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外来

肺水腫について

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2022年06月07日

肺の血管の外側に液体が異常に溜まった状態を“肺水腫”といいます。

1.原因

肺では、毛細血管の壁を介して体液が移動され、調節されています。

血管の外側の体液は、主にリンパ系や気管支、胸腔などから排出されますが、排出が間に合わないと体液が溜まってしまい、肺水腫になります。

肺水腫は、原因により静水圧性肺水腫、透過性亢進型肺水腫、混合型肺水腫に分類されます。

1-1.静水圧性肺水腫

静水圧性肺水腫は、肺の毛細血管静水圧の上昇により血液成分が血管の外に漏れ出ることが原因の肺水腫です。

心筋梗塞や心不全など心臓の病気が原因で起こることが多いです。(心原性肺水腫)

肺から心臓へ血液を運ぶ肺静脈の閉塞や、腎不全や肝硬変などにより血漿膠質浸透圧が低下することでも、起こります。

1-2.透過性亢進型肺水腫

透過性亢進型肺水腫は、血管の透過性が高くなり血液成分が血管の外に漏れ出ることが原因の肺水腫です。

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)が代表的で、重症の肺炎や敗血症、膵炎、有毒ガスの吸入、交通事故等による大けが(多発外傷)など様々な原因により発症します。

1-3.混合型肺水腫

混合型肺水腫は、静水圧性肺水腫と透過性亢進型肺水腫が混合したものです。

頭部外傷やてんかん発作後など神経系の障害や、褐色細胞腫、高地肺水腫(高山病の一種)などにより起こります。

2.症状

息切れ・呼吸困難、咳、痰、喘鳴(ゼーゼーした呼吸)などの症状が現れます。

心原性肺水腫では、夜間の呼吸困難やピンク色の泡を多く含んだ痰が特徴です。

また、通常の呼吸に使うもの以外の筋肉を多く使わなければならない呼吸(努力性呼吸)や呼吸回数の増加、頻脈が見受けられます。

急性呼吸窮迫症候群では、その原因による症状が起こることが多いです。

【参考資料】『Pulmonary edema』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/pulmonary-edema/symptoms-causes/syc-20377009

3.検査


胸部レントゲンや胸部CTなどの画像検査により、血管や気管支の周りに液体成分があるかを確認します。また、心臓や肺血管が通常より大きくなっていないかも確認します。

動脈血ガス分析では、血液中の酸素や二酸化炭素について調べ、低酸素血症かどうかを確認します。

その他、肺水腫の原因となった病気を疑う場合は、血液検査や痰の培養検査、心臓のカテーテル検査などを行う場合もあります。

◆「呼吸器内科で行われる専門的な検査について」>>

4.治療


肺水腫では低酸素血症となっているため、酸素の投与を行います。重症の場合、人工呼吸管理が行われることもあります。

肺水腫に対しては肺血管内圧を低く保つのが基本なので、血管の外側に漏れ出ている液体成分を毛細血管に押し戻すために気道に圧力をかける治療が行われます。

心原性肺水腫では、利尿薬を使用し、肺の液体成分を排出させます。
病状により、強心薬などを使用する場合もあります。

急性呼吸窮迫症候群では、原因となる病気そのものの治療を行います。

【参考資料】『新・呼吸器専門内科医テキスト』日本呼吸器学会/南江堂
https://www.nankodo.co.jp/g/g9784524226894/?fbclid=IwAR3HXKhqiuker_02pE5wPuZPmoAa9Rg-6-g_RgcRMak8rjaAOvIDxZIXIMs

5.おわりに

肺水腫は心筋梗塞など命にかかわる病気が原因で起こることがあります。
息切れや呼吸困難などの症状が出たら、医療機関を受診しましょう。
症状がひどい場合は迷わず救急車を呼びましょう。

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