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生理前に喘息が悪化する理由は?症状と効果的な予防法を解説

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年02月05日

生理によって女性ホルモンのバランスが変化すると、だるさやイライラなどの体調不良を感じる方は少なくありません。

実は、喘息も生理の影響を受けることがあり、咳や息苦しさといった症状が悪化するケースがあります。

この記事では、喘息と生理の関連性、そして適切な治療方法について詳しく解説します。

1.喘息とは


喘息は、気道の慢性的な炎症によって引き起こされる呼吸器疾患です。

特に女性の場合、ホルモンバランスの変化が症状に大きく影響することがわかっています。

まずは喘息の基本的な知識について理解しましょう。

1-1.喘息の基本的なメカニズム

喘息とは、空気の通り道である気道が慢性的な炎症を起こして狭くなり、咳や息苦しさなどの呼吸器症状が現れる病気です。

炎症により過敏になった気道は、冷たい空気や煙、強いにおいなど、さまざまな刺激に敏感に反応し、症状が現れます。

1-2.喘息の原因

喘息は基本的にアレルギーが関係する病気ですが、原因となるアレルギー物質が特定できるかどうかで分けて考えられています。

<原因が特定できるタイプ>
血液検査などで、何に対してアレルギーがあるかがはっきり分かるもの
・ダニ
・花粉(スギ、ヒノキなど)
・ペットの毛
・カビ
・ハウスダスト

<原因が特定しにくいタイプ>
アレルギーの原因となる物質がはっきりと特定できないもの

<どちらのタイプでも症状を悪化させる要因>
・疲労、ストレス
・風邪やインフルエンザ
・タバコの煙
・大気汚染や排気ガス
・急激な気温の変化
・解熱鎮痛薬(アスピリンなど)
・食品添加物

喘息患者さんの約6割が「原因が特定できるタイプ」、約4割が「原因が特定しにくいタイプ」とされています。

どちらのタイプでも、適切な治療により症状をコントロールすることが可能です。

◆「喘息」についてもっと詳しく>>

1-3.喘息の治療の基本

喘息と診断されたら、吸入ステロイド薬をはじめとした薬剤による治療を続けるとともに、発作を引き起こす原因となるアレルゲンや刺激を、できるだけ避けて生活することが大切です。

発作がないときにも気道の炎症は続いているため、症状がなくても治療を継続することが重要なのです。

1-4.喘息における性差と女性の特徴

喘息には年齢や性別による特徴があります。

小児期には男児に多く見られますが、思春期以降は女性の方が多くなると言われています。

実際、喘息患者の約62%が女性であるというデータもあります。

この性差が生じる理由は、女性ホルモンが気道の炎症や過敏性に影響を与えるためと考えられています。

乳児期には、「男児:女児=2.8:1」の比率で男児が多いですが、思春期以降は「1:1.5」と女性が逆転するのです。

【参考情報】『女性と喘息』NPO法人女性呼吸器疾患研究機構
https://wored.or.jp/activity/web-seminar/asthma

2.生理の仕組みと女性ホルモンの働き


生理は、女性に妊娠が起きなかった場合に、古くなった組織を体外へ排出するためのプロセスです。

周期は通常、約28日です。

卵巣から卵が放出されると、妊娠に備えて子宮内膜が厚くなります。

ここで妊娠がない場合、子宮内膜は必要なくなるので剥がれ落ち、出血を伴い体外へと排出されます。

生理周期は、卵巣から分泌されるホルモンと、脳下垂体から分泌されるホルモンの変動によって繰り返されています。

これらのホルモンの影響で、生理中や生理前には、痛みや不快感が生じることがあります。

【参考情報】”Menstrual Cycle” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/articles/10132-menstrual-cycle

3.なぜ、生理前に喘息の症状が悪化するのか


生理による心身の変化は、喘息の症状を悪化させることがあります。

その理由を詳しく説明します。

3-1.ホルモンバランスの影響とメカニズム

喘息の女性のうち、生理によって喘息の悪化を認める人は30~40%程度いると言われており、重症の喘息発作の約半数は生理周辺期に起こりやすく、特に生理初日に約4分の1が集中しているという報告があります。

