睡眠時無呼吸症候群は、どの診療科を受診すればよいか?

睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に呼吸が止まっては再開することを繰り返す病気です。
この病気になると、夜間の睡眠が妨げられるため、日中の眠気や集中力の低下などの症状が現れます。
さらに、治療をせずに放っておくと、生活習慣病や血管・心臓・脳の病気のリスクが上がり、心筋梗塞や脳卒中で倒れてしまうこともあります。
この記事では、睡眠時無呼吸症候群の症状について説明し、どのような病院や診療科を受診したらよいのかを解説します。病院選びに迷っている人は、ぜひ読んでください。
1.睡眠時無呼吸症候群とはどのような病気か
睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に無呼吸になることを繰り返す病気です。
10秒以上呼吸が停止している状態が1時間に5回以上、または一晩(7時間)に30回以上起こることが認められた場合に診断されます。
【参考情報】『睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/i/i-05.html
呼吸が止まるたびに、患者さんは気づかなくても一瞬起きています。重症になると、1時間に30回以上無呼吸に陥るため、夜中に何度も目が覚めて熟睡できず、睡眠不足になります。
その結果、昼間の眠気や集中力の低下、寝起きの不快感や頭痛などの症状が現れます。
呼吸が妨げられることで、激しいいびきが繰り返され、寝室をともにする家族やパートナーの安眠が妨げられ、人間関係に支障をきたすこともあります。
この病気による居眠り運転で、交通事故や電車の運転事故が発生し、多数の犠牲者が出たことも、大きな社会問題となりました。
【参考情報】『睡眠時無呼吸症候群(SAS)による眠気に起因した自動車事故例の検討』馬塲美年子、一杉正仁、相磯貞和
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcts/13/2/13_18/_pdf
2.なぜ治療が必要なのか
昼間の眠気や集中力の低下を感じても、「ストレス」「過労」「年のせい」だと思い、病気とは考えない人も多いでしょう。
しかし、この病気の恐ろしさは、よくある症状の裏で、命にかかわる合併症のリスクが進行しているところです。
睡眠中に呼吸が妨げられると、寝ている間に全身が低酸素状態となります。
そして、毎晩のように低酸素状態を繰り返すことで、心臓や脳、血管に大きな負担がかかってしまうため、心血管疾患や生活習慣病のリスクが高くなります。
その為、治療の目的は、日中の眠気や激しいいびきなどの悩みを改善すると同時に、心筋梗塞や脳卒中などの重い合併症を防ぐことにあります。
治療により睡眠中の低酸素状態が改善されると、心血管疾患のリスクが健康な人と変わらないくらいまで下がります。
【参考情報】『Why Sleep Apnea Raises Your Risk of Sudden Cardiac Death』Cleveland Clinic
https://health.clevelandclinic.org/why-sleep-apnea-raises-your-risk-of-sudden-cardiac-death/
3.何科を受診すればいいのか
睡眠時無呼吸症候群の診断には、専用の装置を用いた検査が必要となります。病院を選ぶ際には、ホームページなどで検査ができるかどうかを確認しておきましょう。
検査や治療ができるのは、主に、呼吸器内科、耳鼻咽喉科、循環器内科がある病院です。
睡眠時無呼吸症候群の病院選びは以下を参考にしてください。
<呼吸器内科【こんな方におすすめ】>
・日中の強い眠気や集中力の低下がある方
・高血圧や糖尿病などの生活習慣病がある方
・肥満がある方
・検査から治療まで一貫して診てほしい方
<耳鼻咽喉科【こんな方におすすめ】>
・慢性的な鼻づまりがある方
・アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎がある方
・扁桃腺が大きいと言われたことがある方
・小児で大きないびきをかく方
<循環器内科【こんな方におすすめ】>
