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喘息治療薬「パルミコート」の特徴と効果、副作用

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2024年03月25日

パルミコートは喘息の治療に用いる薬で、「タービュヘイラー」とよばれるデバイス(吸入用器具)を使って吸入します。

この記事では、パルミコートの使い方や効果、副作用について解説します。初めて使う方も、使っているうちに疑問点が出てきた方も、ぜひ最後までお読みください。

1.パルミコートとはどのような薬か

パルミコートは、吸入ステロイド薬であるブデソニドを主成分とする気管支喘息の治療薬です。

【参考情報】『Budesonide』MedlinePlus.gov
https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a608007.html

喘息の治療薬には、毎日服用することで発作を予防する「コントローラー(長期管理薬)」と、発作が起こった時に鎮めるための「リリーバー(発作治療薬)」があります。

パルミコートは、コントローラーにあたる薬です。コントローラーは、吸入してすぐに効果は現れませんが、使い続けることで発作を予防することができます。
継続的に使用することで気管支の炎症を抑え、呼吸を楽にします。

パルミコートとよく似た容器を用いた薬剤として、「シムビコート」があります。

シムビコートは、コントローラーとしてもリリーバーとしても使用できる薬ですが、パルミコートはリリーバーとしては使えないので、発作時に誤って吸入しないよう注意してください。

◆「シムビコート」について詳しく>>

2.パルミコートの使い方

パルミコートは通常、成人は1回100〜400μgを、1日2回吸入します。

小児は1回100〜200μgを、1日2回吸入します。

以下、使用方法を説明します。

①キャップを外す

②右に回す

③カチッと音がするまで左に戻す
カチッと音がしたら、1回分の薬が準備できた合図です。
※②〜③の動作は「クルッ」「カチッ」と覚えておくと良いです。

④息を吐き出す
姿勢を正し、無理のない程度で、しっかり息を吐き切ります。

⑤薬剤を吸い込む
マウスピース(吸入口)を深くくわえて口をすぼめ、「強く」「早く」「一気に」スーッと息を吸い込んでください。

⑥息を止める
薬剤を吸い込んだら、マウスピースから口を離して3~5秒ほど息を止め、その後ゆっくりと息を吐いて呼吸を再開します。

⑦キャップをしめる

⑧うがいをする
口の中に残った薬剤を洗い流します。

【空打ちに関して】
未使用の吸入器を初めて使用する場合のみ、茶色の回転グリップを左右に回し、カチッと2 回鳴らします。

【参考情報】『正しい吸入方法を身につけよう:タービュヘイラー』環境再生保全機構
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/basic/adult/control/inhalers/method02.html

3.パルミコートの副作用

パルミコートの代表的な副作用は、口腔カンジダ症や声枯れ(嗄声:させい)です。

【参考情報】『口腔カンジダ症』日本口腔外科学会
https://www.jsoms.or.jp/public/disease/setumei_koku/#c05

これらの副作用は、吸入後のうがいによって予防できます。

その他の副作用として、咽喉への刺激感や味覚異常、咳、吐き気、神経過敏、情緒不安、気分の落ち込み、不自然な行動、不眠、皮下出血なども報告されています。 これらの症状が強い時は、医師に報告しましょう。

また、皮膚のかゆみ、発疹、蕁麻疹や、顔・舌・喉のはれ、息が苦しいなどの症状があらわれた場合は、使用をやめ、すぐに医師に相談してください。

4.使用上の注意点

パルミコートは、喘息の発作を抑える薬ではありません。発作が起こり、咳や息苦しさが強くなってきたときは、医師から処方された発作治療薬(リリーバー)を服用してください。

◆「もしも喘息発作が起こったら~緊急時の対処法~」>>

パルミコートは、「ドライパウダー」という非常に細かいパウダー状の薬剤です。そのため、「吸入しても吸った感じがしない」という患者さんが多いです。

しかし、正しい方法で吸入していれば、しっかりと薬剤は服用できているので、吸入した感じがしないからといって、何度も吸入しないようにしましょう。

また、吸入器(タービュヘイラー)を振ると、「カサカサ」という音が聞こえますが、これは乾燥剤の音であって、薬剤の音ではありません。

乾燥剤の音を、薬がまだ残っていると勘違いして、残量ゼロなのに吸入し続けてしまったというケースも報告されているので、吸入器の小窓部分にある「残量表示」を確認してから薬剤を吸入するようにしてください。

吸入を忘れてしまった場合は、気づいたときに1回分を吸入してください。次の吸入時間が近い場合は、その時間に1回分を吸入してください。2回分をまとめて吸入しない、指示された1日の回数を守る必要があります。

妊婦又は妊娠している可能性のある女性、授乳中の女性の方は、パルミコート使用の可否について主治医と相談して下さい。

妊娠中の方は、赤ちゃんのことを考え、薬を使わない方がいいのではと使用をためらう方もいますが、主治医の指導の元、適切に使えば問題になることはほとんどありません。

喘息が悪化し発作が起こることで低酸素状態になると、妊婦の命に関わることになりかねませんし、低酸素状態は赤ちゃんにもいい影響はありません。

主治医の指示に従い、自己判断で吸入薬の服用をやめたりせず、治療を継続しましょう。薬を服用してから、不安なこと、体調の変化等があれば必ず主治医に相談してください。

◆「喘息の女性が気になる妊娠中の不安や疑問に答えます」>>

【参考情報】
『Asthma During Pregnancy』Asthma and Allergy Foundation of America
https://www.aafa.org/asthma-during-pregnancy/

『パルミコート®タービュヘイラー®を使用される患者さんへ』アストラゼネカ
http://www2.astrazeneca.co.jp/yourhealth/pulmicort/pdf/safeuse.pdf

5.パルミコートの薬価


パルミコートの薬価は、以下となります。

 ・パルミコート100μgタービュヘイラー112吸入11.2mg 1,166.8円

 ・パルミコート200μgタービュヘイラー56吸入11.2mg 1,166.8円

 ・パルミコート200μgタービュヘイラー112吸入22.4mg 1,471.2円

パルミコートの代わりとなるジェネリック医薬品はありません。

6.おわりに

パルミコートと同じような、喘息治療用の吸入ステロイド薬には、以下のようなものがあります。

 ・フルタイド

 ・オルベスコ

 ・アニュイティ

パルミコートを使っても症状が良くならない人や吸入が難しいと感じる人は、ほかの薬が使えるかどうか医師に相談してみましょう。

◆喘息治療に使う吸入薬の種類と特徴>>

◆横浜市で呼吸器内科をお探しなら>>

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