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喘息治療に使う吸入薬の種類と特徴、副作用

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年04月04日

喘息の治療薬は、毎日服用する「長期管理薬(コントローラー)」と、発作が起きたときに服用する「発作治療薬(リリーバー)」に大きく分けられます。

中でも基本となるのは、長期管理薬にあたる吸入ステロイド薬です。

この記事では、喘息の吸入薬の種類と使い方について解説していきます。ご自身が使っている薬について確認したい方や、ほかの治療薬に関心がある方は、ぜひお読みください。

1.喘息の吸入薬とは?

喘息という疾患にはどのような症状があるのかについては、こちらの記事をご参照ください。

◆「喘息や止まらない咳でお困りですか?」>>

◆「喘息についての基本情報」>>

現在日本では、喘息の吸入薬を使うためには必ず医師の処方が必要となっています。

2.吸入薬の種類とは?

長期管理薬と発作治療薬は、それぞれ異なる目的で使用します。

2−1.長期管理薬(コントローラー)

「長期管理薬(コントローラー)」は、喘息の原因である気道の炎症を長期間にわたって抑えることで、発作を予防する目的で使用します。

【主な長期管理薬】
 
 ・オルベスコ

 ・フルタイド

 ・パルミコート

 ・アドエア

 ・フルティフォーム

 ・レルベア

 ・シムビコート

 ・アニュイティ

これらの吸入薬は、基本的に毎日使用します。しっかり喘息の症状を抑えるために、1つの吸入薬に2つの成分が配合されているものを使用する場合もあります。

効果を実感するまでは約2週間前後かかり、速効性はありません。しかし、喘息治療においては症状を抑えて発作を予防するための長期管理薬の継続こそが、最も大切だと言われています。

喘息の治療の目標は、気道の炎症を抑え、気管支の一部が狭くなる気管支狭窄を防ぎ、喘息をコントロールすることです。

発作がないから、毎日吸入するのは面倒くさいから、といった理由でこの長期管理薬を止めてしまうと、またすぐに発作が現れてしまうことも考えられます。自己判断で薬を中止することは絶対にやめましょう。

◆「喘息症状を改善させるには?」>>

2−2.発作治療薬(リリーバー)

「発作治療薬(リリーバー)」は、万が一発作が起きてしまったときに、咳や息苦しさの症状を緩和する目的で使用します。

【主な発作治療薬】

 ・メプチン

 ・サルタノール

 ・ベネトリン

これらの吸入薬は、発作が起きてしまったときにいわば「一時しのぎ」のために使用します。気管支を拡げることで息苦しさや咳症状を緩和するもので、速効性があり、約30分~1時間で効果が現れます。

ただし、喘息の原因である気道の炎症を抑える薬ではないため、症状のコントロールはできません。長期管理薬を使用せずに発作治療薬だけに頼っていると、気道の炎症が悪化して入院が必要になってしまうこともあります。

長期管理薬をしっかり継続していてもなかなか改善せずに発作が続く場合には、早期に病院を受診して医師に相談しましょう。

◆「喘息治療のカギとなる「気道の炎症」を抑えるには?」>>

3.吸入薬の副作用


吸入薬は内服薬とは違って、気管支だけを局所的にターゲットに使用するよう設計された薬ですので、その分副作用もかなり軽減されています。また、内服薬と比べて吸入薬は気道に直接届くため、用いる量は非常に少なく済みます。ただ、医薬品ですので副作用がゼロということではありません。

長期管理薬としての吸入薬には「ステロイド」と呼ばれる抗炎症薬が含まれています。このステロイドが口腔内に残ってしまうことで声が枯れてしまったり、口の中にカビがはえてしまうことがあります。

◆「吸入ステロイド薬の副作用とは?」>>

ですから、使用後にはステロイドを洗い流すために必ずうがいを行いましょう。うがいが難しければ、吸入後に水分を摂取して、口の中に残ったステロイドをゆすいで飲み込みましょう。

また、吸入薬の吸い方が強いと声のかすれにつながります。診察時や薬剤師に吸い方を確認し、正しい方法で吸入しましょう。

【参考情報】『Steroid inhalers』NHS(National Health Service)
https://www.nhs.uk/conditions/steroid-inhalers/

発作治療薬や長期管理薬には、β2刺激薬という気管支拡張薬が含まれるものがあります。β2刺激薬には、交感神経を刺激して気管支を広げる作用があるので、その刺激により動悸や手の震え、脈が速くなるなどの副作用が出ることがあります。

薬の量を調整したり、種類を変えることで改善できる場合が多いので、副作用かもしれないと思ったら、早めに医師に相談しましょう。

4.喘息吸入薬のデバイスの各特徴

吸入薬を使用する際に用いる器具であるデバイスの特徴もさまざまです。それぞれいろいろな工夫がされているので、簡単にその特徴を解説していきます。

吸入に必要な速さは各デバイスによっても変わります。吸入が効いていないと思ったら、吸入の速度に問題があるという場合もあります。その際は、吸入の指導を受けてください。

小児や高齢の方は吸入の力が弱く、吸入できていないということもありますので、注意しましょう。

4−1.ディスカス、エリプタ、タービュヘイラー


吸入薬の成分がドライパウダーという粉の形で充填されているデバイスです。粉に若干甘味がついているので吸えているかどうかの確認ができるのと、あと何回使用できるか数字で表示されるカウンターがついているので、残数の確認にも便利です。

ただし、少し粉っぽさを感じることがある点と、ある程度吸う力がないと、気管支まで薬を届けることができないため、呼吸機能が落ちてしまった高齢者などには不向きです。

4−2.ブリーズヘラー、ハンディヘラー


中にカプセルをセットして、そのカプセル内にある粉薬を吸って使用するデバイスです。吸っているときにカラカラと音が鳴るため、吸えているかどうかがすぐに分かります。こちらもディスカス等と同じように、ある程度吸う力が必要になります。

4−3.レスピマット、エアゾール


吸入薬の成分が噴霧されるエアゾール・ミストタイプのデバイスです。

空気と一緒に吸うことができるため、呼吸機能が落ちてしまった高齢者にも使用可能です。ただし、薬が噴霧されたタイミングで息を吸い込む必要があるので、少しコツが必要になります。

【参考資料】『喘息予防・管理ガイドライン』国立病院機構東京病院 大田健
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/65/2/65_97/_pdf

5.おわりに

市販の喘息吸入薬は、現在存在していません。咳止めの内服薬はありますが、あくまで一時的な症状を和らげるだけのものに過ぎません。

喘息は、何らかの原因で気道が炎症を起こしている状態であるため、適切な治療を受けないまま市販薬で症状をごまかしていると、どんどん症状が悪化してしまいます。

喘息の症状が現れた場合には、早期に呼吸器内科医を受診し、適切な診断のもとで処方された薬を使用するようにして下さい。

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