・高血圧の治療中なのに血圧が安定しない
・心不全の治療中なの症状があまり改善しない
病院選びに迷って決められないときは、呼吸器内科、あるいは呼吸器専門医のいる病院を受診しましょう。
呼吸器内科は睡眠時無呼吸症候群の診療実績が豊富で、必要に応じて他の診療科と連携しながら、最適な治療方針を立ててくれます。
また、お近くの内科やかかりつけ医に相談し、専門の医療機関を紹介してもらうのも良い方法です。まずは一歩を踏み出すことが大切です。
【参考情報】『専門医検索』日本呼吸器学会
https://www.jrs.or.jp/search/specialist/index.php
3-1.呼吸器内科の特徴
呼吸器内科は、睡眠時無呼吸症候群の診療において中心的な役割を担う診療科です。
内科の中でも、肺や気管支など呼吸に関する臓器や器官を扱う呼吸器内科だと、検査や治療の実績が豊富であることが多いでしょう。
睡眠中の呼吸状態を専門的に評価し、簡易検査から精密検査(PSG検査)、CPAP治療などの標準的な治療まで一貫して受けることができます。
特に、中等症から重症の睡眠時無呼吸症候群の方や、高血圧・糖尿病などの生活習慣病を合併している方、呼吸器疾患(喘息やCOPDなど)をお持ちの方には、呼吸器内科での診療が最適です。
気道の閉塞による呼吸の問題を総合的に診断・治療できる専門性の高さが強みです。
3-2.耳鼻咽喉科の特徴
耳鼻咽喉科では、扁桃腺肥大やアデノイド肥大、鼻中隔弯曲症、鼻茸(鼻ポリープ)など、気道を狭くしている構造的な問題を専門的に診断・治療することができます。
アレルギー性鼻炎などで慢性的に鼻が詰まっている人は、耳鼻咽喉科で相談するのがいいでしょう。
鼻の通りがよくなれば、睡眠中の呼吸がしやすくなる可能性があります。
内視鏡検査によって、鼻や喉の状態を詳しく観察し、手術が必要かどうかを判断します。
特に小児の睡眠時無呼吸症候群では、扁桃腺やアデノイドの肥大が原因であることが多く、手術による摘出で劇的に症状が改善することがあります。
大きないびきがあり、鼻づまりや喉の違和感がある方は、まず耳鼻咽喉科での診察を検討してください。
構造的な問題が解決すれば、CPAP治療が不要になるケースもあります。
3-3.循環器内科の特徴
睡眠時無呼吸症候群はまれに、心臓や神経の病気が原因で発症することがあります。
循環器内科では、心臓や血管の疾患を専門に扱います。
睡眠時無呼吸症候群は高血圧や心疾患と深く関わっており、特に治療抵抗性の高血圧(降圧薬を3種類以上服用しても血圧が下がらない状態)の方の60~80%に睡眠時無呼吸症候群が合併していると言われています。
循環器内科に通院中の方で、いびきや日中の眠気がある場合は、主治医に相談してみましょう。
そこで睡眠時無呼吸症候群の疑いがあると判断されれば、呼吸器内科と連携して治療を行うこともあります。
心臓への負担を軽減し、心筋梗塞や脳卒中などの重大な合併症を予防するためにも、早期発見が重要です。
心臓の慢性疾患がある人は、まずはかかりつけの循環器科で相談してください。
【参考情報】『治療抵抗性高血圧症の診断と治療最前線』J-Stage
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/104/3/104_496/_pdf
4.検査と治療
睡眠時無呼吸症候群の疑いがあれば、まずは小型の装置を自宅に持ち帰り、センサーを付けて睡眠中の呼吸状態などを調べます。
この検査で病気の可能性が高いと判断されたら、次はより精密な検査をします。
治療では、CPAP(シーパップ)をはじめとした、睡眠中の呼吸を助ける装置を用います。同時に、肥満体型の人なら減量するなど、生活習慣の改善にも取り組んでいきます。
5.おわりに
睡眠時無呼吸症候群は、心筋梗塞や脳梗塞などの恐ろしい病気を引き起こす危険がある病気です。
「たかがいびきくらいで」とか「これくらいのことで病院を受診するなんて」と思わずに、昼間の眠気や倦怠感が続いている人は、迷わず病院を受診してください。
早めに治療を開始すれば、命にかかわる病気を防ぐことができます。また、睡眠の質や量が改善されるので、「目覚めがよくなった」「以前より疲れにくくなった」と感じる人も多いです。










