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喘息の治療をしているのに咳が止まらない?胃食道逆流症との関係

医学博士 三島 渉(横浜弘明寺呼吸器内科・内科クリニック理事長)
最終更新日 2026年02月17日

喘息の治療を続けているにもかかわらず、咳が長引いたり、夜間や明け方に症状が悪化したりすることはありませんか。

その原因の一つとして、胃食道逆流症が関係している場合があります。

胃食道逆流症でよくみられる胸やけの症状がなくても、咳や喘息症状が続くことがあるのです。

この記事では、喘息と胃食道逆流症の関係を整理しながら、受診を考える際のポイントをわかりやすく解説します。

1.喘息とはどんな病気か

喘息とは、空気の通り道である気道に慢性的な炎症が生じることで引き起こされる病気です。

この病気では、特定のアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)が関与して症状が出やすくなる場合もあれば、明確なアレルゲンが特定できない場合もあります。

いずれの場合も、気道の炎症が関与している点は共通しています。

◆「喘息に関する主なアレルゲン」について>>

アレルギーの原因には、ダニやペットの毛、花粉などがあります。

一方、アレルギー以外の原因には、過労やストレス、風邪などの呼吸器感染症、タバコ、気候の影響などがあります。

これらの要因に加えて、近年では胃食道逆流症のように一見すると喘息とは関係がなさそうな病気が、症状の悪化に関与するケースもあることが分かってきています。

喘息の人の気道は炎症により過敏になっているため、冷たい空気や強い匂いなどのわずかな刺激にも反応し、以下のような症状が現れます。  
・激しい咳  
・喘鳴(ぜんめい:ゼイゼイ、ヒューヒューという呼吸音)  
・息苦しさ  
・胸の痛み

これらの症状はアレルギー刺激だけでなく、体調の変化や生活習慣、他の病気の影響によって強く出ることもあるでしょう。

喘息発作を繰り返すと気道の炎症が悪化し、治療がますます難しくなる傾向があります。

発作が重症化した場合には、適切な対応が遅れることで命に関わる可能性もあるため、日頃から発作を予防し症状を安定させることが大切です。

そのため、治療によって喘息発作を予防し、しっかりと症状をコントロールすることが重要です。

もし、治療を続けているにもかかわらず、咳が長引く、夜間や明け方に症状が悪化するといった状態がみられる場合には、喘息以外の要因が関係していないかを整理して考える必要があるでしょう。

◆「咳が止まらない原因」についてもっと詳しく>>

2.胃食道逆流症とはどんな病気か

胃食道逆流症とは、胃酸や胃の内容物が食道に逆流することで起こる病気です。

胃と食道の境目には、下部食道括約筋(かつやくきん)という筋肉があります。この筋肉は、食事の時以外はしっかりと閉じられ、胃酸や胃の中の飲食物の逆流を防いでいます。

しかし、何らかの原因によって下部食道括約筋が十分に機能しない場合、胃酸や胃の内容物が食道へ逆流しやすくなることがあります。

例えば加齢によって下部食道括約筋がゆるんでしまうと、うまく閉じられなくなるため、食道に胃の内容物が逆流しやすくなります。

また、食べ過ぎ食べる時の姿勢力の入れ過ぎによって胃の圧力が高まると、下部食道括約筋が締まる力よりも、胃の圧力が上回ることで逆流が起こりやすくなることもあるでしょう。

