コロナ後遺症で咳が止まらない方へ 原因と改善方法を解説

新型コロナウイルス感染症から回復したのに、咳だけがいつまでも続いている…そんなお悩みはありませんか。
これは「コロナ後遺症(正式には罹患後症状)」と呼ばれる症状の一つです。
この記事では、後遺症による咳の原因から、自分でできる対処法、医療機関での治療まで、段階的にわかりやすく解説します。
目次
1. コロナ後遺症による咳の治療選択肢を整理しよう
コロナ後遺症による咳は、多くの場合、時間とともに改善していきます。しかし、咳が長引くことで日常生活に支障をきたすこともあるため、適切な対処が必要です。
この章では、後遺症による咳とはどのような症状なのか、どのような治療選択肢があるのかについて整理していきます。
1-1. コロナ後遺症(罹患後症状)とは
コロナ後遺症とは、正式には「罹患(りかん)後症状」と呼ばれ、新型コロナウイルス感染症から回復した後も続く、さまざまな症状のことを指します。
厚生労働省によると、「感染性は消失したにもかかわらず、他に原因が明らかでなく、罹患してすぐの時期から持続する症状、回復した後に新たに出現する症状、症状が消失した後に再び生じる症状の全般」と定義されています。
代表的な症状としては、疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛、咳、喀痰(かくたん:痰のこと)、息切れ、胸痛、脱毛、記憶障害、集中力低下などが報告されています。
【参考情報】『新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)について』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kouisyou_qa.html
1-2. 咳が続く頻度と改善の見通し
日本で行われた研究によると、新型コロナウイルス感染症の診断後3カ月時点で約10%の方に咳が残り、1年後でも約5%の方に咳が残ると報告されています。
感染から回復した後も、一定数の方で咳が長引くことが確認されていますが、時間の経過とともに改善する傾向があることがわかっています。
厚生労働省の診療の手引きによると、咳が続く理由として、迷走神経を介したメカニズムや、脳内の神経炎症による可能性が指摘されています。
また、新型コロナウイルス感染症をきっかけに、喘息や咳喘息といった呼吸器の病気が新たに発症したり、もともと持っていた症状が悪化したりすることもあるようです。
【参考情報】『新型コロナウイルス感染症 罹患後症状のマネジメント』厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/001159406.pdf
1-3. 治療選択肢の全体像と受診の目安
コロナ後遺症による咳への対処は、大きく3つのレベルに分けて考えることができます。
第一のレベルは、「セルフケア・日常生活の工夫」です。
室内の湿度管理、水分補給、刺激物の回避など、生活環境を整えることが中心になります。
第二のレベルは、「呼吸訓練・リハビリなどの非薬物的アプローチ」です。
呼吸法の練習や、痰を出しやすくする排痰法、呼吸筋を強化するトレーニングなど、薬を使わずに症状の改善を目指す方法になります。
第三のレベルは、「専門医による治療法」です。
吸入薬や内服薬などを用いた薬物療法が中心となります。
ただし、以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
・息切れや呼吸困難を伴う咳がある方
・血痰が出る場合
・咳が2週間以上続いている場合
・夜間の咳で睡眠が十分にとれない状態が続いている場合
などです。
【参考情報】『Talking with Your Doctor About Long COVID』Centers for Disease Control and Prevention
https://www.cdc.gov/long-covid/talking-to-doctor/index.html?utm
2. 咳が止まらないときのセルフケア・日常生活の工夫
コロナ後遺症による咳に対して、まずご自身で取り組める対処法があります。薬を使わずに症状を和らげることができる場合もありますので、できることから始めてみましょう。
2-1. 室内環境を整える
咳を和らげるためには、室内環境を整えることが重要です。とくに湿度管理は、咳の症状に大きく影響します。
空気が乾燥していると、気道の粘膜も乾燥しやすくなり、刺激に対して敏感になってしまいます。室内の湿度は、40~60%程度に保つことが理想的といえます。
