睡眠時無呼吸症候群の治療で使う「CPAP」とは?

睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に一時的に呼吸が止まる無呼吸状態を繰り返す病気です。
放っておくと、眠気や頭痛に悩まされるほか、心臓や血管、脳に負担がかかるため、心筋梗塞や脳卒中など命にかかわる病気になる恐れがあります。
治療には、寝ている間の呼吸をサポートする装置を使いますが、その中でも代表的なものがCPAP(シーパップ)です。
この記事では、CPAPについて詳しく解説します。
目次
1.CPAPとは何か
睡眠時無呼吸症候群の治療で用いる装置で、最も標準的かつ広く使用されている装置がCPAPです。
CPAPとは「Continuous Positive Airway Pressure」の略で、日本語では「経鼻的持続陽圧呼吸療法」と呼ばれます。
就寝中に専用のマスクを装着し、室内の空気を取り込んで一定の圧をかけて気道に送り込むことで、睡眠中に気道が塞がるのを防ぎます。これにより、無呼吸や低呼吸の発生を抑えます。
【参考情報】『CPAP Machine』Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/treatments/22043-cpap-machine
CPAPは、睡眠時無呼吸症候群と診断されたうえで、簡易検査で1時間あたり40回以上、または精密検査で1時間あたり20回以上の無呼吸・低呼吸が認められた場合、保険適用の対象として検討されます。
また、症状が強く日常生活に支障が出ている場合には、数値が境界域であっても、医師の判断により保険適用となるケースもあります。
CPAPでの治療を保険で継続するためには、原則として月1回の外来受診が必要です。外来では、使用状況や治療効果の確認、マスクの適合や圧力設定の調整などが行われます。
自己負担額の目安としては、3割負担の方で月あたりおおよそ5,000円前後が一般的です。
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2.専用マスクの種類
CPAPで用いるマスクの種類には、ネーザルタイプ、ピロータイプ、フルフェイスタイプ、ハイブリッドマスクがあります。
2-1.ネーザルタイプ
ネーザルタイプは、鼻のみを覆うカップ状のマスクです。現在もっとも広く使用されているタイプです。
<メリット>
・安定性が高い
鼻全体を覆うためフィットしやすく、空気漏れが起こりにくい。
・圧が安定しやすい
高めの空気圧設定でも、比較的安定して使用できます。
・選択肢が豊富
サイズや形状のバリエーションが多く、顔の形に合わせて調整しやすい。
<デメリット>
・鼻呼吸が前提
口呼吸になると空気漏れが起こり、治療効果が低下する可能性があります。
・鼻づまりの影響を受けやすい
慢性的な副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎がある場合は使用しにくいことがあります。
・皮膚への圧迫
鼻梁(鼻の付け根)部分に圧がかかり、跡がついたり皮膚トラブルが生じることがあります。
2-2.ピロータイプ
ピロータイプは、鼻の中にやさしく当てる構造のため、顔に触れる部分が最小限で、軽量かつシンプルなデザインです。
<メリット>
・接触面積が小さい
顔に触れる部分が少ないので、マスクの跡が残りにくく、皮膚トラブルが起こりにくい。
・軽量で違和感が少ない
装着感が軽く、視界も広いため、就寝時のストレスを感じにくい。
・寝返りの影響を受けにくい
マスク本体が小さいため、横向き寝でも邪魔になりにくい傾向があります。
<デメリット>
・空気漏れが生じやすい
装着位置がずれると漏れが起こりやすく、調整が重要です。
・高い圧設定には不向き
空気圧が強いと、鼻孔への刺激や違和感が強くなる場合があります。
・鼻への刺激や痛み
鼻孔の周囲に痛み、乾燥、炎症が起こることがあります。
・鼻呼吸が前提
口呼吸になると治療効果が低下しやすく、対策が必要です。
2-3.フルフェイスタイプ
フルフェイスタイプは、鼻と口の両方を覆う構造のCPAPマスクです。
<メリット>
・口呼吸でも使用できる
鼻づまりや、就寝中の口呼吸があっても空気漏れが起こりにくく、治療を中続けやすい。
・圧が安定しやすい
口からの漏れを防げるため、鼻マスクでは圧が維持できない人でも効果が安定しやすい。
・チンストラップが不要
就寝中に口が開いてしまうのを防ぐチンストラップを使わずに済みます。
<デメリット>
・マスクが大きく圧迫感が強い
顔を覆う範囲が広く、閉塞感や重さを感じやすい。
・空気漏れが起こりやすい部位がある
顔との接触面が広いため、特に寝返り時に漏れが生じることがあります。
・皮膚トラブルのリスク
頬や鼻の付け根などに圧がかかり、赤みや痛みが出る場合があります。
・AHIが改善しにくいと感じるケースもある
一部の患者では、鼻マスクに比べて治療成績が安定しにくいことがあります。
【参考情報】『Choosing the right mask for your Asian patient with sleep apnoea: A randomized, crossover trial of CPAP interfaces』PubMed
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30189465/
2-4.ハイブリッドマスク
口元を覆うフルフェイス型の要素と、鼻に空気を送るネーザル/ピロー型の要素を組み合わせたマスクです。
<メリット>
・口呼吸と鼻呼吸の両方に対応
就寝中に口が開いてしまう人でも、空気漏れを抑えながら使用できます。
・鼻梁を覆わない構造が多い
鼻の付け根への圧迫が少なく、赤みや痛みが出にくい傾向があります。