さらに、消化不良で胃に内容物が長くとどまったり、食事によって胃酸が多く分泌されたりすることも逆流の一因と考えられます。

このように、胃食道逆流症は「胃酸が多いかどうか」だけでなく、胃と食道の境目のはたらきや、胃内の圧力、食事や体の状態など、複数の要因が重なって起こる病気です。

逆流が続くと、胃酸の刺激に食道が耐えきれず、次のような症状が現れることがあります。  
・胸焼け  
・呑酸(どんさん)  
・喉の痛み  
・咳  
・声枯れ

呑酸とは、胃酸が逆流して口や喉に苦味や酸味を感じる症状のことです。

胸焼けや呑酸といった典型的な症状が目立たない一方で、咳や喉の違和感、声枯れなどの症状だけが続くケースも少なくありません。

そのため、胃食道逆流症は「胸焼けがないから違う」とは言い切れず、症状の出方によっては気づかれにくいこともあります。

なお、胃食道逆流症と似た言葉に「逆流性食道炎」があります。

逆流性食道炎は、胃食道逆流症のうち胃カメラで食道の炎症が確認できるタイプを指すものです。

これに対し、胃カメラでは明らかな炎症が見られなくても咳や喉の違和感などの症状が出ることがあり、こうした状態も胃食道逆流症に含まれます。

◆「胃食道逆流症」についてもっとくわしく>>

3.喘息と胃食道逆流症の関係

胃食道逆流症で刺激を受ける食道と、空気が通る気道や気管は近い位置にあります。

そのため、胃食道逆流症と喘息は一方だけの問題として切り分けるのではなく、互いに影響し合う可能性を踏まえて考える必要があります。

3-1.胃食道逆流症の喘息への影響

胃食道逆流症が喘息を悪化させる理由には、以下のようなものがあります。

【胃酸による直接刺激】
胃食道逆流症によって胃酸が逆流すると、気道の粘膜が刺激され、喘息の人にもともと生じている気道の炎症が悪化する

【神経反射による影響】
胃酸の逆流によって、食道粘膜にある迷走神経が刺激されると気道が過敏になり、咳が出やすくなる

【誤嚥による刺激】
逆流した胃酸や胃の内容物を誤嚥(ごえん:飲食物が誤って気管や肺に入る)すると、気道に刺激が加わり、咳が誘発されることもある

これらの影響は、胸焼けなどの自覚症状がはっきりしない場合でも起こることがあり、患者さん自身が胃食道逆流症との関係に気づきにくいことも少なくありません。

このように、胃食道逆流症の症状は、気道の炎症を悪化させたり咳を誘発するため、喘息の症状コントロールを難しくすることがあります。

◆「気道の炎症」を抑えるには?>>

3-2.喘息の胃食道逆流症への影響

反対に、喘息の症状や治療によって、胃食道逆流症の症状が悪化することもあります。

【咳による影響】
喘息により激しい咳が続くと、咳の刺激で胃の内容物が逆流することがあります。その結果、食道の炎症が広がり、胃食道逆流症が悪化することがあるでしょう。

【喘息治療薬による影響】
喘息の治療薬にはテオフィリン系(キサンチン系)と呼ばれる薬がありますが、この種類の薬は胃食道逆流症の症状を悪化させることがあります。

【参考情報】”Theophylline (Oral Route)” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/drugs-supplements/theophylline-oral-route/description/drg-20073599

【薬の併用による注意点】
胃食道逆流症の治療で使われるプロトンポンプ阻害薬という薬は、テオフィリン系の薬と一緒に服用すると、血液中の薬の濃度が下がって作用が弱まることがあります。

このように、喘息と胃食道逆流症は、症状や治療の面でも互いに影響し合う関係にあると考えられています。

これらの理由から、胃食道逆流症のある喘息患者さんには、テオフィリン系の薬の投与量を減らしたり、中止を検討することがあります。

ただし、胃食道逆流症の症状がある場合でも、自己判断で治療薬の量を減らしたり、服用を中止したりすることは控えてください。

必ず医師に相談したうえで、治療方針を検討することが大切です。

【参考情報】”Asthma and acid reflux: Are they linked?” by Mayo Clinic
https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/asthma/expert-answers/asthma-and-acid-reflux/faq-20057993

4.喘息の症状は胃食道逆流症の治療で改善するのか

胃食道逆流症の治療には、プロトンポンプ阻害薬と呼ばれる薬がよく使われています。

この薬は胃酸の分泌量を抑え、逆流による症状を改善させる作用があります。

【参考情報】”Proton Pump Inhibitors” by Cleveland Clinic
https://my.clevelandclinic.org/health/articles/proton-pump-inhibitors