加湿器を使う、濡れたタオルを室内に干すなどの方法で、適度な湿度を維持しましょう。
また、室温も大切なポイントです。急激な温度変化は気道を刺激して咳を誘発することがあるため、室温は18~22度程度に保ち、寒暖の差が大きくならないように注意が必要です。
さらに、ホコリやダニなどのアレルゲンも咳を悪化させる要因になります。こまめな掃除を心がけ、寝具は定期的に洗濯し、天日干しするようにしましょう。
2-2. 水分補給と生活習慣の工夫
適切な水分補給は、咳の症状を和らげるために非常に重要です。水分を十分に摂ることで、気道の粘膜が潤い、痰が柔らかくなって出しやすくなります。
1日に1.5~2リットル程度の水分を、こまめに摂取するよう心がけてください。飲み物は、常温または温かいものがおすすめです。
また、十分な睡眠をとることも回復には欠かせません。睡眠不足は免疫機能を低下させ、症状の回復を遅らせる可能性があります。夜間の咳で眠れない場合は、上半身を少し高くして寝る姿勢が効果的といわれています。
タバコの煙は気道を強く刺激するため、喫煙は絶対に避けてください。また、香水、芳香剤、消臭スプレーなどの刺激物も、咳を誘発することがあるため、これらの使用は最小限に抑えましょう。
3. 呼吸訓練・リハビリなどの非薬物的アプローチ
セルフケアだけでは十分な改善が得られない場合、呼吸訓練や呼吸リハビリなどの非薬物的アプローチが有効です。
ご自宅でも実践できる呼吸法や、痰を出しやすくする方法について解説します。
【参考情報】『COVID-19患者に対する呼吸リハビリテーション』J-STAGE
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsrcr/34/1/34_1/_html/-char/ja
3-1. 呼吸訓練の基本
呼吸訓練は、呼吸の仕方を改善し、呼吸筋を強化することで、咳や息切れなどの症状を和らげることが期待できる方法です。
まず基本となるのが「腹式呼吸」です。
1.椅子に座るか、仰向けに寝た状態で、片手をお腹に、もう片手を胸に置きます。
2.鼻からゆっくりと息を吸いながら、お腹を膨らませてください。このとき、胸はあまり動かさないように意識しましょう。
3.口からゆっくりと息を吐きながら、お腹をへこませます。吐く時間は、吸う時間の2倍程度になるように意識すると効果的といわれています。
次に「口すぼめ呼吸」という方法も有効とされています。
鼻から息を吸った後、口をすぼめて、ゆっくりと息を吐き出す方法です。この方法は、気道の圧力を保ち、気道が狭くなるのを防ぐ効果が期待できます。
【参考情報】『家庭でできる運動療法』環境再生保存機構≫
https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/42/report/report08.html
3-2. 排痰法と日常生活に取り入れる運動
痰が絡む咳が続いている場合は、痰を効率的に排出する方法を身につけることが重要です。
最も基本的な排痰法は「ハフィング」という方法になります。
大きく息を吸った後、「ハッ、ハッ」と声を出さずに短く強く息を吐く動作を繰り返してください。この動作によって、気道の奥にある痰を喉の方へ移動させることができます。
また、「体位ドレナージ」という方法もあります。
横向きに寝て、上側の手を脇の下に置き、深呼吸を数回繰り返す方法です。痰が上がってきそうになったら、軽く咳をして痰を出しましょう。
呼吸機能を維持・改善するためには、日常生活の中で適度な運動を取り入れることも大切です。
「ウォーキング」は、呼吸リハビリとして最も取り組みやすい運動の一つといえます。
平坦な道を、自分のペースでゆっくりと歩くことから始めましょう。最初は5~10分程度から始め、体調に合わせて徐々に時間を延ばしていくとよいでしょう。
4. 専門医が使う治療法の概要と役割
セルフケアや呼吸訓練などを続けても症状が十分に改善しない場合、医療機関での治療が必要になることがあります。この章では、専門医が行う治療法について、一般的な治療の概要を解説します。
4-1. 医療機関での診察と検査
医療機関を受診すると、まず問診が行われます。医師は、いつから咳が続いているのか、どのような咳なのか、他にどのような症状があるのかなどを詳しく聞き取ります。
次に、必要に応じて検査が行われることがあります。一般的な検査としては、聴診器で胸の音を聞く聴診、胸部レントゲン検査、血液検査などです。症状によっては、肺機能検査や胸部CT検査などが行われることもあります。
