー、噴水など水が細かく飛び散る環境です。こうした場所で発生する目に見えないほど小さな水滴が、気づかないうちに体内へと入り込みます。

レジオネラ肺炎は、風邪やインフルエンザのように飛沫感染や接触感染で広がる病気ではなく、人から人へはうつりません。そのため、家庭内や職場で患者が出ても、通常の接触によって感染が広がる心配は低いとされています。

◆「肺炎は人にうつる?うつらない?」>>

一方で、同じ場所にある汚染された水から発生したエアロゾルを複数の人が吸い込むと、同時に多くの人が発症する集団感染につながることがあります。

こうした特性から、感染者を隔離するよりも、原因となった設備を特定して清掃・消毒を徹底することが、感染拡大を防ぐうえで何より重要です。

【参考情報】『How Legionella Spreads』CDC
https://www.cdc.gov/legionella/causes/index.html

2-2. 主な感染源

レジオネラ肺炎の主な感染源は以下となります。


【代表的な感染源】

1. 循環式浴槽(温泉・公衆浴場)
最も代表的な感染源です。お湯を浄化して再利用する構造上、配管内にバイオフィルム(生物膜・ぬめり)が形成されやすく、菌が増殖する温床となります。

2. 冷却塔(クーリングタワー)
ビルや工場の空調設備に使用される装置です。屋上に設置されていることが多く、汚染された水飛沫が風に乗って近隣に飛散し、集団感染を引き起こすリスクがあります。

3. スパ・ジャグジー
気泡発生装置によってエアロゾルが発生するため、浴槽水が汚染されていた場合。吸入リスクが高くなります。

4. 給湯設備(貯湯タンク)
貯湯温度が設定ミス等で低温(20℃〜50℃程度)に保たれると、シャワーや蛇口から菌が供給される原因となります。

5. 噴水・水景施設
公園や商業施設にある噴水では水が循環しており、かつ太陽光で水温が上昇しやすいため、飛散した霧状の水を吸い込むことで感染することがあります。


【報告例のある感染源】

1. 家庭用加湿器(特に超音波式)
タンク内の水を放置すると菌が繁殖します。超音波式は水を加熱せずに微細な粒子にして放出するため、菌をそのまま空気中に拡散させる危険性が高いです。

◆「加湿器肺炎」について>>

2. 霧化式冷却装置(ミスト散布)
屋外の熱中症対策などで使用されるミストです。給水系統の清掃が不十分な場合、直接的にエアロゾルを吸い込むことがあります。

3. 医療器具(ネブライザー等)
吸入療法に使用する器具を放置し、菌が繁殖した状態で使用すること感染する恐れがあります。

◆「ネブライザー」の情報をチェック>>

4. 洗車用洗浄機
洗車時に高圧洗浄機を使用する際、汚染された水が使用されると、作業者が飛沫を吸い込むリスクが生じます。

3. レジオネラ肺炎の症状


レジオネラ肺炎は、呼吸器症状に加え、全身症状や消化器症状が目立つ点が特徴です。


<高熱>
39℃以上の高熱が出ることが多く、急激に悪化するケースもあります。解熱剤で一時的に下がっても、再び上昇することがあります。

<強い倦怠感>
全身のだるさが強く、動けないほどの倦怠感を覚える場合があります。発熱とともに急速に体力が低下することがあります。

<乾いた咳>
痰が少ない乾いた咳がみられることが多いです。初期には咳が目立たず、発熱や全身症状が先行する場合もあります。

<下痢・腹痛>
レジオネラ肺炎では、下痢や腹痛、吐き気などの消化器症状を伴うことがあります。肺炎でありながら胃腸炎のような症状が前面に出ることがある点は重要な特徴です。

<意識障害>
重症例では意識がぼんやりする、反応が鈍くなるなどの中枢神経症状が現れることがあります。高齢者ではせん妄として現れる場合もあります。

【参考情報】『せん妄』横浜市立市民病院
https://yokohama-shiminhosp.jp/shinryo/shinryoka/shinkei-seishin/delirium.html

4. レジオネラ肺炎の検査と診断


レジオネラ肺炎は、症状や画像だけでは他の肺炎と区別がつかないことがあります。

診断は単一の検査結果だけで決まるものではなく、症状、検査、画像所見を総合して行われます。

4-1. 尿中抗原検査

現在、臨床現場で最も普及している迅速診断法です。尿中に排泄されるレジオネラ菌の抗原を検出します。

結果は15〜30分程度で結果が判明します。ただし、主に「レジオネラ・ニューモフィラ(血清群1)」を対象としており、他の菌種や血清群による感染は見逃す恐れがあります。

そのため、陰性でも臨床的に疑わしい場合は、他の検査を併用します。

4-2. 遺伝子検査(PCR法)

痰や気道の検体から遺伝子を検出し、原因となる菌のDNAを直接確認する検査です。

尿中抗原検査では検出できない血清型にも対応できる可能性があるため、臨床的にレジオネラ感染が強く疑われる場合や重症例、集団感染が懸念される場合に実施されます。

ただし、検体の質や採取のタイミングによって結果が左右されるため、他の検査所見や臨床経過とあわせて総合的に判断します。

4-3. 胸部画像検査

胸部X線(レントゲン)では、肺に白く写る影(浸潤影)が確認されます。初期には片側の一部に影が出ることが多いですが、進行すると広い範囲に広がることもあります。

 ◆「呼吸器内科のレントゲン検査」について>>

より詳しく肺の状態を確認するためには、胸部CT検査を行います。

4-4.その他の検査

その他、分離培養検査(確定診断)や血清抗体価測定がありますが、結果が判明するのに時間がかかるので、一般的にはあまり行われません。

【参考情報】『Laboratory Testing for Legionella』CDC
https://www.cdc.gov/legionella/php/laboratories/index.html