ほかには、消化管の運動を促す薬や、食道の粘膜を保護する薬などを服用することもあります。

これらの薬物療法は、胃酸の刺激を和らげることで症状の改善を目指す治療であり、胃食道逆流症の原因そのものを完全に取り除く治療ではありません。

ただし、これらの治療は根本的な治療ではないため、症状がよくなったと感じても、自己判断で薬の内服を中断すると再び症状が現れることがあります。

もし、胃食道逆流症が喘息を悪化させている場合、これらの治療を行うことで喘息の症状が軽減する可能性があります。

実際には、咳の回数が減る、夜間の症状が落ち着くなど、一部の症状が改善するケースも報告されています。

また、喘息治療に用いているステロイド薬などの使用量を見直せる場合もあるでしょう。

◆「喘息治療に使う吸入ステロイド薬の副作用は?」>>

ただし、胃食道逆流症の治療によって喘息の症状が改善したとしても、自己判断で治療を中断することは勧められません。治療の継続や調整については、必ず医師と相談しながら進めることが大切です。

胃食道逆流症の原因によっては、生活習慣の改善も併せて行う必要があります。

例えば、「食後すぐに横にならない」「暴飲暴食をしない」といったことが大切です。

これらの注意により食べ物がしっかりと胃に留まり、食道への逆流を防ぎやすくなると考えられます。

このような生活習慣の見直しは、薬物療法の効果を高める目的で行われ、喘息と胃食道逆流症の両方の症状を安定させる助けになります。

5.受診や治療はどのように考えればよいか

喘息と胃食道逆流症の関係が疑われる場合、「いつ相談するか」「受診時に何を伝えるか」「治療をどう続けるか」 といった視点で、行動の整理が必要です。

5-1.どのような症状があれば相談を考えるか

喘息と胃食道逆流症は、互いに影響し合う可能性があるため、どちらか一方だけに注目せず、全体像を踏まえて判断することが求められます。
特に、
・喘息の治療を続けているのに咳が長引く
・夜間や明け方に症状が悪化する
・横になると咳が出やすい

といった状態が続く場合には、胃食道逆流症の関与も視野に入れる必要があるでしょう。

5-2.受診時に医師へ伝えたいポイント

受診の際には、
・どのようなタイミングで咳が出るか
・食後や就寝前後で症状に変化があるか
・胸やけや喉の違和感があるか

といった点を医師に伝えることで、喘息と胃食道逆流症の関係を把握しやすくなります。

◆「喘息・咳喘息かも…何科を受診?」はこちら>>

5-3.治療を続けるうえで注意したいこと

胃食道逆流症が疑われる場合でも、自己判断で喘息の治療薬を減らしたり、中止したりすることは勧められません。

喘息の治療は、症状が落ち着いているように見えても、継続することで安定を保っている場合が多くあります。

また、薬物療法とあわせて、食後すぐに横にならない、暴飲暴食を避ける、就寝前の食事量を控えるといった生活習慣の見直しも、症状を安定させるための重要な補助策と考えられます。

喘息の症状が続く背景には、必ずしも一つの原因だけがあるとは限りません。

症状の経過や生活の状況を整理しながら、医師と相談して治療方針を考えていくことが大切です。

【参考情報】『患者さんとご家族のための胃食道逆流症(GERD)ガイド2023』日本消化器病学会
https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/disease/pdf/gerd_2023.pdf

6.おわりに

胃食道逆流症は、症状の出方によっては、喘息の経過やコントロールに影響を及ぼすことがあります。

喘息の患者さんに、胸焼けや声枯れなど胃食道逆流症のような症状がある場合は、主治医に相談してみましょう。

胸焼けがはっきりしない場合でも、咳や喉の違和感が続くときには、その経過を伝えることが大切です。

胃食道逆流症の症状が薬物治療などで改善すれば、喘息の症状も改善される可能性があります。

ただし、効果のあらわれ方には個人差があります。

生活習慣の見直しや治療を組み合わせながら、主治医と相談しつつ、無理のない形でコントロールを目指すことが大切です。

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