そのメカニズムは完全には解明されていませんが、一部の研究によれば、生理によって女性ホルモンのバランスが崩れることで気道の炎症に悪影響が及び、喘息の悪化につながる可能性があると指摘されています。

女性ホルモンには、おもにエストロゲンとプロゲステロンの2種類があり、月経周期の中でそれぞれが優位になりながら働き、この2つのバランスが崩れると、体調不良が起こりやすくなると言われています。

特に生理前のエストロゲンの「急激な低下」という変動が、喘息発作を引き起こす重要な要因と考えられているのです。

【参考情報】 ”Perimenstrual asthma: A syndrome without known cause or cure” by Journal of Allergy and Clinical Immunology
https://www.jacionline.org/article/S0091-6749(03)01714-7/fulltext

3-2.月経前症候群(PMS)の影響と精神的ストレス


月経前症候群(PMS)とは、生理の数日前から現れる身体的・精神的な症状のことです。

おもな症状としては、頭痛・腹痛・眠気・イライラや気分の落ち込み・集中力の低下などがあります。

人によっては、月経前症候群(PMS)の影響を受け、喘息やアレルギー性鼻炎などのアレルギー性疾患の症状が悪化することもあります。

また、喘息はストレスでも悪化すると言われています。

そのため、生理前のイライラや体調不良などのストレスも、悪化の引き金となります。

3-3.むくみと気道への影響

生理前は女性ホルモンの影響で、体に水分が溜まりやすくなります。

この水分によって気管支の粘膜がむくみ、気道が狭くなるため、喘息が悪化しやすくなります。

特に生理前に体重が増えやすい方では、むくみの影響が強く出やすい傾向があります。

むくみが強いときは、利尿作用がある薬を用いることもあります。

◆「むくみの原因とは?」>>

4.生理による喘息の悪化を予防する対策

生理のたびに症状の悪化を繰り返している人は、喘息のコントロールがうまくできていない可能性があります。

ここでは、生理による喘息の悪化を防ぐ方法を説明します。

4-1.基本的な治療の継続

喘息の治療により症状が改善しても、病気が治ったわけではありません。

症状が出なくなっても気道の炎症は続いているため、処方された薬を毎日服用し、気道の炎症を抑えることが大切です。

発作が出なくなっても、吸入ステロイド薬をはじめとしたコントローラー(長期管理薬)を医師の指示通りに服用し、症状をコントロールしていきましょう。

特に生理周期に合わせた喘息管理が重要です。

普段からしっかりと喘息をコントロールしておくことで、生理前のホルモン変動による影響を最小限に抑えることができます。

吸入ステロイド薬の継続使用により、気道の慢性的な炎症を抑え、生理時の症状悪化を抑えることが期待されます。

日々の治療を続けることにより、生理やストレスの影響があっても、悪化を最小限に抑えることができます。

◆「喘息治療に使う吸入薬の種類と特徴、副作用」>>

4-2.発作治療薬(リリーバー)の準備と使用のタイミング

月経前症候群やホルモンバランスの影響により、喘息の症状が急に悪化することがあります。

このような場合、発作を起こす恐れがあるので、発作治療薬(リリーバー)を手元に用意しておきましょう。

特に生理開始の2〜3日前から生理初日にかけては、発作のリスクが最も高まる時期です。

この期間は特に注意深く自分の症状を観察し、少しでも息苦しさや咳が増えたと感じたら、早めに発作治療薬を使用しましょう。

また、発作が起きた際に、速やかに服用できるように、発作治療薬の使い方も事前に調べておきましょう。

4-3.ロイコトリエン受容体拮抗薬の検討と効果


生理前は、炎症を起こす体内物質であるロイコトリエンが増加しやすくなります。

そのため、ロイコトリエンの働きを抑える「ロイコトリエン受容体拮抗薬」を服用すると、症状が和らぐ可能性があります。

【主なロイコトリエン受容体拮抗薬】
 ・シングレア/キプレス
 ・オノン

ロイコトリエン受容体拮抗薬には気管支を広げる作用があり、喘息による咳や息苦しさを軽減するはたらきがあります。

生理の影響で喘息が悪化する方では、通常の喘息治療に「ロイコトリエン受容体拮抗薬」を追加することで、生理前の症状の改善につながる場合があります。

主治医と相談して、生理周期に合わせた治療計画を立てることをおすすめします。

【参考情報】『ロイコトリエン受容体拮抗薬の解説』 日経メディカル
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/556e7e5c83815011bdcf82ac.html

