ブログカテゴリ
外来

喘息発作と間違いやすい「過呼吸」とは?

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2022年06月07日

喘息患者さんにとって喘息発作とはとても恐ろしい症状です。
激しく咳き込み、胸の痛みや息苦しさが出現し、場合によっては呼吸困難になってしまうような深刻な症状です。

また、喘息発作と勘違いをしやすい症状に「過呼吸」があります。
過呼吸は喘息とは違い、気道(空気の通り道)そのものが閉塞してしまっているわけではないので、呼吸が完全に停止してしまうことはありません。
しかし、過呼吸を起こした本人は「呼吸が止まってしまうのではないか」という強い恐怖を味わうことになります。
 
このように、喘息発作と過呼吸の病態そのものは大きく異なりますが、どちらも恐ろしい思いをする症状であることに変わりはありません。
そこで今回は、喘息発作と過呼吸の違いについてお伝えします。

1.過呼吸とは?

過呼吸とは、正式には「過換気症候群」と呼ばれる症状です。
過呼吸が出現するタイミングは人によって異なりますが、基本的には、不安や緊張に襲われた時に、突然胸が苦しくなって発症します。
 
吸っても吸っても息ができている感覚がなく、水の中で溺れてしまうような苦しさを感じる人もいます。
場合によっては手足がしびれてきたり、目眩がしてふらつき、倒れ込んでしまったりする場合もあります。

【参考情報】『呼吸が速くなります。過換気だと言われました』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q14.html

2.過呼吸と喘息発作の違い

喘息発作でも「呼吸困難感」は感じますが、過呼吸と喘息発作の呼吸困難には根本的な違いがあります。

【参考情報】『Hyperventilation in Panic Disorder and Asthma – NCBI』National Library of Medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2937087/

喘息の病態の主体となっているのは気道の炎症であり、喘息発作の呼吸困難時には物理的に呼吸ができない状態(空気が通らない状態)になっています。そのため、適切な処置をしなければ、最悪の場合、命を落とすこともあります。
 
一方、過呼吸の場合は、心に抱えている不安や恐怖、緊張などの精神的なストレスが引き金となって呼吸が短く浅くなってしまい呼吸ができないように感じるだけで、実際に呼吸ができない状態になっているわけではありません。
 
そのため、過呼吸になっても、多くの場合は20分から30分で呼吸の状態は落ち着いてきます。
また、精神的な恐怖感が取り除かれれば、症状はスーッと消えていきます。

【参考情報】近畿大学メディカルサポートセンター
https://www.kindai.ac.jp/health/about/kakanki/

◆「喘息の症状・検査・治療の基本情報」>>

3.過呼吸が起きたら

症状が比較的軽い場合は、周りの人がゆっくり話しかけて安心させることで、適切な呼吸に誘導することは可能です。
症状がひどい場合や改善しない場合には、気持ちを落ち着かせる効果のある薬を使用するなど、さまざまな方法があります。
 
また、過呼吸を起こさないようにストレスを和らげたり、ストレスの原因を見極めて取り除く努力をするなどといった、継続的なサポートやカウンセリングなども効果的です。

4.喘息発作が起きたら

喘息発作では、症状の程度を見極め、適切かつ迅速に発作に対応することが重要です。
喘息発作の対応方法は症状の程度によって異なるため、かかりつけの専門医と事前に相談しておきましょう。

急速に気管支を広げる作用を持つ短時間作用型β2刺激薬(メプチンエアーなど)と呼ばれる吸入薬を使用したり、場合によっては救急受診、救急車の要請などの対応も必要になります。

もちろん、患者さんを落ち着かせる(安心させる)声掛けも大切ではありますが、喘息発作はそれだけでは症状は改善しません。
 
どのような状態で救急を受診するのか、吸入薬は何分おきに使用するのかなど、発作時の対応について事前にまとめておきましょう。

【参考情報】『発作が起こったら』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/attack.html

◆「もしも喘息発作が起こったら~緊急時の対処法~」>>

5.おわりに

喘息発作も過呼吸も、「呼吸が苦しい」「胸が苦しい」「恐怖や不安感」という共通の症状が出ますが、その病態は全く別物です。
 
ご自身、またはご家族が呼吸困難感を感じたことがあるという方は、早めに呼吸器専門医で診察を行ってください。

もしまだ受診をしたことがないということであれば、早めに治療を開始することが症状改善への近道になります。

◆横浜市で呼吸器内科をお探しなら>>

電話番号のご案内
電話番号のご案内
横浜市南区六ツ川1-81 FHCビル2階