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喘息で注意すべき、運動のおはなし

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2023年04月25日
喘息運動トップ

喘息になっても、運動を楽しんでいる人はたくさんいます。

しかし、運動によって喘息発作が誘発されてしまう可能性もあるため、患者さんから「運動をしてもいいのか」という質問を多くいただきます。

そこでこの記事では、喘息と運動の関係について解説します。

1.喘息患者にとっての運動とは?

喘息患者さんの気道は、あらゆる刺激に敏感になっています。敏感になった気道が、アレルギー物質(ダニやほこりなど)や、冷たい空気、乾いた空気などに刺激されると、発作が起こることがあります。

喘息運動イラスト

喘息治療の大きな目標は、「いかにして喘息発作を引き起こさないようにするか」ということです。そのため、発作のリスクが高い運動をおすすめすることはできません。

◆「喘息の症状・検査・治療の基本情報」>>

しかし、運動が心身にとって有益な活動であることは言うまでもなく、たとえ喘息であっても、適切な運動習慣を持つことは、健康維持のためにも非常に重要です。

喘息患者さんこそ、自分ができる運動の強度や避けるべき運動の種類などを把握しておきましょう。

◆「喘息治療のゴールと治療法」>>

2.運動で注意すべきポイント

喘息運動冬

喘息患者さんが特に注意すべきなのは、「寒い冬場に行う運動」です。
凍えるような冷気や乾燥した空気などは、喘息の大敵となります。
 
ただでさえ、乾燥した冷気を吸い込むだけで喘息発作が誘発される危険性があるので、冬場に外で激しい運動をする時には、普段以上に体をいたわりながら運動をする必要があります。

運動前に5分〜10分の準備運動を行うことで、運動中に喘息症状が起こるのを予防するといわれています。
 
たとえば、ランニング前に行う簡単な準備運動は、ゆっくりとした歩行から始めて、徐々にスピードを上げていくと良いでしょう。

また、体操やヨガをする際には、いきなり全身の運動を始めるのではなく、手の運動のみからはじめて足の運動を加えていくなど、ゆっくりと運動強度を上げることが重要です。

どんな運動をするにせよ、始める前には必ずストレッチなどを行うことも大切です。

【参考情報】『喘息と運動(小児・成人)』American Thoracic Society
https://www.thoracic.org/patients/patient-resources/resources/japanese/asthma-and-exercise.pdf

3.運動で喘息発作が起こることもある

喘息運動発作

しかし、どれだけ気を付けていたとしても、運動によって突然喘息発作が起こることもあります。

息が切れるほどの激しい運動など、運動の強度によって喘息発作が起こることもあれば、芝生やグラウンドの砂ぼこり、冬場の冷たい冷気など、運動を行う環境要因によって喘息発作が引き起こされることもあります。

このように、運動によって発症する喘息発作を「運動誘発性喘息」といいます。

運動誘発性喘息は、軽症の場合であれば、安静にすることで20~30分後には回復します。しかし、中には治療薬が必要となるケースもあります。

運動をすると呼吸回数が多くなるため、そのぶん気道に負担がかかります。
特に冬場の運動では、冷たく乾燥した空気をたくさん吸い込むことで気道が冷やされ、乾燥し、敏感になった気道が発作を起こすと考えられています。

そのため、運動時にはマスクを着用して冷気の吸入を避けることや、ウォーミングアップをしたり、発作止めの薬を事前に吸入しておいたりするなどの予防方法が考えられます。

基本的には運動誘発性喘息が起こるほどの激しい運動はおすすめできません。自分自身が許容できるレベルの運動を把握し、運動によって喘息が起こる可能性があるということをよく理解しておきましょう。

スキーや登山など、空気が冷えて乾燥するような場所での運動を行う際には、事前に主治医に相談しておくとよいでしょう。

【参考情報】『Exercise-induced asthma』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/exercise-induced-asthma/symptoms-causes/syc-20372300

◆「もしも喘息発作が起こったら~緊急時の対処法~」>>

4.喘息患者におすすめの運動

喘息運動室内

健康維持のためには、適度な運動が欠かせません。それは、喘息患者さんにとっても言えることです。

肥満の予防や生活習慣病の予防、筋肉や骨を丈夫にするためにも、日常的に運動習慣を作っておくことは非常に大切です。

そこでおすすめなのが、「室内」で行う運動です。

例えば、スポーツクラブなどでできるスタジオプログラムや筋肉トレーニング、室内温水プールなどです。気温だけではなく湿度が管理されていることも、ポイントです。

また、花粉や煙、ほこりなどを回避できるという意味でも、室内でできる運動はとてもおすすめです。

【参考情報】『ビジュアル版 自分で防ぐ・治すぜんそく』帯津良一・北村諭(監修)/法研

5.おわりに

喘息は、高血圧や糖尿病などと同じ慢性疾患のひとつです。

慢性疾患とは、長期的に“上手に付き合っていく”必要がある病気であり、喘息も例外ではありません。だからこそ、運動を避けるのではなく、自分ができる運動を探して楽しみながら続けることが大切です。

運動で呼吸機能を鍛えるという考え方もあるように、呼吸器の病気だから運動をしてはいけないということはありません。

念のため、新たに運動を始める前には、主治医に相談しておくと安心です。

【参考情報】『喘息は症状が治まってからが勝負です』アストラゼネカ
https://www.naruhodo-zensoku.com/interview/12.html

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