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喘息の咳と痰の特徴。黄色い痰が出る病気は?

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年01月31日

喘息の症状にはさまざまなものがありますが、他の疾患と見分けがつきにくいのが咳と痰の症状です。

咳や痰というのは、一般的な風邪やインフルエンザなどの病気でも頻繁に起こり得る症状であり、咳と痰だけで喘息を見分けることは困難です。

しかし、呼吸器専門医が咳の特徴(咳き込む際の音や咳の出るタイミングなど)や出ている症状を確認することで、ある程度疾患を絞り込むことができます。その中で、痰の色も疾患の鑑別にはとても有用な情報です。
 
そこで今回は、喘息患者さんの咳と痰の特徴を紹介しながら、黄色い痰が出る原因を解説します。

1.喘息の咳と痰の特徴

喘息は呼吸をする際に気道がけいれんして狭くなることで起こります。気道がアレルギーなどの炎症によって敏感になることが原因として挙げられます。

一般的に、風邪やインフルエンザなどの感染症の咳は2~3週間で治まりますが、それ以上咳が続く場合は、喘息や他の病気の可能性があります。

1−1.喘息の咳の特徴

喘息の症状には、咳や痰、息苦しさや「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい)など、さまざまなものがあります。
 
喘息では、空咳とよばれる、痰などを伴わない比較的乾いた咳が出るのが特徴で、風邪を引いた時に出るような、痰や鼻水などが絡んだような咳ではなく、乾いた湿り気のない咳が出やすいです。

軽い咳から始まって次第に悪化する人もいれば、突然のひどい咳にみまわれる人もいます。

その他の特徴としては、夜間から早朝、台風や季節の変わり目に症状が出やすく、そして、症状は一過性でも繰り返し起き、冷たい風やたばこの煙、ハウスダスト、運動などもきっかけに出やすいことが挙げられます。

◆「喘鳴について」>>

◆「喘息の症状について」>>

1−2.喘息の痰の特徴

喘息の咳は比較的乾いた空咳が出やすいと紹介しましたが、加えて痰の量が増加するのも喘息の特徴のひとつです。
 
喘息は、気道とよばれる空気の通り道に炎症が起こっている病気であるため、炎症を起こしている部分から痰の分泌量が増加したり、喉がイガイガするなどの症状が出る場合があります。

喘息の痰は透明であることが多く、黄色く濁ってドロドロしている痰とは性状が異なる場合が多いです。

【参考情報】『喘息(ぜんそく)の症状/チェンジ喘息』アストラゼネカ
https://www.naruhodo-zensoku.com/zensoku/symptoms.html

2.痰の色や性状でわかること

痰の色や性状を調べることでたくさんのことが分かります。病院の細菌検査室(検査室)などでは、痰の性状や痰の中に含まれる細菌の種類を見分けることで診断や治療をサポートしています。

【参考情報】『Phlegm, mucus and asthma』Asthma UK
https://www.asthma.org.uk/advice/understanding-asthma/symptoms/phlegm-mucus-and-asthma/

 
特に、風邪や肺炎、ウイルス感染症などで痰が増加している場合、色が濃く、粘り気が高くドロドロした痰が出る可能性があります。このような痰が観察される場合、細菌やウイルスなどによる感染症が強く疑われます。
 
一方、白く(透明〜白色)粘り気のある痰が出やすいのが喘息などの呼吸器疾患です。
 
このように、痰の観察によってわかることはたくさんあるため、問診時にしっかりと痰の性状を伝えることが正確な診断の手助けになります。

【参考情報】『痰の観察』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/copd/sputum/02.html

◆「痰がからみ、咳が止まらない時に考えられる呼吸器の病気」>>

◆「風邪の基礎知識」について詳しく>>

3.黄色い痰の意味することとは?


黄色くドロドロとした粘り気の強い痰の症状を確認した場合には、細菌やウイルスなどによる感染症が疑われます。

痰の色が黄味(黄色〜黄緑色)を帯びるのは、好中球とよばれる免疫細胞に多量に含まれるペルオキシダーゼという酵素の色調が原因だといわれています。
 
好中球は炎症によって最初に動員される免疫細胞であるため、細菌やウイルスなどに感染した場合には好中球が大量に増加します。

その好中球の中の酵素が痰の中にも多量に含まれるため、感染を起こしているときには痰が黄色に変色しやすくなるのです。

特に、喉から気道などにウイルスが感染している上気道炎等の感染症の場合、黄色から黄緑色の痰が増加し、痰が絡んだようなしつこい咳が出る場合があります。

【参考情報】『タンの色が黄味を帯びてきたのですが、何か問題はありますか?』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/copd/qa/03.html

4.おわりに

痰の色や性状でわかることは多いので、医師にとっては非常に重要な情報源となります。問診時には痰の色や性状、咳の出るタイミングなどをしっかりと医師に伝えましょう。

そして、しつこい咳や痰に困っているという方は、早めに呼吸器専門医を受診しましょう。どんな病気であれ、早期発見と早期治療が重要です。

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