・フルフェイスより装着範囲が小さい
顔を覆う面積が比較的少なく、圧迫感や閉塞感が軽減されやすい。
・チンストラップが不要になる場合がある
口漏れ対策として追加器具を使わずに済むことがあります。
<デメリット>
・構造が複雑でフィッティングが難しい
口元と鼻部分の両方を適切に合わせる必要があり、調整に時間がかかることがあります。
・空気漏れが起こることがある
特に口角や鼻下部分で漏れが生じやすく、寝返りの影響を受けやすい場合があります。
・対応機種・サイズが限られる
ネーザルタイプに比べると選択肢が少なく、合う製品が見つかりにくいことがあります。
・圧設定によっては違和感が出やすい
高圧では口元の膨らみや不快感を感じる人もいます。
【参考情報】『Which CPAP masks are best for you?』Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/sleep-apnea/in-depth/cpap-masks/art-20546828
3.CPAPのメリット・デメリット
CPAPは睡眠時無呼吸症候群の有効な治療法で、多くの患者さんにとって治療の第一選択肢となります。
しかし、人によっては使用時に違和感を持つことがあります。
3-1.メリット
CPAPを使用した翌朝か数日後には、いびきや無呼吸などの症状が改善し、睡眠の質量が上がったと感じる人は多いです。特に重症の患者さんほど、効果をはっきりと実感するようです。
睡眠中の無呼吸が改善すると、目覚めの体や気分が軽くなり、一日のスタートを気持ちよく切れるようになります。また、昼間の眠気も少なくなり、仕事や学習のパフォーマンスに良い影響が出てきます。
さらに、高血圧や糖尿病など、無呼吸によって悪化していた生活習慣病の改善にもつながります。
CPAP療法によっていびきや無呼吸が改善すると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが、健康な人と同程度まで抑えられることが示されています。
【参考情報】『Impact of Continuous Positive Airway Pressure on Cardiovascular Health in Patients With Obstructive Sleep Apnea: A Systematic Review and Meta-Analysis』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40694057/
3-2.デメリット
「マスクのつけ方」あるいは「マスクの形やサイズ」が原因で、鼻や口の周りが赤くなったりかぶれてしまうことがあります。
そんなときは、主治医にマスクのつけ方に問題がないかチェックしてもらったり、別のマスクに変更できないか相談してみましょう。
装置から送り込まれる空気によって、鼻や喉、目、口が乾くと訴える人もいます。
そのような場合は、マスクから空気が漏れている可能性もあるので、つけ方に問題がないか確認してください。また、加湿器を使って寝室の空気を潤すのもいいでしょう。
その他、睡眠中に装置から送り込まれる空気を無意識に飲み込むことが原因でお腹が張ってしまったり、空気が耳に抜けて耳鳴りがすることもあります。これらの症状は、空気圧の調整で改善することがあります。
【参考情報】『よくあるご質問』フクダ電子
https://www.fukuda.co.jp/cpap_support/question/
4.CPAPはいつまで使うのか
CPAP療法は対症療法であり、病気を根本から治すものではありません。したがって、いびきや無呼吸が改善したからといって自己判断で止めてしまうと再び症状が現れ、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。
基本的には、生涯にわたって使用することになりますが、肥満が原因で病気を発症した患者さんは、減量により治療が必要ない状態になることもあります。
医師から肥満を指摘された方は、治療とともに減量に取り組むことで、CPAPをやめることができる可能性があります。しかし、いったん適正体重になっても、再び体重が増加すると、また症状が現れることがあります。
5.CPAP以外の治療法
睡眠時無呼吸症候群の治療法は、CPAPのほかにも以下の方法があります。
5-1.マウスピース
就寝時にマウスピースを装着して顎を固定し、気道に空気が通るようにします。
使用にあたってはいくつかの条件があり、例えば虫歯や歯周病のある人は使用できません。また、重症の患者さんには効果が期待できません。
5-2.ASV
CPAPと同様に、寝る前に装着することで、睡眠中の患者さんに空気を送り込む医療機器です。
CPAPが一定のリズムで空気を送り込むのに対し、ASVは患者さんの呼吸に合わせて空気を送ります。
5-3.手術
アデノイドや扁桃の肥大で気道が狭くなっている人は、摘出手術が有効なこともあります。
また、鼻に問題があって空気の通りが悪くなっている人は、鼻中隔矯正術など鼻の手術で症状が改善されることもあります。
CPAPが合わない、効果が感じられないという場合は、別の治療ができるかどうか、医師に相談してください。
6.おわりに
睡眠中のマスク着用には抵抗があるかもしれませんが、CPAPにより睡眠の質が改善すると、「こんなに体調が良くなるなんて!」と驚く方が多いです。
また、はじめは違和感があっても、医師に相談して自分の顔にフィットするマスクを選び、装着のコツをつかむことで次第に慣れていきます。
まずは、昼間の眠気や頭痛、疲労感に悩んでいる人は、ぜひ一度、睡眠時無呼吸症候群の検査ができる病院を受診してください。「年のせい」「過労」が原因だと思っていた症状が、治療によって改善できる可能性があります。