【参考情報】『Lung Function Tests』National Institutes of Health
https://medlineplus.gov/lab-tests/lung-function-tests
これらの検査結果をもとに、医師は咳の原因を診断し、適切な治療方針を決定していきます。コロナ後遺症による咳なのか、それとも別の病気が関わっているのかを見極めることが重要です。
【参考情報】『Q70. COVID-19後遺症の呼吸器症状(長く続く咳嗽や呼吸困難など)への対応について』日本呼吸器学会
[https://www.jrs.or.jp/covid19/faq/long_covid/20221019000005.html](https://www.jrs.or.jp/covid19/faq/long_covid/20221019000005.html)
4-2. 吸入療法と内服薬による治療
コロナ後遺症による咳に対して、医療機関では吸入療法が用いられることがあります。吸入療法とは、薬剤を霧状にして直接気道に届ける治療法で、呼吸器の症状に対して使用されることが多い方法です。
吸入療法には、毎日定期的に使用して気道の炎症を抑えることを目的とした「コントローラー」と、症状が出たときに一時的に和らげることを目的とした「リリーバー」があります。
吸入薬を処方された場合は、正しい使い方を覚えることが大切です。吸入後には口の中をすすぐ「うがい」を行うことで、副作用を予防することができます。
また、内服薬が処方されることもあります。咳を和らげる薬、痰を出しやすくする薬、炎症を抑える薬など、症状に応じた適切な薬が選ばれます。薬による治療を受ける際には、医師の指示通りに服用することが重要です。
5. 治療効果の見方・改善目安
治療を始めた後、どのように効果を判断すればよいのか、どのくらいの期間で改善が期待できるのかについて解説します。
5-1. 治療効果を判断するポイント
治療の効果を判断するためには、いくつかのポイントを観察することが大切です。
「咳の回数」と「咳の強さ」に注目しましょう。治療を始める前と比べて、1日に咳が出る回数が減っているか、激しい咳が軽い咳に変わってきたかを確認してください。
「咳が出やすい時間帯や状況の変化」も確認のポイントです。夜間の咳が減って眠れるようになった、会話中に咳き込むことが少なくなったなどの変化は、改善のサインといえます。
また「日常生活への影響」も大切な判断材料になります。仕事や家事に集中できるようになった、外出が苦にならなくなった、睡眠の質が改善したなど、生活の質の向上を感じられれば、治療が効果を上げている可能性があります。
これらの変化を客観的に把握するために、症状日記をつけることをおすすめします。
5-2. 改善までの期間と症状が改善しない場合の対応
セルフケアや生活習慣の改善を始めた場合、効果を実感するまでに1~2週間程度かかることが多いようです。
呼吸訓練や排痰法などの非薬物的アプローチの場合、2週間から1カ月程度続けることで変化を感じられることが多いとされています。
医療機関での治療を受けた場合、吸入療法や内服薬による効果は、数日から1週間程度で症状の軽減を感じることもあります。
ただし、気道の炎症を根本的に改善するには、数週間から数カ月単位での治療継続が必要になることもあるでしょう。
治療を続けているにもかかわらず、十分な改善が見られない場合は、再評価が必要です。症状が改善しない背景には、コロナ後遺症以外の病気が隠れている可能性もあります。咳喘息、喘息、副鼻腔気管支症候群、逆流性食道炎などが咳の原因となることがあるためです。
自己判断で市販の咳止め薬を長期間使用することは避けてください。市販薬は一時的な症状の緩和には役立つことがありますが、原因に対する根本的な治療にはなりません。医師との連携を密にし、症状の変化や困っていることを率直に伝えることが、効果的な治療につながります。
6.おわりに
コロナ後遺症による咳は、時間とともに少しずつ改善していくことが多い症状です。ただし、回復までの期間には個人差があり、長く続く場合もあります。
まずは室内の乾燥を防ぐ、水分をしっかりとるなど、無理のないセルフケアから始めてみましょう。
それでも咳が続く場合や、息切れ・血痰がみられる場合は、早めに医療機関へご相談ください。
ほかの病気が隠れていることもあるため、専門家のサポートを受けながら、ご自身のペースで回復を目指していくことが大切です。




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