睡眠時無呼吸症候群は遺伝する?なりやすい体型と治療法について解説

家族にいびきの大きい人や、睡眠時無呼吸症候群の患者さんがいる場合、「遺伝するのだろうか」「自分もなりやすいのだろうか」と不安に感じる方もいるでしょう。
睡眠時無呼吸症候群は、大きないびきや日中の強い眠気が代表的な症状として知られていますが、放置すると高血圧や心筋梗塞、脳卒中などのリスクを高める可能性もあります。
この記事では、睡眠時無呼吸症候群と遺伝の関係をはじめ、発症しやすい体型や体質、肥満や骨格と遺伝の関連、主な治療法について解説します。
家族に睡眠時無呼吸症候群の患者さんがいる方や、自身の発症リスクが気になっている方はぜひ参考にしてください。
目次
1.睡眠時無呼吸症候群とはどのような病気か
まずは睡眠時無呼吸症候群の特徴や主な症状、そして患者さんの多くを占める閉塞性睡眠時無呼吸症候群について解説します。
1-1.睡眠時無呼吸症候群の症状
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が何度も止まったり浅くなったりする病気です。
一般的には、10秒以上の呼吸停止を「無呼吸」、呼吸の量が大きく低下した状態を「低呼吸」と呼びます。これらが睡眠中に繰り返されることで、体内の酸素濃度が低下したり睡眠が分断されたりして、睡眠の質が低下します。
睡眠時無呼吸症候群の代表的な症状には、大きないびきのほか、日中の強い眠気、起床時の頭痛、集中力の低下などがあります。また、本人は気づいていなくても、家族から「寝ている間に呼吸が止まっている」と指摘されることも少なくありません。
1-2.閉塞性睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群には、空気の通り道である気道が塞がったり狭くなったりする「閉塞性」と、呼吸を調節する脳からの指令が一時的に弱くなることで起こる「中枢性」がありますが、多くを占めるのは閉塞性です。
閉塞性睡眠時無呼吸の発症には、肥満やあごの骨格などが関係すると考えられています。そのため、「睡眠時無呼吸症候群は遺伝するのか」という疑問を持つ方も少なくありません。
2.睡眠時無呼吸症候群になりやすい体型とは
睡眠時無呼吸症候群と遺伝の関係を説明するうえでは、まず発症リスクを高める体型や身体的特徴について理解しておくことが大切です。
2-1..肥満
睡眠時無呼吸症候群の代表的な危険因子のひとつが肥満です。
体重が増えると、首や喉の周囲にも脂肪がつきやすくなります。すると上気道が狭くなり、睡眠中に空気の通り道が塞がれやすくなります。
また、肥満によって胸やお腹にも脂肪が蓄積すると、呼吸運動そのものが妨げられることがあります。その結果、睡眠中の呼吸が不安定になり、無呼吸や低呼吸が起こりやすくなります。
実際に、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者さんには肥満を伴う方が多く、体重の増加に伴って症状が悪化することも少なくありません。
【参考情報】『CQ20.OSAと内臓脂肪』睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン(2020)
https://www.jrs.or.jp/publication/file/guidelines_sas2020.pdf
2-2.あごが小さい
肥満でなくても、あごの骨格によって睡眠時無呼吸症候群を発症することがあります。
特に下あごが小さい場合や後方に引っ込んでいる場合は、舌も後ろに位置しやすくなります。そのため、睡眠中に筋肉がゆるむと舌が気道側へ落ち込み、空気の通り道を狭くしてしまうことがあります。
日本人を含むアジア人では、欧米人ほど肥満ではないにもかかわらず睡眠時無呼吸症候群を発症するケースが少なくありません。その背景には、あごの骨格や顔面形態の影響があると考えられています。
【参考情報】『Craniofacial Phenotyping in Chinese and Caucasian Patients With Sleep Apnea: Influence of Ethnicity and Sex』Journal of Clinical Sleep Medicine
https://jcsm.aasm.org/doi/full/10.5664/jcsm.7212
2-3. 上気道が狭くなりやすい体質
睡眠時無呼吸症候群の発症には、肥満やあごの大きさだけでなく、上気道そのものの形態も関係しています。
例えば、扁桃が大きい人や舌が大きい人、もともと喉の奥の空間が狭い人では、睡眠中に上気道が閉塞しやすくなります。
また、鼻づまりが慢性的に続いている場合も、睡眠中の呼吸がしづらくなり、睡眠時無呼吸症候群の発症や悪化につながることがあります。
3.睡眠時無呼吸症候群は遺伝するのか
この章では、睡眠時無呼吸症候群と遺伝の関連性について解説します。
3-1. 病気そのものが遺伝するわけではない
睡眠時無呼吸症候群は、特定の遺伝子異常によって発症する遺伝性疾患ではありません。
【参考情報】『ヒトの遺伝性疾患』日本医学会連合
https://www.jmsf.or.jp/genome/3-1.php
発症には肥満や骨格、加齢、生活習慣などさまざまな要因が関係しており、複数の要素が重なることで起こると考えられています。
そのため、親やきょうだいに睡眠時無呼吸症候群の患者さんがいたとしても、必ずしも同じ病気を発症するわけではありません。反対に、家族に患者さんがいなくても睡眠時無呼吸症候群になることもあります。
睡眠時無呼吸症候群は「遺伝だけで決まる病気」ではなく、体質と環境要因が組み合わさって発症する病気と考えられています。
3-2. 発症しやすい体質は遺伝する可能性がある
