肺炎の症状・検査・治療の基本情報
コロナの流行で肺炎の恐ろしさにあらためて気づいた人も多いと思います。特に65歳以上の方や持病のある方は、体の機能や抵抗力が落ちているため、肺炎にかかりやすく重症化しやすい傾向があります。
ここでは、肺炎のリスクを少しでも減らせるよう、肺炎についての基本的な知識と予防法を紹介します。「よくある病気だから」と油断せず、おかしいと思ったら早めに病院を受診して重症化を防ぎましょう。
目次
1.肺炎とはどのような病気なのか
肺炎は、細菌やウイルスなどの病原体が肺に入って炎症を起こす病気です。咳や痰、発熱などの症状が出ることが多いのですが、初期症状は風邪と似ているため、まさか自分が肺炎だとは気づかないことがあります。
特に高齢者は、肺炎にかかってもほとんど症状が出ないことも多いのです。そのため、知らないうちに病気が進行し、いきなり症状が悪化して呼吸困難になり、意識を失って死に至ることがあります。
肺炎にかかりやすいのは、免疫機能がまだ発達していない乳幼児と、免疫機能が低下してきた65歳以上の高齢者です。また、喘息など呼吸器系の病気や、糖尿病や心疾患などの持病がある方にもリスクがあります。
上記に当てはまる方で、次のような症状が1週間以上続いていたら、風邪だと自分で判断せずに、病院を受診しましょう。
□ 咳が出る
□ 微熱が続く
□ なんとなくだるい
□ 痰を伴う咳が出る
□ 息を吸うと胸が痛い
□ 食欲がない
肺炎は、炎症の起こる場所によって2種類に分けられます。気管支の末端にある袋状の組織「肺胞」の中で炎症が起こると肺胞性肺炎、肺胞の壁にあたる部分である「間質」で炎症が起こると間質性肺炎です。
肺炎の多くは肺胞性肺炎ですが、新型コロナウイルス感染症による肺炎は間質性肺炎が多いと報告されています。間質性肺炎は、肺胞性肺炎より重症化しやすい傾向があります。
2.肺炎の原因と種類
肺炎は、原因となる病原体によって大きく4種類に分けられます。
そのほか、カビなどのアレルギーが原因となる過敏性肺炎や、年齢とともに飲み込む力が弱ってきた人が、唾液や食べ物を飲み込むときに誤って気管に入ってしまうことで起こる誤嚥(ごえん)性肺炎も多く発生しています。
2−1.細菌性肺炎
肺炎球菌やインフルエンザ菌(インフルエンザウイルスとは別の病原体)などの細菌に感染することで起こる肺炎です。中でも肺炎球菌は肺炎の原因第一位ですが、ワクチンを接種することで感染を予防することができます。
温泉やプール、エアコンの冷却水など水の中に潜んでいるレジオネラ・ニューモフィラという菌に感染して起こるレジオネラ肺炎も増えています。レジオネラ肺炎の原因菌は、追い炊き機能付き風呂や24 時間風呂、加湿器の中で増殖しやすいので、汚れやぬめりが発生しないように掃除をしてください。
【参考情報】「レジオネラ症」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00393.html
2−2.ウイルス性肺炎
インフルエンザや麻疹などのウイルスが原因となる肺炎です。ワクチンを接種して、原因となるウイルスの感染を予防することで、肺炎のリスクを減らすことができます。
2−3.非定型肺炎
マイコプラズマやクラミジアなどの微生物によって引き起こされる肺炎です。人間を含む生物の体内に寄生している微生物や、土壌や河川など自然環境の中で生息している微生物が体内に入り、肺の中の免疫系を刺激することによって肺炎が起こります。
2−4.肺真菌症
アスペルギルスやクリプトコッカスなどの真菌(カビ)を吸い込むことで起こる肺炎です。健康な人がかかることは少ないのですが、肺に持病がある方や、ステロイドや免疫抑制剤を使用している方はかかることがあります。
2−5.過敏性肺炎
カビや化学物質を吸い込むことで起こるアレルギーによる肺炎を過敏性肺炎といいます。その中でも、トリコスポロンというカビで炎症が起こる夏型過敏性肺炎が代表的です。