5. レジオネラ肺炎の治療方法


レジオネラ肺炎は、早期に適切な抗菌薬を開始することが重要です。

一般的な細菌性肺炎とは有効な薬剤が異なるため、疑った段階で治療方針を切り替える必要があります。

5-1.第一選択薬

レジオネラ菌に効果的なのは、細胞の中まで入り込める抗菌薬です。

 ・マクロライド系抗菌薬(ジスロマックなど)

 ・ニューキノロン系抗菌薬(クラビットなど)

これらは細胞内で増殖するレジオネラ菌に作用しやすく、第一選択薬として用いられます。重症例では点滴投与が行われます。

【参考情報】『Antimicrobial Susceptibility Determination of Less Frequently Isolated Legionella Species by Broth and Agar Dilution』UK Health Security Agency
https://researchportal.ukhsa.gov.uk/en/publications/antimicrobial-susceptibility-determination-of-less-frequently-iso/

5-2.βラクタム系が効きにくい理由

一般的な肺炎の治療によく使われるβラクタム系の抗菌薬(ペニシリン系・セフェム系など)は、レジオネラ肺炎にはあまり効果がありません。

その理由は、レジオネラ菌が細胞の中で増殖する性質を持っているためです。

βラクタム系の薬は細菌の細胞壁を壊すことで効果を発揮しますが、細胞の中まで十分に届かないため、レジオネラ菌には効きにくいのです。

最初の治療で回復がみられない場合は、原因菌を改めて確認することが大切です。

5-3.入院の目安

レジオネラ肺炎は重症化しやすいため、次のような場合には入院が検討されます。

 ・高熱が続く

 ・呼吸困難がある

 ・血中酸素飽和度が低下している

 ・意識障害を伴う

 ・高齢者

 ・基礎疾患がある

重症化すると急速に呼吸不全に進行することがあります。酸素投与で改善しない場合には、人工呼吸管理が必要になることもあります。

さらに、集中治療室(ICU)での全身管理が必要となるケースもあり、早期診断と迅速な治療開始が予後を左右します。

6. レジオネラ肺炎の後遺症


レジオネラ肺炎は、適切な治療により回復することが多い一方で、重症例では後遺症が残ることがあります。

特に入院や集中治療を要した症例では、回復後も体調が完全に戻るまで時間を要する場合があります。

6-1. 呼吸機能の低下

肺炎によって肺に強い炎症が起きると、回復後も呼吸機能が低下することがあります。階段を上ると息切れが続く、以前より体を動かすのがつらくなったと感じるといった症状が現れることがあります。

重症だった場合は、炎症が治まった後に肺の一部が線維化する(硬くなる)ことがあります。線維化が進むと肺が十分に膨らみにくくなり、慢性的な呼吸のしづらさにつながる可能性があります。ただし、すべての方に線維化が起こるわけではありません

6-2. 倦怠感・認知機能低下

回復後も、強い倦怠感が長く続くことがあります。日常生活に戻っても疲れやすかったり、集中力が続かなかったりといった症状を訴える方も少なくありません。

また、重症だった場合は、一時的に物忘れや注意力の低下が現れることもあります。入院中の強い炎症や、酸素が十分に行き渡らない状態が影響していると考えられています。

熱や咳が治まっても、体力が完全に戻るまでには時間がかかります。特に高齢の方では、回復に数週間から数か月を要することもあります。

7. 家庭での予防方法


レジオネラ肺炎は人からうつる病気ではないため、水回りの環境を清潔に保つことが最大の予防策です。

7-1.加湿器の正しい使い方

家庭用加湿器は、管理が不十分だと菌が繁殖する場所になりかねません。毎日新しい水道水に交換し、水の継ぎ足しはしないことが基本です。

タンクやトレイは定期的に洗浄し、使わない時期は水を抜いて乾燥させた状態で保管しましょう。

特に超音波式加湿器は、水を加熱せずにミスト化するため、衛生管理が不十分だとリスクが高まります。取扱説明書の指示に従って、こまめに手入れすることが大切です。

◆「加湿器を選ぶポイントと注意点」>>

7-2.浴槽の衛生管理

循環式浴槽や追い焚き機能付きの浴槽は、配管内にぬめり(バイオフィルム)が生じると菌が増えやすくなります。

浴槽と配管を定期的に洗浄・消毒し、水質管理を徹底することが重要です。

7-3.シャワーの管理

しばらく使っていないシャワーや給湯設備は、配管内で菌が増殖している可能性があります。

久しぶりに使う際は、十分に放水してから使用しましょう。高齢の方や持病のある方は特に注意が必要です。

8.おわりに

レジオネラ肺炎は、早期に適切な治療を受ければ回復が期待できる一方、診断や治療が遅れると重症化しやすい感染症です。高熱や強い倦怠感、消化器症状が目立つ場合は、一般的な肺炎とは異なる原因を疑うことが重要です。

感染は人からうつるものではなく、水回りの環境管理が予防の鍵を握ります。加湿器や浴槽、給湯設備を正しく管理することは、日常生活の中で無理なく実践できる対策です。

発熱や咳が続き、体の状態が悪化していると感じたら、自己判断せず早めに医療機関を受診してください。早期の診断と治療が、重症化や後遺症を防ぐことにつながります。

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