病気そのものは遺伝しなくても、睡眠時無呼吸症候群になりやすい体質は遺伝する可能性があります。
例えば、肥満になりやすい体質や、下あごが小さい骨格、上気道が狭くなりやすい顔貌などは遺伝の影響を受けることがあります。
また、家族内では遺伝的な要因だけでなく、食生活や運動習慣などの生活環境が似ることも少なくありません。そのため、同じ家族の中で睡眠時無呼吸症候群がみられることがあります。
実際に、家族歴のある人は睡眠時無呼吸症候群を発症するリスクが高いことが報告されています。ただし、これは「必ず遺伝する」という意味ではなく、発症しやすい要因を受け継いでいる可能性があるということです。
【参考情報】『Familial aggregates in obstructive sleep apnea syndrome』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7781344/
4.肥満や骨格は遺伝するのか
肥満や顎の骨格は、睡眠時無呼吸症候群の発症に関わる重要な要因です。では、これらの特徴は遺伝するのでしょうか。
この章では、肥満や骨格と遺伝の関係、家族歴との関連について解説します。
4-1. 肥満と遺伝子の関連
近年の研究では、食欲の調節やエネルギー消費に関わるさまざまな遺伝子が肥満に関連することが明らかになっています。そのため、同じ生活習慣でも体重が増えやすい人と増えにくい人が存在します。
【参考情報】『The genetics of obesity: from discovery to biology』National Library of Medicine
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34556834/
ただし、多くの肥満は遺伝だけで説明できるものではありません。食生活や運動習慣、睡眠不足、ストレスなどの環境要因も大きく関与しています。
そのため、肥満になりやすい体質を受け継いでいたとしても、適切な生活習慣を維持することで体重管理は十分可能です。
4-2. 顎の骨格と遺伝
顎の大きさや顔の形は、遺伝の影響を受けやすい身体的特徴のひとつです。
【参考情報】『Human Facial Shape and Size Heritability and Genetic Correlations』Oxford Academic
https://academic.oup.com/genetics/article/205/2/967/6066455
例えば、両親や近親者に下あごが小さい人や、横顔であごが後退して見える人がいる場合、似た骨格を受け継ぐことがあります。
下あごが小さいと舌が後方へ押しやられやすくなり、睡眠中に気道が狭くなる原因となることがあります。そのため、肥満ではないにもかかわらず睡眠時無呼吸症候群を発症するケースもあります。
特に日本人を含むアジア人では、肥満よりも骨格的な要因が睡眠時無呼吸症候群の発症に関与している場合があると考えられています。
5.睡眠時無呼吸症候群の原因が体型である場合の治療法
睡眠時無呼吸症候群の原因として肥満や骨格の特徴が関係している場合は、その原因に応じた治療が行われます。
5-1.減量
肥満が睡眠時無呼吸症候群の主な原因となっている場合は、減量が治療の基本となります。
体重が減少すると首や喉の周囲の脂肪が減り、上気道の閉塞が改善することがあります。その結果、いびきや無呼吸の回数が減少し、症状の改善が期待できます。
ただし、すでに中等症から重症の睡眠時無呼吸症候群を発症している場合は、減量だけで十分な改善が得られないこともあります。そのため、ほかの治療と並行して体重管理を行うことが一般的です。
5-2.CPAP
中等症から重症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群では、CPAP(シーパップ)療法が広く行われています。
CPAPは、睡眠中に鼻へ装着したマスクから空気を送り込み、気道が塞がれないようにする治療法です。
原因が肥満であっても骨格であっても、気道の閉塞を防ぐ効果が期待できるため、多くの患者さんで症状の改善がみられます。
CPAPによって無呼吸や低呼吸が減少すると、日中の眠気や集中力の低下が改善し、高血圧や心血管疾患などのリスク低減にもつながると考えられています。
5-3.マウスピース
下あごが小さいなど骨格的な要因が関与している場合には、マウスピース(口腔内装置)による治療が行われることがあります。
睡眠時に装着することで下あごを前方へ移動させ、気道を広げる効果が期待できます。
比較的軽症から中等症の患者さんや、CPAP療法が継続しにくい患者さんに用いられることがあります。
5-4.生活習慣の見直し
睡眠時無呼吸症候群の改善には、生活習慣の見直しも重要です。
過度の飲酒は喉の筋肉をゆるませて気道を狭くしやすくなります。また、睡眠薬の種類によっては症状を悪化させることがあります。
さらに、仰向けで寝ると舌が喉の奥へ落ち込みやすくなるため、横向きで寝ることで症状が軽減する場合もあります。
6.おわりに
睡眠時無呼吸症候群という病気そのものが遺伝するわけではありません。しかし、肥満になりやすい体質や顎の骨格、上気道の形態など、発症リスクを高める要因には遺伝が関与している可能性があります。
そのため、家族に睡眠時無呼吸症候群の患者さんがいる場合は、自分も発症しやすい体質を受け継いでいる可能性があることを知っておくことが大切です。
大きないびきや日中の強い眠気、睡眠中の呼吸停止を指摘されたことがある場合は、睡眠時無呼吸症候群が隠れている可能性があります。
気になる症状がある方は、早めに病院へ相談し、必要に応じて検査を受けましょう。早期に診断・治療を行うことで、症状の改善や将来的な健康リスクの軽減が期待できます。