トリコスポロンは、風呂場のような高温多湿な場所を好み、エアコンや加湿器の中でも繁殖します。そのため、エアコンを使用する5月~11月にかけて夏型過敏性肺炎の患者さんが多くなります。
2−6.誤嚥性肺炎
誤嚥(ごえん)とは、食べ物や飲み物や唾液が気管に入ってしまうことです。若くて健康な人なら、もし誤嚥があっても自然と咳が出て吐き出すことができますが、高齢者は飲み込む力も吐き出す力も衰えているため誤嚥が起こりやすく、肺の中に食べ物が入り込むことがあるのです。
口の中に入れた食べ物や唾液には、口腔内にある細菌がたくさん含まれています。それらの細菌は、胃の中に入れば胃酸で殺されるのですが、肺には胃のように強力な殺菌機能が備わっていないため、誤嚥で食べ物が入ってくると炎症を起こしやすいのです。
3. 肺炎の検査と治療
一口に肺炎と言っても、肺炎の原因はさまざまなので、それぞれの原因に合った薬を使う必要があります。
また、患者さんの年齢や健康状態によっても抵抗力に差があるため、同じ菌に感染しても軽症の方もいれば、集中治療室での治療が必要になるほど重症になる方もいます。
3−1.肺炎の検査
肺炎の診断は、発熱や咳などの症状を診るほか、画像検査や血液検査によって総合的に行います。
肺炎の患者さんは、X線やCTで胸の画像を撮ると、「浸潤影」「すりガラス様陰影」と呼ばれる白っぽい画像が見られます。血液検査では、白血球やC反応性蛋白(CRP)などの値が上昇しているかどうかを確認します。また、A-DROPという5つの指標(年齢、脱水、呼吸、見当識、血圧)を用いて重症度を判断します。
原因となる病原体を特定するため、尿検査や痰の検査をすることもあります。しかし、特定に時間がかかるときは確定診断を待たずに、症状や経過などから推定される原因に対して抗菌薬を使用することもあります。
3−2.肺炎の治療
肺炎の原因となる病原体が検査でわかれば、その原因に合った抗菌薬を用いて治療します。軽症の場合は自宅で安静にしながら薬を服用しますが、重症の場合は入院して点滴で薬や水分を補給したり、酸素を投与することもあります。
【参考情報】『Pneumonia Treatment and Recovery』American Lung Association
https://www.lung.org/lung-health-diseases/lung-disease-lookup/pneumonia/treatment-and-recovery
早めに病院を受診すれば、ほとんどの肺炎は薬で治療できます。しかし、肺炎にかかって体力が奪われると、風邪やインフルエンザに続けてかかり、再び肺炎になって慢性化・重症化する恐れがあります。
咳や痰がなくなったからといって、自己判断で薬の服用を止めてしまうと、また症状が現れることがあります。処方された薬は全部飲み切って、再発を防いでください。
4.「歯磨き」で肺炎予防
呼吸器感染症の予防は、新型コロナウイルス感染症の予防と同じように手洗いとマスク着用が基本ですが、肺炎予防でもうひとつ大事なのが「歯磨き」です。
朝起きたとき、口の中がねばついていることはありませんか? それは、寝ている間に口の中で雑菌が増えたせいかもしれません。そんなとき、歯を磨かずに朝食を食べてしまうと、食べ物と一緒に雑菌まで飲み込んでしまう恐れがあります。
特に高齢者は、口の中が雑菌だらけだと、誤嚥で肺に雑菌が入り、肺炎を起こす危険性が高まります。
食後の歯磨きはもちろん、朝起きてすぐの歯磨きも習慣にすると、口の中の雑菌を掃除することができ、肺炎の予防に役立ちます。寝る直前に歯を磨くのもおすすめです。
5.おわりに
肺炎は、風邪っぽい症状から甘く見られがちですが、死亡率も高く、決して侮ってはいけない病気です。
対象年齢の方は肺炎球菌ワクチンを接種すること、そして、病気への抵抗力をつけるため、「栄養バランスのよい食事」「質の良い睡眠」「適度な運動」という生活の基本を維持することを心がけてください。