4-4.産婦人科で月経前症候群について相談する


月経前症候群の症状がつらい人は、産婦人科で相談し、適切な治療を受けましょう。

症状が重い人は、無理をして我慢する必要はありません。

医学の力を利用して、不快な症状をできるだけ緩和しましょう。

月経前症候群の治療を行うことで、ホルモンバランスの影響による喘息の悪化を予防できる可能性が高まります。

4-5.低用量ピルやホルモン療法の検討

生理に関連した喘息の症状には、産婦人科でのホルモン療法が有効な場合があります。

低用量ピルなどのホルモン剤を服用することで、ホルモンバランスの急激な変動を抑えることができます。

これらのホルモン剤を継続的に服用すると、女性ホルモン(エストロゲン)の血中濃度が安定します。

そのため、生理前に起こるエストロゲンの急激な減少を防ぎ、喘息の悪化を予防できる可能性があります。

特に生理痛の治療に使われる薬(LEP製剤)は、条件を満たせば保険適用で処方してもらえることもあります。

ただし、この治療法は喘息と月経前症候群・生理痛の両方でお困りの方で、現時点で妊娠を希望されない場合に限られますので、産婦人科医と呼吸器内科医の両方に相談し、総合的に判断することが大切です。

【参考情報】『月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)』日本産科婦人科学会
https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=13

5.喘息と生理に関する生活上の注意点

月経関連喘息をよりよくコントロールするために、日常生活で気をつけるべきポイントがあります。

5-1.症状日記をつける習慣

生理周期と喘息症状の関係を把握するために、症状日記をつけることをおすすめします。

毎日の症状(咳の頻度、息苦しさの程度)と生理周期を記録することで、自分の症状パターンが見えてきます。

この記録は医師との診察時にも役立ちます。

5-2.生理前の生活調整

生理開始の2~3日前から生理初日にかけては、特に喘息が悪化しやすい時期です。

この期間は以下のような生活調整を心がけましょう。
・激しい運動を避ける
・十分な睡眠を確保する
・ストレスを溜めない工夫をする
・冷たい空気に触れる機会を最小限にする
・喫煙者の近くを避ける

5-3.妊娠を考えている方へ


喘息をお持ちで妊娠を考えている方は、妊娠前から喘息のコントロールを良好に保つことが重要です。

吸入ステロイド薬の継続などで喘息を安定化させておくことで、妊娠中の喘息悪化を予防できます。

妊娠中も主な喘息治療薬(吸入ステロイド薬、β2刺激薬など)は安全に使用できます。

妊娠中に喘息が悪化すると、お母さんだけでなくお腹の赤ちゃんも低酸素状態になってしまうため、薬物治療を継続することが何より大切です。

【参考情報】『女性のぜん息患者さんへ』独立行政法人環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/case/women.html

5-4.肥満対策の重要性

女性は男性よりも肥満の影響が強く出て、喘息が悪化しやすいことがわかっています。

BMI25以上の軽度肥満でも影響するため、適正体重を維持することが大切です。

肥満は月経関連喘息の症状をさらに悪化させる可能性があります。

肥満によって以下のような影響が起こります:
・ホルモンバランスが乱れやすくなる
・横隔膜が圧迫されて十分に空気を吸えなくなる
・気道の壁が厚くなりやすい
・気道が刺激に過敏に反応しやすくなる

運動療法や食事療法による減量は、喘息症状の改善にもつながります。

◆「喘息と肥満の関係」>>

6.おわりに

生理によるホルモンの変動は、喘息の症状を悪化させる可能性があります。

生理周期の変動に敏感なため、喘息の症状が悪化しやすい人は、必要だと感じたら、産婦人科でPMSについて相談してみるのも良いでしょう。

同時に、吸入ステロイド薬をはじめとした薬を毎日忘れずに服用し、喘息をコントロールしていきましょう。

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